IT企業に求められるPR活動とは?近年主流のPESOも解説

目次

 

 

 

「PR」と聞くと、何をイメージするでしょうか。日本では職業面接などで使われる「自己PR」などの言葉が有名になり、PRはほとんど「広告」「広報」と同義で考えられています。

しかし、実際にはPRは全く異なる定義があります。広告が従来のような効力を失う中、マーケティングの世界でPR活動が注目を集めています。

この記事では、IT企業向けにPRの定義や目的、PRの最新手法であるPESOの概要、PRの流れなどを紹介します。

 

 

 

1. PRの定義と目的

 

まず、PRの定義と目的について解説します。

PRの定義

PRは「プロモーション(Promotion)」や「プレスリリース(Press Release)」と勘違いされることが多いですが、実際は「パブリック・リレーションズ(Public Relations)」の略です。これは直訳すると「公衆との関係」という意味であり、PRとはつまり「公衆との良好な信頼関係作りのための活動」という定義になります。PRの最終的な目的は、公衆の人々にファンになってもらうことであると言えます。

日本パブリックリレーションズ協会の定義

日本におけるパブリックリレーションズの啓発・普及を図る活動を行っている「日本パブリックリレーション協会」はさらに詳細に、下記のように定義しています。

“パブリックリレーションズ(Public Relations)とは、組織とその組織を取り巻く人間(個人・集団)との望ましい関係を創り出すための考え方および行動のあり方である。”

引用:パブリックリレーションズ協会|日本パブリックリレーションズ協会

PRの目的

従って、PRは一方的な情報発信ではなく、組織やステークホルダーとの「良好な信頼関係作り」という目的を活動の主軸に置かなければいけません。双方向のコミュニケーションと、そこから生まれる関係性が非常に重要であるということです。この点が「広告」や「広報」との最大の相違点です。

現代社会は広告で溢れているため、消費者からの信頼は減少し、煙たがられるようになってしまいました。広告が従来の効果を失う中、マーケティングの世界で注目を集めるようになったのがこのPRという概念です。

 

 

 

2. 近年注目されているPRの方法「PESO」とは

 

次に、PRの方法について解説します。

従来、PRの方法として代表的なやり方は「パブリシティ活動」でした。マスメディアに自社の情報を提供することで、その番組・記事等で発信してもらえるように働きかけるという方法です。

しかし近年は、SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)やオウンドメディア(自社メディア)の発展により、企業が自ら直接消費者に情報を届けられる時代になりました。

上記の変化に伴い、PRの方法は多様化しました。米国のPRプロフェッショナル向け専門誌「PRWeek」の編集長・スティーブ・バレット氏は、グローバルPRの潮流を語るにあたり、「PESO」というキーワードを提唱しました。

PESOとは、下記の4つの頭文字を合わせたものです。

● P: Paid Media(広告)

● E: Earned Media(パブリシティなど)

● S: Shared Media(ソーシャルメディア)

● O: Owned Media(自社メディア)

CMなどの広告は「Paid Media」、マスメディアにプレスリリースや直接のコンタクトを通じて取り上げてもらえるように働きかけることは「Earned Media」、Facebook・Twitter・Instagram等で商品やサービスの紹介をすることは「Shared Media」、そして自社ホームページや特設サイト等で商品やサービスを紹介することは「Owned Media」をそれぞれ指します。

企業の規模や事業内容に関わらず、近年はこの4つのメディアをバランスよく活用することが求められています。

 

 

3. IT企業が行うべきPR 

 

 

次に、IT企業が行うべきPRを紹介します。

IT企業もWebを活用した集客・見込み客獲得を目的に前述した「PESO」を活用したPRに取り組むべきです。具体的には以下の取り組みが推奨されます。

P: Paid Media(広告)

リスティング広告、SNS広告、記事広告など。近年は特にSNS広告が有効です。

E: Earned Media(パブリシティなど) テレビや新聞、業界紙に取り上げられることで、メディアのオンラインサイトや提携Webメディアにも情報が掲載されます。特に、提携Webメディアに転載されるメリットは大きく、ヤフーニュース やライブドアニュースなどに転載されると1日でWebメディア経由で自社サイトに10万アクセスが発生するということも珍しくありません。

