オウンドメディアによる集客やブランディングは現代主流となっているが、競合が多く運用の難易度も高まっている。
「ただオウンドメディアがあるだけ」「ただ記事を投稿しているだけ」では今や戦うことは難しいだろう。
「オウンドメディアを立ち上げてみたものの、PVがなかなか増えない」
「何を基準に運用していけばよいかわからない」
「リソースが少ないため、できるだけ効率的に成果につながる運用を行いたい」
このような悩みや課題を持つマーケティング担当者や経営者の方も多いだろう。
そこで本記事では、オウンドメディアの目的別に運用における実践的なノウハウを解説する。
目次
1.オウンドメディア運用の前に「戦略」を設計すべし
オウンドメディア自体は、マーケティングの中で「戦術」に位置する。
そのため、前提となる戦略がなければ方向性を見失ってしまう。
端的にいえば「どういったコンテンツを制作するか」「何を目的としてコンテンツと制作するか」といった内容が定まらない。
そこで、まずは戦略設計を行おう。
(もし戦略設計が終わっているのであればこの章はスキップしていただいて構わない。)
オウンドメディア運用に必要な戦略は以下の4つだ。
- オウンドメディア運用の目的
- 自社が提供する価値
- ターゲットとペルソナ
- ジャーニーとコンテンツマップ
それぞれ具体的に見ていこう。
1.1.オウンドメディア運用の目的を設定する
まずは目的を定義しよう。
この目的は、以降の戦略や戦術の方向性の大元となる。
よくある目的としては、以下が挙げられる。
- ブランディング
- 集客(検索上位表示、PV増)
- リード獲得
- ナーチャリング
- 売上への貢献
弊社の実績から言えば、上記5つの中でも「リード獲得」「ナーチャリング」などを目的とする企業が多い。
リード獲得を目的とする場合、その前段となる「集客(PVの増加)」を実現するためにSEO対策を施し、そのうえでコンバージョンにつながるキラーコンテンツとして、ホワイトペーパーなどの制作に注力する。
一方で、ナーチャリングが目的の場合は各コンテンツの関連性やカスタマージャーニーに沿った導線設計、外部ツール(MAなど)との連携を意識しながら、テーマの整理やコンテンツの追加、内部リンクの再配置などを行う。
このようにざっくりと整理してみても、目的によってオウンドメディアの運用方法は変わってくる。
1.2.メディア(自社)が提供する「価値」を定義する
次に「メディア(自社)が何を提供するか」を明確にしておこう。
ここで定めるのは、メディア(自社)が提供する「価値」だ。
自社の価値を把握する方法はさまざまだが、以下のような点に注目していくと見つけやすい。
- 競合他社と差別化できる部分
- 製品およびサービスの機能的、価格的な優位性
- 顧客に利益をもたらす(もたらした)要素
- 顧客の痛みや悩みを取り除く力
これらは過去の実績から見えてくることも多い。
端的に言えば「成功したプロジェクト」「リピート客との取引」の中に隠れていることがある。
また、自社価値を洗い出すフレームワークとして、バリュープロポジションキャンバスがある。
ここで抽出した価値=メディアが提供する価値となるわけではないが、設定の際の一助になることは確かだろう。
ぜひ参考にしていただきたい。
1.3.ターゲットとペルソナの設定
ターゲットとペルソナの設定は、自社価値の提供を「誰に」向けて行うかを定義するために必要だ。
ただし、戦略設計の段階では、ペルソナは広範に設定して幅を持たせておきたい。
ペルソナを突き詰めていく作業はコンテンツ制作の段階で行うため、ここでは「大枠」をとらえておくに留めておこう。
1.4.カスタマージャーニーとコンテンツマップ制作
カスタマージャーニーは、顧客が製品やサービスに到達するまでの体験・認識の変化を示すものだ。
また、コンテンツマップはジャーニーに沿ったコンテンツの種類や配信方法をまとめた図を指す。
これらは、見込み客が置かれた状況や心理状態に応じて提供するコンテンツを変えていくために必要になる。
これらの詳しい作成方法は以下の記事でも解説しているため、参考にしていただきたい。
