リードナーチャリングとは?意味や手法・ツール・施策の手順を事例付きで紹介|成果につながるメール活用も解説

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リードナーチャリングは、見込み客(リード)の関心を高めながら、営業活動と連携して受注へとつなげるためのフォロー活動だ。

見込み客(リード)との関係性を構築し、適切なコミュニケーションを重ねることで、顧客ロイヤルティの向上や継続的な成果創出が期待できる。

特にBtoB領域では、オンライン/オフラインを問わず名刺交換やWebからの情報収集によってリードを獲得したあと、リードクオリフィケーション(見込み度の判定)を行い、段階に合わせたフォローを設計する必要がある。

「リードはそれなりに獲得できているのに、商談や成約に結びつかない」

「インサイドセールスを活用しているが、アプローチの優先度や確度が見極められない」

このような課題を抱えている場合、データを活用したリードナーチャリング体制の整備が解決の糸口になるかもしれない。

本記事では、リードナーチャリングの基礎的な考え方から、実践で役立つ手法、データを活用したアプローチの設計方法まで、具体例を交えて解説する。

目次

1. リードナーチャリングとは

「リードナーチャリングとは何か?」という疑問を持つ方に向けて、まずは基本から解説していこう。

リードナーチャリング(Lead Nurturing)とは、獲得したリード(=見込み客)を、自社商材を検討してくれるようになるまで「育成」することだ。

リードナーチャリングの定義

BtoBマーケティングでは「リード獲得(=リードジェネレーション)」することが最優先と思われがちである。

しかし実際は、広告などで大量のリードを獲得したあとに、なかなか商談化や受注につながらず投資回収ができないという課題に直面する企業は少なくない。

そうした事態を防ぐためには、リードナーチャリングによってニーズが顕在化していない見込み客を顕在層へと関心を高める行動の変化である態度変容(=パーセプションチェンジ)させる取り組みが必要となる。

パーセプションチェンジの重要性についてはこちらの記事も参考にしてほしい。

パーセプションチェンジとは?BtoBコンテンツマーケティングにおける実践方法

2. リードナーチャリングが重要な理由

「なぜリードナーチャリングは重要なのか?」
その答えは、BtoB特有の購買行動の長さや複雑さにある。

単にリードを獲得するだけでは受注につながらず、関係を育てていく取り組みが欠かせない。

リードナーチャリングが重要な理由は、以下の5つだ。

リードナーチャリングが重要な理由

  1. 販売サイクルが長い
  2. 深い情報提供が必要
  3. 営業効率の向上につながる
  4. コスト効率の向上につながる
  5. 競争優位性の向上につながる

