メールマガジン(通称メルマガ)は、低コストでプッシュ型の訴求ができ、かつ効果測定による最適化が進めやすいなど、メリットが大きく多くの企業で導入されている。
特にBtoB企業では、店舗を持たず、顧客との接点が限られ、顧客の購買検討期間が長いので、メルマガは重要なコミュニケーション手段の一つだ。
一方で、多くの企業がメルマガを配信しており、受け手にとっては飽和状態ともいえる。
「何をしても開封率が上がらない」
「競合他社では開封率が担保できているのか」
「開封率を上げるための真の方法を知りたい」
と悩む人は多いだろう。
そこで本記事では、メルマガ開封率の計算方法や調べ方などの基本情報に加え、開封率の平均値、さらに開封率を上げるためのコツを解説する。
目次
1. メルマガの開封率とは?
まずはメルマガの開封率の計算方法と、あわせて確認すべきその他の計測指標をおさえておこう。
1.1. メルマガの開封率とは?計算方法
メルマガの開封率とは配信されたメールマガジンが受信者によってどれだけ開封されたかを示す割合である。
具体的には以下の数式で計算できる。
開封率(%)= (メールを開封した人数 ÷ メールを送信した人数) × 100 |
たとえば、5,000件メルマガを配信して開封されたのが1,000件だった場合、(1,000÷5,000)×100=「20%」が開封率である。
1.2. その他のメルマガの計測指標
メルマガの効果は開封率だけでなく、以下の4種類を計測すればより精緻に分析できる。
計測指標 | 内容 |
開封率 | 開封率(%)=(メールを開封した人数 ÷ メールを送信した人数) × 100メルマガの件名や送信タイミングが受信者にどれだけ魅力的か、また、メルマガ自体にどれだけ興味を持たれているかを判断する基準 |
クリック率 | クリック率(%)=(メール内のリンクをクリックした人数 ÷ メールを送信した人数)×100メルマガ内のリンクがどれだけ興味を引き、受信者が行動を起こすきっかけになっているかを判断する基準 |
送信エラー率 | 送信エラー率(%)=(メール送信エラーになった人数 ÷ メールを送信した人数)×100配信リストの質やメルマガが正確に届けられているかを判断する基準 |
配信停止率(購読解除率) | 配信停止率(%)=(配信停止した人数 ÷ メールを送信した人数)×100メルマガの内容や配信頻度が受信者にとってどれだけ価値のあるものか、または煩わしさを感じさせていないかを判断する基準 |
1.3. 開封率と他のKPIの違いは?
メルマガ施策を評価するとき、多くの担当者がまず注目するのが「開封率」だろう。開封率は確かにわかりやすく改善しやすい指標だが、それだけで成果を判断してしまうのは危険だ。
メールマーケティングでは、読者の行動を段階的に追いかける複数のKPIが存在し、それぞれ異なる役割を持つ。ここでは、開封率とほかの指標の違いを整理し、IT業界ではどのような点を重視すべきかを見ていこう。
・開封率の重要度
開封率は、メールが届き、件名や送信者名が関心を引いたかを示す「入口」にすぎない。
開封されたからといって本文が読まれるとは限らず、行動につながる保証もないのだ。
たとえば、SaaS企業が新機能を案内するメルマガを配信した場合、開封率が30%でもリンククリックが1%未満なら成果には直結しない。
逆に開封率が平均的な20%でも、クリック率が高ければセミナー申込や資料請求につながることがある。
・KPI全体を理解しよう
メールマーケティングでは、開封率のほかにクリック率、コンバージョン率、解除率、迷惑メール判定率など複数の指標を組み合わせて評価する。
開封率は「件名・送信者・配信時間帯」の有効性を測る一方で、クリック率は「本文やCTAが有効だったか」を確認するための指標だ。
さらに、コンバージョン率は「セミナー登録や商品購入など最終的な成果」を示し、解除率は「配信内容や頻度の適切性」を映し出す。
つまり、開封率だけを追っても全体像はわからない。
・IT企業のメルマガ開封率
開封率は改善のヒントを得るために重視すべきだが、ゴールに据えてはいけない。
件名やプリヘッダーをABテストし、配信の曜日や時間帯を調整するには欠かせない指標であるものの、そこに固執すると「読者が本当に本文を読んだか」「行動につながったか」といった本質を見失ってしまう。
