デマンドジェネレーションとは、BtoBマーケティングにおいて「案件の創出」を指す。
新たな見込み客(リード)を獲得する「リードジェネレーション」、メールやコンテンツによる育成「リードナーチャリング」、リードの評価と営業への引き渡し「リードクオリフィケーション」を含む一連のマーケティング活動だ。
最近では「アカウント単位」でのオーディエンス管理、つまり特定の企業や担当者ごとに情報を出し、分ける対応が求められるようになっている。
さらに、サイトの閲覧履歴や資料のダウンロード状況などの利用データを活用して、属性ごとにセグメントを最適化することも重要だ。
こうした対応は、企業の成長フェーズ(たとえば設立直後か、大企業か)やビジネスモデル(SaaSのような定額課金型か、サービスごとに料金が発生する都度課金型か)に応じても柔軟に変える必要がある。
コモディティ化により市場が飽和し、新規案件の獲得が困難となった現代において、デマンドジェネレーションに苦戦している企業も多いのではないだろうか。
「効果的なターゲティング方法がわからない」
「どのように組織化すれば良いか、他社の例が知りたい」
「精度の高いリード獲得やスコアリングができず、会社の目標に貢献できていない」
このような課題をよく耳にする。
そこで本記事では、BtoB企業が「問い合わせを増やす」「商談につなげる」といった成果を上げるために、どこからどう手をつけるべきかを、わかりやすく整理する。
そして、目標設定から具体的な取り組み事例に至るまで、役立つ知見を余すことなく解説する。
ぜひ本記事を「デマンドジェネレーションの教科書」として何度も見返し、活用してほしい。
目次
1.デマンドジェネレーションとは?
デマンドジェネレーションとは一言でいうと「案件の創出」のためのマーケティング活動だ。
自社のサービスに興味を抱いてくれる企業を見つけてコンタクトを取り、具体的な提案(営業活動)へとつなげていく。
BtoBマーケティングの文脈では、以下の3つのステップに分類されるのが一般的だ。
- リードジェネレーション(見込み客を獲得する)
- リードナーチャリング(見込み客の購買意欲を高める)
- リードクオリフィケーション(受注確度の高い見込み客を絞り込む)
情報収集の手段やニーズが複雑化している現代においては、顧客になる前から手厚いフォローをしていかなければ新規顧客は獲得できない。
デマンドジェネレーションでは、ユーザーがまったく自社を知らないところから、案件化するまでを管理し、最適なアプローチで顧客を獲得する取り組みだ。
リード獲得からナーチャリングへの連携を強化する方法は、以下の記事で詳しく解説しています。
“商談化しないリード”を減らす|リード獲得とナーチャリングの最適連携ガイド
1.1 IT企業が注目すべき「需要創出」
デマンドジェネレーションを「単なる案件創出」ではなく「案件化に至るまでの戦略」として実務で活用する企業が増えている。
特に、IT業界では、顧客の検討プロセスが他業界に比べて長期化・複雑化しやすい傾向がある。
その背景には、導入対象が業務フロー全体に関わる基幹システムやSaaSなどである場合が多く、社内の複数部門が関与する稟議・選定プロセスが必要になるためだ。
また「そもそも課題に気づいていない」「ツールの違いがわかりづらい」「ROIを数値で示す必要がある」といったIT商材特有の難しさも存在する。
こうした特徴を踏まえ、顧客フェーズに応じて提供すべきコンテンツの役割も明確に分かれる。
たとえば、課題認知前には“気づき”を与える啓発コンテンツ、検討段階では比較・導入ステップの解説、意思決定段階ではROIの提示や稟議支援といったように、IT業界のデマンドジェネレーションでは、こうしたプロセス全体を見据えた「フェーズ別コンテンツ設計」が欠かせない。
2.デマンドジェネレーションの3つのメリット
デマンドジェネレーションに取り組むおもなメリットは以下のとおりだ。
- 売上・収益の増加
- 営業効率の向上
- マーケティングROIの向上
それぞれ詳しくみていこう。
メリット①:売上・収益の増加
チャネルを見極めてリードを獲得し、適切なアプローチ(ナーチャリング)を行うことで、案件化率や受注率が高まり、新規顧客の増加による売上の拡大につながる。