それぞれ詳しくみていこう。

理由1.販売サイクルが長い

BtoBビジネスは、一般的にリード獲得〜受注までのサイクルが長いという特徴がある。

商材にもよるが、一般的に数日で受注することは稀で、多くは数か月、長いと1年以上かかることもあるだろう。

その期間、見込み客は毎日サービスのことを考えているわけではない。

一度は検討してもらえても、顧客側の業務多忙などの理由でどんどん後回しになり、いつしか検討していたことすら忘れられてしまうケースはよくある。

そのため、リードナーチャリングによって、定期的にサービスを思い出してもらうきっかけを与えることが重要だ。

【事例付き】カスタマージャーニーとは?作り方やすぐに使える作成例を紹介

理由2.深い情報提供が必要

BtoB向けの商材は深い情報提供が必要となる。

価格が高額となりやすいほか、簡単に返品・キャンセルができないため、導入担当者は周辺情報をくまなく集めて失敗しないようにするからだ。

特に、IT系などの複雑で専門知識が必要な商品・サービスは、初回のタッチポイントですべての情報を理解してもらうことは不可能だろう。

だからこそ、継続的に顧客と関係を築くリードナーチャリングが必要となる。

理由3.営業効率の向上につながる

リードナーチャリングをまったくしない場合、毎月のように大量の新規リード獲得と新規商談が必要となる。

そして、購入に至らなかったリードは消失することになる。

このような営業は効率が悪く、営業部隊の疲弊に直結するだろう。

リードナーチャリングに取り組むことで、見込み客の購買意欲を高め、受注率の向上や営業リソースの最適化を実現できる。

理由4.コスト効率の向上につながる

リードナーチャリングはコスト効率の向上に直結する。

特に、リード獲得の手段を大きく広告に頼っている場合、獲得したリードをうまく育成できなければ新規リード獲得のための広告費がかさみ、赤字になりかねない

マーケティングや営業の人件費についても同じことがいえるだろう。

理由5.競争優位性の向上につながる

あまり意識されないポイントだが、リードナーチャリングは競争優位性の向上にもつながるメリットがある。

効果的なリードナーチャリングは、顧客との深い関係を築き、ブランドへの信頼とロイヤリティを高める効果があるからだ。

競合他社よりも顧客との強固なつながりを確立し、長期的なビジネス関係を構築できる(=競争優位性の向上)だろう。

競合に勝つための「コアコンピタンス」とは?差別化の源泉となる価値の定義を進めよう

3.リードナーチャリングの主な施策(比較表付き)

次に、リードナーチャリングの主な施策について解説していきたい。

「どのような施策を選べばよいのか?」という疑問に答えるため、代表的な5つの施策を比較表で整理して紹介する。

リードナーチャリングの施策一覧

施策 特徴
(メリット)
手間 費用 難易度
メルマガ さまざまなトピックや情報を伝えることで、リードの関心を喚起できる。
ステップメール
  • 状況に応じたアプローチを実施することで、効率的にナーチャリングできる
  • 商談化率アップも期待できる
セミナー/ウェビナー
  • メールなどのコンテンツでは伝えきれない詳細な情報を届けられる
  • ほかの施策と比較して、訴求力が高い
ホワイトペーパー
  • 専門的かつ詳細な情報を提供することで、信頼性を構築できる
  • DLというハードルを設けることで、興味関心の高さを測れる
オウンドメディア
  • 継続的なコンテンツ提供を通じて、ニードの喚起や価値感の理解につながる
  • メールでは記載でない情報量を提供できる

それぞれの特徴とメリット・デメリットを詳しくみていこう。

施策1.メルマガ

メルマガ(メールマガジン)は、保有している見込み客(リード)に向けて配信する一斉メールだ。

発信する内容はセミナーやコンテンツの案内から商品・サービスに関する案内までさまざまだ。

ナーチャリングの観点では毎回販促色を強く出すのではなく、見込み客の関心が強いテーマを狙ってWebサイトのアクセスを増やす方向で内容を検討するとよいだろう。

メリット

メルマガのメリットは、さまざまなトピックや情報を伝えることで、リードの関心を喚起できる点だ。

そして、見込み客ごとの開封率やよく読まれているメールを分析し、リードのクオリフィケーション(評価)につなげていこう。

例えば、

  • 10回メルマガを配信して、1度も開封すらしていない顧客は自社に全く関心がない
  • リンク先を数回クリックしている顧客は潜在的な関心がある、
  • ほぼ毎回クリックしている顧客は強い関心がある

と、推察することができる。

デメリット

デメリットは、毎回の作成や配信に工数がかかる点だ。

BtoB企業のメルマガの配信頻度は週1〜2回、1通の企画・設定・配信にかける時間は1〜3時間や4〜6時間が多いという調査結果がある。

専任の担当を立て、計画的に配信を行っていこう。

メールを使ったナーチャリング手法については、こちらの記事を参考にしてほしい。

ナーチャリングメールを成功に導く作り方と活用ポイント

施策2.ステップメール

ステップメールはメルマガと似ているが、メルマガが毎回一斉・単発の発信なのに比べて、ステップメールはより見込み客の「育成」を意識し、個別に複数回の発信を行う点が異なる。

