ステップメールとは?BtoBで成果を出す配信方法とツールの紹介|シナリオ事例・例文も解説

ステップメールとは、顧客の行動や属性データに基づいて、あらかじめ設定したシナリオを自動的に配信するマーケティング手法だ。

BtoBにおいては、購入意欲が高くない潜在層に対しても、タイミング良く情報を届けることで意識変容を促し、徐々に信頼を得て商談や成約につなげられる。

たとえば、会員登録や資料請求、キャンペーン参加などをきっかけに取得したメールアドレスに対し、初回メールから段階的にフォローすると、購買行動の後押しや、商品・サービスの理解促進が可能となる。

一斉配信とは異なり、顧客の状態や属性に応じた情報を提供するため、効率的な育成(ナーチャリング)や営業活動の自動化・効率化を実現できる点が、ステップメールの大きな特長だ。

また、配信率・開封率・反応率といった効果測定がしやすく、成果を可視化しながら改善を重ねられるメリットもある。

ツールによっては、スムーズに操作できるテンプレートや、商談化・売上につながるシナリオ例文、連携できる外部システムが用意されている。

一方で「実際にやってみたものの成果が出ない」「複雑なシナリオ管理が難しい」といった課題も少なくない。

フォロー設計の甘さや、配信タイミングのズレ、ツールの選び方次第で、期待した成果が得られないケースもあるため、慎重な設計と実践が求められる。

そこで本記事では、ステップメールの基本から実践方法までを一通り整理し、成功事例や例文、ツールの選び方、注意点やよくある疑問を網羅的に紹介していく。

リード獲得後の対応に悩んでいる方、メール施策を強化したい方、マーケティングオートメーションを検討中の方は参考にしてほしい。

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目次

1.メール施策としてのステップメールとは

「ステップメール」とは、あらかじめツールで設定したシナリオにもとづき、見込み客に対して一定の間隔で送信される一連のメールを指す。

BtoB企業のマーケティング戦略において、主にリードナーチャリング(リードの育成)を目的として実施される

リードナーチャリングについては、こちらの記事を参考にしてほしい。

リードナーチャリングとは?意味や施策、手順、メールの活用方法をまとめて解説

見込み客がウェビナーの申し込みやホワイトペーパーのダウンロードなどのアクションを起こすと、彼らのメールアドレスがステップメールのリストに追加される。

その後、事前に設定されたタイミングで、トレンドや気づきにつながるような教育的な内容、製品情報、サービスの提案などのメールが順番に自動送信される仕組みだ。

1.1.ステップメール、メルマガ、シナリオメールの違い

ステップメール、メールマガジン、シナリオメールは、いずれも電子メールを通じたマーケティング手法だが、目的・配信方法・柔軟性などに明確な違いがある。

項目 ステップメール メールマガジン シナリオメール
目的 見込み客の行動や関心に応じて、段階的に関係を構築し、購入意欲を高める 自社のニュースやお知らせを広く届けて、ブランド認知や定期的な接点をつくる 顧客の行動・属性データに応じて、最適なメールを自動的に分岐・配信し、購買行動を促進する
配信トリガー 資料請求やウェビナー申込などのアクションを起点に、一連のメールが順番に送信される 定期スケジュールに沿って、すべての読者に一斉配信される 開封/未開封、リンククリックの有無、資料DLなど、細かい行動や状態に応じて分岐・自動送信される
内容構成 教育系コンテンツ、製品紹介、提案文などをあらかじめ設定した順番で配信 業界ニュース、イベント情報、サービスアップデートなどの単発的・広報的な内容 顧客セグメントや行動履歴に応じて、シナリオ分岐されたパーソナライズ内容
柔軟性 中程度:シナリオ構成は必要だが、基本的に一本道 低い:配信対象や内容は固定されており、カスタマイズはほぼ不可 高い:複数の分岐・条件設定が可能で、より複雑かつ動的な配信が実現できる
運用負荷 低〜中:最初の設計ができれば、その後は比較的簡単に自動化が可能 低い:内容を作って定期配信するだけの運用が主 高い:分岐設定やコンテンツ準備、配信タイミング管理が複雑で、MAツールの高度な設計が必要
主な用途 リードナーチャリング、資料請求後のフォロー、教育型の関係構築 ブランディング、定期的な接点作り、ニュースレター配信 行動起点でのリアルタイムコミュニケーション、購買促進、クロスセル・アップセル

