LTV(ライフタイムバリュー)の計算方法、高め方、BtoBでの重要性を徹底解説

LTV(ライフタイムバリュー)は、顧客が取引の「全期間」においてもたらす利益の平均額を表す

ビジネスの安定や長期的な成長のためには「新規顧客の獲得」だけではなく、顧客の「ファン化」や「ロイヤルティの向上」が欠かせない。

その成果の指標となるのが「LTV(ライフタイムバリュー)」だ。

一方で、以下のような疑問を抱えている方も多いのではないだろうか。

「LTVの計算方法や目標設定の方法がわからない」

「LTVを高めるための具体的な施策を知りたい」

「LTVをどの程度重視すればよいかわからない」

そこで本記事では、LTVの基礎知識やBtoBでの重要性、計算方法、高めるための具体的な施策を詳しく解説する。

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1.LTV(ライフタイムバリュー)とは

 

LTV(ライフタイムバリュー:顧客生涯価値)とは、顧客が企業との取引を開始してから終了するまでの期間にもたらした収益や利益の合計だ。

顧客単価やリピート率が上がるほど、または取引期間が長くなるほど、LTVは向上する。

このことから、LTVは顧客の企業に対するロイヤルティや満足度の指標としても使用される。

LTV(ライフタイムバリュー)の概要

 

2.BtoBでのLTV(ライフタイムバリュー)の重要性

 

BtoBにおいてLTV(ライフタイムバリュー)が重要視されている理由は以下の3つだ。

  1. サブスクリプションサービスの普及
  2. 顧客獲得コストの費用対効果
  3. 長期的な収益予測から資源の最適配分に役立つ

それぞれ詳しくみていこう。

 

重要性1.サブスクリプションサービスの普及

 

近年ではBtoB、BtoC問わずサブスクリプション型のサービス(定額料金で一定期間商品やサービスを利用できるサービス)が普及している。

BtoBではソフトウェア(SaaS)やハードウェア(OA機器、ネットワーク機器など)、オフィススペースなどが代表例だ。

サブスクリプション型のビジネスでは、加入者数をどれだけ増やしても、全員が1ヶ月で解約していては収益がまったく安定しない。

つまり、いかに長期間継続してもらえるかが重要であり、その指標としてLTVが用いられる

 

重要性2.既存顧客との強い関係性は利益へのインパクトが大きい

 

サブスクリプションサービスを提供する企業に限らず、どのBtoB企業においてもLTVの重要性は高い。

なぜなら、既存顧客によるリピートを増やす、つまりLTVを高めることは、新規顧客の獲得と比較して利益へのインパクトが大きいためだ。

マーケティングにおける有名な概念として、既存顧客の離脱を5%抑えることで利益率が25%向上するという「5:25の法則」や、新規顧客獲得コストは既存顧客維持コストの約5倍かかるという「1:5の法則」がある。

このように、LTVを向上させることで、企業の利益を効率良く高められるのだ。

 

重要性3.長期的な収益予測から資源の配分に役立つ

 

長期的な収益予測の観点からもLTVは重要だ。

LTVを把握することで、各顧客が将来的に企業にもたらす総利益を予測し、経営戦略や資源配分を最適化できる

例えば、高いLTVを持つ顧客には、カスタマイズされたオプションや専任のサポートを提供することで、関係性を強化して収益を最大化できる。

一方、LTVの低い顧客には、標準化されたサービスの提供によりコストを抑えながら対応できるだろう。

このように、長期的な収益予測を行い、それを踏まえて資源を最適配分する際の指標としてLTVは重要となる。

 

3.LTV(ライフタイムバリュー)を重要視すべき企業とは?

 

LTV(ライフタイムバリュー)は、マーケティングや経営におけるKPIとしても用いられる重要な指標だ。

特にどのような企業で重要となるのかをみていこう。

LTVを導入すべきBtoB企業

 

3.1.サブスクリプションサービスを提供する企業

 

サブスクリプションサービスは一度の買い切り型ではなく、顧客から定期的に(主に月額)料金を受け取る形で収益を積み上げていく。

基本的には、サービスを契約する限り料金が発生するため、1回あたりの金額(月額)は買い切り型よりもリーズナブルだ。

その分、企業としては「継続」してもらわなければ収益が立ちにくい。

つまり、顧客にできるだけサービスを継続してもらい、取引期間全体にわたる収益(LTV)を高めることが重要だ。

 

3.2.ABMを採用する企業

 