どのようなタイミング・条件で配信を開始し、また次のステップに移行させるのか、メール配信機能を持つツールで事前にシナリオを組んでおくのが一般的だ。

リードナーチャリング施策におけるステップメールとメルマガの違い

メリット

ステップメールは、より見込み客の状況に応じたアプローチになるため、効率的なナーチャリングにつながり、商談化率の向上が期待できる。

デメリット

デメリットとしては、ツールの導入が必要な点や、シナリオを組めるだけのコンテンツ・切り口の設計が必要で知見が求められる点が挙げられる。

しかし、シナリオが複雑になるほど効果検証が難しくなるため、一般的には3〜5回分ほどの一連のコンテンツを用意できればよいだろう。

ステップメールとは?BtoBで成果を出す配信方法とツールの紹介|シナリオ事例・例文も解説

施策3.セミナー/ウェビナー

セミナー/ウェビナーは、リードジェネレーション(リード獲得)の手段としても代表的なものだが、見込み客に深い情報を伝えられるという点で、リードナーチャリングにも活用されている。

リードジェネレーションとは?手法の選び方と課題対策・成果の測定方法を紹介

メリット

セミナー/ウェビナーのメリットは、30分〜1時間のように長い時間をかけて話すため、自然なナーチャリングがしやすい点だ。

よくあるコンテンツの構成として、前半で自社に関連するトレンドトピックや課題を提示し、後半でその解決策とともに自然に自社商品・サービスの紹介を行うというやり方がある。

また、メールや記事と比較して、より詳細な情報を提供できるため、訴求力が強い点も大きなメリットといえるだろう。

デメリット

デメリットは、コンテンツ設計の難易度がやや高い点だ。

特にリードナーチャリングの場合、すでにリード化している見込み客の育成が目的であれば、あまり啓蒙に寄りすぎた内容だと育成にならない。

よって、自社商品やサービスの理解を深めながらも、必要性を理解して購入への後押しとなるようなセミナー内容にする必要がある。

施策4.ホワイトペーパー

ホワイトペーパーとは、見込み客にとって有益な情報を掲載した資料のことだ。

Webサイトでは「お役立ち資料」といったカテゴリ名で掲載されることが多い。

ホワイトペーパーもリードジェネレーションとリードナーチャリングの両方に使える施策である。

メリット

ホワイトペーパーのメリットは、専門的かつ詳細な情報を提供することで、信頼性を構築できる点だ。

意思決定者が複数いる企業では、関係者や上層部に話を通すときにもホワイトペーパーがあると稟議を通しやすい。

また、ステップメールの後半にダウンロード資料として提供し、あえて「ダウンロード」というハードルを設けることで、興味関心の高さを測れるメリットもある。

デメリット

デメリットは、作成の手間や費用がかかることだ。

構成の立案やデザイン制作は専門的なノウハウが必要で、なかなか社内で取り組めないケースも多いだろう。

そのような場合は、専門的な企業への依頼を検討してみてほしい。

外注する場合、ホワイトペーパー1点につき一般的には20万〜40万円程度の費用がかかる。

ホワイトペーパーについてはこちらの記事で詳しく解説しているため、あわせて読んでみてほしい。

ホワイトペーパーとは?意味、構成、活用方法を徹底解説!

施策5.オウンドメディア記事

オウンドメディア記事とは、企業や組織が自社ホームページやオウンドメディア上に掲載し、ニーズを喚起するような情報や課題解決のノウハウ、ブランド価値を伝えるためのオリジナルコンテンツを指す。