ステップメールは「一定の順番でメールを届けて関係を築く」中間レベルのアプローチだ。

メールマガジンは広く浅く届けるシンプルな手法、シナリオメールは柔軟かつ複雑な条件で最適化する高機能手法といえるだろう。

本記事では「ステップメール」に焦点を当て、作成手順やメリット、配信シナリオ例、成功のポイントなどを詳しく解説していく。

2.ステップメールのメリット

ステップメールの主なメリットについてみていこう。

ステップメールのメリット

メリット1.効率が良い

一度ツールでシナリオを設定すると、特定の条件に応じて自動でメールが送信されるため、顧客アプローチの効率が大幅に向上する。

メリット2.パーソナライズアプローチが可能

見込み客の興味や行動に合わせてカスタマイズされたコンテンツを提供し、エンゲージメントを高める。

メリット3.リードの育成につながる

見込み客の検討フェーズに合わせた情報を段階的に提供することで、初期段階では関心度合いの低かった見込み客も無駄なく受注につなげられる。

メリット4.コンバージョン率の向上が見込める

パーソナライズされたアプローチが見込み客の購入意欲を高め、コンバージョン率の向上に寄与する。

メリット5.顧客理解の深化につながる

配信結果の分析により、見込み客の行動や好みに関する洞察を得ることができ、マーケティング戦略や製品開発に活用できる。

メリット6.長期的な関係構築

継続的なコミュニケーションにより、顧客との信頼関係を築ける。

3.ステップメールのデメリット

ステップメールには多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在する。

ステップメールをうまく活用できるよう、デメリットごとの対策や割り切り方を事前に考えておくとよいだろう。

主なデメリットは以下のとおり。

ステップメールのデメリット

デメリット1.自動化によるパーソナライズの限界

ステップメールは自動化されているため、一部の見込み客にとっては過度に一般的または不適切なコンテンツとなるおそれがある。

見込み客のニーズや興味が時間とともに変化することを、自動化システムが正確に捉えることは難しい。

デメリット2.ブロックのリスク

頻繁なメール送信は見込み客にネガティブな印象を与え、メールが無視されたり、ブロックされたりする原因となる。

適切な間隔と、コンテンツの質を保つことが重要だ。

デメリット3.設定と維持の手間

効果的なステップメールキャンペーンを設計して維持するためには、時間とリソースが必要。

適切なメッセージをタイミングよく送るための精密な計画と継続的な調整が求められる。

デメリット4.不適切なターゲティング

顧客の興味やニーズを正確に把握しないと、ターゲットに沿わない情報を複数回にわたり送ってしまうことになり、顧客の不信につながるリスクがある。

デメリット5.コストと労力

効果的なステップメールシステムを構築するには、MAツールの導入や運用のための人件費が必要だ。

特に小規模の企業にとっては、ステップメールの運用コストや作成労力が負担となることがある。

デメリット6.成果測定の限界

ステップメールでは複数のタッチポイントが関与するため、どのメールがコンバージョンにもっとも貢献したかの特定は難しい場合がある。

4.ステップメールの作成手順

ステップメールは、大きく以下6つのステップに分けて作成していく。

  1. 送付する対象を明確にして分類する
  2. ゴールを設定する
  3. カスタマージャーニーを意識してシナリオを考える
  4. メールを作成する
  5. 配信設定をする
  6. 効果検証をする

