SEO対策において「権威性」はコンテンツの評価の基礎となる要素だ。
権威性が高ければ、コンテンツの評価は高まりやすい。
しかし実際は、権威性だけを意図的に、そして短期的に向上させることは難しい。
権威性を育てるには「さまざまな工夫の積み重ね」そして「時間」も必要なためだ。
SEO担当者は、これを理解したうえで権威性の向上を常に意識し「コンテンツが評価されやすい状態」を作っていきたい。
そこで本記事では権威性の具体的な内容、メリット、高め方について、Googleの公式見解も踏まえて徹底的に掘り下げていく。
1.SEOにおける権威性とは?一般的な「権威」との違い
まず一般論としての「権威」と、SEOで使われる「権威性」の違いについて理解しておこう。
1.1.一般論としての「権威」
一般論としての「権威」とは、以下2つの意味を持つ。
- ある分野において高い評価を得ており、優秀だと認められていること
- 実績や能力をバックボーンとした「他者を従わせる力」
我々は「権威」と呼ばれる専門家の言うことを信じる傾向にある。
そして、権威に対して少なからず「正解」のイメージを持っているだろう。
つまり、権威とは第三者に対して「正解」や「信頼」を想起させるための土台だといえる。
1.2.SEOでの「権威性」は「承認をどれだけ獲得しているか」
SEO対策における「権威性」の意味合いは、一般的な権威とやや異なる。
SEO対策での権威性とは「他者からの信頼や承認を獲得していること」だ。
「社会的な承認の度合い」とも言い換えられるだろう。
さらに具体的にいうと「権威性=自社サイトやコンテンツが第三者からどれだけ評価、承認されているか」を表す。
また、権威性は閲覧するユーザーが評価するものではなく、検索エンジンが評価するという側面を持つ。
したがって、マーケターが意識すべき権威性とは「外部からの評価、承認をどれだけ受けているか」を「いかに検索エンジンへ伝えるか」という点なのだ。
2.SEO対策における「権威性の正体」
SEOにおける権威性の正体をもう少し突き詰めてみよう。
現代のSEO対策における権威性は、以下2つの事柄で構成される。
- E-E-A-Tの「A(Authoritativeness)」
- 「サイトオーソリティ(SiteAuthority)」
順にみていこう。
2.1.E-E-A-Tの「A(Authoritativeness)」
Googleの品質評価指標である「E-E-A-T」の中には、「A(Authoritativeness=権威性)」という項目がある。
ちなみにE-E-A-TとはGoogleがウェブページを評価する際の指標であり、以下4つの要素で構成される。
SEO担当者なら聞いたことがある方も多いだろう。
- Experience(経験)
- Expertise(専門性)
- Authoritativeness(権威性)
- Trust(信頼)
Googleの品質評価基準としては従来より「E-A-T」が存在していたが、2022年にExperience(経験)が追加され、現在の形になった。
E-E-A-Tは「”検索ランキングのシステム”を、”検索評価者が”評価する」ために使われる。
つまり「ユーザーに届けるべきコンテンツがしっかり評価されているか」をチェックするための指標だ。
我々コンテンツを制作する側は、E-E-A-Tに準拠することで「評価されるべき」という判断の中に食い込むことができる。
そのほか、E-E-A-Tに関する具体的な解説はこちらの記事で解説しているため、参考にしてみて欲しい。
また、E-E-A-Tへの準拠はコンテンツの品質(PQレイティング)を向上させる要素でもある。
権威性に対するGoogleの公式見解
E-E-A-Tの中にある「権威性」について、Googleでは下記のように解説している。
和訳:
“コンテンツ作成者やウェブサイトが、そのトピックに関して信頼される情報源としてどの程度知られているかを考慮してください。 多くのトピックには公式の情報源が存在しない場合もありますが、権威のあるウェブサイトやコンテンツ作成者がいる場合、それらはしばしば最も信頼性が高く信頼できる情報源と見なされます。 例えば、ソーシャルメディア上の地元ビジネスのプロフィールページは、現在のセール情報に関する権威ある信頼できる情報源となり得ます。 また、パスポートの更新に関しては、政府の公式ウェブサイトが唯一の公式かつ権威ある情報源です。” |
上記の解説から、権威性についてわかることは以下2点だ。
- 他者にどれだけ頼りにされていて、情報源として信頼されているか
- コンテンツの作成者に対する信頼性の高さ
つまり、サイト自体が情報源としてどれだけ頼りにされているか、そして作成者の信頼性も担保されているか、が重要だ。
