ストーリーブランディングは、企業自体、または製品やサービスの価値について、ストーリーを展開し顧客の感情に訴えて伝える手法だ。
市場が成熟し競争が激化する現代において、サービスの機能や満足度以外の付加価値を感じさせ、競合との差別化につなげられる。
とはいっても意思決定が合理的になされるBtoBでは、
「ストーリーブランディングの効果がわかりにくい」
「どの程度コストやリソースを割り当てれば良いのか」
「ストーリーブランディングの構築の仕方がわからない」
という声も多い。
そこで本記事ではBtoBでのストーリーブランディングの意味やメリット、効果を生むブランドストーリー作成の具体的な進め方を紹介する。
1.ストーリーブランディングとは?
まずはストーリーブランディングの意味と役割、どのような効果が期待できるのかを解説する。
1.1.ストーリーブランディングの定義
ストーリーブランディングとは企業や製品・サービスを取り巻くストーリーを発信して、ターゲット顧客の感情に訴えかけ、共感の獲得やブランドイメージの向上をめざすブランディング手法だ。
企業理念やミッション、製品・サービスの特徴をただ単に列挙させるだけでなく、そこに至った背景や想い、目指している世界観を言語化・視覚化しながら強いメッセージを発信するものである。
1.2.ストーリーブランディングの役割
ストーリーブランディングの役割は、ひとことでいうと顧客との関係構築だ。
製品自体の機能や営業活動以外の部分でストーリーを展開して、顧客との接点をもう一つ増やし、より深く知ってもらうイメージだ。
例えば、創業時の状況や創業者の想い、製品開発のきっかけ、開発当時のエピソードなど、実在する身近なエピソードをストーリー化して、ブランドに対する認知を超えた興味や愛着を導き出す。
さらに、まだ顕在化していない潜在顧客に対してもブランドの世界観を植え付け、記憶へ定着させる役割も持つ。
1.3.情緒的価値に影響を与えるストーリーブランディング
ブランディングが顧客へ提供する価値は「機能的価値」、「情緒的価値」、「自己表現価値」、「社会的価値」の4つといわれる。
このうちストーリーブランディングは「情緒的価値」に訴えかける部分が大きい。
情緒的価値とは製品やサービスが提供する感情的・感覚的な効用だ。
性能や価格とはまた別の、感情を刺激する充実度や満足感を価値基準としている。
情緒的価値が高まれば、親近感や愛着が高まりファン化につながりやすくなる。
実際にストーリーブランディングで顧客の感情へ効果的に訴えかけ、情緒的価値の向上に成功している企業が存在する。
例を挙げれば「第3の場所(サードプレース)」をコンセプトとしているコーヒーチェーンといえばのスターバックス、「実用的でシンプルな服を手頃な価格で提供するアパレルブランド」といえばのユニクロなどが挙げられる。
そして、これらのブランドを購入した「私(自分)」が、満足感や幸福感を得られる姿が容易に想像できるのではないだろうか。
これらの内容を含めると、ストーリーブランディングはBtoCビジネスで取り組まれるものというイメージが大きいかもしれない。
しかし、BtoBでのブランディングにおいても、ストーリーブランディングは重要性が高まっている。
次章以降で具体的なメリットや成功事例を詳しく紹介していこう。
2.BtoBにおけるストーリーブランディングのメリット
「組織」で合理的な意思決定が行われるBtoBにおいても、性能や価格による機能的価値だけでなく、感情に訴える情緒的価値は意思決定に影響を与える。
よって、ストーリーブランディングは有効に働くといえる。
では、BtoBビジネスにおいてストーリーブランディングにはどのようなメリットが期待できるのだろうか。以下で詳しく見ていこう。
メリット1.情緒的価値による差別化
競合企業間の製品・サービス開発が激化している昨今では、性能や価格といった「機能的価値」のみを重視して、他社との差別化を図ることは難しい。
そこでサービスや企業のコンセプト、売り手の想い、ブランドを取り巻く背景や開発プロセスなど、自社にしか伝えられない唯一無二のストーリーの発信を行うことで、競合他社との差別化につなげられる。
感情を揺さぶるストーリーは情緒的価値の向上につながり、顧客に対しほかとは違う印象を抱かせられる可能性が高まるからだ。
この裏付けとして、米Googleが運営する「Think with Google」に掲載されたアンケートを紹介しよう。