開封率は“必要条件”であり、クリック率やコンバージョン率と合わせて総合的にKPIを評価することが、成果につながるメルマガ運用の鍵だ。
2. メルマガの開封率の平均値
「メルマガの開封率は一体どれくらいをめざせばよいのか」と悩む人も多いだろう。
母集団をどこに置くかによっても平均値は大きく異なるため、ここではいくつかの切り口からメルマガの開封率の平均値を紹介する。
2.1. 日本全体の平均値
メール配信ツールを提供するBenchmark Emailの2023年の調査によれば、日本のメルマガ開封率の平均値は31.75%である。
ただし、開封率は業種や業態によっても大きく異なる。
次に紹介する業種・業態別の平均値を参考にするほうが、より適切な指標となるだろう。
出典:平均メール開封率・クリック率レポート (2024年度版) 業種別・地域別(国別)の最新情報|Benchmark Email:https://www.benchmarkemail.com/jp/email-marketing-benchmarks/
2.2. 業種別の平均値
以下は同調査における業種別の平均値である。
たとえば弊社がマーケティング支援を行うIT企業(=以下表においてテクノロジー/通信)の平均値は、20.33%となっている。
ただしこの数値はBtoB・BtoCを問わない。
業種別 | 平均開封率 |
広告/マーケティング/PR/メディア/デザイン | 26.41% |
建築・建設 | 16.86% |
観光/エンターテイメント/ホスピタリティ | 27.59% |
教育(大学、社会人) | 12.77% |
コンサルタント/HR/人材 | 20.33% |
ファイナンス | 17.94% |
医療 | 28.14% |
保険 | 17.92% |
製造/物流/エンジニアリング | 17.03% |
NPO/行政サービス | 32.65% |
不動産 | 26.65% |
小売/消費サービス | 24.28% |
教育(小中高) | 16.73% |
テクノロジー/通信 | 20.33% |
フィットネス | 24.46% |
業種不明 | 21.44% |
出典:平均メール開封率・クリック率レポート (2024年度版) 業種別・地域別(国別)の最新情報|Benchmark Email:https://www.benchmarkemail.com/jp/email-marketing-benchmarks/
2.3. BtoB企業の平均値
それではBtoB企業に限定した開封率の平均はどの程度なのだろうか。
株式会社IDEATECHの2024年のアンケート調査によれば「(開封率が)11%~20%」が24.3%、「21%~30%」が24.3%、「6%~10%」が13.6%という回答結果となっている。
30%を上回る場合は一般的なBtoB企業よりも高い成果が出ており、逆に10%を下回る場合は改善の余地があると捉えてもよいだろう。
開封率の範囲 | 回答割合 | 傾向・解釈 |
6%〜10% | 13.6% | 改善が必要な水準。件名や配信リストの精査が必須 |
11%〜20% | 24.3% | 最も多い層。平均的なBtoB企業の水準 |
21%〜30% | 24.3% | 平均より高め。成果が出ている状態 |
30%以上 | 少数 | 高い成果。件名や配信設計が読者にマッチしている可能性大 |
出典:【BtoB企業におけるメルマガ成果の実態調査】配信頻度は「月に2〜3本」開封率は「11%〜30%」が最多、メルマガ配信後のインサイドコール件数は「6件〜10件」が最多の実態! | 株式会社IDEATECHのプレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000249.000045863.html
・IT企業特有の傾向
BtoBのなかでもIT企業やSaaS事業者は、製品アップデートやセミナー告知といった情報提供が頻繁に行われるため、開封率が高くなる傾向がある。
特に、新機能のリリースや料金プラン改定など、顧客にとって業務に直結する内容は20〜30%台を記録しやすい。
一方で、配信頻度が多すぎたり、内容が広告色の強いものであったりすると、開封率が平均以下に落ち込みやすいのも特徴だ。
3. メルマガの開封率はなぜ重要と言われるのか?
