コンテンツマーケティングを効率よく進めるためには、さまざまなツールの活用が不可欠だ。
具体的には「コンテンツの質の向上」「ユーザーの行動履歴の可視化」などの観点で、ツールが活躍する。
一方で、
「どこでどのようなツールを使えばよいのかわからない」
「ツールを活用して効率化したい」
と考えている方も少なくないだろう。
この記事では、コンテンツマーケティングで必要なツールの種類を体系的にまとめ、使いどころや代表的なツールなどを紹介していきたい。
1.コンテンツマーケティングにツールが必要な理由
現代のコンテンツマーケティングは「ツールありき」といっても過言ではない。
まずはその理由を整理していこう。
理由1.継続を容易にするため
コンテンツマーケティングは一朝一夕に結果が出るものではない。
中長期にわたり、継続的に取り組むことが成功の鍵だ。
しかし、継続するためには膨大な労力と時間が必要となる。
一方で、リソースがないために中断してしまうと、せっかく蓄積したコンテンツと労力が無駄になってしまう。
投資を無駄にしないためにも、データの集計や可視化を自動化しながら継続しやすい環境をつくることが大切である。
理由2.コンテンツの質を向上させるため
ツール活用は、コンテンツの質にも影響してくる。
例えば、キーワードリサーチツールやトレンド分析ツールを使うことで、見込み客の潜在ニーズや興味関心についての理解を深められる。
また、ジャーニーとペルソナの精密度を高めるためにも、ツールを用いた分析・リサーチの質の確保は必須といえるだろう。
理由3.社内リソースの削減
多くの企業で、コンテンツマーケティングの担当者は「専任」ではなく、ほかの業務との兼任が一般的だ。
そのため、どうしてもリソース不足に陥りやすいのが実情である。
ツールを活用することで、作業の自動化や効率化が可能となり、限られた人的リソースのなかで高いパフォーマンスを発揮できる。
例えば、コンテンツ制作は外注するにしても、その前段である上流の作業(テーマ策定のためのキーワード分析やニーズの把握など)は、ツールによる効率化が可能だ。
2.コンテンツマーケティングにおけるツールの使いどころは?
次に、ツールを使うべきポイントを理解しておこう。
2.1.数値の把握、分析・解析などSEOの要素を含む部分
コンテンツマーケティングは本来、SEOとはまったく異なる施策だ。
ただし、現在は同時に取り組むケースが増えているため、コンテンツマーケティングでもSEO向けのツール活用が当たり前になりつつある。
コンテンツマーケティングとSEOの違いについては、こちらの記事も参考にしてほしい。
SEOの要素を含む部分でツールを活用する目的は、膨大な量のデータを効率的に処理し、有意義な洞察を得ること。
特に、以下のような作業で役立つだろう。
データの自動集計
手動でのデータ収集は時間がかかり、エラーのリスクも伴う。
ツールを使用すれば、ウェブサイトのトラフィック、検索順位などの重要な指標を自動的に収集でき、時間の節約につながる。
詳細な分析
ツールを活用することで、自社メディアへのアクセスデータ解析や獲得キーワードの状況、キーワードごとの順位、検索流入と離脱率の計測など、SEO的な見地からパフォーマンスを計測可能だ。
SEOにおいて、もっともツールを活用したいポイントであり、手動では不可能なレベルのデータを取得できる。
2.2.リサーチや競合分析などコンテンツ制作にかかわる部分
リサーチと競合分析は、SEOの範疇であると同時に、コンテンツの質にかかわる部分でもある。
この点もツールによる効率化が可能だ。
上位記事の「穴」を見つける
一般的に競合分析は、他社コンテンツの順位や見出し構成などを把握する作業が大半である。
しかし、さらに重要な事柄として「情報の穴を見つける」という点が挙げられる。
情報の穴とは、端的にいえば「抜けや漏れ」「粒度の粗さ」だ。
質の高いコンテンツの多くは「独自の見解や解決策」「粒度が細かく具体性のある情報」を提供している。
こうした情報がなくとも上位表示は可能だが、離脱率が高く、コンバージョンしにくい記事になりやすい。
ツールで上位記事の見出し構成を抽出して「特に厚く解説すべき部分」「トピックが明らかに不足している部分」などを把握することで、長期的に評価されるコンテンツの制作が可能だ。
市場トレンド、ニーズの把握
業界のトレンドや実務者のニーズを追跡するために役立つのがリサーチツールだ。
リサーチの方法は人によってさまざまだが「業界別の統計情報を発信しているサイト」や「統計情報を豊富に取り扱うサイト」などをいくつかピックアップしておくとよいだろう。
エンジニアリソースがある場合は、スクレイピングでリサーチを効率化する方法も有効だ。
しかしスクレイピングは定量化されており、Web上に一般公開されているデータに強いことを覚えておいてほしい。
BtoBのコンテンツマーケティングでは、ダウンロード資料など、スクレイピングの対象外とされるデータが多い。
