BtoBマーケティングでは、リード獲得やナーチャリング、商談化を目的としてホワイトペーパーが多く活用される。
ホワイトペーパーはSNS広告やオウンドメディアと相性がよく、問い合わせよりもハードルが低いCTAとしてコンテンツが設置されるケースが多いだろう。
しかし、ホワイトペーパーは作成すれば成果につながるものではなく、そもそもの「設計」がとても重要だ。
この記事では、BtoBマーケティングに取り組む人に向けて、ホワイトペーパーの作り方をステップ別の方法で解説していく。
また、デザインにおけるポイントもあわせて紹介するため、自社にあった資料の種類やデザインの参考にしてほしい。
目次
1.ホワイトペーパーとは?作り方を理解するための基本知識
1.1ホワイトペーパーの定義
ホワイトペーパーとは、業界の課題や市場のトレンド、ユーザーのニーズを踏まえた専門性の高いデータと知見を整理した資料を指す。
単なる自社製品紹介ではなく、ユーザーが抱える悩みに寄り添い、業界的背景や解決方法を提示する情報提供型のコンテンツだ。
IT業界では、自社の強みや知見を最大限に活用し、信頼性・説得力を兼ね備えた形式で制作されることが多く、調査レポート型・ノウハウ型・課題解決型などの種類が存在する。
どの形式のホワイトペーパーでも共通するのは「読み手のニーズに応えること」だ。
そのためには、目的やペルソナの明確化、読みやすい構成、ビジュアル設計などを含めた“設計のコツ”を押さえることが欠かせない。
1.2なぜ今、重要なのか
現在、多くの会社がメルマガ、SNS広告、ウェビナーなどのマーケティング施策をデジタルで展開するなか、ホワイトペーパーはリード獲得やナーチャリングの強力な手段として位置づけられている。
問い合わせよりも心理的ハードルが低いことから、幅広いユーザーに利用できる資料だ。
さらに、ホワイトペーパーは一度作って終わりではなく、テンプレートとしての活用や定期的なアップデートによって、継続的に使えるマーケティング資産となる。
外注や代行サービスを使えば、社内の工数削減や品質担保にもつながるだろう。
これらの理由から、ホワイトペーパーは単なる資料のひとつではなく「戦略的に設計すべきコンテンツ」として、今あらためて注目されている。
ホワイトペーパーの意味や活用についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてほしい。
2.ホワイトペーパーの目的別制作ポイント
上述のとおりホワイトペーパーは、ユーザーの行動を促すための戦略的なマーケティングコンテンツだ。
BtoBマーケティングでは、ユーザーの検討段階に応じて「どの目的で作るのか」を明確にすることが、成果の鍵を握る。
この章では、目的の違いが何を生み、どのように構成や内容に影響するのかを整理しながら、効果的に設計するためのコツを紹介していく。
目的設定が重要な理由
ホワイトペーパーの効果は、目的設計によって大きく変わってくる。
目的を明確にすることで、構成や訴求内容がブレなくなり、ユーザーにとって価値のある内容に仕上がるのだ。
たとえば、リード獲得を目的とする場合と、商談化を目的とする場合では、ユーザーの検討段階や関心がまったく異なる。
この違いを考慮せずに作成すると「誰にとっても刺さらない資料」になりかねない。
また、目的が明確であれば、見出しの設計・使用するデータの種類・資料のボリューム・掲載情報の粒度なども判断しやすくなる。
結果として、読み手の関心とマッチし、ダウンロード率や読了率といった成果指標の向上にもつながるだろう。
2.1リード獲得(リードジェネレーション)
リードとは、商品やサービスに関心をもつ可能性のある「見込み客」を指す。
リード獲得とは、これらの見込み客を見つけ出し、増やすプロセスだ。
具体的には「属性情報」や「連絡先」を収集するプロセスが含まれる。
同時に、自社の認知度向上を狙うことも多いだろう。
リード獲得を目的としたホワイトペーパーでは、中立的な立場からレポートやトレンド情報を提供し、見込み客の耳目を集める。
また、ダウンロードページに連絡先情報の提供を依頼するフォームを設置することで、リード獲得につながる情報(企業名や部署名、メールアドレスなど)を収集できる。
リードジェネレーションについては、こちらの記事を参考にしてほしい。
2.2ナーチャリング
ナーチャリングとは、リードをさらに成熟させ、購買の意思決定に近づけるためのプロセスを指す。
直訳すると「育成」だが、BtoBの場合は「自社に対する信頼感を高める」「特徴や強みを知ってもらう」ことが重要である。