この調査ではBtoBビジネスにおける購買担当者の約50%が、情緒的結びつきのあるブランドを選ぶと回答している。
単に機能や価格だけではない感情的な要因が購買行動に強く作用することがこの結果からも理解できるだろう。
※参考URL:https://www.thinkwithgoogle.com/consumer-insights/consumer-trends/promotion-emotion-b2b/
メリット2.複雑な製品・サービス価値の明瞭化
ストーリーブランディングは、顧客に対し提供する製品やサービスの価値をわかりやすく伝えるのに役立つ。
BtoB企業が提供する製品やサービスは、専門的かつ複雑な機能が多く、顧客の印象に残すことは難しい。
ここでストーリーブランディングにより顧客の課題解決プロセスをストーリーで展開すれば、課題の顕在化から解決方法まで、製品やサービスを購入・契約したあとに実現する未来をわかりやすくイメージさせられる。
その結果、買い手の購買意思決定の促進につながるのだ。
メリット3.認知度の向上によるマインド・シェア獲得
ストーリーブランディングはマーケットに認知されるだけでなく、人々の記憶に長期的に維持される状態をめざす。
顧客の内面に強い印象を残せて、市場の中でも競合企業とは異なる明確な地位を築き、マインド・シェアを獲得できる。
BtoBの例でいうと「オンライン会議ツールといえば、◯◯」「名刺管理ツールといえば、◯◯」というように、機能的価値を詳細に把握しなくても「なんとなく」のイメージ先行で候補として含められる場合も珍しくない。
購買担当者のマインド・シェアの上位に存在しなければ、そもそも選考の土俵に上がれないこともしばしばある。
情緒的な部分や記憶・イメージに定着し、マインド・シェアを高めることにもストーリーブランディングは大きく貢献する。
メリット4.ロイヤルカスタマーの育成と収益の安定化
たとえ認知度が高まっても、ブランドに対するロイヤルティが向上しなければ、長期的な成果にはつながらない。
感情面も含めてブランドストーリーに共感してくれた顧客は、企業やブランドのファンとなり、ロイヤルカスタマーとしてリピートし、収益力の向上へと貢献してくれるだろう。
メリット5.リブランディングによる価値の再設計
ブランディングが必要なのは、スタートアップやベンチャー企業に限らない。
歴史が深く一時低迷していた企業でも、リブランディングにより復活を遂げた事例は少なくない。
リブランディングにより再成長を遂げている企業の好例が、1914年に創業した星野リゾートだ。
4代目社長に就任した星野佳路氏が主導した改革により、一時低迷した同社は見事に生まれ変わり、地方の温泉旅館から日本を代表するリゾート企業へ発展している。
すでに競合他社と比べて劣後したイメージが定着してしまったり、時代遅れのイメージがついてしまったりしていれば、リブランディングが有効だ。
リブランディングの際にもっとも重視されるのがストーリーブランディングだろう。
事業の原点に立ち返ってさまざまな角度からオリジナルのストーリーを仕上げられれば、顧客の心をつかむチャンスが生まれる。
3.BtoBにおけるストーリーブランディングの例
では、BtoBのストーリーブランディングにおいて、実際にどのような手法が効果的なのか、具体例を紹介しよう。
以下の要素を盛り込めば、企業のパーソナリティーや強みが伝わる、人々の感情に訴えるストーリー作りが実現できるだろう。
3.1.開発秘話
製品やサービスがどのように生まれ、進化してきたかを共有して、技術力や革新性をアピールする。
開発陣の想いや現場の生の声を含めると、人間味にあふれた共感しやすいストーリーにつながる。
3.2.経営陣との対談
経営陣が企業のビジョンや戦略を語って、信頼感や親近感を醸成する。
リーダーシップの哲学や未来への展望を伝える場面は、顧客だけでなく自社の従業員やパートナー企業、投資者などの利害関係者にとっても重要だ。
3.3.顧客事例
顧客の成功ストーリーを紹介して、実績や信頼性を強調できる。
実在する顧客の顔が見え、顧客が具体的な成果を語ることは、ほかの顧客からの共感や興味を引き出すことにつながる。
3.4.企業の歴史と文化
創業者の人となりや創業の背景、企業が大切にしている価値観を伝えると、ブランドの深みと独自性を強調できる。