オウンドメディア記事は、SEOの強化にも利用されているが、ナーチャリング施策にも幅広く活用されている。

メリット

オウンドメディア記事をナーチャリングに活用するメリットは、顧客教育やブランド信頼性の強化、長期的な顧客関係の構築につながる点だ。

定期的に価値あるコンテンツを提供(公開)することによって、顧客の購入プロセスを支援し、最終的なコンバージョンを促進する効果が期待できる。

デメリット

デメリットは、ホワイトペーパー同様に作成の費用や手間がかかること。

成果を得るにはSEOの知見も必須である。

ただし、外注するとしてもデザインの要素が少ないため、ホワイトペーパーよりはコストを抑えやすい。

オウンドメディアとは?役割、メリット、活用・運用の進め方

4. 顧客フェーズ別のナーチャリング施策

次に「顧客フェーズごとに最適な施策は何か?」を整理して解説していこう。

リードナーチャリングで提供する情報は、見込み客のフェーズ別に設計するとより効果的だ。

ここでは、どのような情報を提供すべきか、見込み客のフェーズ別に整理して解説していきたい。

「認知層」「興味・関心層」「比較・検討層」に分けてみていこう。

リードナーチャリングにおける見込み客のフェーズ

4.1 認知層向けのナーチャリング施策

認知層は、なんらかのきっかけでリード獲得には至ったものの、その後のアクションが見られず休眠状態になっている層だ。

認知層に提供すべき情報は以下の2つ。

  • トレンド情報:業界のトレンドについての情報や調査レポート
  • 気づきコンテンツ:何らかの課題やゴールに向けてヒントとなる情報

これらは自社への関心があるかないかに関わらず、多くの見込み客にとって、自社のビジネスを飛躍させるために役立つ情報といえるだろう。

また、認知層に対しては無理に販促はせず、まずはWebサイトへの訪問やホワイトペーパー閲覧、セミナー参加といった商談の手前のアクションをゴールにしよう。

定期的に情報を届けることで「この会社からは有益な情報を得られる」という印象を与えることが重要だ。

ただし、これらの切り口であればテーマは何でも良いわけではなく「自社へのロイヤリティが高い顧客はどのような情報を求める傾向にあるのか」ということから逆算してテーマを決めることが、興味・関心層へと育成するためのポイントである。

4.2 興味・関心層向けのナーチャリング施策

興味・関心層は、自社の商品・サービスの具体的な検討はしていないものの、定期的に自社サイトに訪れていたり、セミナーに参加していたりと何らかのアクションが見られる層だ。

興味・関心層に提供すべき情報は以下の3つ。

  • ノウハウ:課題解決に役立つノウハウやプロジェクトの立ち上げ方などの情報
  • ソリューション:課題の解決に役立つソリューションの種類や概要
  • ユースケース:課題や目的別のアプローチ方法などのユースケース

これらのコンテンツによって目指したいのは、自社がどのような分野に長けた企業なのか、どういった製品を扱っているのかを見込み客に意識づけることである。

なお、この段階でも自社の商品・サービスの紹介は必要最低限に留めておき「自社を検討する・しないに関わらず役に立つ内容」に仕立てるとよいだろう。

4.3 比較・検討層向けのナーチャリング施策

比較・検討層は「問い合わせ」や「サービス資料の請求」のような、明らかに自社への関心がうかがえるアクションがあったり、商談をしたことがある層だ。

比較・検討層に提供すべき情報は以下の2つ。

  • サービス紹介:自社サービスの紹介(短縮版があるとなお良い)
  • 導入事例:導入済みの顧客の成功事例の紹介

このフェーズの見込み顧客は「自社が他社と比較して何が良いのか」「実績はあるのか」を具体的に知りたがっているため、それに答えられるようなコンテンツを提供することが重要となる。

サービス紹介資料については、サービスの説明を網羅的に書いた資料とは別に「3分で分かる◯◯」のような簡易版資料を用意しておくと、顧客が社内で上申しやすいため喜ばれる可能性が高い。

また、導入事例は導入済み顧客に手当たり次第取材していくよりも、自社の顧客の業界・規模・エリア・企業成長フェーズなどの構成を分析し、ボリュームゾーンや業界・業種ごと豊富に用意するとよいだろう。