ナーチャリングを目的としたホワイトペーパーは、希少価値の高い情報やノウハウの提供、自社製品やサービスの紹介などが中心だ。
プッシュ型の営業/マーケティングが忌避される傾向がある近年では、Webから恒常的にアピール可能なホワイトペーパーによるナーチャリングが重視されている。
リードナーチャリングについては、こちらの記事で詳しく解説しているため、あわせて読んでみてほしい。
2.3商談化
商談化とは、見込み客を最終的な意思決定(案件化や受注)へと進めるためのプロセスだ。
商談化を目的としたホワイトペーパーでは、課題解決のノウハウや事例を使いながら比較・検討を促す内容を提供する。
自社が持つ「解決する力」や「コストパフォーマンス」「実績」などを訴求ポイントとしながら、見込み客の信頼をさらに深め、商談へと進めることが狙いである。
目的によって製作すべきホワイトペーパーは異なる
ホワイトペーパーにはいくつかの種類があり、目的によって製作すべきホワイトペーパーは変わってくる。
一般的なホワイトペーパーの種類は以下のとおり。
- 調査レポート型
- トレンド情報型
- 事例紹介型
- 課題解決型
- ノウハウ提供型
- セミナー、イベントレポート型
- その他資料(サービスカタログ、料金表、用語集など)
ホワイトペーパーの種類と具体的な内容については、こちらの記事を参考にしてほしい。
3.ホワイトペーパーの作り方
ホワイトペーパー制作は、以下8つのステップで進めるのが一般的だ。
<ホワイトペーパーの8ステップ>
- 目的の設定
- ターゲットとペルソナの設定
- 顧客課題の設定
- テーマ設定
- リサーチと情報収集
- 構成案(ストーリー)と訴求ポイントの設定
- 表紙・タイトル設計
- 執筆及びデザイン
各ステップについて詳しくみていこう。
ステップ1.目的の設定
まず、どの読者に対して、どんな行動を促したいのかを明確にする。
この目的設定は、後に続く構成・表現・トーンのすべてを決定する、まさにホワイトペーパー設計の出発点だ。
BtoBにおける購買フェーズには「認知」「興味・関心」「比較・検討」「商談」の4つの段階があり、各フェーズに応じた情報提供が成果の鍵を握る。
一般的にホワイトペーパーは「商談」以外のステップで用いられるため、下記3つの目的のうちいずれかを設定しよう。
①「認知拡大」によるリード獲得
リード獲得を目的とする場合は「自社のことを知ってもらう」「自社と何らかの形でつながってもらう」ことを意識することが重要だ。
新製品の情報や業界の最新動向など、多くの企業担当者が関心を持ちやすいテーマを選び、話題性のあるデータや切り口を通じて認知を広げていく。
ここで重要なのは、その情報のなかで自社の存在を知らせ、リード獲得やナーチャリングの原資となるメールアドレスなどを収集する土台を作ることである。
この段階から商談に発展する確率は低いものの、質の高いリードを獲得することで後続のプロセスが実行しやすくなるだろう。
②「興味・関心」の喚起によるナーチャリング
獲得したリードをさらに購買に近づけたい場合には、興味・関心の喚起を狙っていこう。
「業界でよくある課題の解決方法」「業務効率化のノウハウ」「顧客事例の紹介」など、実務に役立つ情報や再現性のある知見が効果的だ。
具体的な数字や成功のストーリーを織り交ぜながら、読者の興味をさらに引き寄せるような内容を心がけてほしい。
③「比較・検討」による優位性のアピール
興味・関心を抱いた見込み客に対し、さらに購買の角度を上げたい場合は、比較・検討による自社製品の競争優位性を自然に伝える構成が求められる。
他社との比較表や自社独自の特徴を強く打ち出した内容で、自社製品の優位性をアピールしていくことが重要だ。
また、比較・検討の結果「なぜ自社製品を選ぶべきなのか」を明確かつ自然に伝えていくとよいだろう。
ステップ2.ターゲットとペルソナの設定
目的の設定が完了したあとは、ターゲットとペルソナの設定を行う。
ターゲットとペルソナを明確に区別し、具体的な「顧客像」を描くことが重要だ。
ターゲット=顧客“層”を明確にする
ターゲットとペルソナは、マーケティングにおいて頻繁に登場する単語だ。
しかし、マーケティング施策をしっかりと効かせるためには、両者の違いを理解しておく必要がある。
ターゲットとは、端的にいえば「層」や「群」である。
BtoCの場合は「30代の女性」「40代~50代の働き盛り男性」といった属性情報で表現される。
一方、BtoBの場合は「業種」や「規模」「事業内容」などで絞った企業群をターゲットに設定する。