S: Shared Media(ソーシャルメディア)

BtoB事業の場合、ソーシャルメディアは情報の拡散チャネルとしては活用ハードルが高いというのが実態です。したがって、ニュースリリースを発表するチャネルとして活用したり、メディア掲載情報などを載せたりすると良いでしょう。

O: Owned Media(自社メディア)

自社メディアは、SEOを高め検索エンジン経由で集客するために非常に有効な方法です。オウンドメディア 支援企業に委託すると製品サイトと別にオウンドメディアを作られてしまうケースが多いですが、製品サイト上にオウンドメディア機能をアドした方が確実にSEOは強くなります。

また、SEOを目的としなくても、自社が保有する顧客情報(CRMやSansanなどに蓄積した名刺情報など)に対してマーケティングオートメーションからオウンドメディアのコラムを配信することで、有望顧客の特定や顧客の掘り起こしにつなげることも可能です。

 

4. PRの仕事の流れ

 

 

次に、PRの仕事の基本的な流れについて解説します。

原則、下記の5つの手順に沿って進めていきます。

1. マーケットの調査

2. ターゲット・目標の設定

3. 戦略の立案

4. 施策の実施

5. 検証

最初に、PRしたい企業・ブランド・製品・サービスのマーケティングリサーチを行います。具体的には、「アンケート調査」「電話調査」「街頭調査」などの方法があります。またこの際、競合の分析も欠かさずに行い、そのマーケットの調査の結果から、どの層をPRのターゲットにするのかを決めます。そして、効果が定量的に測定可能な目標を設定します。

次に、設定した目標をクリアするための戦略を立案します。「どのメディアを使うのか」「どのようなアプローチをするのか」「どのようなメッセージを伝えるのか」などの点を決める必要があります。戦略を決定後、施策を実践します。

最後に、実施したPR活動の結果を分析・改善します。成功した点、失敗した点を整理し、PR方法を改善することでより実効性のある施策へ進化させていきます。

 

 

 

 

5.PRで発信するべき内容とは

 

 

最後に、PRで発信するべき内容について解説します。

上述したPRの方法に加え、PRの内容も時代の流れと共に変遷しています。高度経済成長期は「大量生産の時代」、生活水準が向上し選択の多様性が生まれてからは「選択の時代」、そして今は「ストーリーの時代」と呼ばれています。

「ストーリーの時代」とは、その商品の性能などのクオリティではなく、企業の理念やブランディングイメージを打ち出すことが消費者の関心や購買意欲を引き出すという時代です。つまり、「何を買うか」よりも「誰から(どんな夢を掲げている企業から)買うか」が重視されるようになったということです。IPhoneを開発した「Apple社」などが、まさしくストーリー戦略に則ってPRを行った企業の例です。

ストーリーは、企業の核となる理念やビジョンを明確にした上で、「社会」「人」「メディア」の三者が何を求めているのか、という時代の潮流を視野に入れて作り出す必要があります。その際、企業理念を押し出しすぎてターゲットが曖昧になる、もしくは時代の潮流を意識しすぎて理念が正しく言語化できていない、というミスが起こらないように注意しましょう。常に「企業理念」「時代の潮流」のバランスを保ってストーリーを生み出すことが求められます。

 

 

 

 

まとめ

 

この記事では、IT企業向けにPRの定義や目的、PRの最新手法であるPESOの概要、PRの流れなどを紹介しました。近年多くの企業が「PESO」に則ってデジタルを活用したPR活動をするようになりましたが、一方で、クライアントのIT化を推進・支援するIT企業では、まだまだPESOに対応できていない企業も多いでしょう。

創業10年以下程度の企業はデジタルネイティブですが、創業20年以上の企業はIT企業といえどもデジタル対応できておらず、いまだにアナログでSNSはもとよりオウンドメディアやWebを活用できていないといった課題も多いかと思います。この機会にぜひデジタルを活用したPR活動に取り組んでみてください。

 

 

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