5.リードナーチャリングの実践手順6ステップ

では「どう始めればよいのか?」に応えるため、6ステップで手順を紹介していこう。

リードナーチャリングの手順

  1. リードを一元管理する
  2. KPIを決める
  3. 顧客分析をしてセグメントを分ける
  4. カスタマージャーニーを描く
  5. カスタマージャーニーに応じた施策を決める
  6. 施策実行、効果検証、改善を繰り返す

ステップ1.リードを一元管理する

まず、リードナーチャリングを行ううえでは、獲得したリードを一元管理することが大前提となる。

ホームページ経由のリード、セミナー経由のリード、名刺交換で獲得したリードなど、流入経路が分かれていても、バラバラのままでは施策を打つたびに手作業でリストを作らなければならず、工数が増大する。

CRMツールやMAツールなど、一つのプラットフォームに集約されていることが望ましい

ステップ2.顧客分析をしてセグメントを分ける

リードナーチャリングは、保有しているリードに一斉に同じ施策を行うよりも、セグメントを分けてそれぞれに応じた施策を打っていくほうが高い反応率が見込める。

セグメントの分け方はさまざまだが、あまり細かく分けても実行性に欠けるため、以下のようにある程度のボリュームを確保できる分け方がよいだろう。

  • 企業規模
  • 業界
  • 職種

なお、すべてのセグメントに平等に施策を打たず、特に初めは、受注見込みが高く注力したいセグメントを絞っていく方法でも問題ない。

<「誰に・いつ・何を届けるか」が成果を左右>

リードナーチャリングにおいては「誰に・どのタイミングで・どのような情報を届けるか」というパーソナライズ視点が成果を大きく左右する。

購買行動の段階に応じて情報の受け取り方の度合いは異なり、例えば経営層と現場担当者では、課題に対する感じ方や必要とする提案の粒度が違う。

また「今すぐ解決策を検索している層」と「展示会やSNS経由で初めて接点を持った層」では、課題の明確さや解決に向けた温度感も異なる。

こうした違いを理解したうえで、段階的なアプローチを設計することが重要だ。

<セグメント抽出とデータ連携による効率的な運用>

近年では、名刺情報やフォーム入力、動画視聴履歴などから特定の参加者属性を抽出し、SFAを使用してセールスチームと連携しながらセグメントごとの購買意欲を可視化・効率化する仕組みを導入する企業も多い。

こうした企業では、セグメンテーションとチャネル選定を軸にしたデジタルセールスのフレームワークが確立されつつあり、それ自体が営業成果の指標として社内で評価されている。

パーソナライズ設計で信頼関係を高める>

そのため、セグメントごとに配信内容やコンテンツを出し分ける“分けて届ける”戦略を設計しておくと、反応率の向上や商談化率の改善にもつながりやすい。

以下のようなパーソナライズ設計を行うことで、信頼関係を高められるポイントになるだろう。

「ペルソナごとの背景」
「現在の行動履歴」
「抱えている悩み」

以前は対面営業が主流だった企業も、DXやマーケティングオートメーションの普及により、オンラインチャネル(メール・Facebook・ブログなど)を中心にした運用へと移行している。

MAツールやリターゲティング広告、AIによるスコアリングを活用すれば、こうしたセグメント単位でのメール配信やシナリオ分岐を自動化することも可能だ。

「放置」されがちな休眠リードに対しても、自動送信・追客による信頼構築が進むだろう。

<継続と改善の体制が重要>

最初から完璧な分類を目指す必要はないが、「分けて届ける」視点を持つことで、ナーチャリング施策全体の精度を高められる。

運用の途中で成果が出ない施策を“放置”せず、抽出された指標に応じて改善案を提示・共有できるチーム体制や外部パートナーのサポート体制を整えることも重要だ。

ナーチャリングは一度で終わる活動ではなく、「始めて、続ける」なかで成功パターンを磨いていくフレームワーク型の取り組みであり、売上や案件創出への貢献を可視化していくことが、営業・マーケ連携の鍵となる。