例えば、製造業向けの業務効率化クラウドサービスを展開する企業がホワイトペーパーのターゲットを設定する場合は、以下のようになる。
・ターゲットの例
- 製造業に属する中堅規模(売上100億以上)の企業
- 社員数は100~500人程度
- 社内の情報システム担当者
- 30代以上で勤続5年以上の中堅クラス
ペルソナ=顧客“像”を設定する
次にペルソナを設定していこう。
ペルソナ設定では、意思決定者や製品を使用する人々の特徴を具体的に洗い出し、肉付けしていく。
「層」や「群」ではなく具体的な人物像を描くイメージだ。
・ペルソナの例
- SEやPGとしての経験があり、一部のクラウドサービスがレガシーシステムやツールより優れていることを理解している
- 社内のITリテラシーはそれほど高くなく、業務で利用するツールに関する問い合わせ対応やレクチャーに追われている
- 業務システムは部署ごとに独自に導入されており、データ連携やユーザー管理の煩雑さに悩んでいる
- エンドユーザーからの「使いにくい」「説明が足りない」といった問い合わせ対応が日常的に発生している
- 上層部からは「DXを推進」の通達があるが、現場の運用や既存システムとの整合性を考えると動きづらい
- これまでの業務プロセスを変えずに、社内業務の効率化や自動化が進められるツールが欲しいと考えている
- 社内情報システムのメンバーは5人程度
- コスト面では、既存システムとの二重投資・重複SaaSの排除など、ROIに厳しい評価軸がある
- 決裁者が別に存在しており、ツールの決裁には部門長+経営層の承認が必要
- 上長は新しい技術への興味はあるものの、コスト面へのチェックが厳しい
ペルソナの体系的な設計例
ペルソナ設計は、属人的なイメージだけで行うと精度がぶれやすい。
以下のような「ペルソナ作成テンプレート」を使うと、誰もが同じ基準でペルソナ像を共有できる状態をつくることができる。
「企業属性×担当者」の例
「企業属性×担当者×フェーズ」の例
さらに、ペルソナを「購買フェーズ」で区切ることで、各段階に応じた適切な情報提供が可能となる。
ステップ1で述べた「認知」「興味・関心」「比較・検討」といった購買フェーズに対応づけて、ペルソナをより具体化することが重要だ。
「企業属性(業種・規模)」「担当者(役職・部門)」「フェーズ(検討段階)」の3軸を掛け合わせることで「誰に・どのタイミングで・何を提示すべきか」が明確となる。
この設計により、ターゲットに合致したホワイトペーパーの企画と訴求が可能となり、ダウンロード率やリードの質を大きく高められる。
ダウンロードを促す工夫
ペルソナが「思わずダウンロードしたくなる要素」を事前に設計することも極めて重要だ。
いくら内容が優れていても、タイトルや導入文でペルソナの関心を引けなければ、ダウンロードには至らない。
たとえば、課題を明確に提示するタイトルや、自分ごと化しやすい導入文など、読み手の心理に寄り添った構成が求められる。
これは、ホワイトペーパー全体の成果に直結する「ファーストインプレッション」であり、設計のコツとして非常に重要だ。
BtoBマーケティングにおけるペルソナ設計の考え方は、以下の記事で詳しく解説している。
ステップ3.顧客課題の設定
ターゲットとペルソナの設定が完了したら、ペルソナが抱えているであろう「課題」を設定する。
ペルソナがしっかりと設定できていれば、課題は自然と見えてくるはずだ。
前述の例に従って設定した顧客課題は以下のとおり。
・顧客の課題の例
- 情報共有に使われているExcelやスプレッドシートが各部署でバラバラに管理されており、業務データの一元化が進んでいない
- 関数やマクロの使い方が担当者によって異なり、ツール操作が属人化・ブラックボックス化している
- 社内の問い合わせやマニュアル整備に追われており、新しい業務ツールの選定・比較に割けるリソースが足りない
- 類似のSaaSが多すぎて「何が違うのか」「どれが最適か」が判断しづらく、選定基準を明確に持てていない
- 情報システム部門が感じている課題と、上長や経営層の関心(コスト・安定性)にギャップがあり、導入判断が進みにくい
・ フェーズ別に課題を整理
ステップ1で説明した4つのフェーズに沿って整理すると、顧客課題を体系的に整理でき、ホワイトペーパーの設計に直結する土台を作ることが可能だ。
なお、以下の図では「課題顕在化前」を加えた5フェーズ構成で整理しており、より細やかな課題設定とテーマ設計に役立つ。
1. 認知フェーズ(課題認知前)
- 目的:業務の非効率さや属人化に気づかせて「自分ごと化」させる