メルマガの開封率が重要な理由は、その後の「リンククリック」や「コンバージョン」と密接に関連しており、全体的なマーケティングの成果に影響を与える点にある。
マーケティング担当者が最終的にめざすのはコンバージョンの増加だ。そのためにはまず開封してもらえるかどうかが、最初の関門になる。
しかし、開封率だけでは不十分という面もある。
前章で述べたとおり、開封率はあくまで「入口」であり、件名や送信者に興味を持ったかを示す指標にすぎない。
本文が読まれなかったり、クリックや申込につながらなければ成果とはいえないのだ。
実際に、開封率が30%でもクリック率が1%未満では効果は限定的であり、逆に開封率が20%前後でもクリック率やコンバージョン率が高ければ、十分な成果が得られるケースもある。
つまり、開封率はマーケティングの出発点として欠かせない一方で、クリック率やコンバージョン率と組み合わせてこそ意味を持つ指標といえる。
重要なのは「開封されたか」ではなく、その後「どのような行動につながったか」を含めて一気通貫で評価することだ。
3.1 成果につながる「認知 → 信頼形成 → リード獲得」の流れ
BtoBの購買プロセスは「課題認知前 → 課題認知 → 解決策収集 → 比較検討 → 意思決定」と段階的に進んでいく。
メルマガの開封率は、この一連の流れの“起点”としての働きをしてくれる。
3.2 ステップメールで顧客フェーズを促す
単発のメルマガにとどまらず、上記顧客フェーズを意識したステップメールを設計して段階的に顧客をナーチャリングする方法も効果的だ。
たとえば、
- 最初のメールで課題提起を行う
- 次のメールで解決策やノウハウを提示する
- 続いて導入事例や比較情報を提供する
といった流れを組むことで、読者を「認知」から「信頼形成」「リード獲得」へと自然に進められる。
これは購買プロセスを意識したナーチャリング施策であり、開封率を顧客育成の起点として最大限に活かすアプローチだ。
4. 開封率が低い原因は?—よくある失敗例
BtoB企業のなかでもIT業界では、情報発信の頻度や内容が特殊であるため、開封率が低下する失敗が目立ちやすい。
とくに「件名」「時間帯」「頻度」「ターゲティング」といった基本設計を誤ると、せっかくのメルマガが読まれないまま埋もれてしまう。代表的な失敗例を見ていこう
- 件名が長すぎて要点が伝わらない
40文字以上の冗長な件名は、受信トレイで切れてしまい、興味を引けない。 - 配信時間帯が読者の業務リズムとずれている
夜間や休日に送ると見逃されやすく、翌朝にはほかのメールに埋もれてしまう。 - 配信頻度が多すぎて“迷惑メール”と認識される
特にセミナー案内を毎週送るケースは逆効果になりやすく、解除率上昇につながる。 - ターゲットセグメントが不明確
見込み度合いや業種に関わらず一律で送ると、内容が読者ニーズに合わず、結果的に低開封率となる。
こうした失敗がIT企業で多い背景には「情報量の多さ」と「専門性の高さ」がある。SaaSやソフトウェアの世界では、新機能リリースや料金改定、セミナー告知など発信すべき情報が多いため、つい件名が長くなったり、頻繁に配信したりしがちだ。
また、技術的な内容をそのまま盛り込むと専門用語が増え、読者にとって理解しにくいメルマガとなる。
対象業種や企業規模が幅広いIT企業では、セグメントを切らずに一斉送信してしまうことも多く、結果として「誰にとっても響かない内容」になりやすい。
5. メルマガの開封率の調べ方
自社のメルマガの開封率をどのように調べればよいかわからない人もいるだろう。
ここでは2通りの調べ方を説明する。
5.1. メール配信ツールを使った調べ方
メール配信スタンドやMAツールといったメール配信機能を持つツールを導入している場合は、特段の追加設定を行わずとも、簡単に開封率が確認できる場合が多い。
具体的な確認方法はツールごとのマニュアルを参照してもらいたいが「レポート」や「分析」のページでクリック率や配信停止率といった他の指標とあわせて確認できるだろう。
共通する留意点としては、開封率を調べるためには「HTMLメール」で配信することである。