また、抽象的かつ定量化されていない情報も多く含むため、スクレイピングの効力は限定的といえる。
2.3.配信、顧客行動の把握
コンテンツの配信と顧客行動の把握は、マーケティング活動の成果を測定し、改善するために重要だ。
特に顧客行動の把握は、ツールなしでは不可能といえるほど難しい。
顧客のインタラクション追跡
MA(マーケティングオートメーションツール)やCRMを使用することで、顧客の行動パターンや好みを詳細に追跡できる。
インタラクションを把握できれば、パーソナライズされたマーケティング活動を展開し、顧客が好むであろうコンテンツの内容を推測可能だ。
効果測定と改善
コンテンツのパフォーマンスを定量的に測定する場合にも、ツールを活用すべきだろう。
具体的には、PVやダウンロード数、リード獲得数、離脱率やCVRの測定などが挙げられる。
どのコンテンツが目標達成に寄与しているかを判断するためには、分析ツールが不可欠だ。
ちなみにMAのなかには、PDFコンテンツの読了状況を把握できるものもある。
3.コンテンツマーケティングに必要なツールの種類
続いて、コンテンツマーケティングに必要なツールをみていこう。
コンテンツマーケティングにまつわるツールは年々増えており、全体像を把握するだけでも一苦労だ。
一般的によく知られているのは「キーワード分析」「アクセス解析」だが、これらはSEO対策用のツール。
コンテンツSEOは事実上コンテンツマーケティングの一部として扱われるため、こうしたツールも押さえておくべきだが、ほかにもさまざまなツールがある。
コンテンツSEO | コンテンツ制作 | 配信・顧客行動把握 |
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3.1.コンテンツSEOに役立つツール
キーワード分析系
キーワード分析ツールは、キーワードごとの需要(検索ボリューム)や変化率、競争状況(上位表示の難易度)を明らかにする。
SEO戦略を立てる際の重要な判断基準を得られるほか、ロングテールキーワードの抽出にも役立つ。
アクセス分析系
アクセス分析ツールは、サイト訪問者の行動パターンや流入経路を追跡し、そのデータを分析する。
近年ではABM(アカウントベースドマーケティング)にも活用されており、普遍的なツールのひとつだ。
順位把握系
順位把握ツールは、ウェブページの検索エンジンにおけるランキング状況を監視する。
キーワード分析やアクセス分析ツールと一体になっているものが多いため、どちらかを導入すれば自然に入手できるだろう。
3.2.コンテンツ制作に役立つツール
リサーチツール
リサーチツールは市場動向、ニーズの把握、トレンドなどの把握に役立つ。
ただし、一般的なマーケター向けのリサーチツールをコンテンツマーケティングに応用することは難しい。
どちらかといえば、特定の業界情報を発信するサイトや、Googleトレンドのような汎用化されたツールが適している。
文章校正ツール
文章校正ツールは、文法ミスや誤字脱字を自動的に検出し、読みやすいコンテンツに整えるツール。
可読性の高さや離脱率の低減に役立ち、なおかつコンテンツ制作スピードの向上にもつながる。
記事プランニングツール
記事プランニングツールは位置づけが難しいが、一般的には「記事のタイトル、見出し作成を効率よく進めるツール」といえる。
ただし、コンテンツの質が重視される現在では、ツールによる記事プランニングの効力も限定的だ。
ChatGPTなどの生成AIを活用し、書き手の知見を織り交ぜながらインプットとアウトプットを繰り返すことで、質と効率を両立できる。
3.3.コンテンツ配信、顧客行動の把握に役立つツール
CMS (コンテンツ管理システム)
CMSは、コンテンツの制作、管理、公開を一括して行うためのツールだ。
ユーザーフレンドリーなUIと柔軟なカスタマイズ機能により、非技術者でも容易にウェブコンテンツの管理を行える。
また、フロントエンドとバックエンドが分離された「ヘッドレスCMS」であれば、コンテンツの中身だけを入れ替えながら配信先を変えることも可能だ。
MA (マーケティングオートメーション)
MAは、マーケティング活動の自動化と効率化を実現するツールだ。
顧客データの収集・分析、リストの作成、パーソナライズされたコミュニケーションの実行など、複雑なマーケティングプロセスを非技術者でなくともシンプルに行える。
ABM(アカウントベースドマーケティング)
ABMは、特定のターゲットアカウント(企業)に焦点を当てたマーケティング活動を支援する。
優良顧客になりうる企業を選別し、ターゲットが欲するであろうコンテンツを提供する際に活用される。
4.コンテンツマーケティングの代表的なツール
最後に、コンテンツマーケティングにおける代表的なツールを紹介するため、ツール選定時の参考にしてみてほしい。
4.1.SEOに役立つツール
ミエルカ