2.オウンドメディア運用の流れ
戦略設計が完了したあとは、実際に運用する際の流れを理解しておこう。
オウンドメディア運用の一般的な流れは以下のとおりだ。
- 体制構築と運用設計
- テーマの立案とキーワード設定
- コンテンツ制作
- 効果検証
順にみていこう。
ステップ1.体制構築と運用設計
オウンドメディア運用は中長期のタスクになるため、まずリソースを確保しよう。
どこに、どれだけのリソースが必要かを確定させるために、体制構築を行う。
チーム体制の設計
まず戦略設計・制作・検証という各プロセスに応じた役割分担の明確化を進めよう。
一般的には以下のようなポジションを想定する。
編集長(または責任者):全体方針の策定とディレクションを担う
編集担当:構成案やコンテンツの品質チェックを行う
ライター:実際の執筆を担当
SEO・分析担当:検索エンジンへの最適化と効果測定を担う
プロジェクトマネージャー:進行管理や社内外との調整を行う
外注と内製の切り分け
オウンドメディア運用で最も大きな課題になるのが「更新頻度」や「月単位での製作本数」だ。
オウンドメディアのコンテンツを内製で賄うと、大きなリソースが必要になる。
また、すべてを外注に任せると、コンテンツの品質が落ちたり、採算が合わなくなったりといった弊害が出やすい。
そこで、社内知見が必要な「ターゲットの理解」「提供価値の選定」などは内製し、SEO分析・記事執筆・校正リライト・進捗管理の一部などを外注するという方法が現実的だ。
外注をうまく使うことで、社内にないスキルや知見を補完できる。
また、スピードや品質を維持しながらコンテンツを継続的に供給する仕組みを構築できる。
内製・外注の是非やメリット・デメリットについては後ほど詳しく解説する。
運用ルールとガイドラインの整備
体制構築とあわせて行いたいのが、トンマナ・語彙・構成フォーマット・内部リンク方針などのガイドライン整備だ。
複数人での運用や外部パートナーとの連携がスムーズになり、メディア全体の一貫性が保たれる。
また、運用ルールには記事公開のフロー、校正・確認ステップ、コンテンツ管理台帳の更新頻度なども含めよう。
これらが曖昧なまま運用を開始してしまうと、公開スピードや品質にバラつきが生じやすくなる。
ステップ2.テーマの立案とキーワード設定
戦略設計の段階で設定したターゲットとペルソナ、さらに自社価値の双方を考慮しながらテーマを作成する。
また、テーマに沿ったキーワードをリサーチし、上位表示のための難易度や検索ボリューム、トレンドなども把握しておこう。
これらさまざまな要素を加味して、最終的なテーマ・キーワードを選定する。
ステップ3.コンテンツ制作
テーマとキーワードが決定した後は、コンテンツ制作に取り掛かろう。
コンテンツ制作は以下3つのステップで進める。
1.企画案の作成
企画案の作成方法はオウンドメディアの目的によって異なる。
目的が「リード獲得」である場合は、上位記事の分析と傾向把握、さらに「プラスαとして何が提供できるか」の見極めを行う。
上位記事の「抜けや漏れ」を補強し、さらに自社価値として「独自の視点」や「成功事例」を盛り込むように企画を練るわけだ。
この時に意識していただきたいのは、ターゲットの「潜在ニーズ」を満たし、「パーセプションチェンジ」を促すことだ。
潜在ニーズは、顧客が自覚していないニーズを指す。
例えば「老朽化したシステムをリプレイスしたい」という顕在ニーズがある場合、その裏には「システムインフラの運用や保守にかかる負担を減らしたい」という潜在ニーズが考えられる。
このような潜在ニーズを理解していれば、顕在ニーズとして求める「新しいシステム」の紹介のみに終始するのではなく、ユーザーが抱く「課題」や「悩み」に寄り添ったコンテンツを提供し、よりコンテンツに対する有益感や納得感を高められるようになる。
一方で、潜在ニーズを満たすだけだと、ユーザーは自社のサービスや分野と関連性を見出しにくい可能性がある。
そこで、ニーズに対する解決策を提示するところから、自社の成果に繋げる(CVへ至る)ために、ユーザーの「パーセプションチェンジ」を促す必要もある。