ステップメールの作成手順

それぞれ詳しく解説していきたい。

ステップ1.送付する対象を明確にして分類する

まず、ステップメールを送付する対象を明確にし、配信内容のパーソナライズを行えるように分類しよう。

ステップメールを自動化させるには、そのシナリオが発動するためのトリガーアクションが必要だ。

「〇〇のホワイトペーパーをダウンロードした」「〇〇のセミナーに参加した」などのアクションをリストアップしていく。

理想的なのは、一つひとつのトリガーアクションに応じて内容がパーソナライズされていること。

リソースやコンテンツが限られており、そこまでの分類が難しい場合は、少なくとも「検討フェーズ」で分類してみてほしい。

検討フェーズとアクションの分類例

検討フェーズ アクション(例)
認知フェーズ
(自社を認知はしているが関心がない)
  • メルマガ登録
  • ホワイトペーパーDL(トレンド・解説)
  • セミナー申し込み(トレンド・解説)
興味・関心フェーズ
(自社に関心がある)
  • ホワイトペーパーDL(ハウツー・事例)
  • セミナー申し込み(ハウツー・事例)
  • 展示会ブースでの名刺交換
  • Webサイトの導入事例閲覧
比較・検討フェーズ
(サービスの導入を検討している)
  • サービス資料請求
  • 見積もりDL
  • Webサイトのサービス関連ページ閲覧

ステップ2.ゴールを設定する

ステップメールによって見込み客にどのようなアクションを実行してほしいのか、ゴールを明確にする。

その際、ゴールを「申し込み(受注)」と置きたくなるが、ステップメールにおいては最終的なゴールではなく、それぞれの見込み客の検討フェーズに合わせて近いゴールを設定することがポイントだ。

ステップごとにゴールを設定することで、施策がうまくいっているかどうかを評価しやすくなる。

イメージとして、検討フェーズがステップアップするたびにゴールが達成される、階段のようなものと捉えてほしい。

ステップメールのゴール設定

もちろん、対象の100%がゴールを達成することはないため「〇%が〇〇のアクションを実行する」のように具体的な数値のKPIまで置くのが理想だ。

しかし、どの程度の数値に設定するべきかわからないケースが多いだろう。

そのため、とりあえず仮の数値を設定して、やりながら実態に合わせていく形でも問題ない。

ステップ3.カスタマージャーニーを意識してシナリオを考える

続いて、ステップ1で分類したユーザーを起点に、検討フェーズごとのカスタマージャーニーを意識したメールシナリオを設計していく。

見込み客がどのような情報に触れ、どのような心理状態を経てステップ2で設定したゴールに至るのか。

ユーザーの行動や思考を想像しながら、購買意欲を高めるために必要な配信内容や順序を検討することが重要だ。

特に、関心度がまだ低いユーザーに対しては、いきなり商品の訴求を行うのではなく、教育的コンテンツや課題提起型の情報提供を通じて徐々に関係性を構築する設計が求められる。

コンテンツ設計

ナーチャリングメールを成功に導く作り方と活用ポイント

・マーケティングオートメーションとの連携によるシナリオ最適化

ステップメールのシナリオは、マーケティングオートメーション(MA)ツールと連携することで、配信の効率化と成果の最大化が可能となる。

たとえば、以下のようなユーザー行動に基づいた自動出し分け配信を実現できる:

  • 資料請求・サービスページ閲覧・キャンペーン参加など、具体的な購買行動を起点に、シナリオを自動的に分岐させる
  • 商品カテゴリや業種、ユーザー属性に応じて配信テーマを切り替えることで、より的確なコンテンツを届ける
  • 閲覧状況やスコアリング情報と連携して、反応の良い見込み客に対しては商談化を促す提案メールをタイムリーに送信する