メール内に埋め込まれたHTMLタグの発火によって開封イベントを計測する仕組みになっているため、テキストメールでは開封率が取得できない。
ただし、ここで得られるのは「開封したかどうか」の事実までであり、読者がメールをどの程度の時間読んだか(滞在率)までは計測できない点に注意が必要だ。
つまり、開封率が高くても、本文をすぐに閉じている可能性もあるため、クリック率やコンバージョン率と組み合わせて評価することが重要となる。
なお、以下の記事ではおすすめのメール配信ツールを紹介しているので、ぜひ、参照してもらいたい。
5.2. Google Analytics 4を使った調べ方
アクセス解析ツールのGoogle Analytics 4(通称GA4)を使った開封率の調べ方もある。
ほとんどのメルマガ配信ツールでは開封率の確認が可能だが、GAで他のウェブサイト指標も含め横断的に確認・管理したいという場合に活用するとよいだろう。
GA4で提供されている「Measurement Protocol」というAPIを使うと、ウェブページの訪問やアプリのイベントに限らず、サーバーから直接イベントデータをGoogle Analytics 4に送れる。
これにより、メールの開封など、通常のクライアントサイドの計測では捉えにくいデータもトラッキングできるようになる。
<GA4でメルマガ開封率を取得する手順>
- GA4にログインする
- ダッシュボードの「管理」セクションから「データストリーム」を選択し、「ウェブストリームの詳細」に進む
- 「Measurement Protocol API secret」をクリック
- 「作成」ボタンを押して新しいAPI Secretの作成画面に進み、任意の名前を設定して「作成」をクリック
- Event BuilderにGA4と同じアカウントでログインする
- 以下の通り、入力する
- client: gtag.jsを選択
- api secret: 手順4で作成したAPI Secretの名前を入力
- measurement id: GA4の計測IDを入力
- client id: 任意のIDを入力
- event category: Customを選択
- event name: 任意のイベント名を入力
- Parameters: nameに任意のパラメータ名、string valueに「open」と入力
- 「VALIDATE EVENT」をクリック
- GA4の「レポート」→「エンゲージメント」→「イベント」セクションで、イベントの発火を確認
- 「Request info」にあるコードをコピーし、HTMLメールに埋め込む
5.3 測定データを読み解くための注意点
開封率の数値は便利な指標だが、そのまま鵜呑みにするのは危険だ。
特にIT企業では、セキュリティ環境や配信リストの構成によって誤差が生じやすく、慎重な解釈が求められる。
① 計測環境による誤差を加味する
開封率は、メール本文内に埋め込まれたトラッキング用の画像が読み込まれたかどうかで計測されるのが一般的だ。
そのため、画像がブロックされている環境では、実際に読まれていても未計測になることがある。
また、法人のセキュリティ対策によっては開封情報が遮断され、実態より低く表示されるケースも少なくない。
② 開封率のみに依存しない
開封率が低めでも、クリック率や資料ダウンロード数が伸びていれば成果が出ている可能性がある。
逆に、開封率が高くてもコンバージョンにつながらなければ、施策の成功とはいえない。
複数のKPIを組み合わせて評価することが必須だ。
③ ターゲット外のリストも把握する
配信リストのメンテナンスが不十分だと、すでに役職が変わった人や購買権限を持たない層、さらには本来ターゲット外のメールアドレスが含まれていることがある。
こうした「ターゲット外」が多いと、開封率が不自然に下がり、正確な評価ができない。
リストを定期的に見直し、有効な読者だけに届く状態を維持することが開封率を正しく解釈する前提となる。
6. 開封率とKPIの関係
メルマガの成果を評価する際、多くの担当者が「開封率」に注目する。
確かに重要な入口指標だが、それだけに依存してしまうと本来の目的であるリード獲得や収益化との関係を見失いかねない。