パーセプションチェンジは「意識変容」のことだ。
オウンドメディアによる集客においては、自然検索で偶然自社の記事コンテンツに出会ったときから、徐々に自社の有益性や信頼性を抱かせ、リードや顧客へ転換していくことを指す。
ただし、オウンドメディアの記事には自社サービスへの関心がない「認知層」も含めたユーザーがも多く流入するため、1記事でコンバージョンへ誘導することは極めて難しい。
一方で、他のコンテンツや施策も踏まえて、1つ1つの記事がユーザーの「パーセプションチェンジ」を促すための1部となっていることを意識した企画立案は非常に重要だ。
これにより、オウンドメディアコンテンツを「成果」という1つの目的に沿って制作できるようになる。
2.コンテンツの執筆
近年のオウンドメディア運用は、コンテンツSEOと切り離せない関係にある。
そのため、コンテンツ制作においてもSEOを意識していこう。
最も簡単な方法は「SEOライティングの3原則」に沿ってコンテンツを制作することだ。
- 漏れなく・ダブりなく
- 可読性を上げる
- 権威性と信頼性を担保する
ただし、SEOにおいては企画の段階からが非常に重要だ。
記事のターゲット、どのようなニーズに応えるか、どのような構成で伝えるかという事前の設計がしっかりと定まっていなければ、執筆の品質は不安定になる。
後段では目的別にキーワード選定、企画、執筆を含めた運用方法を解説するため、ぜひ読み進めていただきたい。
また、以下では記事コンテンツにおけるSEOや読者ニーズの捉え方について詳しく解説しているので、参考にしてほしい。
3.校正とリライト
可能であれば、コンテンツ制作と並行して校正・リライトを行う。
校正によって正しく読みやすい日本語を維持できれば、読者からの信頼性が増す。
また、リライトはSEO対策ツールやヒートマップのデータを参照しながら、「追加すべき情報」「整理すべき情報」を抽出し、書き直すことに注力する。
どちらも地味な作業ではあるが、継続することで確実にオウンドメディアの評価は上がっていく。
ステップ4.効果検証
制作が完了したコンテンツは早急にアップし、その後は効果検証に移行する。
効果検証では、いくつかのKPIを設定し、その数値を追跡していこう。
以下は、オウンドメディア運用で用いられるKPIの代表的な例だ。
- PV(ページビュー)数
- 記事数
- UU(ユニークユーザー)数
- SS(セッション)数
- オーガニック検索での流入数
- CV(コンバージョン)数
- 平均検索順位
各KPIの内容や設定方法については、こちらの記事で詳しく解説しているため、実際のKPI設定・測定の際には参考にしていただきたい。
上記KPIを1ヶ月単位で計測し、オウンドメディアの成長具合を把握していこう。
効果検証を定量的に行うことで、「次の打ち手」が具体化しやすくなるからだ。
3.オウンドメディアの「目的別」運用方法
ここからは具体的なノウハウとして「目的別の運用方法」を紹介する。
上述のとおり、オウンドメディアは目的によって運用方法が大きく変わる。
オウンドメディア運用の効果が出ていないのであれば「目的とは異なる運用方法」となっているおそれがある。
逆に、オウンドメディアの目的に合致した運用方法であれば、集客・リード獲得・ナーチャリングなどの効果が表れやすくなるはずだ。
※なお、ここで紹介する運用方法は①~③までのセットで「1サイクル」と定義している。
3.1.「集客」が目的のオウンドメディア運用方法
集客が目的の場合は、コンテンツSEOへの注力が必須である。
特に従来型のSEO対策(キーワードを軸としたコンテンツ制作)を厳密に行うことで、効果が出やすくなる。
コンテンツSEOについての理解が必要な場合は、こちらの記事を参考にしてほしい。
①キーワード選定
集客が目的の場合のキーワード選定は「露出重視」で行おう。
つまり「検索ニーズ(ボリューム)の大きさ」や「競合と比べた場合の勝ちやすさ」を重視する。
具体的なステップは以下のとおりだ。