このように、ユーザーごとの行動データと属性情報をもとに設計されたステップメールは、静的な一律配信よりも高い精度で成果に直結する。

また、MAツールを活用すれば、シナリオ分岐や出し分けもシステム上で自動化できるため、運用負荷を抑えつつ、反応率や成約率を高める配信体制の構築が可能となる。

BtoB領域では、ユーザーごとのニーズが複雑で、最適な接点タイミングや提供情報も異なる。

だからこそ、マーケティングオートメーションと連携し、購買行動データを起点にしたシナリオ設計によって、メール施策全体の成果を大きく高めることができる。

主なメールマーケティングツールを機能や価格で徹底比較

ステップ4.メールを作成する

前のステップで設計したシナリオをもとに、具体的なメールの文面やコンテンツを作成しよう。

メールを作る際のポイントは以下の6つだ。

①タイトルは具体的かつ簡潔にする

タイトルは開封率にもっとも影響する要素。

30文字以内で簡潔にまとめ、特に重要なキーワードはタイトルの先頭に寄せて作成しよう。

曖昧なタイトルではなく、具体的な表現にすることが重要だ。

たとえば「セミナー開催のお知らせ」ではなく「【9/10開催】マーケティング最新トレンドセミナー」といったように、日時や内容を明確にすると、読者にとって開封する理由が一目で伝わる。

また、数字や成果がイメージできる言葉を入れると効果的だ。

例:

「3つの改善ポイント」

「売上120%を達成した方法」

自社ブランドや業界特性に合うのであれば、絵文字や記号を適度に活用するのも有効だ。

メール一覧の中でも目に留まりやすくなる。

ただし、BtoBなどフォーマルな読者層には使いすぎない方がよいだろう。

タイトル設計では、「誰に・何が得られるか・どれくらいの手間で」を端的に示すことを意識すると、開封率の向上につながる。

②本文は読みやすい長さ・構成にする

本文の長さは500〜1,000字程度が適切である。

HTMLメールではヘッダー・フッターや画像などを活用し、視覚的にわかりやすくなるよう構成を工夫するとよいだろう。

③オウンドメディアやホワイトペーパーを活用する

オウンドメディアやホワイトペーパーへのリンクを積極的に設置することで、効果計測がしやすくなる。

④CTAを配置する

Call To Action(=Webサイトへの訪問を促す画像やボタン、テキスト)をわかりやすい場所に配置する。

⑤送付相手の名前を入れる

配信ツールの差し込み文字機能などを使って送付相手の名前を入れることで、パーソナライズされている印象をもたせる。

⑥差出人を営業担当にする

差出人を営業担当にすることで、パーソナライズされている印象をもたせる。

ステップ5.配信設定を行う

メッセージのテンプレートを作成したら、配信ツールで配信の設定を行っていく。

ステップメールの配信設定方法はツールによって異なるが、多くは「ステップメール」や「シナリオ」といった名称の機能となっている。

詳細は各ツールのマニュアルを確認してみてほしい。

この時点で、一度シナリオが発動してから次のステップメールへ移行するまでに何日空けるかも決めていこう。

最適な配信頻度については「7.ステップメールの最適な配信頻度」を参考にしてほしい。

ステップ6.効果検証をする

ステップメールの配信を始めたら、効果を定期的に検証し、設定したゴール・KPIにもとづいて成果を測定する。

もし結果が芳しくないと感じた場合は、以下の観点で調整を行うとよいだろう。

①セグメントの強化

リードをより細かく分類し、パーソナライズされたコンテンツを提供できるようにする。

②コンテンツの質と関連性の向上

コンテンツの種類を増やしたり、内容のアップデート・改善を行ったりして品質向上を図る。

③メール文面の工夫

A/Bテストなどを行い、対象の興味を引くメッセージに改修する。特にタイトルを工夫することは重要だ。

④配信頻度の調整

メールの配信が頻繁すぎると考えられる場合、配信頻度を落として成果が変わるかどうかを検証する。

メルマガの作り方完全ガイド|成果へのポイントと配信時のチェックリスト

5.ステップメールのコンテンツ切り口の例

ステップメールのコンテンツの切り口はさまざまなものが考えられる。

業界によっても大きく異なるが、ここではIT業界の例を紹介していきたい。

「カテゴリー」の考え方自体はどの業界にも共通するため、参考にしてみてほしい。

カテゴリー 内容
業界のトレンドと分析 IT業界の最新トレンド、技術進化、市場分析に関する洞察 「2023年のクラウドコンピューティングのトレンドとその影響」
テクノロジー解説 特定の技術やプロダクトの機能を深く掘り下げる解説 「ブロックチェーンがビジネスにもたらす可能性」
ハウツーとガイド 特定の技術や製品の使い方、導入ガイド、ベストプラクティス 「クラウドストレージを安全に利用するためのベストプラクティス」「効果的なデータ分析のためのステップガイド」
業界の課題と解決策 IT業界が直面している主要な課題とその解決策 「不正アクセスを防ぐための対策方法」
ケーススタディ・導入事例 顧客が製品やサービスをどのように利用して成功を収めたかの事例 「X社が私たちのITソリューションで業務課題をどのように改善したか」
ウェビナー・イベントの案内 業界の最新トレンドや製品紹介を行うウェビナーやイベントへの招待 「課題別のユースケース解説」
製品アップデートとチュートリアル 新しい機能のリリース情報やその機能の詳細なチュートリアル 「クラウドストレージサービスに新しいセキュリティ機能が追加」
限定オファーとプロモーション 新製品の割引、アップグレードオファー、無料トライアルの提供 「今だけ!新しいソフトウェアバージョンを特別割引価格でご提供」

とくに IT業界だと、セキュリティやクラウド移行、AI活用といったテーマ が注目されやすい。

情報システム部門や開発部門は、最新技術の動向や導入事例、法規制対応など、日々の業務に直結する情報を求めている。

そのためステップメールでも、単なる製品紹介にとどまらず、「業界課題の背景 → 解決策 → 実践事例」 の流れで伝えると、読者にとって有益な情報源として信頼を得やすい。

加えて、1つのメールで扱うステップは大きくしすぎず、小さなテーマごとに分けることで、読み手の負担を減らし、継続的に開封してもらいやすくなる。

6.ステップメールの設計で意識すべき“基本”と“注意点”

ステップメールの効果は、シナリオの設計力によって大きく左右される。

この章では、設計段階で意識しておくべき“基本”の考え方と、ありがちな落とし穴=注意点を紹介する。

6.1設計の“基本”|ユーザー目線・購買行動を起点に構成する

ステップメールは、単なる販促の一斉送信ではない。

重要なのは「このユーザーは今どんな悩みを抱えていて、どの情報が役立つのか?」という視点で構成を考えることだ。

以下の3点は、設計時に押さえておきたい基本原則である:

①ユーザーの検討フェーズに応じた情報設計(ペルソナ・カスタマージャーニー設計)

 → 例:まだ検討初期のユーザーには“課題の言語化”を促すメールから始める

BtoBマーケで必須のペルソナ設定|BtoCとの違い、設定・活用方法を徹底解説

②サービスや商品カテゴリごとのテーマ分け

 → 複数の製品・業種を扱う場合、配信対象を分けて設計することで情報の的中率が上がる

③マーケティングオートメーション(MA)との連携前提の設計

 → ユーザーのアクション(資料DL・フォーム送信・Web閲覧など)を起点にシナリオを動的に切り替える発想が重要

こうした“設計の前提”を意識することで、汎用的なテンプレート配信では得られない成果につながっていく。

6.2設計上の“注意点”|ありがちな失敗とその対策

一方で、以下のような“あるあるな失敗”も多い。

特に、メール施策に不慣れな場合や、忙しい現場で「とりあえず作って回す」場合に起こりやすい。

よくある注意点 対策例
訴求が急すぎて、ユーザーに“売り込み感”を与えてしまう 教育的・ストーリー型の構成にして関係構築から始める
初回のメールが重すぎる(長文、説明過多など) 「読む気になる導入文」「役立ちそうと“見てもらえる”件名・構成」を心がける
同じ内容が何度も送られてしまう MAツールで「配信済みフラグ」「条件分岐ロジック」を設計しておく
リードの興味や業種に関係ない内容を送ってしまう 商品カテゴリやペルソナごとにリストを分けておく
コンテンツが不足して、全体の流れが途中で途切れる 先に配信全体の構成表を作り、必要なコンテンツを下記一覧から用意