特定の大口顧客中心にビジネスを進める企業、つまり「ABM」を中心とする企業にとっても、LTVは重要な指標となる。

ABM(アカウントベースドマーケティング)とは、受注すれば収益に大きなインパクトを与えるような、大企業を中心とする具体的な企業をターゲットとして設定し、その企業(ターゲットアカウント)からの売上を最大化するためのマーケティング手法を指す。

ABMとは?基礎知識、ターゲティングの方法、実践プロセスを徹底解説

 

ABMでは、そもそもターゲット企業数自体が限られているため、1顧客からの収益を最大化させることが重要だ。

そして、1顧客からの収益を最大化させたいときに、追跡すべき指標としてLTVが用いられる。

 

3.3.スイッチコストが低いサービスを提供する企業

 

スイッチコストとは、顧客が他社サービスに乗り換える際のコストや労力を指す。

「スイッチコストが低い」ことは、他社サービスへ乗り換えやすいということだ。

つまり、顧客が自社へのロイヤルティを持っていなければ、簡単に乗り換えられてしまうおそれがある。

この「ロイヤルティ」を高めるために追跡すべき指標がLTVだ。

ロイヤルティの向上は、特にBtoBにおいて重要性が高い。BtoCではアパレルや食品など、他社商品との利用が並行するケースがよくあるが、BtoBだとそうはいかない。

例えば、労務管理サービスは、1社につき1サービスずつ利用されるのがごく一般的だろう。

かつ、SaaSのように、サブスクリプション形式でスイッチコストが低いサービスでは「乗り換え」が簡単に行われてしまうのだ。

つまり、スイッチコストが低い企業ではLTVを追跡し、ロイヤルティを高めていく施策が必須といえる。

 

4.LTV(ライフタイムバリュー)の計算方法

 

LTV(ライフタイムバリュー)の基本的な考え方は「一定期間における収益(売上)×取引期間」だ。

これで取引期間全体の収益を計算する。

ただし、ビジネスモデルによって重視される指標は異なる。ここからは、複数の指標における計算方法をみていこう。

  1. 収益o利益×期間
  2. 単価×回数
  3. 収益or利益÷解約率
  4. 収益or利益÷購入者数
  5. その他

なお、収益は「売上」、利益は原価を除いた「粗利」をイメージするとよいだろう。

正確な計算のために、実際は原価を除いた「粗利」を用いて計算することが多い。

 

計算方法1.収益or利益×期間

 

一定期間での取引金額を、その回数や期間と掛け合わせる一般的な計算方法だ。

LTV=取引額×粗利率×継続期間(年・月)

LTV=(平均顧客単価×粗利率×購買頻度×継続期間)-(新規顧客獲得コスト+既存顧客維持コスト)

この計算方法は、継続年数や期間で算出しやすいサービスと相性が良い。

LTVの算出を粗利ではなく、獲得コストや維持コストを除いた営業利益に近い利益で算出したい場合は、2つ目の式で算出するとよいだろう。

 

計算方法2.単価×回数

 

購買行為が複数回行われるビジネスと相性が良い計算方法だ。

LTV=平均購入単価×平均購入回数

LTV=平均購入単価×平均購入頻度×平均契約期間

上記は単価(売上・収益)ベースでの計算式だが、もし利益ベースで算出する際は、①同様に粗利率をかける必要がある。

この計算方法は、比較的容易に算出できる要素を活用するため、計算しやすい点がメリットだ。

 

計算方法3.収益or利益÷解約率

 

継続が前提となるサブスクリプションサービスと相性が良い計算方法だ。

LTV=平均購入単価×粗利率÷解約率

LTV=顧客の平均購入単価÷解約率

LTV=ARPU(ユーザー1人あたりの平均収益)÷解約率

1人あたりの収益や利益を解約率で割ることでLTVを算出する。

SaaSビジネスなどでは解約率を重視するため、LTVをこの方法で計測することが多い。

また、平均継続期間といった期間を算出できない場合も、解約率を使って算出できる。

サブスクリプションモデルでは、ARPU(顧客1人あたりが一定期間にもたらす収益)を用いた計算も一般的だ。

ARPUの求め方は以下のとおり。

ARPU=売上÷ユーザー数

つまり、ARPUを解約率で割り返すことで、顧客1人あたりが将来にわたってもたらすであろう総収益(=LTV)を算出できる。

 

計算方法4.利益÷購入者数

 