企業の成功事例だけでなく、挫折や失敗例もあからさまにすると、より親近感が湧くストーリーとなるだろう。
3.5.パートナーシップの物語
他社との協業や成功事例を共有すれば、業界内での信頼性やネットワークの強さを示せる。
パートナーからの評価や生の声を引き出せれば、より説得力が増すだろう。
4.ストーリーブランディングの成功事例
本章ではBtoBビジネスを展開しながらストーリーブランディングに力を入れている企業を紹介する。
いずれも業界において高いマインド・シェアを獲得している企業であり、ストーリーブランディングのベンチマークになり得る企業といえるだろう。
成功事例1.セールスフォース(Salesforce)
セールスフォース(Salesforce)は、世界最大級のクラウド型CRM(Customer Relationship Management)の提供企業だ。
CRMといえば「セールスフォース」と真っ先にイメージできるポジションを確立する同社は「人とのつながりが、すべてを変える」をブランディングメッセージとして掲げている。
AI時代の本格的な到来を見据えて、単なるシステムの提供に留まらず、顧客の成功を支援する「カスタマーサクセス」や「コミュニティの力」を強調し、社会貢献やテクノロジーの未来に対するビジョンを中心にブランディングを行っている。
成功事例2.サイボウズ
サイボウズは1997年に設立された日本に拠点を置くソフトウェア企業である。
「kintone(キントーン)」や「サイボウズOffice」に代表される、主に法人向けのグループウェアやコラボレーションツールを提供している。
サイボウズの特徴は、先進的な企業文化や働き方が常に注目を集めている点だ。「チームワークあふれる社会を創る」をパーパス(存在意義)として掲げ、チームワークの促進、多様な働き方の支援、透明性と共感を重視する企業文化を推進している。
同社の製品やサービスは、単なる業務効率化ツールを超えて、働く人々の幸せを追求するための手段として位置づけられ、それをもとにブランディングが展開されている。
成功事例3.フリー(freee)
フリー(freee)は2012年に設立されたフィンテック企業で、おもに法人向けのバックオフィス業務クラウドサービスを提供している。
「スモールビジネスを、世界の主役に。」というコーポレートミッションのもと、クラウド型会計ソフトの開発からスタートした同社は、会計の枠を超えスモールビジネスの可能性を拡大する基幹システム開発事業を展開している。
同社は独自にブランドサイトを立ち上げその取り組みを発信するなど、日本を代表するブランディング先進企業の一つだ。
5.ストーリーテリングの実践ステップ
ここからはいよいよ実践に進もう。
ストーリーブランディングでは「ストーリーテリング」の手法を活用してストーリー作りを進めていく。
相手に対して何らかのメッセージを伝達する際に「物語」を用いて感情的なつながりをもたらす手法がストーリーテリングだ。
以下の8つのステップに従って進めていこう。
ステップ1.ブランド提供価値を明確にする
はじめに、サービスやブランドによって顧客が何を得られ、どうなれるのかという「ブランド提供価値」を明確にしよう。
これがブランドのアイデンティティーとなり、ストーリーテリングの根幹となるからだ。
「企業のビジョンは何なのか?」「社会に提供する価値は何なのか?」「自社のブランドを利用してどのような世界観を実現できるのか?」というように、ブランドに対して「なぜ?」を問いかけて深く掘り下げることがポイントだ。
ここで注意すべき点がある。
ブランド提供価値は自社のブランドが持つ事実や特徴に裏付けられていることが大前提だ。
事実に基づいて築き上げられたストーリーが顧客と信頼関係を築く土台となる。
ストーリー展開の工夫は必要だが、決して誇張しすぎないように気をつけよう。
そして、ブランドの事実や特徴を洗い出すために役立つのが、フレームワークの活用である。
以下は客観的かつ網羅的に自社や外部環境を分析できるおすすめのフレームワークだ。
ブランド提供価値の分析におすすめのフレームワーク
- 3C分析
- SWOT分析
- PEST分析
- バリュープロポジションキャンバス
また、ブランディングでのフレームワーク活用法については、以下の記事で詳しく解説しているため、参考にしてほしい。
