もう悩まない!IT企業のためのマーケティングチャネル設計・最適化マニュアル|特徴一覧から選び方まで完全解説

もう悩まない!IT企業のためのマーケティングチャネル設計・最適化マニュアル|特徴一覧から選び方まで完全解説

マーケティングにはさまざまなチャネルがある。

チャネルごとにアプローチしやすい層が異なり、それぞれの特性を理解して実行することで成果が生まれやすくなる。

一方で、

「展示会頼みから脱却できず、リード獲得が不安定」
「チャネルを増やしたが、思うような成果を得られていない」
「自社に合ったチャネル選びに自信が持てない」

といったお悩みを持つ企業担当者も多いだろう。

本記事では、IT業界の企業が注力すべきマーケティングチャネルの特性や選定基準、優先度の設計方法を解説する。

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1. IT業界におけるマーケティングチャネル活用の特性

IT業界におけるマーケティングチャネル活用は、他業界とは異なる前提条件を踏まえて検討しなければならない。

特にBtoB領域では、営業主導の商談獲得文化や組織体制、外資系企業特有の制約などが施策設計に影響する。

本章では、その主な前提を整理していこう。

1.1. 営業とマーケティングの役割分担

IT業界において、売上構成要素の中でも「商談数」はマーケティング施策による影響度が最も高い要素だ。売上は、商談数・受注率・商材単価の掛け合わせで構成されるが、受注率や単価は営業活動や競合状況に左右されやすく、大きく変えることは困難だ。

そのため、マーケティングによって商談数を伸ばすことが求められる。

IT業界における売上構造

商談数の増加が重要になる中で、もうひとつ押さえておきたいのが、リードにも段階があるという点だ。

マーケティング活動を通じて獲得した見込み客は「MQL(Marketing Qualified Lead)」と呼ばれ、さらに営業担当者が商談化できると判断した段階の見込み客は「SQL(Sales Qualified Lead)」と呼ばれる。

MQLとSQLの違いや、具体的な運用イメージについては、以下の記事で詳しく解説しているため、参考にしてほしい。

さらに、見込み客がMQLからSQLへと進む過程において、営業担当者が介入できるタイミングも変化しつつある。

コーポレート・エグゼクティブ・ボード(現Gartner )の調査(対象:1,500人以上の意思決定者および影響者)によると、その割合は70%に達すると言われている。