利益全体と全購入者数の値を用いて計算できるシンプルな方法だ。

LTV=(売上高-売上原価)÷購入者数

単価や契約期間、解約率などがわからなくても、顧客1人あたりの利益を計算できる。

 

その他

 

上記のほかに「割引率」を使用したLTVの計算式もある。

割引率とは「将来の価値が現在どれだけの価値を持つのかを換算するための率」を指す。

  • LTV=(平均購入金額×粗利益率×購入頻度×顧客維持率)/(1+割引率-顧客維持率)
  • LTV=(平均収益額×粗利益率×顧客維持率)÷(1+割引率-顧客維持率)

上記は、割引率や顧客維持率を活用し、将来の価値を現在の価値に換算するアプローチだ。

将来価値をベースに算出しているため、長期的な戦略策定に向いている。

なお、1つ目の式は購入頻度を計算しているため、特定の期間に複数回購入するビジネスモデルに適している。

逆に、2つの式は一度だけ購入する、または平均収益額に購入頻度がすでに含まれているビジネスモデルに最適だ。

 

LTVの収益や利益とは何を指す?

 

LTVの計算方法について調べていると、売上ベースの計算と粗利ベースの計算方法がでてくるかもしれない。

ここでいう「粗利」とは「売上-売上原価」の金額だ。

つまり、損益計算書上の売上総利益を指す。

なお、売上原価は業界によって含まれるものが異なる。

例えば、在庫があるサービスであれば売れた商品分の変動費、製造業であれば製造に関わる人件費や減価償却費などが含まれるだろう。

LTVでは「1顧客あたりの全取引期間における収益性」をみるが、この収益にどこまで含めるかという点に困る方もいるだろう。

結論、より正確な計算のために「粗利」ベースでLTVを算出することが多い。

つまり、できる限り「費用」は省いた実質の利益に近い状態でLTVを計算するのだ。

「粗利」は前述のとおり「売上ー売上原価」で表せるが、売上原価に「マーケティング施策や営業に関わる費用」などは含まれていない点に留意しよう。

特に、SaaSやサブスクリプションビジネスにおいて、マーケティング施策や営業にかかる費用などを含めた採算性を評価する場合は、次章で解説する「ユニットエコノミクス」という指標の活用もおすすめだ。

LTVの計算方法

 

5.SaaSで重要なLTVとCACとの関係性(ユニットエコノミクス)

 

IT企業、特にSaaSのビジネスモデルにおいて、LTV(ライフタイムバリューと)切り離せないのが「CAC(顧客獲得コスト)」だ。

この2つの指標を用いた「継続的な収益性」を表す概念を「ユニットエコノミクス」という。

 

5.1.ユニットエコノミクスとは

 

ユニットエコノミクスとは、顧客1人あたりのビジネスにもたらす収益とコストのバランス(採算性)を示す指標だ。

サブスクリプションサービスで頻繁に用いられ、事業の健全性を評価するのに役立つ。

ユニットエコノミクスは、以下のようにLTV(顧客生涯価値)とCAC(顧客獲得コスト)の2つの指標を用いて計算する。

ユニットエコノミクス=LTV÷CAC

例えば、LTVが150万円、CACが50万円の場合、ユニットエコノミクスは3となる。

一般的に、ユニットエコノミクスの基準値は「3」だ。

つまり、獲得コストの3倍ほどの利益を獲得できていれば、効率的に集客ができていると判断できる。

ユニットエコノミクスは、単なる売上や受注額ではなく「LTV」を分子としている点が特徴だ。

顧客の獲得費用に対し、顧客が取引の全期間を通してどれほどの利益をもたらしているか、つまりどれだけ継続して自社へのロイヤルティを示してくれているかを把握できる。

 

5.2.CACとその計算方法

 

CAC(Customer Acquisition Cost)とは、新規顧客を1人獲得するためにかかったコストを指す。

計算式は以下のとおりだ。

CAC=顧客獲得コストの総額÷新規顧客獲得数

例えば、広告費用、営業コスト、その他マーケティング費用を合計した金額を新規顧客数で割ることで、顧客1人を獲得するためにかかったコスト(CAC)を算出できる。

CACとCPAの違いとは?顧客獲得コスト指標としての活用・改善方法を徹底解説

 

6.LTV(ライフタイムバリュー)を高める施策

 

最後に、LTV(ライフタイムバリュー)を高めるのに有効な施策を紹介する。

LTV(ライフタイムバリュー)を高める施策

 

施策1.顧客単価を上げる

 