- 課題例:業務の属人化に気づかない、現状の問題を放置している
- 資料例:用語解説、業界トレンドレポート
2. 興味・関心フェーズ(課題認知・解決策収集)
- 目的:課題の構造理解を深め、解決の必要性を認識させる
- 課題例:課題は認識しているが解決策のイメージが湧かない
- 資料例:課題解説資料、解決ノウハウ、導入ステップ
3. 比較・検討フェーズ
- 目的:差別化要素や強みを提示して「選ばれる理由」を明確化する
- 課題例:複数のツールやサービスで迷っている
- 資料例:比較ガイド、導入事例集
4. 商談フェーズ(意思決定)
- 目的:社内稟議や上申を後押しして、最終判断を支援する
- 課題例:ROIや投資対効果を求められている
- 資料例:ROIレポート、稟議資料テンプレート
ステップ4.テーマ設定
顧客課題を設定したあとは、その課題に対する解決方法を「テーマ」として設定していく。
どのような情報を届ければユーザーの関心を引き、“読んでもらえる資料”として成立するのかを考えるステップだ。
テーマは、単に業界のトレンドや製品情報をなぞるのではなく、ペルソナが「今、知りたい」と思っている内容に合わせて設計する必要がある。
前述の例では、以下のようなテーマが浮かび上がってくる。
- 「属人化した業務フローを可視化・標準化するには?情報システム部の現場知見から整理する」
- 「クラウドツール過多時代における“本当に使える業務効率化ツール”の選び方」
- 「“使いにくい”“浸透しない”を防ぐ、社内ユーザーを巻き込むITツール導入の進め方」
こうしたテーマは、ペルソナが感じている課題に対して、自社独自の視点や調査をもとに具体的な解決方法を提示する内容であることが重要だ。
「現場で本当に起きている課題」「よくある失敗とその回避策」など、読み手に“自分ごと”として刺さる構成が求められる。
テーマ設定はホワイトペーパーを制作する目的によっても変化するため「目的」「ターゲット」「ペルソナ」が出揃ったタイミングで考案しよう。
・競合調査と差別化による優位性の確立
昨今の市場では、情報がコモディティ化し、競合との差別化がますます困難になっている。ありきたりな内容の資料では、数多く存在する情報の中に埋もれてしまうリスクがある。
そこで欠かせないのが、競合他社のホワイトペーパーやオウンドメディアの調査だ。
どのようなテーマが他社に多いのか、逆にあまり扱われていないテーマは何か、情報の偏りやギャップを分析することで、自社が担うべき切り口や伝えるべき視点が見えてくる。
たとえば、以下のような“差別化の工夫”が有効だ。
- 同じ課題でも職種別に深掘る(例:経営層向けと実務担当者向けの使い分け)
- 定量データとセットで示すことで、説得力を持たせる
- 成功事例ではなく失敗例からの学びを軸にすることでリアリティを出す
このような工夫を重ねることで「ほかにはない視点がある」「これは役立ちそう」と感じてもらえる、優位性あるホワイトペーパーに仕上げられるだろう。
ステップ5.リサーチと情報の信頼性
ホワイトペーパーの信頼性を支える土台は、丁寧かつ正確な情報収集だ。
特に、IT企業のように専門性の高い領域を扱う場合、説得力のある根拠や事実に基づく情報提供が欠かせない。
読者が「この情報なら信用できる」と感じる背景には、信頼できるデータソースや実務に根ざした知見の有無が大きく影響する。
信頼性を高める情報収集の具体例
業界団体や行政機関による統計、専門誌・業界系Webメディアの調査記事など、客観的な情報に裏打ちされた出典を使うことで、ホワイトペーパーの情報精度が格段に向上する。
また、自社で保有するアンケート調査結果・問い合わせ傾向・営業現場の声なども、一次情報として有効だ。
さらに、ユーザーのリアルな課題や導入検討時の実態を深掘りするためには“社内の現場リサーチ”も不可欠となる。
ユーザーと日常的に接している部門からのヒアリングを通じて「表には出にくい本音」や「行動の背景にある感情」を把握しよう。
ステップ6.構成案(ストーリー)と訴求ポイントの設定
テーマ設定が完了したら、構成案(ストーリー)と訴求ポイントの設定が必要だ。
BtoB向けのホワイトペーパーでは、まずテーマ(タイトル)と目次があり、次にターゲットを想定した背景や目的の提示し、そこから徐々にブレイクダウンしながら訴求を挟むという流れが一般的である。
構成案の例
・ ダウンロード前の“期待値”を高める構成要素
ダウンロードされるかどうかは、実際の中身よりも「最初に目にする部分」で決まるといっても過言ではない。
そのため、以下の要素を丁寧に設計していこう。