例えば、検索ユーザーが「コンテンツマーケティング」というキーワードで検索している場合、権威性が担保されやすいのは以下のようなケースだ。
- コンテンツマーケティングを支援した実績をもつ企業によるコンテンツ
- マーケター向けの情報を豊富に扱うサイトのコンテンツ
まとめると「自社の事業実績に関係のあるキーワード」では権威性を獲得しやすいといえる。
2.2.サイトオーソリティ(SiteAuthority)
SEOの文脈においては「サイトが持つ力」も権威性に関係する。
「サイトが持つ力」は、SEO業界で「ドメインオーソリティ」や「ドメインレート」と呼ばれてきた。
一方でこうした指標は、Googleが公式情報として扱うことはなかった。
しかし、2024年5月にGoogleの内部文書から「SiteAuthority」という要素が発見された。
「SiteAuthority」は、検索ランキングシステムの1要素で、サイト全体の権威や信頼性を示す指標だとされている。
具体的な計算方法や使用方法は明確にされていないが、サイト全体の「権威性」を評価するために使用されているとの説が有力だ。
権威性を高めるためには、やはり「サイト(≒ドメイン)が持つ力」も意識すべきなのだろう。
ちなみにSiteAuthorityを直接計測する方法はないが、「ドメインレート(Webサイトの権威性)」は、以下の方法で確認できる。
- ウェブサイト “権威性 “チェッカー|Ahrefsにアクセス
- ドメインを入力して「チェック権限」を押下する
数値が大きいほどドメインの持つ力は大きいことを表している。
ドメインオーソリティが強化されていくと、検索上位に表示されやすくなる傾向が確認できている。
3.権威性が高まることによる3つのメリット
権威性が高まることで、以下のようなメリットが生まれる。
- 検索エンジンに評価されやすくなる
- ユーザーエンゲージメントが高まりやすくなる
- リード獲得やコンバージョンが効率よく進む
それぞれみていこう。
メリット1.検索エンジンに評価されやすい(上位表示されやすい)
前述のように権威性は、E-E-A-Tのひとつである。
E-E-A-Tが担保されるコンテンツは「良質なコンテンツ」とみなされ、権威性の高いサイトは、検索エンジンにとって「信頼できる情報源」とみなされる。
この2つの要素を持つことで、コンテンツが検索結果で上位表示されやすくなるというわけだ。
特に、月間検索数が大きく「需要が高い」キーワードでの上位表示がされやすくなる。
検索ボリュームが数百レベルのスモールキーワードでは、運営期間が短いサイトでも上位表示されやすい。
しかし、検索ボリュームが2000を超えたあたりから、運営期間が短いサイトでは上位表示が難しくなる。
これは、「運営期間が短く、権威性が積みあがっていないこと」が原因だ。
一方で「権威性」が積み上がっていれば、月間検索数(検索ボリューム)が多い「ミドルキーワード以上のキーワード」でも勝ちやすくなるというわけだ。
あくまでも推測だが、検索エンジンが順位付けを行う際、コンテンツの質で差がつかない場合は、サイトの力(≒SiteAuthority、ドメインレート、ドメインオーソリティ)を重視していると考えらえる。
実際に弊社でも、1年以上前に公開したコンテンツが、ドメインオーソリティの強化とともに上位に食い込んでいく例を確認している。
メリット2.ユーザーエンゲージメントを高めやすい
SEO以外の観点でも権威性を高めるメリットはある。
そのひとつが「ユーザーエンゲージメントを高めやすい」という点だ。
権威性は、検索ユーザーの目に見える指標ではない。
しかし、コンテンツが「権威(ある分野で優秀と認められたこと)」を感じさせる品質であれば、権威性はユーザーに対しても直接的な訴求力をもつ。
BtoBでもBtoCでも、ユーザーを引き付けるためには「納得」が必要だ。
この納得を引き出すのが、権威性である。
BtoCのランディングページなどでは、必ず有識者による「権威付け」が行われるが、これは納得感を醸成する土台を作るためだ。
「〇〇監修!」「〇〇プロデュース!」などの文句を見たことがある方も多いだろう。
このような「権威」が示されていればユーザーは納得しやすく、納得が積み重なることで、ユーザーゲンゲージメントは徐々に高まっていく。
ユーザーエンゲージメントが高いサイトは、ユーザーの滞在時間が長く、コンテンツの閲覧率も高くなる。
エンゲージメントの向上は、広告やホワイトペーパーの訴求力向上、そしてマーケティングROIの向上にもつながるという好循環をもたらすことも可能だ。
メリット3.リード獲得やコンバージョンを効率的に生み出せる
権威性はリード獲得やコンバージョンにも影響する。
特にBtoBでは、権威性の高さがリード獲得や商談の進展に直結する。