さらに、デマンドジェネレーションには、既存顧客のアップセルやクロスセルとしての案件を創出することも含まれる。
新規顧客獲得よりも低いコストで収益を向上させられるだろう。
メリット②:営業効率の向上
適切なリード育成とスコアリングにより、営業部門は質の高いリードへのアプローチに集中できる。
その結果、営業効率が高まり、無駄なリソースやコストを抑えることが可能だ。
メリット③:マーケティングROIの向上
最適なデマンドジェネレーションが確立されれば、コスト削減と成果(売上)の向上により、マーケティングROI(投資対効果)が向上する。
それぞれにつながる要因は以下のとおりだ。
- コスト削減の要因
- 効果がないorマッチ度が低いリード獲得チャネルへの投資削減
- 獲得リードのターゲットの絞り込み
- 購買意欲のないリードにかけるリソースの削減
- 成果向上の要因
- 適切なリード獲得チャネルの選定やターゲティングによるリードの質向上
- ナーチャリングによる購買意欲の醸成・受注率の向上
- パーソナライズドアプローチによる満足度やLTVの向上
- 休眠顧客や休眠リードの掘り起こし
もちろん、コスト削減と成果の向上を実現するためには、適切な手順と戦略でデマンドジェネレーションに取り組む必要がある。
また、SaaSをはじめとするデジタルマーケティングの比重が高い業界では「ROI」よりも「ROMI(Return on Marketing Investment)」というマーケティング活動単体の費用対効果指標が重視されるケースも増えている。
特に、広告費や制作費などのマーケティング投資に対して、どれだけ商談やLTV(顧客生涯価値)の向上につながったかを評価する視点が求められており、デマンドジェネレーションの設計がROMIの改善に直結する。
これらのノウハウに関しては後段で解説しているため、ぜひ読み進めてほしい。
3.デマンドジェネレーションの重要性
BtoBマーケティングでデマンドジェネレーションが重要視されている背景として、以下の4つが挙げられる。
- 購買プロセスの変化
- 長期的なセールスサイクル
- 市場競争の激化
- 技術の進歩
それぞれみていこう。
3.1.購買プロセスの変化
今日の顧客は、購入を決定する前にオンラインで積極的な情報収集を行う。
BtoB購買プロセスでも、自社の営業と対話する前に、Google検索やSNS、YouTubeなどを通じて必要な技術情報や比較記事を主体的に調べる傾向が強まっている。
実際、GartnerやGoogleの調査では「BtoB購買の70%は営業と会話を始める前に意思決定の大部分が終わっている」とも言われており、顧客主導型の情報収集フェーズが長期化する傾向が顕著になっている。
そのため、ネット上にあふれる情報のなかから、自社製品やサービスの価値を効果的に伝えることが、企業にとって重要な課題となっている。
3.2.長期的なセールスサイクル
BtoBの取引は認知から受注までのセールスサイクルが長く、さまざまなステークホルダーの意思決定が関与する。
特にIT製品の導入においては、営業部門・情シス・セキュリティ部門・経営層など複数部門の合意が必要になるため、検討期間は数か月〜1年に及ぶ場合もある。
その背景には、製品仕様の複雑さやAPI連携要件、セキュリティポリシーとの整合性といったIT業界特有の判断項目がある。
単に価格や機能で比較するのではなく、社内システムとの相性や運用リスクまでを見据えた精緻な検討プロセスが求められているのだ。
こうしたフェーズで、自社サービスの技術的優位性や運用性を事例・ホワイトペーパー・技術解説記事・セミナー動画などを通じて伝えられるかが、最終的な選定に大きく影響する。
商談になる前の段階から、少しずつ相手との関係を築きながら「このサービスなら安心して導入できそうだ」と思ってもらうことが重要だ。
3.3.市場競争の激化
各市場には類似サービスが数多く存在し、競争が激化しているため、自社独自の価値を訴求し、差別化を図る必要がある。
その中で選ばれるには「この会社は他とちょっと違う」と思ってもらうことが大切だ。
自社を認知し、顧客になるまでの期間においても、リードはあらゆる企業から提案を受け、比較検討する。
そのため、製品を売り込む前の段階で、「役に立つ情報をくれる会社だな」と信頼されることがポイントだ。