・魅力的な表紙デザイン
視覚的に「読んでみたい」と思わせるデザイン、信頼性を感じさせる構成、タイトルとの親和性が重要だ。
ターゲット層に特化した訴求で届けたいユーザーへの関心を高めよう。
<表紙例>
・明快な目次構成
読み手が「この資料に何が書いてあるか」を一目で把握できることが、CV率を左右する。過剰に曖昧な見出しや、章立てが飛んでいるものはNGだ。
・引き込まれる導入文
読み始めで読者が「これは自分ごとだ」と思える背景や問題提起、読んだ後のベネフィットをしっかりと伝える構成が求められる。
構成案の例
ホワイトペーパーの構成案と訴求ポイント
テーマ(タイトル):「Excelによる業務属人化を防ぐ 標準化と知識共有の方法とは」
1.製造業で今なお難しい「脱Excel」
2.Excelによる業務属人化が起こる理由
3.業務属人化の弊害と防止作
4.標準化と知識共有を促すクラウドツール
5.クラウドツールの選定基準
6.弊社クラウドツール「xxx」の強み
7.導入事例の紹介
8.まとめ
上の構成例では、まずExcelによる弊害を顧客課題としてピックアップし、その理由と一般的な防止策を提示していく。
次に、一般的な防止策がうまくいかない理由(コストやシステム的な制限など)を提示し、解決する方法としてクラウドツールを提示する。
さらに、クラウドツールの選び方を紹介したうえで、自社製品の紹介と実績を提示するという流れだ。
一般的なホワイトペーパーでは、訴求ポイントを最後に持ってくることが多いだろう。
ただし、興味・関心の喚起が目的である場合は、訴求を2~3か所に分散させる形で「しつこくならない程度に印象付ける」といった方法も有効だろう。
また、単純な認知拡大(リード獲得)が目的の場合は、あえて自社製品の訴求ポイントを設けない場合もある。
訴求を行わないことで、中立性や公平性を印象付け、情報源としての信頼性を高めてもらうためだ。
このように、訴求ポイントの有無や数は、ホワイトペーパーを制作する目的によって変化していくことを覚えておこう。
ステップ7:表紙・タイトル設計
構成案が完成したら、次は「読まれるホワイトペーパー」に仕上げるための執筆とデザインに取り組んでいく。
ホワイトペーパーを開いてもらえるかどうかは、表紙とタイトルの第一印象でほぼ決まる。
表紙の役割は「見た目を整えること」ではなく、課題感に共感し、読む動機を与えることだ。
表紙(タイトル):課題に共感する“タイトル設計”が重要
デザイン的な整いよりも「読み手が感じている悩みや課題を、タイトルで言い当てる」ことを最優先しよう。
種別 | タイトル例 | 解説 |
NG例(よくある一般的タイトル) | 営業DXに関する調査レポート | 何が得られるのかが曖昧で、読み手の課題意識や興味を引きにくい。情報提供の姿勢は見えるが「自分ごと化」されにくい。 |
OK例(共感・具体性があるタイトル) | なぜ営業DXは現場に定着しないのか?現場担当者500人の声から見えた3つの落とし穴 | 課題を明確にし、読者の関心を引く構造。「自分の会社もそうかも」と思わせる“共感”と“具体的なベネフィット(3つの落とし穴)”がある。 |
ステップ8.執筆およびデザイン
本ステップでは、読了率を高めるための執筆技術や、視認性・印象を左右するデザインのポイントを解説する。
執筆時のポイント
ホワイトペーパーの読了率を高めるには「わかりやすく読み進められる構成・表現」が欠かせない。
専門性と信頼性を保ちながらも、専門用語の使用はターゲットの知識レベルに合わせ、必要に応じて注釈や図解で補足することがポイントだ。
箇条書き・改行・見出しなどを効果的に用いることで、読者の負荷を軽減できる。
ページごとに設置されたメッセージがつながり、できるだけ自然な形で訴求につながっていくことをイメージしていこう。
ただし、ホワイトペーパーのタイプによって執筆方法が異なる点に注意してほしい。
例えば、認知拡大を目的としたレポート型のホワイトペーパーでは、読み物や資料としての正確さ、中身の濃さなどが重視される。
また、文体は論文調に近くなり、客観的かつ定量的なリサーチの結果に基づいた論理的な文章が好まれるだろう。
一方、事例紹介型や課題解決型のホワイトペーパーでは、具体的な課題を分かりやすく提示するために図版やイラストを用いながら説明するべきだ。
また、訴求につなげやすくするために「課題・施策・効果」をセットにして伝えることも大切である。
・ホワイトペーパー執筆時のポイント
1ページあたりの文字量
1ページあたりの文字量は「300~400字程度」が目安だ。