専門的で信頼できる情報を提供するサイトは、意思決定者にとって「信頼できる情報源」として認識されやすい。
そして信頼できる情報源の背後に、ノウハウや実績の豊富さをイメージする。
実際にノウハウや実績を「成功事例」として公開しているサイトは、リードを獲得しやすい。
また、リードマグネット(ホワイトペーパーやセミナー情報など)も、高いコンバージョン率を達成する可能性が高い。
4.権威性を高めるための施策
最後に、権威性を高めるための施策を網羅的に紹介する。
- 適切な引用と引用元の提示
- 企業サイトのプロフィールを充実させる
- 「誰」を顧客として「何を」提供しているか明確にする
- 事例、実績を提示する
- 「記名記事」を作成する
- 実務経験者の視点で書かれたコンテンツを増やす
- 自社の事業と関連性の強いコンテンツを作成する
- コンテンツの質を高める
- サイテーションを狙う
権威性はすぐには高まらず、地道な施策の積み重ねによって徐々に向上するものだ。
長い時間を必要とするが、年単位で見れば確実に効果が出るため、できるだけ早く権威性の強化に着手することをおすすめしたい。
施策1.適切な引用と引用元の提示
権威性を高めるためには「情報の出どころ」を明らかにしなくてはならない。
信頼できる第三者のデータや研究結果を引用しながら解説することで、コンテンツの信憑性が高まるからだ。
例えば、SEOの基礎的なテクニックを解説する場合には、Googleの公式ガイドラインである「Google検索セントラル」を引用元とする。
SEOにおいては「バイブル」であり、抽象的であっても「正解」とみなされるからだ。
同様に「業界団体のリサーチ結果」「政府系機関のコンテンツ」なども「正解」として信用を獲得しやすい。
下記は、権威性を高めやすい引用元の一覧だ。
- Google検索セントラル
- 政府系機関、公的団体のサイト(GO.JPドメイン)
- 地方公共団体が運営するサイト(LG.JPドメイン)
- 非営利法人、社団法人、財団法人などが運営するサイト(.or.jp)
- 特定の領域で実績を持つ大手企業のサイト
こうしたサイトの情報を積極的に引用し、適切に提示することで、権威性は徐々に高まっていく。
引用元はリンク付きで提示しよう。
施策2.企業サイトのプロフィールを充実させる
権威性を高めるためには「情報源が何者なのか」をはっきりさせる必要がある。
BtoBであれば、企業のプロフィールを具体的に記載することが近道だ。
例えば、企業情報には沿革や理念、所在地、連絡先情報などの基本的な情報を網羅する。
また、スタッフ紹介、認証資格、業界の受賞歴などを記載することで、透明性と実績を示すことができる。
これらは権威性を醸成するための基本的な要素だ。
施策3.「誰」を顧客として「何を」提供しているか明確にする
権威性は「特定の分野での優秀さ」でもある。
よって、その「分野」が具体的にイメージしやすいような情報も公開していこう。
具体的には、自社が「誰をターゲットにしているか」と「どのような価値を提供しているか」を明確に示す。
以下のような情報を充実させていこう。
- 対象としている業界(製造業、小売業など)
- 得意とする領域(マーケティング支援、効率化支援、DX支援など)
- 提供している製品、サービスの具体的な内容(ワークフローツールや決済自動化ツール、CRM導入の伴走型サービスなど)
施策4.事例、実績を提示する
同じように「優秀さ」をアピールする材料を積極的に公開することも重要だ。
具体的には「競合他社との比較」や「成功事例」をコンテンツ化していこう。
コンテンツとして具体化することで「何をしていて、どのような分野で権威性を持つのか」を明確にできる。
以下のようなコンテンツやデータが有効だ。
- 「リード獲得量が20%向上」や「コンバージョン率が2倍に増加」などの具体的な成果を示すコンテンツ
- 「ノウハウ」に関するコンテンツ(具体的な成果をどのように生んだか)
- 製品、サービスを購入したあとの「顧客の声」をまとめたコンテンツ
- 取引先企業の一覧を掲載
施策5.「記名記事」を作成する
記事に執筆者名を明記することで、コンテンツの信頼性が高まる。
特に、専門家や実務経験者の名前とプロフィールを付記すると、権威性の強化につながる。
例えば「マーケティング戦略の専門家が語る最新トレンド」というような書き方で、専門性を前面に押し出す。
執筆者の過去の実績や受賞歴なども補足すると、閲覧者に安心感を与えることができる。
前段で解説した「納得」も誘いやすい。
記名記事は、医療や金融などYMYLの分野で特に有効とされてきた。
BtoB ITやSaaSにおいても一定の効果が見込めるため、通常のコンテンツに織り交ぜながら活用していきたい。
施策6.実務経験者の視点で書かれたコンテンツを増やす