- 自社事業に関連する検索キーワードを洗い出す
- 検索ボリュームおよび難易度別にキーワードを一覧にする
- 競合他社の分析で勝ちやすいキーワードをピックアップする
コンテンツSEOにおける集客とは「検索流入を増やすこと」だ。
BtoBではSNSから流入があまり意味をなさないため、どうしても検索エンジン重視の対策になる。
検索エンジンからの流入を増やすためには、「検索ボリュームが大きいもの」を選び、なおかつ「同じカテゴリに属するキーワードで攻める」ことが重要だ。
例えば「ファイアウォール」がメインテーマなら「ファイアウォール 設定」 など関連の複合KWをピックアップし、ボリューム順に分類してみる。
- ファイアウォール(月間検索数:22200)
- ファイアウォール 設定(月間検索数:5400)
- Windows ファイアウォール(月間検索数:2900)
- ファイアウォール 無効(月間検索数:1600)
さらに最も狙いたいキーワードを軸として、周辺の複合キーワードをグルーピングし、コンテンツ制作の指針とすることも可能だ。
この手法は「トピッククラスター」と呼ばれ、近年のコンテンツSEOでよく採用されている。
トピッククラスターについてはこちらの記事で解説しているので参考にしてみてほしい。
また、予算に制限がある場合は競合コンテンツの強さを分析し、勝てそうな分野から投資することも忘れないようにしたい。
②コンテンツ制作
集客が目的の場合は月に10本など、ある程度の量を確保したい。(もちろんコンテンツの「質」も確保することは大前提だ。)
1つのコンテンツで集客できる量には限界があるため、コンテンツの量を増やすしかないのだ。
更新頻度が高いサイトは、Googleの評価にもつながる。
さらにBtoBの場合はSEOライティングの3原則に加え「ビジュアライズ(視覚化)」と「サマライズ(まとめ、整理)」を意識して可読性を上げるようにしよう。
③効果検証
集客が目的の場合、KPIとしてPV(ページビュー)数、UU(ユニークユーザー)数、SS(セッション)数などを計測していこう。
PVは単純な閲覧回数、UUは実際にメディアを訪問した人数、SSはユーザー単位での訪問回数だ。
この3つが同時に伸びているようであれば、集客効果が高まっているといえる。
また、PVが上がってきていない記事は検索順位も低調であることが多い。
その場合は「パスカル」のような解析ツールを使って改善点を洗い出すと良いだろう。
以下は、コンテンツの検索順位などを一括管理できるツールの代表例だ。
- パスカル
- GRC
- KEYWORD FINDER
- GMO順位チェッカー
3.2.「リード獲得」目的のオウンドメディア運用方法
①テーマの立案
リード獲得が目的の場合は、検索流入をリード(見込み客)に変える運用が必要だ。
具体的には、集客よりもテーマ・キーワード選定の精度を高めていく。
この「精度」の基準となるのは「ペルソナ」だ。
戦略設計時にざっくりとしたペルソナを設定しているはずだが、これをさらに具体化してく。
例えば、戦略設計時のペルソナが「情報システム部門に在籍している30代のメンバー」の場合は、以下のように具体化できる。
- 情報セキュリティ対策として社内のアクセス制御に関する仕組みの構築を任されている
- アクセス制御の種類については概要を把握しているが、具体的な製品名は知らない
- 開発者としての経験は浅く、主に要件定義フェーズの経験が豊富である
このようにペルソナを具体化していくと、テーマやキーワードも具体性を帯びたものになっていくことがわかるはずだ。
さらに、自社が提供できる価値(UIが使いやすい、管理機能が使いやすいなど)との紐づけが強いキーワードを選定することで「刺さるコンテンツ」を作りやすくなるだろう。
②コンテンツ制作
リード獲得を目的とするコンテンツ制作では「誰をリードに変えたいか」によって内容を変えていく。
市場に存在する見込み客候補のうち、8割は課題意識がない「まだまだ客」だといわれる。
これに対して最も強いニーズを持つ「いますぐ客」は1%程度、次に強い「おなやみ客」や「そのうち客」はそれぞれ10%程度だ。