図版やインフォグラフィックに注力して読者の認知負荷を下げたい場合は、1ページあたり200~300字程度におさえることもある。
ただし、レポート型の場合はテキストが主体になるため、この限りではない。
・ボリュームについて
1ページあたり300~400字程度のホワイトペーパーであれば「10~16P程度」が可読性の面からもおすすめだ。
ただし、事例を複数扱う場合や、課題の数によっては20P以上のボリュームになることもある。
・デザインについて
近年のホワイトペーパーは「レポート型は縦型」「その他は横型」がトレンドとなっている。
また、デザインで重視すべきポイントとしては以下を押さえておくとよいだろう。
・効果的なテンプレートの選び方
ホワイトペーパーの構成や目的に合わせてテンプレートを選ぶことで、制作工数の削減と品質の安定化を図れる。
レポート型では縦型・チャート中心、事例/課題解決型では横型・図版中心など、目的に応じた設計を選ぶのがポイントだ。
視覚設計:使いやすさと可読性を支える基本
読者が「ストレスなく読める」「必要な情報をすぐに探せる」ことを目的に、以下の視覚設計を行っていく。
項目 | ポイント |
表紙デザイン | 中央配置で余白を広く取り、キービジュアルはシンプルに1点だけ使用する構成が望ましい。信頼感・清潔感を持たせたトーンで統一。イラストや写真を使うと印象に残りやすい。 |
目次 | 読者が「どこに何があるか」をすぐ把握できるように。論点別・課題別・ステップ別など、見たい章にすぐ飛べる構成。凝ったデザインよりもシンプルな構成がベター。 |
レイアウト | 情報を詰め込みすぎず、十分な余白をとることで読みやすさを確保。1ページ=1メッセージの原則が有効。 |
見出し | 階層構造(H1〜H3など)を守り、レベル感を統一。読者が全体構成を把握しやすくなる。 |
フォント | 可読性の高いゴシック体(Noto Sans、ヒラギノなど)を使用。本文サイズは12〜14pt前後が基本。見出しは適宜大きめに。 |
配色 | ベースカラー+1〜2色のアクセントカラーに統一。ブランドカラーをアクセントに用いると印象づけやすい。重要語句は色変え・太字・ハイライトなどで視覚的に強調。 |
図解・グラフ | 各章に1つ以上の図解を配置することで、読了ハードルを下げる。画像やグラフを主役にし、文字情報は必要最小限に。 |
オファーページ(CTA) | 自社のセールスポイントや製品の強みを、視覚的に直感で伝える構成。比較表・製品画像・機能説明などを使い、見た瞬間に理解できるよう設計する。 |
デザインに関する具体的なテクニックは、こちらの記事も参考にしてほしい。
4.ダウンロード率を高めるための工夫
ホワイトペーパーは「良い内容」だけでは読まれない。
読者が「自分に必要だ」と感じてダウンロードに至るまでの工夫が、成果を大きく左右する。
この章では、ダウンロードを促進するために重要な「見せ方・伝え方」のポイントを解説していく。
4.1.表紙と導入文で“自分ごと化”を促す
表紙や導入文は、資料の価値を一瞬で伝える重要なパートだ。
読者が「これは自分に関係ある」と判断する材料を盛り込む必要がある。
導入文で押さえたいポイント:誰に向けた資料なのか(業種・職種)を明確に
読むことで得られる価値を端的に伝える:
「◯つのチェックリスト」「事例から学ぶ」など構成を具体的に
4.2.離脱を防ぐダウンロードフォームの設計
フォームが長すぎたり使いづらかったりすると、それだけで読者は離脱してしまう。
「最小限の入力」と「安心感のある設計」が成功の鍵だ。
主な最適化ポイント:
項目 | 内容 |
入力項目 | 氏名・会社名・メールアドレスなどに絞る |
UI設計 | PC・スマホ双方で操作しやすい |
安心感 | 利用目的の明示・プライバシーポリシーのリンク設置 |
フォーム改善の詳細はこちら
4.3.CTAの一貫性で行動を後押し
読者の行動を後押しするCTA(Call to Action)は、配置・表現・デザインすべてが重要だ。
内容とズレのない「一貫したトーン」があると、自然に押されやすくなる。
CTA最適化のチェックポイント:
- 表現が資料タイトルや導入文と一致しているか
- ページの流れの中で自然に目に入り、押したくなる場所にあるか
- 「何が得られるか」が明確に伝わるか
例:
✕「無料ダウンロードはこちら」
◎「営業DXの失敗原因が3分でわかるレポートを今すぐ読む」
ホワイトペーパーがダウンロードされない原因やダウンロード数を増やす改善施策は、こちらの記事でも詳しく解説している。
4.4バナー設計とパフォーマンス改善