たとえば「最近こういう課題が増えていますよ」「他社はこんな対策を始めています」など、業界の動きや課題に気づかせるような情報提供が効果的だ。
こうして信頼を積み重ねていけば「選択肢の一つ」ではなく「この会社に相談したい」と思ってもらえる可能性が高まる。
3.4.技術の進歩
技術の進歩により、マーケティングに活用できるMAやDMPなど、高度な機能を備えたツールが普及し、少人数でも高度なパーソナライズドマーケティングを実践できる環境が整ってきた。
さらに近年では、AIを活用してユーザーごとに最適なメール配信タイミングやクリエイティブ(例:画像・CTA・コピー)を自動生成する機能も登場しており、企業規模に関係なく実践できる時代になっている。
データドリブンやAIの活用といった高度なパーソナライズドマーケティングを施す企業も増えている。
このように、ツールの進歩によって競合との情報発信力の差が縮まっている今、むしろ「どんな問いにどの順番で応えるか」というストーリー設計そのものが差別化要因となっている。
自社の強みを明確に打ち出し、タイミングよく顧客の比較・検討プロセスに入り込むための基盤として、デマンドジェネレーションはさらに重要になっている。
これらを踏まえて、デマンドジェネレーションに取り組んだ場合と取り組まなかった場合の違いを下図に表した。
取り組むメリットや、取り組まない場合のリスクを整理し、周囲の理解を得るために活用してほしい。
評価軸 |
取り組んだ場合 |
取り組まなかった場合 |
リードの質 |
適切なチャネル選定とナーチャリングにより、購買意欲の高いリード(MQL)を安定的に獲得できる |
リード獲得基準が曖昧なままで、営業につなげにくい低品質リードが増える |
営業効率 |
営業チームが確度の高いリードに集中でき、商談化率・受注率が向上する |
どの見込み客に力を入れるべきか判断しにくく、時間と労力がムダになりやすい |
顧客理解 |
ナーチャリングによって顧客の課題・関心・導入検討フェーズを把握できる |
顧客が何に困っていて、どの段階にいるのかがわからず、うまく提案できない |
収益性(LTV) |
継続的な契約・アップセルによりLTVが向上する |
初回受注後の継続率が低く、売上が単発で終わりやすい |
ブランド認知・信頼性 |
コンテンツ提供・セミナー・動画などの継続的発信により、業界内での想起・信頼性が向上する |
接点が少なく、ブランドの認知・差別化が進まない。価格競争に巻き込まれやすくなる |
顧客満足・継続性 |
教育コンテンツや自動フォローにより、導入後も継続的な関係構築が可能になり、解約率低下に寄与する |
サポート開始後も「点の接点」にとどまり、顧客満足度やロイヤルティが上がらない |
マーケティングと営業の連携 |
MQLからSQLへの移行が明確になり、マーケティング部門と営業部門の連携がスムーズになる |
リード情報の引き継ぎが属人化し、部門間で連携不全や責任の所在不明が発生する |
競争優位性 |
お客様の課題の気づきから導入サポートまで一貫して対応できる体制が整い、市場での競合優位性を築ける |
製品の値段や機能だけで比較されやすく、強みが伝わりにくい状態が続く |
4.デマンドジェネレーションの3要素
デマンドジェネレーションは「リードジェネレーション」「リードナーチャリング」「リードクオリフィケーション」の3つに分けられ、それぞれでリードの状況や購買意欲、施策の内容が異なる。
効果的なデマンドジェネレーションを実現するためにも、各要素の詳細を押さえておこう。
4.1.リードジェネレーション
リードジェネレーションは、見込み客を獲得するプロセスだ。
具体的には、将来顧客となる見込みがある企業の情報(リード情報)を獲得することを指す。
リードジェネレーションの代表的な手段は以下のとおりだ。
- Web広告
- Web広告+ホワイトペーパー・ウェビナー
- オウンドメディア(SEO)
- リード保証型広告(リードジェネレーションサービス)
- テレビ広告・雑誌広告
例えば、Web広告を出稿し、クリックしたユーザーに対してランディングページで自社サービスについての訴求を行い、興味関心を促して問い合わせにつなげる方法がある。