マーケティング領域でどれだけ見込み客の購買意欲を高められるかが、営業活動の成否に直結する時代となっている。

購買プロセス進行の内訳

※参考:コーポレート・エグゼクティブ・ボード、「The Digital Evolution in B2B Marketing」

1.2. 営業主導文化との連携が必要

多くのIT企業では、マーケティングだけで商談を創出する体制が未整備であり、営業主導で顧客接点を作る文化が根強い。

そのため、マーケティング施策を効果的に展開するには、営業部門との情報共有や連携プロセスの整備が不可欠となる。

1.3. 本社・グローバル制約の影響

特に外資系IT企業では、本国主導のブランディングルールやCMS運用方針など、マーケティング施策に制約があるケースが多い。

この場合、本社方針に沿いながら、独自のランディングページ設計やメール配信代行など、制約下でも柔軟に施策を設計・運用する工夫が求められる。

2. IT業界におけるオフライン施策とオンライン施策の変遷

IT業界におけるリード獲得手法は、時代の変化とともに大きく変遷してきた。

特にBtoB領域では、ターゲット層の情報収集行動の変化やテクノロジーの進化を背景に、マーケティングの役割が拡大している。

本章では、オフライン施策からオンライン施策へのシフトと、それに伴うチャネル戦略の変化について整理する。

2.1.オフライン施策への依存

これまで多くのIT企業では、展示会やセミナーでの名刺獲得がリード獲得の中心だった。

特に大手企業では、営業担当者による対面での接触が商談化のきっかけとなるケースが多く、営業主導のリード獲得が主流だった。

日本のIT業界では、マーケティングと見込み客との接点が限られており、営業による「1対1」のアプローチが意思決定に強く影響する構造が続いてきた。

そのため、マーケティングは「後方支援」として扱われ、マーケティング施策から直接受注や契約につながるケースは多くなかった。

特に、これまでリード獲得施策の中心だった展示会は、営業担当者が主体となり来場者と直接接触する場だ。

対象となるのは主に「顕在層」や「比較検討層」であり、購買意欲の高い層へのアプローチが中心となる。

一方で「潜在層」へのアプローチや新規リードの創出には不向きであり、獲得できるリードの数にも限界があった。

2.2.オンライン施策の拡大

近年では、オウンドメディア、広告、ウェビナー、ホワイトペーパーなどのオンライン施策が急速に拡大している。

見込み客が自ら情報収集する行動が一般化し、マーケティング施策の重要性が高まっているのが現状だ。

特に、MA(マーケティングオートメーション)ツールやコンテンツの活用により、リード獲得からナーチャリングまでのプロセスを可視化・再現可能となり、マーケティングが商談創出の起点となるケースが増えている。

オンライン施策では、オウンドメディアでの情報発信や、口コミサイト・資料比較サイトでの情報提供、ウェビナー・ホワイトペーパーの活用などを通じて、広範囲かつ大量のリード獲得が可能だ。

また、インターネットの普及により、見込み客が能動的に情報を探す時代となっており、オンライン施策はその行動にマッチしやすい。

この流れはIT業界も例外ではない。

2.3. チャネル連携による成果最大化

IT業界において、単一のチャネルだけで商談化まで完結するケースはほとんどない。

オンライン・オフラインを問わず、複数のチャネルを組み合わせ、連携させる設計が成果を大きく左右する。

たとえば、広告 → ホワイトペーパー → メール → 営業といった流れで、認知 → リード獲得 → 育成 → 商談化までを戦略的に設計する必要がある。

なお、オフライン施策が不要になるわけではない。

たとえば展示会では「来場」という物理的な行動を伴うため、本気度の高い「顕在層」「比較検討層」と出会える。

獲得できるリード数は多くないものの、一度接点を持てば中長期的な売上につながる可能性が高い。

一方、オンラインチャネルは、リード1件あたりの獲得コストを抑えやすい点がメリットだ。

それぞれの特性を理解し、チャネルごとの役割を補完し合う設計が重要となる。

今後は、オンラインとオフラインを組み合わせ、複数チャネルを戦略的に活用することが、商談獲得の成功要因となるだろう。

3.IT業界におけるマーケティングチャネル一覧

では、実際に活用されているマーケティングチャネルを一つずつ見ていこう。

マーケティングチャネル

3.1 新規見込み顧客の獲得(リードジェネレーション)

オウンドメディア

狙える層:潜在~準顕在層
活用方針:ニーズドリブンなコンテンツ+SEOで中長期のリード獲得に強い
優先順位:高(中長期での継続的なリード獲得基盤に)

「潜在層の掘り起こし」や「中長期的なリード獲得」に強いチャネルだ。

この層は、

  • 課題をそもそも把握していない
  • 解決方法があることを知らない
  • 自社製品やサービスを認知していない

といった状態にある。

意思決定からは遠いが、すそ野が広く絶対量が多いため、長期的にリードを積み上げたい場合には必須のチャネルだ。

オウンドメディアでは、製品訴求よりも「読者が抱える課題」に寄り添い、解決策として自社サービスを提示する。

具体的には「業務効率化」「セキュリティ対策」「システム刷新」など、実際の業務課題に即したテーマでコンテンツを制作し、オーガニック検索での流入を増やしていこう。

ただし、今後は「AI OverView(旧SGE)」などの検索用AIが一般化し、単なる「知識提供型」のコンテンツだけでは流入が頭打ちになることが予測される。

これからのオウンドメディアでは、読者ニーズを深く、幅広くとらえたコンテンツが強みとなる。

端的にいえば「~とは(knowコンテンツ)」から「~する、できる(Doコンテンツ)」への転換が必要となるだろう。

リード保証型広告

狙える層:顕在層
活用方針:リード数を確保したいときの「打ち上げ花火」的施策
優先順位:中~高(短期的な数確保には有効。ただし費用と質のバランスは要検討)

短い期間でリードを確実に獲得したい場合に活用される。

リードの「量」は確保できるものの、「質」はばらつきが出やすい点に注意が必要だ。

また、近年では情報提供に対するユーザー側の期待値が上がっているため、広告の中身そのものに価値を感じさせる工夫が必要だ。

費用対効果については、ほかの広告施策と比べて相対的に良好とされている。

以下は、代表的なリード保証型広告のサービスだ。

資料比較サイト、口コミサイト

狙える層:比較検討中の顕在層
活用方針:差別化ポイントが明確であれば強力な武器となる
優先順位:高(指名検索外からの流入経路として注目。営業が拾いにくい層へリーチ)