ステップ3.KPIを決める

適切な効果検証をするために、リードナーチャリングのKPIを決めていこう。

最も納得感のあるKPIの決め方は、事業目標から逆算する方法だ。

前提として事業目標を達成しようとするときには「目標の商談数」から逆算して「新規リード獲得の目標件数」を設定するのが一般的である。

しかし、その件数を新たに獲得しきるのは難しいケースは少なくない。

その場合は、新規リードでは補いきれない商談の数を「既存リードからのナーチャリングで創出する」という考え方になる。

リードナーチャリングのKPI設定|実はBtoBで超重要なプロセス

ステップ4.カスタマージャーニーを描く

セグメントを分けた見込み客がどのようなタッチポイントを経て自社の商品・サービスを導入するに至るのかを、できるだけ解像度高く想像してみよう。

顧客の思考、行動、求めている情報、タッチポイントなどをフェーズ別に洗い出して設計する必要がある。

リードナーチャリングでのカスタマージャーニー

【事例付き】カスタマージャーニーとは?作り方やすぐに使える作成例を紹介

ステップ5.カスタマージャーニーに応じた施策を決める

カスタマージャーニーを描いたら、各フェーズでどのような施策を行うのか、どのようなコンテンツを当てていくかを検討し、段階的なシナリオとして整理していく。

ターゲットとなる業界の課題や自社サービスとの相性、リードの熱度などを総合的に見て、「今、誰に、どの情報を届けるべきか」を考慮して立案しよう。

ナーチャリングにおいて、ステップ5が最も難しい工程であるため、社内のマーケティングチームや営業部門とも連携しながら時間をかけて検討することが重要だ。

コンテンツは“フェーズ別の目的”に応じて設計する

下図のように、顧客(リード)の状態は「課題認知前」から「意思決定」まで段階的に変化していく。

カスタマージャーニーに近いステップ構造として、各フェーズで提供すべき情報やコンテンツの役割を明確にしておくと、ナーチャリング全体の精度が大きく高まる。

コンテンツ設計

以下では、顧客(リード)のフェーズごとの施策の種類や選び方を詳しく解説している。

ぜひ参考にしてほしい。

リードナーチャリングの施策8選!検討フェーズごとの選び方や具体例を解説

ステップ6.施策実行、効果検証、改善を繰り返す

ここまで設計ができたらあとは実行あるのみだ。

実行にあたっては、MAツールを活用し、できるだけ自動化していくとよいだろう。

そして、ある程度の期間施策を回したら、定期的に効果検証を行う必要がある。

評価するうえでは、最初に決めたKPIが判断基準となる。

KPIを達成していない場合は、アプローチの手法が悪いのか、コンテンツが悪いのか、あるいは描いたカスタマージャーニーが実態と異なっているのかなど、さまざまな原因を視野に入れて分析していこう。

6.リードナーチャリング施策の設計ポイント

リードナーチャリング施策を設計する際に押さえておきたいポイントは以下の3つだ。

リードナーチャリング設計ポイント

  • 施策を組み合わせる
  • MAツール(スコアリング)を活用する
  • マーケティング部門と営業部門で情報共有する

それぞれ詳しくみていこう。

ポイント1.複数の施策を組み合わせる

本記事でいくつか施策および比較表を紹介したが、リードナーチャリングはどれか一つに施策を絞るのではなく、複数を組み合わるのが基本的なやり方だ。

例えば、メールマガジンやステップメールのように、メールの文章だけでは伝えたいことを十分に訴求できない。

そのため、メールには概要を簡潔に書くのみにして、ホワイトペーパーやセミナー、オウンドメディアの記事に誘導しよう。

また、誘導した先のコンテンツで課題解決や訴求を十分に行えるため、1つの施策のなかでメッセージを詰め込みすぎないことも重要である。

ポイント2:MAツールを活用する

リードナーチャリングを効果検証も含めてしっかりと行っていくためには、MAツール(マーケティングオートメーションツール)の導入が不可欠だ。

MAツールにはリードの一元管理機能やメール配信機能が備わっているが、ナーチャリングの面で特に活用したい機能が「スコアリング」である。

リードスコアリングとは?BtoBでの設計、運用のポイントや実施すべきタイミングを徹底解説!