しかし実際には、自社をまったく知らないユーザーが広告を一度クリックしただけで問い合わせまで誘導できることはほとんどない。
そこで、問い合わせというコンバージョンのハードルを下げて「資料請求」や「詳細を見る」としたり、自社サービスの紹介ではなくノウハウ提供のホワイトペーパーダウンロードにつなげたりと試行錯誤しながら、質の高いリード情報をいかに多く獲得できるかの戦略を立てていく。
戦略の種類や具体的な進め方は以下の記事で詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてほしい。
リードジェネレーションとは?手法の選び方と課題対策・成果の測定方法を紹介
4.2.リードナーチャリング
リードナーチャリングは、獲得したリードに対してメールやWebページ、電話などを通じた情報提供やアプローチを繰り返し、購買意欲を高めていくプロセスだ。
適切なタイミングでリードが求める情報やコンテンツを提供することで、興味関心を高め、自社に対する信頼を醸成していく必要がある。
具体的な手段としては、以下が挙げられる。
- MAツールを用いたステップメールの配信
- テレマーケティング
- ホワイトペーパーなどの有益コンテンツの提供
それぞれの悩みや課題に合わせて、いかに適切なタイミングで情報を提供できるかが重要となる。
ここでリードをしっかりと育成しておくことで、営業活動の効率化や受注率の向上につながるだろう。
リードナーチャリングについて詳しくは以下の記事で解説しているため、参考にしてほしい。
リードナーチャリングとは?意味や手法・ツール・施策の手順を事例付きで紹介|成果につながるメール活用も解説
4.3.リードクオリフィケーション
リードクオリフィケーションは、リードの購買意欲やサービスとの親和性を評価し、営業部門に引き渡す対象となり得るかを判断するプロセスだ。
BANT情報(予算、権限、ニーズ、タイミング)や購買意思の明確さを確認し、営業部門に引き渡すかどうかを判断する。
また、自身での情報収集によって、すでに高い購買意欲があるリードは、ナーチャリングを経ずに営業活動の対象となることもあるだろう。
リードクオリフィケーションでは、営業部門へと引き渡すリードの基準決めが重要だ。
マーケティング部門が考える「確度の高いリード」と、営業部門が考える「確度の高いリード」には齟齬が生まれやすい。
全社的に連携して営業対象となるリードを見定め、成果を最大化できるように取り組む必要がある。
5. デマンドジェネレーションのプロセス
かつては、リスティング広告や比較サイトからの問い合わせをきっかけにスタートするBtoB案件が一般的だった。
しかし現在は、情報の探し方や接点が多様化し、Google検索だけでなく、SNSやYouTube、業界メディア、ショート動画、フィード型広告など、さまざまな場面で情報収集が行われている。
こうした時代の変化に合わせ、企業側も「どうやって見込み客と出会い、覚えてもらい、選んでもらうか」を考え直す必要がある。
この章では、ユーザーの行動フェーズに沿って、5つの視点から具体的な取り組み方を紹介する。
① 知ってもらう ―「検索以前」に存在感を持つ
お客様は、何かに困って検索する前から、YouTubeやSNS、業界ニュースなどで日常的に情報を見ている。
その中で「なんとなく気になる」「よく見る会社だな」と感じてもらえるよう、検索前のタイミングで目に入る情報設計が必要だ。
広告だけでなく、イベントや業界メディアへの露出などを通じて、“偶然目にする接点”を増やしていこう。
施策例:
- Web広告(検索連動型・ディスプレイ広告)
- Discover・Gmail・YouTubeなどのフィード型広告
- SNS運用・バナー施策・オウンドメディア記事
- 展示会出展・カンファレンス登壇
- 業界メディアでの寄稿・インタビュー露出
② 覚えてもらう ― 情報が「残る設計」をする
ユーザーは、一度触れた情報の大半をすぐに忘れてしまう。そこで「あとから見返せる」「何度も目に入る」ような仕組みが必要だ。
保存できる資料、定期的に届くメール、シリーズで読みたくなるブログなどを通じて、思い出してもらえる導線を整えよう。
施策例:
- ホワイトペーパー・eBookの提供
- ステップメール・メルマガによる再接触
- 継続的なブログ更新(導入事例やノウハウ記事など)・シリーズコンテンツの設計