比較検討フェーズの顕在層へ有効なアプローチ

製品導入を真剣に検討している顕在層、特に「比較検討フェーズ」のユーザーに対して有効なチャネルだ。

指名検索にまでは至っていない(自社を具体的に認知していない)が、購買意欲の高い比較検討層にアプローチできる。

営業では拾いきれないリードを獲得できる点が魅力だ。

BtoBビジネスにおいても、資料比較サイトや口コミサイトの活用がようやく伸びてきた。

製品・サービスを横並びで比較したいというニーズに対し、第三者的な視点で情報を提供するため、信頼性の高さが評価されている。

差別化ポイントの明確化

SaaSやクラウドサービスの領域では、明確な差別化ポイントをアピールしやすいチャネルでもある。

独自の機能や価格体系を強みとしているならば、優先的に活用すべきチャネルといえるだろう。

一方で「数値」で比較されることが「優劣」の判断につながり、自社にとってマイナスに働く場合もある。

「高い・安い」「速い・遅い」などの定量的な点だけではなく、独自性や顧客事例、ユーザーの声なども記載しよう。

「定量情報+定性情報」の両面で訴求できるコンテンツ設計が重要だ。

展示会イベント

狙える層:顕在層~意思決定層(展示会)、広い層(ウェビナー)
活用方針:対面での濃い関係構築。営業との連携がカギ
優先順位:中(リード単価は高め。質と量のバランス次第)

対面での認知拡大とリード獲得

展示会やオフラインのセミナーは、IT業界において長らく「王道」として活用されてきたチャネルだ。

特に展示会は、製品の特長を対面で直接伝えられるため、顕在層や意思決定層に対しての強力なアプローチとなる。

また、リアルな場での濃い接点を築けることから、短期間で商談化しやすい点も強みだ。

さらに、展示会にはあらかじめテーマが設定されており、そのテーマに興味のある来場者に絞ってアプローチできる。

認知度の低い企業でも、自社の存在や製品の魅力をダイレクトに伝えられるため、効果的な認知拡大の機会となるだろう。

費用対効果の算出

一方で、イベントはリード獲得単価が高くなるデメリットがある。

たとえば、大規模なイベントへの出展費用は数百万単位になるが、濃いリードは数件というケースも珍しくない。

このように、展示会は出展費用がネックだと考えられがちだが、実際には費用対効果を事前に見積もることができる。

業界や開催場所にもよるが、来場者数の1~1.5%程度を名刺獲得目標として設定することで、出展費用と期待できる名刺数、さらには想定される商談数や売上金額をもとに投資判断が可能だ。

また、近年ではSFAを活用し、獲得リードの商談化率や売上貢献度をトラッキングするツールも増えている。

ナーチャリングと営業連携が成果を左右

ただし、展示会にもいくつかの注意点がある。

まず、来場者の多くは情報収集を目的としており、今すぐ購入を検討しているわけではない。ブースに足を止める来場者は製品への興味は高いが、導入は半年~1年以上先になるケースも多い。

そのため、名刺交換後にメルマガ配信などで記憶にとどめ、ナーチャリングしていく運用が不可欠だ。

展示会を成果につなげるには、営業部門との連携も不可欠となる。

来場者の温度感が高いうちに営業フォローを開始し、確実に商談化までつなげるためには、事前に営業との役割分担やフォロー体制を整えておく必要がある。

以上のように、展示会は顕在層~意思決定層への対面アプローチに強みを持つ一方、リード獲得単価の高さやナーチャリング前提の運用設計といった特性を踏まえた戦略的な活用が求められるチャネルだ。

業界団体・アライアンス

狙える層:潜在層~検討層(信頼醸成段階)
活用方針:業界内での認知拡大・信頼性向上、営業連携による商談化支援
優先順位:中(業界ポジション強化や信頼構築施策として有効)