- いますぐ客(必要性、欲求ともに高い状態で購入に近い)
- おなやみ客(必要性の割には欲求が低い)
- そのうち客(魅力を感じていて欲求はあるが、必要性が低い)
- まだまだ客(必要性も欲求も著しく低い、もしくは気づいていない)
もちろん最もリードに変えやすいのは「いますぐ客」だが、1%のリードに対するコンテンツ制作に注力するのは効率が悪い。
そこで、欲求レベルが低い「おなやみ客」「そのうち客」に対しても、競合優位性や限定性などを際立たせることで、興味を持たれやすくなる。
さらに「目的地」を意識したコンテンツにすることも重要だ。
オウンドメディアでリードを獲得するためには、「ダウンロードフォーム」や「問い合わせフォーム」を通過してもらわなくてはならない。
これらはリード獲得のための「目的地」であり、コンテンツから誘導する必要がある。
記事コンテンツではテーマの概要部分を述べ、ホワイトペーパーでは詳細な解決策を提示してダウンロードを促すなど、コンテンツ間の連動を意識した制作を心掛けたい。
③効果検証
リード獲得の場合はCVR(コンバージョン率)、フォーム通過率など、リード獲得に関する指標をKPIとする。
どちらも「リード化」を計測する重要な指標だ。もしフォーム通過率が思わしくない場合は、EFOを施すなど別の対策が必要なこともある。
3.3.「ナーチャリング」が目的の場合
①テーマごとのジャーニー設計
ナーチャリングが目的の場合は、まず「ジャーニー」を設計する。
オウンドメディアで使用するジャーニーは、「カスタマージャーニー」と「サーチジャーニー」の2つだ。
- カスタマージャーニー
:認知から意思決定までのユーザー体験の変遷をまとめたもの - サーチジャーニー
:検索キーワードベースで、ユーザーの認知変化を捉えたもの
2つのジャーニーを設計することで「あるペルソナが、どのようにニーズを変化させているか」「変化したニーズが、検索キーワードにどう反映されているか」が把握しやすくなる。
2つの変化が把握できたら、ジャーニーに応じたコンテンツ配信を計画していく。
例えば、オウンドメディアに「第1四半期はエンドポイントセキュリティソリューションを売っていく」というミッションが課せられたとしよう。
見込み客に自社ソリューションを買ってもらうためには、まずはエンドポイントセキュリティに関する知識を提供し、自社製品への興味関心を促し、信頼性を高める必要がある。
したがって、「エンドポイントセキュリティに対するニーズがある人物のペルソナ」を作り、このペルソナを起点としてジャーニーを設計し、配信するコンテンツの内容と順番を決めていくのだ。
ナーチャリングのプロセスは、ジャーニーの変化に沿ってコンテンツを配信することで、効率よく進む。
②コンテンツ制作
ナーチャリングでは集客やリード獲得と異なり、コンテンツのボリューム(文字数)はそれほど意識する必要はない。
また、SEOよりも「内容の質」に注力したほうが効果を体感しやすい。
つまりは、情報ニーズに対して忖度なくストレートに答えていくコンテンツの方が信頼感を高めやすいのだ。
また、配信頻度については「1つのソリューションにつき最低でも週1回、MAから配信する」といった具合にルールを決めておこう。
定期的な配信を続けることで、読者層が分厚く濃くなっていくからだ。
ちなみに弊社では、ナーチャリング効果を得るために最低でも月4本ペースでの配信が必要だと考えている。
さらに記事コンテンツのみならず、ホワイトペーパーやセミナー動画など「決断」につながりやすいコンテンツも挟んでいこう。
特にナーチャリングの後期はこうしたコンテンツが効きやすい。
③効果検証
ナーチャリングで用いるべきKPIは、リード獲得と明確に異なる。
特にBtoBの場合はMAからの配信が基本となるため、メルマガの開封率、資料/ホワイトペーパーのダウンロード数、ウェビナー参加数、商談数などをKPIに設定しておこう。
4.オウンドメディア運用を成功させるためのコツ
ここまで、オウンドメディア運用の概要や目的別の運用ノウハウを紹介してきた。