スコアリングにより、保有リードの役職・職種や、Webサイトの閲覧履歴、メールの反応履歴などをもとにリードを点数付けし(=スコアリング)、点数の高いリードへ優先的にアプローチしていくことが可能となる

リードが蓄積されてくると、営業リソースの問題ですべてのリードに平等に対応できなくなるため、リソースを最適化するためにもMAツールが必要となるだろう。

ポイント3.営業部門から顧客の情報を吸い上げる

リードナーチャリングは、実務としてはマーケティング部門の仕事になることが多いものの、営業部門との情報共有や相談をこまめに行うことも大切だ。

新たなコンテンツを作る際は、顧客の課題感やニーズなど、顧客の興味関心が強い領域が何かを把握することが重要となる。

このような情報は、日々顧客対応をしている営業担当の方が熟知しているといえる

また、ナーチャリングの効果検証をするうえでも営業担当の声は重要となる。

例えば、一定の条件をクリアした優良見込み客を営業担当者にリストとして提供した場合、実際の反応率はどうだったのか、後日ヒアリングする。

あまり良い感触を得られなければ、スコアリングの条件やナーチャリングのやり方を見直してみる必要もあるだろう。

7. 営業連携と体制の設計

リードナーチャリングの成果を最大化するには、営業部門との連携体制をあらかじめ設計しておくことも重要である。

ナーチャリングはマーケティング部門が主導するケースが多い。

しかし、最終的に見込み客と対面や電話などで直接対話し、案件化や受注へとつなげる役割を担うのは営業部門だ。

そのため、両者の情報連携や役割分担が曖昧なままでは、期待される売上成果を得るのは難しい。

リードの購買フェーズとMQL・SQLの関係図

特に、次の3点を明確に定義し、セールスチーム全体で共通認識を持っておくことが効果的だ。

ホットリードの定義と営業への引き渡し条件

MAツールやSFAを用いてスコアリングを行う際には、「どのような行動や属性をもって確度が高いと判断するのか」という明確な指標を、営業部門とすり合わせておく必要がある。

例えば、特定のフォーム送信やセミナー参加など、購買行動の度合いや関心の質を示す行動が“ホットリード”の条件となる場合が多い。

こうした合意があることで、引き渡し後のミスマッチや対応遅れといった“放置”リスクを軽減し、商談化率の向上につなげられる。

ナーチャリング活動の精度を高めるには、この“分けて届ける”フレームの構築が重要だ。

MQLとSQLの違いは?概念や評価基準、マーケティングとセールスの連携ポイントを徹底解説!

ナーチャリング施策の企画段階からの共同設計

施策の前段階で、営業部門を巻き込むことで、ペルソナの明確化や購買背景に即した企画提案を行いやすくなる。

例えば、展示会で取得した名刺情報や、動画コンテンツ・SNS広告などを活用したキャンペーン設計は、マーケ単独ではなく、営業の肌感覚を取り入れることで成功確度が高まる。

施策の目的や、終了後に営業がどう活用するかといった運用面のすり合わせも、初期の段階から設計に組み込んでおくことで、情報の“見える化”が進み、結果としてチーム全体の生産性向上にも寄与する。

営業からのフィードバック体制の構築

施策実施後やリード提供後には、営業担当から「どのリードが有望だったか」「どのチャネル経由の参加者に反応があったか」など、定性的・定量的な声を吸い上げる仕組みを用意しておくとよい。