業界団体やアライアンスは、特定業界内での認知獲得や信頼性の向上に寄与するチャネルだ。

リード獲得には直接結びつきにくいものの、団体活動や共同プロモーションなどを通じてターゲット層への認知を広げられる。

また、営業部門との連携によって、団体をきっかけに接点を持った企業に対し、商談化の芽を育てていくことも可能だ。

特に、業界内でのポジショニングを強化したい企業にとっては、有効なチャネルとなりうる。

代理店・販売パートナー

狙える層:顕在層~比較検討層(販売網による広範囲アプローチ)
活用方針:既存パートナー網の活用による新市場開拓、販促支援・インセンティブ設計
優先順位:中(パートナーとの連携度によって成果が左右される)

代理店や販売パートナーは、自社単独ではリーチが難しい市場やターゲット層にリードを拡大できるチャネルだ。

既存の販売網を活用することで、商材の露出機会を飛躍的に増やせる。

一方で、成果を上げるためには、パートナー向けに支援コンテンツを整備したり、販売インセンティブを設計したりと、パートナーの動機づけを図る工夫も不可欠だ。

適切な連携体制を築くことで、リード拡大と商談化の両方を推進できるチャネルとなる。

ウェブ広告(リスティング・ディスプレイ広告)

狙える層:潜在層~顕在層(指名検索層から認知拡大層まで幅広く対応)
活用方針:リスティング広告による確度の高いリード獲得、ディスプレイ広告による認知拡大
優先順位:中(即効性重視だが、費用対効果に注意)

ウェブ広告(リスティング広告・ディスプレイ広告)は、一般的に約8割がリードジェネレーション施策として活用される。

リスティング広告では、製品名・サービス名などの指名検索を中心に確度の高いリードを獲得でき、短期間で成果を出したい場合に有効だ。

一方、ディスプレイ広告は潜在層へのリーチに向いているが、獲得単価が高騰しやすく、クリエイティブやターゲティングの設計精度が成果を左右する。

予算に応じた最適なキャンペーン設計と、獲得リードのナーチャリングを前提とした運用が求められる。

また、キャンペーン設計によって、ブランディング目的とリード獲得目的を柔軟に使い分けられる点も大きな特徴だ。

3.2. 関係性の醸成・情報提供(ナーチャリング)

メルマガ(メールマーケティング)

狙える層:潜在~顕在層(継続フォロー用)
活用方針:セグメント配信でナーチャリング、過去コンテンツの再活用
優先順位:高(中長期での案件育成や顧客接点維持に有効)

事業会社の実務担当者は、定期的にIT業界に関する技術情報や事例情報を収集している。

メルマガは「空いた時間に、手元ですぐに情報を得られる」ため、内容が適切であればナーチャリングの効果は高い。

また、ほかのチャネルとの親和性の高さも魅力だ。

  • オウンドメディア、プロダクトサイトなどの過去の記事を配信して流入量を増やす
  • セミナー案内、導入事例の紹介で自社への興味関心を向上させる

など、チャネルを線で結びながら接点を維持する役割も担っている。

さらに、MAを活用することで、リードの属性や行動履歴に応じたセグメント配信が可能となる。

ニーズや検討フェーズに合わせたコンテンツの紹介を低コストで進められるため、ぜひ仕組み化したいチャネルだ。

イベント(ウェビナー)

狙える層:潜在層~顕在層(リード育成フェーズに対応)
活用方針:中間層への情報提供によるナーチャリング促進、低コストでの広範囲リーチ
優先順位:高(リード育成や商談化の後押し施策として有効)

ウェビナーは、中間層(準顕在層や比較検討層)に向けたリード育成施策として有効なチャネルだ。

来場型セミナーとは異なり、開催コストを抑えつつ、地理的な制約なく広範囲の見込み客に情報提供ができる。

特に、業界動向や製品デモ、導入事例紹介などのテーマでウェビナーを設計することで、参加者の興味・関心を高め、次のアクション(資料請求、個別相談など)につなげられる。

また、参加者リストや行動データを活用し、精度の高いナーチャリング施策へ展開できる点も魅力だ。

プロダクトサイト

狙える層:顕在層・意思決定層
活用方針:プロモーションや広告からの受け皿、導入事例・FAQの整理
優先順位:中(他施策と連動して最終的な判断材料に)