SEO対策用の統合的なツール。キーワードや競合分析のみならず、検索意図の判断や顧客行動の可視化にも役立つ。
グラフィカルなインターフェースが特徴で、複雑で難解な顧客行動をすぐに可視化できる点が非常に優秀だ。
パスカル
こちらもSEO対策用の総合的なツールだ。
自社記事の詳細なSEO分析や上位記事の分析、キーワードマップなど多彩な機能を搭載している。
月額5万円〜と、導入しやすい価格設定も魅力。
Googleトレンド
Googleトレンドは、特定のキーワードやトピックの検索傾向を時間経過と共に追跡できるツール。
無料で使用できるツールとしてはかなり優秀で、トレンドやニーズの変化を把握するのに役立つ。
Google Search Console
Google Search Consoleは、Google検索におけるサイトのパフォーマンスを分析するためのツール。
検索クエリ、ページの表示回数、クリック数など、ウェブサイトのトラフィックに関する重要なデータを提供する。
ラッコキーワード
ラッコキーワードは、キーワードリサーチと競合分析に特化したツール。
ターゲットキーワードに関する詳細な情報や、競合サイトのキーワード戦略を分析するのに適している。
近年では、AIによるタイトル提案や記事見出し提案などの記事プランニング機能も強化された。
検索順位チェッカー
検索順位チェッカーは、特定のキーワードに対するウェブサイトの検索エンジン順位を追跡する。
SEO戦略の効果を測定し、必要な調整を行うのに役立つツールだ。
4.2.コンテンツ制作に役立つツール
リサーチ系ツール
経済レポート専門ニュースkeizaireport.com
keizaireport.comは経済に特化したニュースサイトで、最新の経済情報やトレンドを提供する。
経済関連の話題が絡むコンテンツ制作における情報源として非常に有用だ。
また、ICTに関するレポートも充実しており、BtoB製品・サービスの市場動向を効率的にリサーチする場合にも役立つ。
e-stat
Estatは、政府が公開している政府統計のデータベース。
単に情報を抽出するだけではなく、独自の断面で整理する機能も備えている。
ChatGPT(有料版)
ChatGPTは、自然言語処理を活用したAIツールで、文章の生成や質問への回答、アイデアの提案など多様な機能を提供する。
特に有料版は、無料版に比べて文章精製能力やリサーチ力が向上しており、リサーチから記事プランニングまで幅広く活用できる。
文章校正ツール
so-zou.jp(テキスト処理ツール)
さまざまなWebアプリケーションを開発・提供しているso-zou.jpのテキスト処理機能で、日本語の文法や表現をチェックできる。
無料で使用でき、表記や表現音間違い、当て字や表外漢字、用法や表現のミスなども抽出可能。
Press Term
NTT DATAが提供する校正支援ソフト。
形態素解析エンジンを組み込んだ文章チェック機能が特徴で「言葉の最小単位」まで分析して用法をチェックできる。
4.3.配信、顧客行動の把握に役立つツール
CMS
ワードプレス
オープンソースのコンコンテンツ管理システムで、柔軟性と使いやすさが特徴。
多くのプラグインやテーマを備えているためカスタマイズ性が高く、さまざまな種類のウェブサイトに適用できる。
Ferret One
中小企業向けに特化したCMSで、ウェブサイトの簡単な構築と管理が可能。
直感的な操作性と高いカスタマイズ性を兼ね備えている。
MA(マーケティングオートメーション)
SHANON MARKETING PLATFORM
日本市場向けに設計されたMAツールで、メールマーケティング、リード管理、キャンペーン管理など幅広い機能を提供している。
List Finder
こちらも日本市場向けに設計されたMAで、中小〜大手まで幅広い企業に導入されている。
基本的なMA機能を搭載しているほか、オンライン上で配信したPDFに対して【いつ・誰が・何ページまで】閲覧したかを追える点が強みだ。
ABMツール
Marketo
Marketoは、デジタルマーケティングにおけるABM戦略の実行を強化するためのツール。
ターゲットアカウントの特定からパーソナライズされたコミュニケーションの実施まで、一連のプロセスをサポートする。
どこどこjp
日本国内の地域情報に特化したマーケティングツールで、地域ごとのマーケティング活動やローカルなターゲットに焦点を当てたコンテンツ制作に適している。
4.まとめ
この記事では、コンテンツマーケティングの実践で役立つツールについて解説してきた。
コンテンツマーケティングの本来の目的は「コンテンツを通して売れる仕組みを作ること」だ。
しかし、近年では「検索上位表示による流入量アップ」という効果も期待されている。
そのため、コンテンツマーケティング用のツール=SEOツールと誤解されることも少なくない。
SEO対策ツールだけではなく、コンテンツ制作や配信・顧客行動の把握に役立つツールにもぜひ注目してみてほしい。