そこで必要となるのが、開封率とほかのKPIを組み合わせて捉える視点だ。
どこまでを目標とし、最終的にどの数値に到達すべきかを設計してこそ、デジタルマーケティング施策は真価を発揮する。
6.1 KPI設定の重要性
メルマガの開封率は施策評価の入口指標として有効だが、それ単体では不十分だ。マーケティング全体の流れを把握するためには、クリック率やコンバージョン率、さらにはセミナー申込数やホワイトペーパーのダウンロード数など、中間KPIまで設計する必要がある。
こうしたKPIを体系的に設定することで「開封されたかどうか」から「リード化・商談化につながったかどうか」までを一気通貫で評価できる。
KPI設計の具体例は以下の記事でも詳しく紹介している。
6.2 開封率が低くても成果を出せるケース
開封率は平均的であっても、ほかの指標で成果を出せるケースは少なくない。
たとえば、対象を明確に絞ったセグメント配信では配信数が少なく、開封率は20%前後にとどまることがある。
しかし、読者のニーズに合っていればクリック率や申込率が高まり、結果として営業案件化につながるだろう。
また、開封率の評価は自社の過去実績だけではなく、業界平均と比較することも重要だ。
特に、IT企業やSaaS事業者のように情報更新の頻度が高い業界では、同じ20%でも「十分高い」と評価できるケースがある。
つまり、開封率はあくまで必要条件であり、ほかのKPIや業界水準と組み合わせて評価することで、初めて真の効果が見えてくるのだ。
7. 開封率向上のための注意点
メルマガの開封率を改善する際には、単に数値を算出してアップさせることを目標にするのではなく、「読者がなぜ届いたメールを開くのか」という行動心理を理解することが重要だ。
デジタルマーケティングの現場では、開封率に固執するあまり、方針を誤って逆効果を招くケースも少なくない。
ここでは、開封率の向上において注意すべきポイントを解説する。
7.1 受信者のニーズを理解する
開封率を上げるうえで最も大切なのは、読者が「知りたい」と思うテーマを届けること。
特に、IT企業やSaaS会社のように情報更新の頻度が高い業界では、業界トレンドや導入事例、法改正や制度変更の速報などをタイムリーに届けると効果的だ。
さらに、スマートフォンやLINEなど異なる形式やデバイスに対応して配信設計を行えば、読者が気軽に読みやすくなり、開封率アップにつながるだろう。
以下のように、読者の業務に直結する情報を盛り込むことが有効だ。
- 業界トレンド
- 導入事例
- 法改正や制度変更の速報
7.2「やってはいけない」NG施策
短期的に数値を上げようとして行うNG施策も存在する。
たとえば、内容と乖離した釣りタイトルを記載する、週3回以上の過剰な配信頻度にする、ターゲット外や無効なメールアドレスをリストに残したまま送信する、といった施策だ。
これらは一時的に数値を押し上げるように見えても、受け取った読者の信頼を損ない、解除率や迷惑メール判定の増加につながる。
結果として、会社全体のシステム上の信頼性を低下させ、個人情報保護や情報セキュリティの面でも問題を引き起こしかねない。
- 釣りタイトル(内容と乖離した件名)
- 過剰な配信頻度(週3回以上のセミナー告知など)
- 配信リストのメンテナンス不足(ターゲット外や無効アドレスを放置)
上記のような対応は一時的に数値を改善しても、結果的に解除率増加や信頼失墜につながるため注意が必要だ。
8. 成功事例の紹介
実際にどのようなメルマガが高い成果を上げているのだろうか。ここでは、高開封率を達成した成功事例と、失敗事例から学べる改善ポイントを紹介する。
業界ごとの特徴やデジタルマーケティングの形式の違いを理解することで、自社の施策に活かせる知識が得られるはずだ。
8.1 高開封率を達成したメルマガの特徴
成功しているメルマガには、以下のような共通点がある。
- 件名は20文字前後で要点を明確に伝える
- プリヘッダーで「読む理由」を提示する
- 平日午前(業務開始直後)に配信し、読者の目に留まりやすくする
こうした設計はWebとスマホ両方の形式に対応しており、非常に有効だ。