主に顕在層および意思決定層を対象に「意思決定の材料」を提供するチャネルだ。

プロダクトサイトへは、展示会や営業活動、広告などで商材を認知したあとに指名検索で訪れるユーザーが多い。

すでに製品名やサービス名を知っており、意思決定に近い場所にいる層が中心だ。

また、プロモーションや広告からの流入を顧客に変える「受け皿」としての役割も持つ。

導入事例、FAQ、価格情報、導入までの流れなど、意思決定の材料となる情報を網羅しよう。

さらに、代理店を通じた販売チャネルでも「営業資料」として扱われやすい。

販売パートナーにも参照されることを前提に、情報の正確性と網羅性を担保することが重要だ。

3.3. 商談化・受注を支援する施策

リファラル(紹介)

狙える層:顕在層、意思決定層の一部(既存顧客の紹介先など、信頼性の高い層)
活用方針:成功事例や顧客の声を仕組み化して展開
優先順位:中(制度設計次第で伸びしろあり。営業主導で終わらせない仕組みを)

既存顧客を起点としたリード獲得

リファラル(紹介)では、既存顧客からの紹介を通じて新たなリードを獲得し、顧客化する。

実績のある顧客から信頼性の高い層に直接リーチできる点が魅力だ。

日本のIT業界では、営業担当がクライアントと1対1で密接な関係を築くケースが多く、そのなかで自然にリファラルが生まれやすい。

一方でリファラルは「仲介者(主に営業担当者)」の俗人的な力量に左右されやすい問題もある。

端的にいえば「仕組み化」が難しく、戦略的チャネルとして活用するためには工夫が必要だ。

たとえば、

  • 導入事例コンテンツに顧客の声を掲載し「同様の課題があればご紹介ください」と促す
  • 紹介者に対するインセンティブ制度の確立

といった施策が挙げられる。

仕組み化によるリファラルの最大化を目指す

リファラルによって得られるリードは既存顧客と属性が近く、商談化までのリードタイムも短い。

SaaSのように横展開しやすいビジネスモデルでは、同業種・同規模の企業へ紹介が広がることで一気にビジネスが成長する。

マーケティング部門としては、紹介が生まれやすいタイミング(例:導入後の成果が出たフェーズ)を把握し、仕組み化していきたい。

以上の内容を表にまとめる。

区分チャネル成果スピード費用感優先度
新規見込み顧客の獲得(リードジェネレーション)オウンドメディア
リード保証型広告中~高中~高
資料比較サイト・口コミサイト
イベント(展示会)
業界団体・アライアンス低~中低~中
代理店・販売パートナー
ウェブ広告(リスティング)
関係性の醸成・情報提供(ナーチャリング)メルマガ
イベント(ウェビナー)
プロダクトサイト
商談化・受注を支援する施策リファラル(紹介)中~高

4.チャネル選定の「5ステップ設計」

多くのチャネルとその内容を紹介してきたが、最終的に顧客フェーズごとすべてにタッチポイントを用意する必要がある。

しかし、最初からすべてを完璧に揃えることは難しい。

どこを重点的に対策していくかを決めるステップを設けることが重要だ。

これから紹介する「5ステップ設計」を参考にし、実施可能で最も効果的なチャネル選定を行おう。

チャネル選定の「5ステップ設計」

STEP1|目的とフェーズを明確にする(Why&When)

チャネルにはそれぞれ「得意なフェーズ」がある。まずは顧客フェーズのどの部分に対応するタッチポイントが必要かを明確にしよう。

現在のチャネル状況を整理し、足りない部分や強化すべき部分を見える化することが必要だ。現状を把握することで、「何のためにチャネルを使うか」という目的も見えてくるはずだ。

例:

  • 認知獲得(知ってもらう・覚えてもらう)
    →オウンドメディア、リード保証型広告、イベント(展示会)、業界団体(アライアンス)、ウェブ(ディスプレイ)広告、リファラル(紹介)
  • 興味・関心喚起とニーズ形成(欲しいと思ってもらう)
    →オウンドメディア、イベント(展示会・ウェビナー)、メルマガ、リファラル(紹介)
  • 想起獲得・接点形成(必要な時に声をかけてもらう)
    →メルマガ、ウェビナー、プロダクトサイト
  • 選定・購買後押し(自社を選んでもらう)
    →比較サイト、プロダクトサイト

STEP2|ペルソナを明確にする(Who )