弊社では、こうした知識と別に「成功のためのコツ」があると感じている。
ここではそのコツをまとめて紹介したい。
コツ1.アジャイル型を意識してスピーディーに
実際のオウンドメディア運用では、成果が出やすいコンテンツの把握が難しい。
したがって、運用開始当初は試行錯誤を続けていく必要がある。
成果の出やすいコンテンツを早急に把握するためには、スピーディーな運用サイクルが望ましい。
3~4ヶ月に1サイクル程度のスピードでは、ベストプラクティスに到達するまでに時間がかかってしまう。
また、時間の経過とともに変化するトレンドや、見込み客のニーズ変遷にもついていけない。
「修正しながら臨機応変に作る」というアジャイル型の運用を意識して、スピード感と柔軟性を持ち、短期間で色々な施策を検証した方が成果は出やすいのだ。
弊社では1カ月で1サイクル程度のスピード感が望ましいと考えている。
コツ2.BtoB特有のトレンドを意識する
BtoBでは「法改正」や「新しいビジネストレンド」「概念」などの登場によってニーズが急速に高まることが多い。
こうしたトレンドをうまくつかむことで、オウンドメディアの成長スピードは早まる。
普段は着実にコンテンツを積み上げつつ、トレンドをしっかりつかむことで、効果が倍増させていこう。
なお、トレンドに対応するためにはリサーチのコストが上積みされるため、この点がボトルネックになりがちだ。
トレンドに関するリサーチとコンテンツ制作を外部の専門業者に任せ、自社ではオウンドメディア運用に注力する方法も検討したい。
コツ3.コンテンツの形とチャネルを変えて提供する
オウンドメディアは複数のコンテンツの集合体である。
どのコンテンツがユーザーに刺さるかは運用してみないとわからない。
そのため、手数を増やすとともにコンテンツの「形」も変えていくことをおすすめする。
例えば、同一の内容であっても「記事コンテンツ」や「動画コンテンツ」「ホワイトペーパー」など複数のチャネルから形を変えて提供していくわけだ。
あるチャネルで効果が薄い場合でも、他のチャネルでは効果が確認できたというケースはいくつもある。
コツ4.「成功事例」を届ける
オウンドメディア運用において、意外と難しいのが「自社価値の把握と提供」だ。
戦略設計の部分でも述べたように「何を提供するか」が決まっていなければオウンドメディア運用の方向性を見失ってしまう。
自社価値の把握や提供を手っ取り早く行うためには「成功事例」の制作が適している。
成功事例には顧客ニーズと課題、解決の方法までが全て詰め込まれている。
また、ニーズを満たし、課題を解決する過程そのものが「自社の価値」であることが多い。
成功事例はSEOの観点から言えばそれほど有用ではないが、露出が多いコンテンツに結び付けることで「濃いリード」を生みやすいコンテンツになる。
コツ5:ナビゲーション設計で、回遊ではなく“遷移”を生む
オウンドメディアは、コンテンツの質が高いだけでは成果につながらない。
重要なのは、ユーザーがどのページにたどり着き、次にどこへ移動するかを意図的に設計することだ。
よくある失敗として、「関連する記事」や「人気記事」を自動で並べるだけの機械的な導線づくりがある。
これではユーザーの関心軸や検討フェーズを無視しているため、単なる“巡回”に終わる。
本来目指すべきは、ユーザーの心理変容に応じた“次の一手”を誘導する設計だ。
たとえば、課題喚起型の記事の末尾には、ホワイトペーパーや事例ページへのリンクを設置し、行動の動機づけを行う。
また、CTAの位置・文言も「次に知りたいこと」ベースで設計し、自然な遷移を促す。
このように、「CV起点の動線設計」を意識すれば、1記事あたりの価値を最大化でき、オウンドメディア全体のリード獲得率も向上する。
コツ6:運用初期は「価値提供」と「営業支援」の両軸を担保する
オウンドメディアの立ち上げから半年〜1年は、自然検索によるCVが伸びにくい。
この“助走期間”を無為に過ごすのではなく、営業活動との連携でオウンドメディアの価値を上げる工夫をしよう。
たとえば、下記のようなコンテンツを先に整備しておくと、営業との連携がとりやすい。