- ITmediaやマーケメディアなどへの資料掲載
③ 欲しいと思ってもらう ― 判断材料を正しく用意する
比較検討を進めるユーザーは、仕様や料金といった「数字情報」だけでなく、同業他社の導入事例や活用マップ、動画での説明など、“自分たちの会社での使い方のイメージ”を持てる情報を求めている。
事例や業界別資料などを活用して「これは自分たちのための提案だ」と思ってもらえるような内容を届けよう。
必要に応じてアカウントベースドマーケティング(ABM)を活用することで、受注可能性の高い企業に対する個別最適化も有効だ。
施策例:
- ターゲット企業・業界別の専用LPや提案資料の作成
- 導入支援動画やユースケース紹介
- MAやSFAと連携したスコアリングおよび営業連携
- 個社別に最適化したホワイトペーパー・導入支援動画
- 招待型の個別ウェビナー、ABM施策
ABMとは?基礎知識、ターゲティングの方法、実践プロセスを徹底解説
④ 必要なときに声をかけてもらう ― 継続的な接点を維持する
BtoBでは検討タイミングが企業ごとに異なるため「今すぐではないが、将来的に検討したい」と考えているユーザーとの接点をいかに継続できるかが成果を左右する。
一度接触しただけで終わるのではなく、継続的に情報を届け、適切なタイミングで想起してもらえる仕掛けを整えることが重要だ。
施策例:
- ステップメールや定期メルマガの設計・配信
- 展示会やセミナー参加者へのフォローシナリオ
- 定期更新のブログやトレンドレポートの共有
- ウェビナー録画コンテンツの再利用と再案内
⑤ 選んでもらう ― 最後の決定要因「信頼」を獲得する
ユーザーが最終的に導入を決定する瞬間は、スペックではなく“信頼”が決め手になる場合が多い。 BtoBビジネスでも感情による後押しがあるとの文献もでている。
以下の図は「購買への関与」と「財(商品)に対する知識水準・評価能力」の違いにより、ユーザーがどのように情報を処理するかを示している。
参考:BtoBマーケティング DX時代の成長シナリオ
- 知識水準が高く、購買関与も高いユーザーは認知的処理を行い、事実に基づいた比較情報・精度の高いコンテンツを重視する。
- 知識や関与が低いユーザーには、感情的処理が優位になるため、他者の声や使ってみた印象などの「共感ベースの情報」が効果的だ。
このように、ターゲットごとの情報処理傾向を意識したコンテンツ設計が「最後のひと押し」になる。
施策例:
- 導入事例の動画化・インタビュー記事化
- 比較サイト(ボクシル、ITトレンド、ITreview)での評価強化
- 業界別、課題別の活用レポート制作
- ユーザー会・パートナー企業との共同イベント開催
・「知ってもらう」から「選ばれるまで」を設計する時代へ
顧客行動の変化により、これまでのリード獲得中心のアプローチでは成果につながりにくくなっている。
企業は、ユーザーが「知らない」段階から「比較する」「選ぶ」に至るまでのあらゆるフェーズを見据えて、計画的かつ一貫した取り組みの設計が求められる。
検索前の段階から情報を届ける工夫、覚えてもらう仕掛け、比較材料の整備、欲しくなる体験の提供、そして信頼の醸成まで──この一連の流れを構築することが、IT企業・SaaS企業にとっての本質的なデマンドジェネレーションであり、今後の成長に不可欠な取り組みだ。
もう悩まない!IT企業のためのマーケティングチャネル設計・最適化マニュアル|特徴一覧から選び方まで完全解説
6.デマンドジェネレーションの効果測定と改善
デマンドジェネレーションの成功には、効果的な測定と継続的な最適化が不可欠だ。
ここでは、デマンドジェネレーションの効果を正確に把握し、戦略を改善していくための方法を詳しく解説する。
6.1.KPIを設定する
デマンドジェネレーションの効果を測定するためには、まず明確なKPI(重要業績評価指標)を設定することが重要だ。
代表的なKPIとしては、リード獲得数、コンバージョン率、顧客獲得コストなどが挙げられる。
KPI | 説明 | |
リードジェネレーション | 新規リード(CV)数 | 一定期間内に獲得した新規リードの総数 |
リード獲得単価(CPL) | 新規リードを獲得するためにかかったコスト | |