顧客単価の向上はLTV向上に直結する。

これを実現するには、以下の方法が有効だ。

 

アップセル

 

既存顧客に対して、より高機能・高価格帯の商品やサービス、上位プランへの移行を促すアプローチだ。

例えば、SaaS製品であれば、より多くの機能を使える上位プランへの移行を提案する。

 

クロスセル

 

主力の商品・サービスに加えて、関連商品やオプションサービスの購入を促す施策だ。

例えば、ソフトウェアを購入した顧客に、導入支援サービスや保守契約を提案するというアプローチが挙げられる。

アップセルとクロスセルの違いとは?BtoBで顧客単価を上げる手法と成功事例

 

セット販売

 

複数商品を組み合わせたセット販売は、顧客単価向上と顧客満足度向上の両立を図れる。

例えば、関連性の高い商品をまとめて割引価格で提供することで、顧客は個別に購入するよりもお得感を抱くだろう。

 

商品・サービスの値上げ

 

単純な値上げは顧客離れにつながるが、品質向上などを理由に適切な値上げ幅を設定し、顧客に納得してもらえるような理由を伴う改定であれば有効だ。

 

施策2.購買頻度を高める

 

購買頻度を高めると、顧客1人あたりから得られる収益を増やし、LTVを向上させることができる。

具体的には、以下のような施策がある。

 

顧客ニーズに合わせた定期的なメール配信

 

顧客の属性や購買履歴に基づいてパーソナライズされたメールマガジンを配信し、新商品情報や優待情報などを提供することで、購買意欲を高める。

 

リマインドメール

 

商品の購入後一定期間が経過した顧客や、カートに入れたまま購入していない顧客に対して、リマインドメールを送信することで再購入を促す。

 

新商品情報の発信

 

新商品のリリース情報やキャンペーン情報を積極的に発信し、顧客の購買意欲を高める。

 

施策3.解約率を下げる・継続期間を伸ばす

 

顧客との取引期間が長くなるほど、LTVは向上する。

顧客の解約率を抑制し、継続期間を延ばすためには、解約理由の把握と分析を行ったうえで以下の施策を実施するのが有効だ。

 

カスタマーサクセスの導入

 

カスタマーサクセスを通して顧客の課題解決を支援し、顧客満足度を高めることで解約を抑制する。

顧客との継続的なコミュニケーション、製品・サービスの利用状況の把握、問題解決のサポートなどを行い、顧客の成功体験を創出することが重要だ。

 

長期利用者向けの優待プログラム

 

長期にわたってサービスを利用している顧客に対して、ポイント付与や割引などの優待プログラムを提供することで、顧客ロイヤルティを高め、継続利用を促進する。

 

顧客同士の交流や課題解決を促すコミュニティの運営

 

顧客同士でサービスを超えた悩みや課題をシェアし、解決に向けた情報交換を行えるコミュニティを運営する。

 

顧客の悩みに応じた継続的なサービス改善や新規商品開発

 

顧客の声を収集し、ニーズに合致した商品への改善や新規の開発をし続けることで、顧客満足度を維持し、継続的な利用を促す。

 

解約率の高い層をターゲットから外す

 

解約率が高い顧客層の特徴を分析し、その層へのマーケティング活動を絞ることで、解約率の低下につながる。

 

顧客の獲得経路分析し、解約率の低い顧客が獲得できる流入経路に注力する

 

過去のデータから、顧客の解約率と流入経路の関係を分析する。

これにより、Web広告から流入した顧客の解約率は高く、既存顧客の紹介から流入した顧客の解約率は低い、といった分析が可能だ。

分析結果をもとに、紹介キャンペーンなどに注力することで、解約率を下げられるだろう。

ただし、あくまで目的はLTVの向上であるため、解約率低下に注力しすぎてLTVが下がらないように注意してほしい。

 

7.まとめ

 

本記事では、LTV(ライフタイムバリュー)について、概要から計算方法、LTVを導入すべき企業、具体的な高め方までを解説してきた。

日本のBtoB企業では、元々既存顧客を大切にしてきたが、SaaS企業やカスタマーサクセスを導入する企業が増え、新規顧客獲得から既存顧客との関係強化に舵を切る企業も増加している。

既存顧客との強固な関係性を築くために、もっとも重要となる指標がLTVだ。
LTVの算出には、粗利率の算出など一定のハードルはある。

しかし、LTVを高めて顧客1人あたりの価値を最大化させることで、企業の収益性向上につながるため、ぜひ取り組んでみてほしい。

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