また、CRMやWebフォームとの連携が弱いまま運用すると、情報が分断され、購買行動の追跡や配信最適化が難しくなる。

ツール間の連携環境や運用体制(役割分担)も、設計段階で整えておくとよい。

このように“ユーザー起点の設計”と“継続的に改善できる体制づくり”を意識することが、成果につながるステップメール設計の鍵となる。

次章では、実際のアクションを起点にした具体的なシナリオ例を紹介していく。

7.ステップメールのシナリオ例

ここでは、ステップメールのシナリオ設定例を、いくつかの見込み客のアクションにわけて紹介していきたい。

シナリオ例1.メルマガに登録したリード

ステップメールのシナリオ例:メルマガに登録したリード

自社のWebサイトからメルマガ登録を行ったリードに対するステップメールのシナリオ例。

メルマガ登録というアクションから自社の製品・サービスへの関心度合いを測ることは困難だが、基本的に関心度は「低い」前提でコミュニケーションを始めるのがポイントだ。

【ステップ 1】歓迎と自社の紹介(メルマガ登録直後)

目的 新規登録者を歓迎し、自社のプロフィールと今後提供される情報を紹介する。
コンテンツ 歓迎のメッセージ、自社のプロフィールや今後提供したい情報の予告を行う。
「メルマガ登録ありがとうございます!〇〇や〇〇などのテーマに関して、様々なコンテンツやウェビナー情報をお届けします」

【ステップ 2】啓蒙コンテンツの提供(1週間後)

目的 登録者に価値ある情報を提供し、ウェビナーのトピックに関する興味を刺激する。
コンテンツ 業界のトレンド、専門知識、ウェビナーでカバーされるトピックに関する記事やホワイトペーパー。
「今週の注目トピック:X技術の最新動向(近日開催ウェビナーで詳細解説!)」

【ステップ 3】ウェビナーへの招待(2週間後)

目的 登録者にウェビナーへの参加を促し、具体的な詳細を提供する。
コンテンツ ウェビナーの日時、トピック、講師の情報、参加のメリット。
「ご招待:X技術に関する専門家による特別ウェビナー」

【ステップ 4】リマインダーと参加促進(ウェビナー開催数日前)

目的 ウェビナーへの参加を再度促し、登録を確実にする。
コンテンツ ウェビナーのリマインダー、未登録者への参加促進、参加の締切日のアナウンス。
「ウェビナーまであと数日!お早めにご登録ください」

シナリオ例2.ウェビナーに参加したリード

自社のウェビナーに参加したリードに対するステップメールのシナリオ例。

参加したウェビナーのテーマに顧客の関心やニーズがあると考えられるため、それをうまく活用して段階的に関係を築き上げることがポイントとなる。

ステップメールのシナリオ例:ウェビナーに参加したリード

【ステップ1】ウェビナー後のフォローアップ(ウェビナー終了後1-2日以内)

目的 参加に対する感謝を表し、ウェビナーの要点を振り返る。
コンテンツ ウェビナーの参加に感謝するメッセージ、ウェビナーの要約、関連資料へのリンク。
「ウェビナーにご参加いただきありがとうございました!主要なポイントと追加資料をお送りします」

【ステップ2】追加の啓蒙コンテンツの提供(1週間後)

目的 ウェビナーのトピックに関連する追加情報を提供し、知識の深化を促す。
コンテンツ ウェビナーのトピックに関連する詳細記事、ケーススタディ、ホワイトペーパー。
「ウェビナートピックを深掘り:詳細なケーススタディのご紹介」

【ステップ 3】対話を促す質問とフィードバックの収集(2週間後)

目的 参加者の意見やフィードバックを収集し、対話を促進する。
コンテンツ ウェビナーに関連するトピックについての質問やディスカッションの招待。
「あなたのフィードバックが私たちにとって重要です!短いアンケートにご協力ください」

【ステップ 4】関連製品やサービスの紹介(1ヶ月後)

目的 ウェビナーの内容と関連する製品やサービスを紹介し、興味を喚起する。
コンテンツ ウェビナーのトピックに関連する製品やサービスの紹介、無料トライアルの提供。
「ウェビナーで学んだトピックを活用する:私たちの製品デモをご覧ください」