ホワイトペーパーのダウンロード率は、資料そのものの質だけではなく、バナー設計の巧拙でも大きく変わってくる。
バナーは瞬時に判断されるため、視認性や情報配置が成果を左右する。
同じ資料案内でも、デザイン・視線誘導が違うだけでクリック率が数倍変動するケースも少なくない。
・バナーの良い例:上部にテキスト情報が配置されているため瞬時に内容を把握しやすく、強調カラーや見出しの視認性、余白設計が整っている。
この結果、視線誘導がスムーズになり、クリック率が高い成果につながった。
・バナーの悪い例:情報量が多く見た目が窮屈な印象を与え、瞬時に情報を読み取れないデザインとなっている。
訴求力が分散し、良い例よりもクリック率が低下する結果となった。
パフォーマンス改善の運用方法
バナーは一度作ったら終わりではなく、配信後はデータをもとに継続的に改善していく運用が不可欠だ。
具体的には以下の流れを繰り返すことで、より高い成果が見込めるだろう。
- ABテストで複数デザイン・レイアウトを比較
- 例:強調色・余白の取り方・フォントサイズ・構図の違いなど
- 例:強調色・余白の取り方・フォントサイズ・構図の違いなど
- クリック率・CV率の結果を確認し、勝ちパターンを抽出
- パフォーマンスの低いバナーを順次差し替え
これにより、少ない予算でも高い成果を出せる効率的な広告運用が可能となる。
5.ホワイトペーパー制作の注意点
最後に、ホワイトペーパーを制作する際に注意しておきたいポイントを解説していきたい。
ホワイトペーパーは、広告やSEO対策記事よりも読み手にとって役立つ情報を客観的な立場で丁寧に伝える姿勢が重視される傾向がある。
また、製品紹介や事例紹介など既存の資料・記事と差別化することも重要だ。
5.1BtoBでは「売る」ことを意識しすぎない
BtoBに属する企業の多くは、過度な訴求は控える傾向がある。
ホワイトペーパーには、受注や売上よりも「リード獲得とナーチャリング」の効果を期待しているからだ。
BtoCとは異なり、BtoBにおけるホワイトペーパーは「検討材料」であり、即決購入を促すものではない。
BtoBでは読者と意思決定権者が同一ではなく、複数人で検討したのちに決定することが前提であるため、内容の大半は中立的視点で述べつつ自然に訴求につなげる流れがベストといえるだろう。
5.2「製品紹介」「事例紹介」との差別化を意識
ホワイトペーパーは「製品紹介」や「事例紹介」と混同されやすい。
たしかに、これらの資料を一部流用して制作することも少なくないだろう。
しかし、ホワイトペーパーの制作では「事例や製品の紹介によって、どのような価値を生み出すか(目的を達成するか)」が最も重要だ。
したがって、単なる紹介に終始しないように注意してほしい。
5.3.信頼を損なうNG事例と改善策
ホワイトペーパーは「読者に信頼される資料」であるべきだが、構成や見せ方を誤ると逆効果になりかねない。
特に、事例パートでの伝え方には注意が必要だ。
よくある失敗パターンと改善策は以下のとおり。
よくある失敗パターン | 起こりがちな問題 | 改善策 |
成功数字だけを強調してしまう | 「再現性がない」「自社とは違う」と感じさせてしまう | Before/Afterだけではなく、導入前の課題や制約、苦労のプロセスも記載 |
顧客の声を載せない | 客観性に欠け、信頼しづらい | 担当者のコメントや一言インタビューを添える(役職名付きで) |
導入企業の情報が曖昧 | 自社に適した事例か判断できない | 業種・規模・部署・導入目的などを冒頭に明記 |
一社のみの事例に依存 | 特殊ケースに見えてしまい、汎用性を感じにくい | パターン別に2~3社の事例を簡潔に紹介するのも有効 |
結論だけでストーリーがない | 印象に残らず、納得感も弱い | 「課題→導入の検討→ツール選定→成果」といった流れで物語化する |
参考にしたいホワイトペーパー事例は以下の記事を参考にしてほしい。
5.4制作時によくある失敗と回避策
ホワイトペーパー制作では、以下のような構造的なミスも起こりがちだ。
回避策を参考に制作しよう。
失敗例 | 課題 | 回避策 |
内容が薄く表層的 | 情報価値が低く、読了されない | リサーチと一次情報を丁寧に盛り込む |
宣伝色が強すぎる | 読者に「売り込み」と受け取られる | 事実ベース+読者メリット視点で記述 |
ペルソナが曖昧 | 想定読者に刺さらない | ペルソナ設計から一貫したトーンで構成 |
結論がぼやける | 印象に残らない | 読み終えたあとに残るベネフィットを意識 |