無記名であっても、実務経験者の具体的な視点が反映されたコンテンツは、初心者から有識者まで幅広く評価される。
例えば「〇〇業界の△△という課題において、実際に□□という成果をだしたノウハウ」といった内容を具体的に説明することで、読者は強い納得感を得る。
実際の事例やプロジェクトの成果を反映した記事は特に効果的だ。
施策7.自社の事業と関連性の強いコンテンツを作成する
特定の分野における専門家は、その分野に関する「権威性」を獲得しやすい。
企業でも同様に「テーマと関連性の強い事業を営む企業」が権威性を獲得しやすい。
例えば、「クラウドCRM」というキーワードでコンテンツを作成している企業が以下のように複数あるとしよう。
- 企業A:開発から運用までワンストップで行う独立系CRMベンダー
- 企業B:CRMを活用したマーケティング支援サービス提供企業
- 企業C:CRMを運用している小売業界の中堅企業
この場合、権威性という点では「企業A」が有利である。
実際にCRMを開発・運用しているという実績が納得や信頼を生むためだ。
このように「自社の主力事業」に近いコンテンツほど、権威性は高まりやすい。
また「自社が勝ちやすいキーワード選定」についてもノウハウを確立しておきたい。
キーワード選定については、こちらの記事でも解説している。
施策8.コンテンツの質を高める
権威性は質の高いコンテンツにも宿る。
質の高いコンテンツとは、以下4つの要素を持つコンテンツだ。
- Needs Met Ratingで高評価を得るコンテンツ
- 独自性・正確性・専門性を併せ持つコンテンツ
- E-E-A-Tを充足するコンテンツ
- ニーズを正面からとらえ、可読性が高いコンテンツ
Googleが定める「Needs Met Rating」や「E-E-A-T」は良質なコンテンツを作成するうえで重要な指針になる。
ただし、どちらの説明もやや抽象的だ。
したがって、自社で具体的な基準を設けておくことをおすすめする。
ちなみに弊社では「独自性」を備えつつ、ニーズを正面からとらえて読みやすくまとめたコンテンツが「良質」であると考えてる。
この点に関しては、以下の記事でまとめている。
「良質なコンテンツ」について、Googleの公式見解を踏まえて詳しく掘り下げているため、ぜひ参考にしていただきたい。
施策9.サイテーションを狙う
検索エンジンは、外部サイトからのサイテーション(言及)を獲得しているかを権威性の判断基準としている。
かつて、SEOの世界では「被リンク」が重要とされていた。
これは被リンクが「第三者からの評価」を具体化したものと考えられていたからだ。
しかし被リンクは恣意的に操作できることから、現在は文章の中で言及されるサイテーションを有力視する動きもある。
また、サイテーションをコントロールすることは不可能に近い。
それなのに強制的にコントロールすることは、好ましくない。
ただし「情報の質が高く」「可読性が高く」「独自の視点で解決策を提示している」などの条件が揃っていると、自然に獲得しやすい。
とはいっても、運営期間が短いメディアでは、サイテーションの自然な獲得には時間がかかることも事実だ。
そこで、外部メディアとの連携やクライアント企業と共同での事例作成など、自社サイトの外から情報を発信する方法も効果的だ。
5.AIで作成されたコンテンツに権威性は宿るか?
ここ2年ほどで急速に普及した生成AIを活用することで、コンテンツ作成の時間とコストを大幅に削減できるようになった。
「AIで作成されたコンテンツは評価されにくい」という声もある。
だが、Googleは、「AIで作成されたか否かはコンテンツの評価に直接関連しない」と明言している。
したがって「AIコンテンツであることを理由に権威性が低下するわけではない」といえるだろう。
ただし、生成AIに丸投げして生み出されたコンテンツには、独自性や思考の軌跡が宿りにくい。
そこで、生成AIで業務の効率化を狙いつつ、コンテンツに実務経験者の視点を加え、信頼性と説得力を補強することがおすすめだ。
また、AIで生成したコンテンツの質は「投入したデータ(材料)の質」や「指示・命令の内容(プロンプト)の質」によって大きく変わる。
あくまでも現状は「ツール」であり、使う人の力量によってコンテンツの質が上下するものと考えておこう。
6.まとめ
本記事では、SEOにおける権威性について解説してきた。
権威性の強化はSEO対策において「評価向上のベース」である。
ただし、権威性は一朝一夕に高まらないため、自社のコア事業と関連性の高いキーワードへの注力、コンテンツの質の向上、外部メディアへの露出などを継続的に進めていこう。
長期的なSEO評価の向上には、もちろん知識やリソースも必要だ。
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