8.2 業界別の成功事例
業界によって、読者の期待や配信の最適な形式は大きく異なる。ITやSaaS業界では新機能リリースやシステム改修といった「最新情報の速報性」が重視される一方、金融業界では「法改正や制度変更」といった業務に直結する知識の提供が効果的だ。
つまり、各業界ごとに読者が「役立つ」と思うテーマを把握し、適切なタイミングで届けることが、開封率やクリック率の改善につながる。
以下に、実際に成果を上げた具体例を紹介しよう。
- SaaS事業者:新機能リリースを案内するメールにデモ動画リンクを添えた結果、CTRが10%以上を記録。
- 金融業界:法改正の速報をタイムリーに配信し、開封率が40%を超えたケースも報告されている。
9. BtoBのメルマガの開封率を上げるコツ10選
最後に、メルマガの開封率を上げるためのコツを紹介する。
コツ1.件名(タイトル)は簡潔で興味を引くものにする
メルマガのタイトルは受信者が最初に目にする部分で、開封率を大きく左右する要素だ。
よって、受信者の興味を引きやすい内容にする必要があるが、瞬時に主旨を理解できるシンプルな構成にすることも意識したい。
また、タイトルが長すぎると受信環境によっては重要な部分が見切れるおそれもあるため、一般的には日本語で15〜25文字程度が推奨される。
また、特に重要なキーワードはできるだけ件名の先頭に持ってくるほうが、どの受信者にも間違いなくメルマガの要点を伝えられる。
コツ2.プリヘッダーテキストを工夫する
プリヘッダーテキストは、件名に続けて表示される短い説明文だ。
プリヘッダーテキストを工夫すると、件名と組み合わせて受信者にさらに興味を持たせ、開封を促せる。
たとえば、件名と補完し合う内容にする、緊急性や限定感を強調するといった工夫だ。
プリヘッダーテキストには、基本的にメール文の冒頭が表示されるが、メール配信ツールによって個別にプリヘッダーテキストを設定できる場合があるので、チェックしてみよう。
コツ3.宛名は個人名に、差出人を営業担当者にする
BtoBのメルマガでは、一斉送信感が出ると開封されにくい傾向がある。
そのため、受信者が「自分宛に送られたメッセージ」だと感じられるよう、宛名を相手の個人名にすることが効果的である。
また、差出人も企業名だけではなく、実際に担当している営業担当者の個人名にすると、信頼感や親近感が高まり、開封率の向上につながる。
メール配信ツールでは、宛名や差出人の名前を簡単に差し込める機能もある。
コツ4.開封されやすい曜日や時間に送る
BtoBのメルマガは開封されやすい曜日や時間を意識して配信すると、開封率を効果的に高められる。
一般的に、火曜日から木曜日の朝(9:00〜10:00)もしくは昼休憩中(12:00〜13:00)が理想的とされる。
朝は一通りメールをチェックする時間を取っている人が多く、また昼はランチをしながらPCを見る人が多いからだ。
逆に週初めの月曜日のビジネスパーソンは先週から持ち越した業務に追われている可能性が高く、メルマガに目を通す余裕がない場合が多いため、メルマガの配信を避けるべきだ。
また、金曜日は週末を控えてメールチェックの頻度が下がるため、同様に避けたい。
ただし、これらはあくまで一般論であり、ターゲットリストや業界、企業のサービスによって異なるケースもある。
まずは、一定期間ごとに複数の曜日での配信を行い、開封率が高い曜日を見極める方法もおすすめだ。
コツ5.配信頻度に注意する
メルマガの配信頻度も開封率に影響を与える。
おすすめの頻度は週に1回程度だ。
あまりに頻繁に配信すると、受信者は「メールが多すぎる」と不快に感じ、開封されずにスルーされたり、配信停止率が高まったりするリスクがある。
とはいっても、間隔が空きすぎると認知度が下がり、企業やサービスの存在を忘れられてしまうおそれもある。
株式会社WACULの調査によれば、週4回以上の配信は開封率やクリック率が低下する傾向がみられた。
また株式会社IDEATECHのBtoB企業向けの調査によれば、配信頻度は月に2〜3本の企業が29.1%でもっとも多く、次いで週に1本の企業が24.3%という回答だった。