ステップ2.ブランドターゲットを理解し、明確にする
ターゲットの明確化によって、ストーリーの作成をスムーズに進め、その効果を高められる。
ここで定めたターゲットが「共感する」「価値を感じる」ようなストーリーを作成するという土台が固まるためだ。
ブランディングにおけるターゲットは、年齢、性別、地域などの属性情報だけではなく、価値観や興味関心、行動パターンなどを掘り下げて設定する。
具体的にはターゲットの購買行動とニーズの2つの軸で考えると良いだろう。
どのようなニーズを持ち、どのような行動をとっているかによって、ターゲットがそのストーリーやブランドに触れるタイミングや求める情報が異なるためだ。
ターゲット設定は「ブランディング戦略」全体においても行うため重なる部分も大きい。しかし、ストーリーを作成する前にもう一度、ターゲット設定を明確化すれば、ストーリーにおける言葉選びや雰囲気、価値観の演出をより訴求力の高いものにできる。
ターゲット設定については、以下の記事も参考にしてほしい。
ステップ3.コアストーリーを作成する
ストーリー全体を貫くテーマを決め、ブランドの価値観を表現するコアストーリーの筋書きを作成しよう。
テーマ設定は、第3章で紹介した具体例を参考にしてほしい。
さまざまな登場人物の人間味や情熱があふれる具体的なエピソードを盛り込み、コアストーリーに感情を吹き込もう。それがメッセージの受け手の共感を生む源泉となる。
ここで、コアストーリー作成の際のポイントを2つ紹介しよう。
ポイント①:価値の連想を意識する
1つめは、ターゲットがより多くの価値を連想するようなコアストーリーに仕上げることだ。
なぜなら、価値の連想をネットワーク化できれば、マーケットにより深い認知を拡げられるからだ。
例えば、Appleを思い浮かべたときに、「シンプル」「デザイン」「スタイリッシュ」「革新的」「オシャレ」「カッコイイ」「わかりやすい」など、さまざまなブランド価値を連想できるのではないだろうか。
ストーリーテリングによって想像する価値が連鎖すれば、ブランドの深い浸透に拍車をかける。
ポイント②:ターゲットが読むことを常に意識する
2つめは、「ターゲットが読んでいる」と常に意識することだ。
ターゲットが直面する問題や困難を提示し、ブランドがどのように解決へ導くかを「読み手目線」で描いていく。
読み手自身がブランドを体感する姿や自己実現を達成する姿をより明確にイメージでき、行動を起こす後押しとなるコアストーリーになるまで、何度もブラッシュアップしていこう。
ステップ4.ブランドの独自性を強調する
ストーリーテリングでは、他社にはないユニークな視点や背景を採り入れて、ブランドを際立たせ、競合との差別化を図る必要がある。
特にBtoBビジネスは、専門性や信頼性が選考時の重要な決定要素となるため、ストーリーにもそれらを盛り込むことを忘れてはならない。
例えば、業界での実績や専門知識、具体的効果について定量的なデータを用いた優位性をストーリーの中に組み込むのが良いだろう。
さらに、既存顧客の成功事例や生の声をストーリーに採り入れれば、より効果的に顧客のイメージを膨らませられる。
経営者や現場の開発担当者など、それぞれの目線で具体的な「想い」を伝えることも独自性の強調につながるだろう。
ステップ5.ブランディングストーリーのチャネルを選定する
ストーリーテリングにおいては、ブランドストーリーを伝える手段(自社ホームページ、SNS、ブログ、動画、パンフレット、イベントなど)もあらかじめ考えておこう。
ブランドターゲットに合わせたチャネル選定が重要だ。
もし可能ならば、ストーリーブランディングはマルチチャネルで展開するほうが効果は増幅する。
ブランドストーリーに対するタッチポイントが増えれば増えるほど、新規顧客の獲得、既存顧客の維持、リセラーとの接触が期待できるためだ。
それだけでなく、ストーリーの魅力をきっかけとして、これまでターゲットとしてこなかった新たな顧客層の開拓につながる可能性も秘めている。
ステップ6:メッセージの一貫性の確認
ブランディング戦略でもっとも重要視されるのはメッセージの一貫性だ。
ストーリーの中身はもちろん、キャッチコピーやビジュアルデザイン、トンマナ(トーン&マナー)といった細部にわたり一貫性を保つ必要がある。
ストーリーテリングでは、ブランドの性格に合わせたメッセージの語り口(フォーマル、カジュアル、親しみやすいなど)を確立して全体に統一感をもたせる。