ターゲットとなる顧客層によって、最適なチャネルは異なる。特にIT業界では、
次はターゲットとなる顧客層に最適なチャネルを選定できるようにペルソナを明確にしよう。

例えば、企業の経営層、部門責任者、実務担当者、技術担当者など、顧客ペルソナはそれぞれ異なるニーズや課題を持っている。ペルソナを分類し、それに応じたアプローチを取ることが重要だ。

STEP3|自社のリソース・制約条件を確認する(Can)

実際に施策を運用できるかをチェックする。

確認すべき項目:

  • 運用体制はあるか?(社内・外注パートナー)
  • 受け皿はあるか?(LP、資料、MA運用体制など)
  • 初期投資や継続コストに耐えられるか?
  • すぐ着手できるか?時間と稟議のハードルは?
  • ナレッジや過去実績はあるか?(類似チャネルの成功事例や知見など)

具体例:

  • 「広告を出したいがLPがない」→まずLP制作が必要
  • 「展示会に出したいが出展準備に3ヶ月かかる」→他施策と並行検討が必要

「できない施策」を前提にチャネル選定をすると、あとで手戻りが発生するため注意する必要がある。

「施策の前後の接続」「社内運用リソースの現実」まで考慮することで、STEP3の精度が大きく高まる。

STEP4|チャネル候補を絞り込む(What)

ここまでで出そろった 【目的・フェーズ ×ペルソナ × 実行可能性】を掛け合わせ、候補チャネルを絞っていく。

チャネルごとの基準例:

チャネル主なフェーズ実行しやすさ成果スピード費用感備考
オウンドメディア潜在層△(成果に時間)資産になるが即効性は薄い
リード保証型広告顕在層◎(すぐ発注可能)中~高数は稼げるが質に注意
資料比較サイト・口コミサイト比較検討層〇(出稿ハードル中)比較フェーズに効果的
イベント(展示会)顕在~意思決定層△(コスト・工数高)対面で濃い接点
業界団体・アライアンス潜在層~比較層△(所属・選定必要)低~中低〜中信頼形成に有効だがリード化に時間が必要
代理店・販売パートナー顕在層~決裁層△(パートナー開拓・支援要)他市場への拡大が可能、フォロー設計が重要
ウェブ広告(リスティング・ディスプレイ)潜在層~顕在層◎(即出稿可能)短期で成果を出せるがコストに注意
メルマガ検討層◎(内製・ツール活用)育成に効果的
イベント(ウェビナー)準顕在~検討層〇(準備必要)コストを抑えつつ中間層育成に効果的
プロダクトサイト顕在層・意思決定層◎(コンテンツ整備が前提)購買判断材料として重要なチャネル
リファラル(紹介)顕在層・決裁層の一部〇(仕組み化次第)中~高信頼関係ベース

STEP5|配分を決定する(How much)

STEP4で選定したチャネル候補に対し「どのチャネルを、どれだけの強度(予算・工数)で取り組むか」を決めるフェーズだ。

限られたリソースで成果を出すためには「どこに厚く配分するか」「何を先行させるか」という判断が求められる。

配分設計3つの視点

視点概要検討のヒント
① 最優先で成果を出すべきポイントはどこか「売上を作るために、今一番欠けている工程」はどこか?・リードが足りない ⇒ 顕在層向け広告に重点投資・商談転換が弱い ⇒ ナーチャリング強化へシフト
② 投資効率が高いチャネルはどれか同じ予算でも「再利用しやすい」or「他チャネルと相乗効果」があるか?・ホワイトペーパー:広告/比較サイト/SEOに再利用可・ウェビナー:録画をメルマガ・記事に再展開可
③ 先に仕込んでおくべきチャネルは何か成果まで時間がかかるチャネルをいつ始めるか?・SEOやオウンドメディアは着手が遅いと半年後に影響が出るため、早期投資が効果的