配信頻度の確保も重要だが、自社のリソース状況を考慮し、内容の質を落とさずに送り続けられる自社に合った頻度を探すことが大切である。
コツ6.ABテストを実施してPDCAを回す
メルマガの開封率を向上させるには、ABテストを実施し、結果をもとに配信の内容や方法を最適化することが重要だ。
ABテストでは1つの要素を複数パターンに変更したメルマガを用意し、どれが高い開封率につながるかを比較検証する。
たとえば、3パターンのメール件名を用意し、無作為に3分割した配信リストに対し、同じタイミングで送信する。
その中でもっとも開封率が高かった件名をフォーマットとして採用するといった形だ。
開封率の向上を目的として検証する要素としては、件名や配信時間、送信者名などが挙げられる。
テスト結果に基づき、開封率が高いパターンを特定し、次回の配信に反映すると、データに基づいた効果的な改善が可能になる。
コツ7.セグメント配信を行う
受信者の特性に応じたセグメント配信も効果的だ。
BtoBにおいては、業種、役職、過去の行動履歴、購買ステージなどの属性に基づいて受信者をグループ分けできる。
これらの各セグメントに適した内容を提供すると、メルマガがより受信者にとって関連性の高いものとなり、開封率の向上が期待できる。
たとえば、経営層向けには業界の最新情報や市場動向を、マネジメント層向けには実務に役立つノウハウや製品情報を提供するなど、各セグメントのニーズに合わせた内容を作成するとよい。
セグメント配信は受信者が興味を持つテーマに集中できるため、関心を引きやすく、メルマガ全体のエンゲージメントが向上する。
コツ8.タイムリーな内容やトレンドを意識したテーマ選びをする
BtoBのメルマガはタイムリーな情報や季節に関連したテーマを取り入れると、受信者の関心を引きやすくなる。
たとえば、年度末に近い時期には予算編成に関する内容、年始には新しい事業計画やトレンド予測に関する内容を提供すると、受信者が「今必要な情報」と感じ、開封しやすくなる。
また、業界のトレンドやホットワードを取り入れたテーマは、メルマガの新鮮さや関連性を保つ上で効果的である。
また、常にトレンド情報をリサーチし、競合企業よりも早い発信を徹底すれば、差別化につながるとともに「有益な情報をいち早く提供してくれる」という意識を受信者に植え付けられるだろう。
コツ9.定期的なコンテンツの見直しと改善を行う
BtoBメルマガの開封率を継続して高めるには、内容や構成の定期的な見直しと改善が重要である。
長期間、同じような内容やフォーマットで配信していると、受信者が内容に飽きてしまい、開封率が低下する可能性がある。
なにより、メールに対する「期待」がなくなってしまうと、受信者は開封しなくなるだろう。
そのため、フィードバックやABテストの結果を参考にしながら、コンテンツの見直しや新しいアイディアを取り入れることが求められる。
たとえば、新しいセグメント向けの特集や、インタラクティブな要素を加えた配信内容などを試すと、メルマガが常に新鮮で価値あるものと受信者に感じてもらえるように工夫する。
コツ10.配信リストを定期的に見直す
間接的な要因ではあるが、配信リストの精査も開封率を上げるためには必要である。
長くメルマガを運用すると、配信リストにはアクティブな受信者だけでなく、メールをほとんど開封しない受信者や退職などでエラーになっているアドレスが含まれる場合があるため、定期的に見直し、不要なアドレスの除外が必要である。
10. まとめ
メルマガの開封率は、その先のウェブサイトへのリンククリックやコンバージョンといったアクションにつながる重要な指標だと確認した。
メール配信ツールやGoogle Analyticsで簡単に確認できる指標のため、自社と近しい業種・業態の平均値を参考にしながら1件1件のメルマガの良し悪しを判断してほしい。
もし改善の余地がある結果の場合は、本記事で参考にした10選のコツをできる限り実践するとよいだろう。
また弊社はIT企業のマーケティングをサポートするサービスを多く提供している。
メルマガの開封率についてより具体的な改善方法のアドバイスがほしい場合は、お気軽にお問い合わせいただきたい。