シナリオ例3.ホワイトペーパーをDLしたリード

自社のホワイトペーパーをダウンロードしたリードに対するステップメールのシナリオ例。

基本的にウェビナーと同じく、ホワイトペーパーのテーマに顧客の関心やニーズがあると考えられるため、それをうまく活用して段階的に関係を築き上げることがポイントだ。

ステップメールのシナリオ例:ホワイトペーパーをDLしたリード

【ステップ 1】ダウンロードの確認と感謝(ダウンロード直後)

目的 ダウンロードに対する感謝を表し、資料の利用について案内する。
コンテンツ ダウンロードへの感謝、ホワイトペーパーの主要なポイントや使い方のヒント。
「ホワイトペーパーのダウンロードをありがとうございます!主要なポイントをご紹介」

【ステップ 2】追加の啓蒙コンテンツの提供(1週間後)

目的 ダウンロードした資料と関連する追加情報を提供し、知識の深化を促す。
コンテンツ ホワイトペーパーのトピックに関連するコラム記事、ケーススタディ、動画など。
「ホワイトペーパーのトピックをさらに深く掘り下げる:関連記事とケーススタディ」

【ステップ 3】対話を促す質問とフィードバックの収集(2週間後)

目的 ダウンロードした資料に対するフィードバックを収集し、対話を促進する。
コンテンツ 資料のフィードバック調査、関連するトピックについての質問やディスカッションへの招待。
「あなたの意見を聞かせてください:ホワイトペーパーに対する短いアンケート」

【ステップ 4】関連製品やサービスの紹介(1ヶ月後)

目的 ダウンロードしたトピックに関連する製品やサービスを紹介し、興味を喚起する。
コンテンツ ホワイトペーパーのトピックに関連する製品やサービスの紹介、デモやトライアルの案内。
「ホワイトペーパーで学んだトピックを活用:製品デモのご案内」

シナリオ例4.展示会で名刺を交換したリード

展示会の自社ブースで名刺を交換した見込み客に対するステップメールのシナリオ例。

自社ブースに来たということは、少なからず自社の製品・サービスおよび周辺サービスに関心があると捉えられる。

そのため、誠実な態度を示し、関係の構築と維持を目指すことが重要だ。

ステップメールのシナリオ例:展示会で名刺を交換したリード

【ステップ 1】お礼と自社および製品・サービスの紹介(展示会後1-2日以内)

目的 展示会での出会いに対する感謝を表し、初めての接触を確立する。
コンテンツ 展示会での出会いに感謝するメッセージ、会社と製品/サービスの簡単な紹介。
「展示会ご来場のお礼と〇〇について簡単にご紹介」

【ステップ 2】啓蒙コンテンツの提供(1週間後)

目的 製品やサービスの価値を深く理解してもらう。
コンテンツ 製品の詳細、ケーススタディ、業界のインサイトなど。
「私たちの製品で業務生産性を〇%改善した顧客事例のご紹介」

【ステップ 3】追加情報とフィードバックの要請(2週間後)

目的 より詳細な情報の提供と受信者の関心の確認。
コンテンツ 詳細な製品情報、デモビデオ、フィードバックや質問への招待。
「製品デモビデオの紹介/ご意見をお聞かせください」

【ステップ 4】特別オファーや招待(1ヶ月後)