ストーリーブランディングで一貫性を担保するためには、精緻なブランドガイドラインの作成が有効だ。
実例を挙げれば、クラウド型統合プラットフォームを提供する「フリー(freee)」や人事・労務クラウドシステムを提供する「SmartHR」は、独自のブランドガイドラインを用意し対外的に公表している。
事業が拡大すればするほど関係者は増え、ブランディングの一貫性の維持が難しくなる。そのため、厳格なルールを定めたガイドラインを関係者間で共有しながら、徹底的なルールの遵守が求められるのだ。
ステップ7:エンゲージメントの促進
ストーリーブランディングには顧客に対するエンゲージメントの向上が欠かせない。
高いエンゲージメントを与えられなければ、ブランドに対する愛着や忠誠心を獲得できないからだ。
そこで顧客自身がストーリーテリングの登場人物の一員となるよう、顧客体験のフィードバックをブランドストーリーに取り込むのも一手となる。
具体的にはSNSやイベント、コミュニティを通じて直接的な対話の機会を設け、ストーリーの一部とするのだ。
ストーリーを一度作ったら終わりではない。
顧客とのコミュニケーションを含めて継続的にブラッシュアップしながら、発信し続けることが、顧客とブランドの長期的な関係性構築を可能にする。
ステップ8:継続的な分析と改善
そもそもブランディングは情緒的な部分に訴える場合も多く、施策の定量的な効果測定が難しい。
ストーリーブランディングについても同様だ。
しかしながら、測定が難しいものほど顧客の行動を分析したり、自社独自の指標を設けたりしながら工夫を凝らし、効果測定を行っていきたい。
例えばストーリーをWebサイトの1ページで展開しているのであれば、ページ内のリンクボタンのクリック率や離脱箇所などを読み取れば、顧客が魅力的に感じている部分とそうでない部分が明確になるかもしれない。
ストーリーブランディングにおいても、顧客視点を欠かさず改善を継続すれば、ロイヤルカスタマーの獲得と安定した収益やブランド力の向上につながっていくだろう。
6.ストーリーブランディング成功のポイント
最後に、ストーリーブランディングで押さえておきたいポイントを2つお伝えする。
ポイント①:シンプルかつ明瞭なメッセージ
ストーリーブランディングでは企業側が「伝えたいこと」が多数出てくる場合が予測される。
しかし、シンプルでわかりやすいメッセージを届けることを念頭に置こう。
顧客は自社以外からも、あらゆるチャネルで大量の情報を浴びているため、一目で理解できないメッセージには興味を持ちにくい傾向にあるためだ。
特にBtoBの製品やサービスは、複雑かつ専門的でわかりにくい傾向にあるため、要点を押さえたシンプルでわかりやすい表現方法が重要だ。
この際、普段顧客が使うフレーズの使用をおすすめする。
顧客目線を貫き通すと、コンセプトの正しい理解につながり、より親しみやすく説得力のあるストーリーに仕上がる。
さらに、画像や動画などのビジュアルを用いてブランドストーリーを視覚的に表現するのも有効だ。
視覚に訴えることは、ストーリーがより顧客の記憶に残りやすくなる効果を生み出す。
ポイント②:顧客との共創
顧客の声に耳を傾け、その声をストーリーに組み込むと、より共感力の高いストーリーを作り出せる。
近年では、おもにBtoCにおいてX(旧Twitter)やInstagramなどのSNSを通じたブランディングが勢いを増している。
今後はBtoB分野においても、一方的なメッセージの発信ではなく、顧客と双方向のコミュニケーションを可能にするチャネルの用意が必須となるだろう。
コミュニケーションを通じて、いつも顧客に寄り添いビジネスの成長を支えるパートナーであることを印象付けなければならない。
7.まとめ
ストーリーブランディングは、売上に直結するイメージが湧かず、取り組みを後回しにしている企業も多いかもしれない。
しかし、ストーリーブランディングはどんな会社でも、自社独自の価値を表現でき、顧客との関係性を深められる有効な手段だ。
競合企業との差別化に悩み、価格競争に巻き込まれることをおそれる企業こそ取り組むべきだといえる。
売上や収益への即効性は高いとはいえないため、長期的視点で継続的に取り組むべき施策であるため、リソースが足りない場合は外部の支援も視野に入れつつ取り組んでほしい。