これにより、抽出された指標や反応結果に応じて、配信内容やセグメンテーションの改善が可能となる。

近年は、SFAやMAツール、AIによるスコアの分析結果をもとに、自動化された改善提案を行う仕組みも普及しており、運用フェーズを継続的に最適化する取り組みが進んでいる。

8. よくあるナーチャリング事例

最後に「実際にどのような事例があるのか?」を3つのケースで紹介したい。

事例1.ステップメールでのナーチャリング

ステップメールは工夫の余地が多くあるナーチャリング手法だ。

例えば、1週間に一度、同じ曜日・時間帯に認知層向けのコラムやホワイトペーパーをステップメールで複数回配信するといったやり方がある。

1か月(4回以上)続いてくると、受け手側にとっても「よく情報をくれる会社」という印象がつき、想起率を高めることが可能だ。

その時点で、一度これまでのメールの開封率やクリック率をチェックし、一定の基準を超えていれば次の比較・検討層向けのコンテンツを配信していくといった具合に、段階を踏んでアプローチするとよいだろう。

また、クリックしたコンテンツの内容によってセグメントを分け、コンテンツの最適化を図っていく方法も効果的だ。

ただし、毎回営業的な内容では「役に立たない情報」ばかり送ってくる会社というイメージを与えてしまい、メールマガジンの登録を解除される確率が高くなるため注意してほしい。

あくまでも「役立つ情報」を配信し、最後に「軽く」セミナーや商品に触れるのがセオリーである。

事例2.セミナー・イベント後のナーチャリング

セミナーやイベントで新規リードを大量に獲得したタイミングは、ナーチャリングの絶好の機会といえる。

ナーチャリングでは、セミナー参加者の出欠、アンケートの回答、資料のダウンロード状況などによって、細かくシナリオを分岐していくことが重要だ。

アンケートで自社への関心が確認できた顧客は、最も見込み度が高い顧客である。

一方で、アンケートには回答していない顧客のなかにも、実は比較検討フェーズの顧客がいる可能性がある。

したがって「情報交換」という点で商談を打診してみるというアクションも有効となるだろう。

ナーチャリング施策

また、ナーチャリングは複数回接点を持つことが基本だ。

セミナー直後のアクションだけではなく、その後の流れも想定してシナリオを組んでいこう

例えば、商談打診をして断られたり、返信がなかったりした顧客は、認知層向けのライトなコンテンツをステップメールで届けることから始める、といった施策が考えられる。

事例3.ホットリードの定義の見直し

商談化が見込めるホットリードをどのように定義するかは、特に初期のころは難しい。

「サービス紹介のページを閲覧している」「セミナーに●回来ている」などが基準として考えられるが、最初は決め打ちにせざるを得ないだろう。

そのため、ホットリードの定義を定期的に見直すことも、ナーチャリングの精度を上げていくための大事な取り組みとなる。

営業に渡したリードのうち、具体的に何割が商談化・受注に至ったのかを数値化し、客観的な根拠をもって見直しを行っていこう。

9. まとめ

この記事では、リードナーチャリングが重要な理由や代表的な施策の一覧、ナーチャリング時に提供すべき情報や、ナーチャリングのステップ、重要なポイントなどを詳しく解説してきた。

リードナーチャリングは、実施しないことによる損失が見えづらいことから、後回しにされがちだ。

しかし実際には、ナーチャリングを徹底してやっているか否かで、営業効率やコスト効率に大きな違いが出てくる。

施策の種類自体はそこまで多くなく、手順や気をつけるべきポイントもある程度決まっているため、ぜひこの記事を参考にしながらナーチャリングに取り組んでみてほしい。

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監修者情報

野崎 晋平(btobマーケティングコンサルタント)

SIerにてERPの開発・導入を経験後、東証プライム上場企業の情報システム部門にてIT企画や全社プロジェクトを推進。情シス向けに個人で立ち上げたオウンドメディアは月間10万PVを達成。現在は、ITとマーケティングの知見を組み合わせて、IT企業向けにBtoBマーケティング支援を手がけている。

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