これまで紹介してきたように、チャネル選定は単なる並列比較ではなく、複数の要素を掛け合わせた上で、現実的に“配分”することが求められる。

次章では、実際の企業がどのようにチャネルを選び、どのような“型”で設計しているか、代表的なパターンを紹介する。

5. 課題別代表的なチャネルパターンの紹介

本章では、実際に企業が抱える課題ごとに、着手すべきチャネルとその理由を解説する。

5.1 そもそもリードがない

推奨チャネル:リード保証型広告、比較サイト掲載、ウェビナー(協賛型)
理由:即効性重視で顕在層を確実に獲得できる

  • リード保証型広告(例:ビジネスIT)では月間100件以上のリード獲得が可能。ウェビナーとの連携で商談化率20%超えも
  • 比較サイト掲載(例:ITトレンド)では、月150件以上のダウンロード実績もあり、短期で成果を出しやすい
  • SaaS企業の協賛ウェビナー活用では1回の協賛で10件の商談化に成功。録画資産としての再活用も有効

5.2 指名検索はあるが、リード化できていない

推奨チャネル:検索広告(リスティング)、プロダクトサイト整備、フォーム改善
理由:検討層を確実にリードへ変換する導線強化が必要

  • Google広告では指名KWでCVR10〜15%/CPA2万円台(IT商材の場合)が目安
  • FAQや導入事例ページの改善によりCV数が1.8倍に増加した事例も
  • Googleタグやヒートマップ分析を通じてCTAの最適化が重要

5.3 長期的にリード基盤を作りたい

推奨チャネル:オウンドメディア(SEO記事、ホワイトペーパー)
理由:資産性が高く、継続的にリードを獲得・育成できるチャネル

  • HubSpotの調査では広告より62%低コストでリード獲得可能と報告
  • SEO記事からホワイトペーパーDL → MA活用という流れでナーチャリングの自動化が実現できる

5.4 営業リソースに余裕がない

推奨チャネル:メルマガ、ナーチャリングウェビナー
理由:営業を介さずにリード温度を高められる

  • MAスコアを活用し、ウェビナー参加者に対して自動でHOTリードへ通知した場合の商談化率は20~25%
  • パーソナライズされたメルマガ配信や、One to Oneコミュニケーションを意識した設計が重要視。週1配信で開封率20%超えを維持している企業も

5.5 展示会後の名刺フォローができていない

推奨チャネル:メルマガ配信、ウェビナー誘導
理由:「失注リード」の再エンゲージメント施策として効果的

  • 展示会後48時間以内のメール開封率は通常の1.5倍。即時のアプローチがカギ
  • 興味喚起テーマと連動したウェビナー誘導で、複数商談につながった成功事例も

5.6 自社単体ではリーチできない市場を狙いたい

推奨チャネル:代理店連携、業界団体活用
理由:信頼性のある外部チャネルを通じてターゲット市場へ到達可能

  • 販売パートナー経由で新規案件が生まれる確率は高く、中堅〜大手IT市場向けに特に有効
  • SaaS企業では、特定業界団体と連携し1カ月で80件の資料請求を獲得した例も

5.7 決裁者層へのアプローチを増やしたい

推奨チャネル:展示会出展、高単価ウェビナー
理由:高価値な接点で「接点の質」を高めることが重要

  • 展示会来場者の25%が部長職以上。対面接点での信頼構築が可能
  • 高単価ウェビナーでは「導入事例+ROI訴求」の構成が刺さりやすく、受注確度の高いリードを獲得

5.8 短期間でパイプラインを膨らませたい

推奨チャネル:リード保証型広告+ウェビナー誘導
理由:短期×数のリード獲得+中間育成施策として最適

  • リード保証型広告(例:ビジネスIT)では月間100件以上のリード獲得が可能
  • ウェビナー連携によって商談化率平均20%前後。HOTリードはスコアリングによって自動抽出される仕組みが有効

6.まとめ

本記事では「IT業界の企業が活用すべきマーケティングチャネル」について、それぞれの特性や優先度、選定のステップを体系的に解説してきた。

日本のIT業界では、これまで展示会などのオフラインイベントを通じたリード獲得が主流であり、そこから生まれる商談は成約確度も高い傾向があった。

しかし近年では、オウンドメディアや口コミサイト、資料比較サイトなどが有力なチャネルとして台頭し、リード獲得手段の多様化が進んでいる。

実際に成長している企業は、オンラインチャネルを戦略的に活用し、営業・マーケティングとの連動によってシナジーを生みだしている。

今後は、「どの段階のリードを強化したいのか」「どの顧客層を増やしたいのか」といった視点から、営業とマーケティングの役割分担、予算配分も含めてチャネルを最適化していこう。

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