目的 関係を一歩進め、具体的なアクションを促す。
コンテンツ 限定割引、無料トライアル、個別相談の招待。
「限定オファー:無料トライアルのご招待」

8.ステップメールの最適な配信頻度

ステップメールの最適な配信頻度は、見込み客との関係性やメール内容によって異なる。

効果を検証しながら、自社なりの頻度を見極めていくことも大切だ。

例えば、リードを獲得したばかりのころは、2〜3日に1回の短い間隔でメールを配信しても、無視やブロックはされにくい

逆に、ステップメールが全10回あるとして、すべてのメールが2日おきに送られてくると、鬱陶しいと思われるおそれがある。

回数を重ねる場合は、週1回や2週間に1回などに頻度を落とすとよいだろう。

また、販促色の強い内容を続けて送るときは、2週間〜1か月など、やや長めの期間を空けたほうがよい場合もある。

追い討ちをかけて急かすような形ではなく「忘れかけた頃に思い出させる」くらいの間隔を意識することが重要だ。

9.ステップメールにおける成功のポイント

ステップメールを運用するうえで、特に意識しておきたいポイントを3つ紹介していきたい。

  1. 顧客の検討フェーズを意識する
  2. コンテンツを幅広く持つ
  3. MAツールを活用する

ポイント1.顧客の検討フェーズを意識する

顧客の検討フェーズを意識することは、それぞれの見込み客に対して最適なコンテンツを届けることに直結する。

例えば、自社への関心度がまだ低いとみられる「メルマガ登録直後のリード」に対して、たった3~4回のステップメールで無料トライアル獲得までを狙うのは強引な戦略といえる。

ゴールの設計を誤ると、メール文面の節々に強引な態度が表れ、むしろ不信につながりかねない。

そのため「ステップ1.送付する対象を明確にして分類する」で紹介したような、検討フェーズ別のアプローチを心がけてほしい

ポイント2.コンテンツを幅広く持つ

提供できるコンテンツの種類が豊富なほど、ステップメールのパーソナライズが可能となる。

ステップメールとは、本来営業担当が一人ひとりに対して取るべきアプローチを、機械で自動化しているものだ。

人力に比べると、どうしてもマス的なアプローチになるのは仕方ないが「それぞれのニーズに適したコンテンツ」を届けるという姿勢は維持する必要がある。

ポイント3.MAツールを活用する

ステップメールの配信には、MAツールが不可欠だ。

その理由として、以下の2点が挙げられる。

  • シナリオ・ステップメール配信機能による自動化で、手作業よりもはるかに効率的になるから
  • 開封率、クリック率などの効果検証が可能でPDCAも回しやすいから

月額数千円〜導入できるMAツールもあっるため、未導入の方はぜひ導入を検討してみてほしい。

10.ステップメールの効果検証指標

ステップメールの効果検証は、いくつかの指標を用いて数値による客観性をもって行うことが大切だ。

ここからは、各指標の概要と平均的な数値を解説していきたい。

なお、ここで紹介する平均的な数値はあくまで全体の相場のため、可能であれば業界平均や過去実績も考慮してKPIを定めていこう。

ステップメールのKPI

  • 開封率
  • クリック率
  • コンバージョン率

指標1.開封率

開封率とは、送信されたメールがどれだけの受信者に開かれたかを表す指標のこと。

平均的な開封率は業界や対象オーディエンスによって異なるが、一般的には15〜25%がよいとされている。

指標2.クリック率

クリック率は、メール内のリンクがどれだけの頻度でクリックされたかを示す。

クリック率=メール内のリンクをクリックした人数/メールを送信した人数

クリック率は通常、開封率よりも低く、平均的なクリック率は1〜5%程度。

指標3.コンバージョン率

コンバージョン率は、メールを受け取った受信者がゴールに設定したアクション(例:ウェビナー参加、ホワイトペーパーDL、無料トライアルなど)をとった割合を示す。

ステップメールの最終的な成果を把握するもっとも重要な指標だ。

コンバージョン率(CV率)=コンバージョンした人数/メールを送信した人数

コンバージョン率は目標とするアクションの難易度に大きく依存するが、0.3〜1%が目安となる。

11.まとめ

この記事では、ステップメールの活用方法について詳しく解説してきた。

ステップメールとは、特定のアクションを実行した見込み客に対し、あらかじめ設定されたシナリオに沿ってメールを配信する手法だ。

最初の設計こそ時間や手間がかかるものの、組織の生産性向上に大きく寄与する効果がある。

本記事を参考に、ぜひステップメールを活用したリードナーチャリングに取り組んでみてほしい。

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監修者情報

野崎 晋平(btobマーケティングコンサルタント)

SIerにてERPの開発・導入を経験後、東証プライム上場企業の情報システム部門にてIT企画や全社プロジェクトを推進。情シス向けに個人で立ち上げたオウンドメディアは月間10万PVを達成。現在は、ITとマーケティングの知見を組み合わせて、IT企業向けにBtoBマーケティング支援を手がけている。