コンバージョン率 | フォームの送信数 /フォーム表示数 | |
リードナーチャリング | メール開封率 | 送信したメールのうち開封されたメールの割合 |
メールクリック率(CTR) | 送信したメール内のリンクがクリックされた割合 | |
リードエンゲージメントスコア | リードの行動に基づくエンゲージメントの測定値(サイト訪問数、資料ダウンロード数など) | |
リードクオリフィケーション | MQL数 | マーケティング部門が認定した高品質なリードの数 |
商談化率 | MQLからSQLに進化したリードの割合 | |
商談受注率 | SQLから実際に商談が成立したリードの割合 |
マーケティング部門だけではなく、営業部門とも連携してKPIを設定することで、より実情を反映し、最適化につなげられるだろう。
6.2.データ分析ツールの導入・整備
効果的なデマンドジェネレーションには、適切なデータ分析ツールの導入と整備が不可欠だ。
具体的には、Google Analyticsなどのウェブ解析ツール、CRM(顧客関係管理)ツール、MA(マーケティングオートメーション)、SFA(営業支援ツール)が挙げられる。
ツール導入によって、ウェブサイトの行動データ、リードの属性情報、キャンペーンの成果などを一元的に管理し、マーケティングから営業、そして受注・顧客化までのプロセス全体を可視化・最適化できる。
以下の図は、MA・SFA・CRMがどの段階でどう機能し、見込み顧客の創出から受注に至るまでのプロセスをどのように支援するかを表したものである。
データ分析ツールの導入により、ウェブサイトの行動データ、リードの属性情報、キャンペーンの成果などを一元的に管理し、カスタマージャーニー全体を把握できる。
ツール活用の体制が整っていない場合は、ベンダーとの打ち合わせを重ね、社員教育やマニュアルなども整備していこう。
6.3.定量・定性データの収集、分析
デマンドジェネレーションの効果を総合的に評価するためには、設定したKPIだけではなく定性データも収集し、分析することが必要だ。
定性データとしては、顧客のフィードバック、サポートチームやセールスチームからのフィードバックが挙げられる。
6.4.A/Bテスト
デマンドジェネレーションの施策を最適化するには、A/Bテストが有効だ。
A/Bテストとは、2つの異なるバージョンを用意し、どちらが高い成果を上げるかを比較する手法を指す。
例えば、ランディングページのデザインや広告の文言などをA/Bテストすることで、より効果的なコピーを特定し、トラフィックやコンバージョン率の改善につなげられる。
A/Bテストを実施する際は、統計的に有意な結果を得るために十分なデータを確保することが重要だ。
また、一度に多くの要素を変更するのではなく、一つずつ変更して効果を測定すると、より正確な結果を得られる。
6.5.ROIを測定し、キャンペーンの効果と改善策を洗い出す
デマンドジェネレーションのROIを正確に測定し、費用に対してどれほどの成果が出ているのかを確認して改善していこう。
たとえば、以下のような改善策が考えられる。
- ランディングページへの流入は十分得られているものの、コンバージョン率が低い
→ランディングページやフォームの最適化を行う - リードの数は増加したものの、受注につながらない
→リードクオリフィケーションの基準を見直す、ナーチャリングのパーソナライズ性を高める - ディスプレイ広告よりリスティング広告のパフォーマンスが良い
→リスティング広告への投資を増やす
デマンドジェネレーションが適切に行われているかを見極めるには、セールスからのフィードバックや実際のリード→顧客へのコンバージョン率の追跡が不可欠だ。
それぞれの部門が連携し、定期的なミーティングを開催することで、マーケティングやセールス全体のリソース配分を最適化し、ROIを高めていこう。
7.まとめ
本記事では、デマンドジェネレーションの概要から具体的な手法、注意点、効果測定の方法までを包括的に解説した。
デマンドジェネレーションを成功させるためには、認知拡大やリード獲得のための広告の活用、有益なコンテンツの制作と提供、ターゲットに合わせたアプローチ、社内外の連携が重要だ。
あわせて、適切なKPIの設定や、パフォーマンスの改善にも継続的に取り組んでいこう。