5.5.内製と外注、それぞれの特性
ホワイトペーパー制作には、内製(自社制作)と外注(委託)の選択肢がある。
それぞれにメリット・デメリットがあるため、目的や社内リソースに応じて選択することが大切だ。
項目 | 内製 | 外注 |
メリット | ・社内事情や製品知識を活かせる・コストを抑えやすい | ・第三者視点で構成できる・リソースを割かずに高品質な成果物が得られる |
デメリット | ・客観性に欠けやすい・制作に時間がかかる | ・費用がかかる・自社サービスの理解にギャップがある場合も |
6.制作に役立つツールやサービス
ホワイトペーパーの完成度を高めるには、伝えたい内容を整理し、わかりやすく見せる工夫が欠かせない。
目的に応じてツールを使い分けることで、質の高い資料を効率良く作成できる。
代表的なツール例:
- Googleドキュメント / Word:構成設計や原稿の下書きに
- PowerPoint / Canva:図解・表紙・デザイン作成に
- Adobe Acrobat / Smallpdf:PDF変換や圧縮などに
また、外部の制作代行サービスを活用することで、プロ品質の仕上がりや制作スピードの向上も期待できるだろう。
デザイン設計や制作フローの詳細は、こちらで詳しく解説している。
7.ホワイトペーパーの重要性と展望
ホワイトペーパー制作は、単なる資料作成ではなく「戦略的マーケティング施策」のひとつだ。
目的設定から訴求、コンバージョンまで、読者の行動を導くための以下のような設計が必要となる。
観点 | ポイント | 解説 |
リード獲得後の設計 | 比較検討・意思決定支援まで設計 | 機能一覧、導入効果、他社との違いなど、検討時に役立つ情報を盛り込む |
ストーリーの一貫性 | 課題 → 共感 → 解決策 → 訴求 → CTA | 読者が自然に読み進められる流れを設計し、信頼性も確保する |
フォロー導線の設計 | 次のアクションを定義する | 資料DL後に送るメール、導入相談、事例記事への導線などを用意 |
今後は、単に情報をまとめただけのホワイトペーパーではなく、よりインタラクティブでパーソナライズされたものが主流になっていくだろう。
たとえば、読者の興味や行動に応じて内容が変化するホワイトペーパーや、動画やインフォグラフィックを組み込み、より視覚的に訴えかけるものが増えていくと考えられる。
これにより、ステークホルダーや読者とのエンゲージメントを高め、より強力なリードへと育成することが可能になるだろう。
今後のトレンドと進化
ホワイトペーパーは、単なる「資料提供」の役割を超え、検討促進や意思決定支援のツールとして進化しつつある。
特にIT業界では、商材が複雑・高単価・長期検討型であるため、「どう伝えるか」が成果に直結する。
今後注目すべきホワイトペーパーの形式やアプローチを以下にまとめたので、参考にしてほしい。
トレンド | 概要 |
動画ホワイトペーパー | スライド型やモーショングラフィックスを用いた動画資料。クラウド・SaaSなどの機能説明と相性が良く、短時間で導入メリットを伝えやすい。 |
インタラクティブ型 | 機能比較や業種別事例など、読者が興味に応じて展開・深掘りできる構成。複雑なIT商材において「情報の取捨選択」がしやすくなる。 |
パーソナライズ型 | 業種別・部門別・検討フェーズ別に内容を切り替える仕組み。読み手の関心に直結し、検討初期〜最終段階まで幅広く活用される。 |
生成AIの活用 | 構成案作成・ファクトチェック・リライトなど一部工程の効率化に活用する。導線設計など、人の判断と組み合わせることで効果を発揮。 |
ホワイトペーパーは「配布して終わりの資料」ではなく、顧客の意思決定を後押しする“戦略設計の一部”として活用される時代だ。
特に、比較・検討フェーズを支援する構成や、行動を促す導線設計が今後の成果を左右する重要な要素となるだろう。
8.まとめ
ホワイトペーパーの作り方について、具体的なステップや例を交えながら解説してきた。
ホワイトペーパーはコラム記事やWeb上の資料とは異なり、顧客の手元に残り続ける。
適切に設計・制作すれば、リード獲得やナーチャリングを継続的に支援する強力なマーケティング施策となるだろう。
一方で、効果的なホワイトペーパーには、企画設計・構成・デザイン・CTA設計などの専門的なノウハウとリソースが求められる。
社内での対応が難しい場合は、外部パートナーの活用も視野に入れつつ、自社の目的に沿った形で取り組むことが重要だ。
もし社内にリソースがない場合は、外部サービスの活用も検討しながら制作を進めてみてほしい。