- よくある質問への回答(営業現場での反論処理に活用)
- 自社と競合の違い(差別化ポイントの明示)
- 成果事例とその背景(提案への信頼性を担保)
これらはSEOだけでなく、ナーチャリング用の資料や営業トークの補助資料として機能する。
検索流入が伸びない時期でも、社内での活用が可能だ。
特に、BtoBの場合は営業プロセスが長いため、「提案の説得力を補完する情報」としての価値が高い。
メディア自体のPVやCVが伸びる前から、営業の一部として評価される体制を作っておくことが、オウンドメディアへの継続投資の判断材料にもなる。
コツ7:可視化の仕組みを“先に”仕込むことで、打ち手の精度を高める
オウンドメディア運用におけるKPIは、後付けで計測しようとすると手戻りが大きい。
むしろ、「成果の可視化を前提に設計しておくこと」が、安定した検証と改善に直結する。
たとえば、以下のような項目を初期設計時に組み込んでおくとよい。
- コンテンツごとにテーマ分類・ファネル段階・狙いキーワードを明記
- Google Analytics4やGTM(Googleタグマネージャー)でカテゴリ別流入、CV起点を可視化する設定
- CTAリンクのクリック率やページ遷移の追跡設計(GTMやLooker Studio活用)
単なるPV数やCV数にとどまらず、「どのカテゴリやテーマが成果に貢献しているか」「どのファネルで離脱が多いか」といった戦略的な検証が可能になる。
また、これらのデータを月次でレポート化すれば、経営層や他部門への報告・共有も容易になり、社内巻き込み型のメディア運用に発展しやすくなる。
5.オウンドメディア運用で成果が出ない場合はここに着目
最後に、オウンドメディア運用でありがちなミスを紹介する。
オウンドメディア運用は試行錯誤の連続であり、何がボトルネックになっているかは運用してみなければ見えてこない。
一方で、「確実にボトルネックになる」ポイントも存在する。
それは以下の2つだ。
5.1.絶対的なリソース不足
オウンドメディア運用では「作る」「直す」「動かす」を同時に進める必要がある。
したがって、前述のようにアジャイル的な運用体制がおすすめだ。
しかし、アジャイル型の運用は「ノウハウを持ったコア人材」でチームを組んでいなければ成立しない。
例え少人数の体制であっても「精鋭」が必要なのだ。
しかし実際には、ノウハウ・人的リソースの両方が不足しているのが実情ではないだろうか。
コンテンツ制作自体の労力に加え、ディレクションや効果検証まで含めると、内製のみでは足が出てしまう可能性が高い。
結果的に運用サイクルが長期化し、成果を得られなくなるわけだ。
この場合は、オウンドメディアの構築や運用に精通した外部の支援を得ることをおすすめする。
その上でノウハウを吸収し、内製化に移行するとよいだろう。
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5.2.目的と運用サイクルが合致していない
目的と合致しないオウンドメディア運用は、効果がでにくい。
特に「いますぐ受注を増やす」という類の目的には不向きなのがオウンドメディアだ。
もし「いますぐ受注」「来月に売上アップ」といった目的を達成したいのであれば、広告と併用しつつ月20本程度のコンテンツをアップするなど、短期集中かつスピーディーな運用がマストになってくる。
一方で、予算取りやテーマ検討などに時間をかけすぎると運用サイクルが長くなり、目的は達成されないだろう。
一般的にオウンドメディア運用は長期目線で行う施策だ。
しかし、1つのサイクル自体は極めて短いため、素早い意思決定が必須になる。
5.3 コンテンツの“意図”と“導線”が設計されていない
成果の出ないオウンドメディアに共通する問題のひとつが、「コンテンツの量はあるが、方向性がバラバラで、CV(コンバージョン)につながる動線が組まれていない」ことだ。
多くの企業では、とりあえず記事数を増やすことを目指し、なんとなく役立ちそうな記事やノウハウを発信してしまいがちだ。
しかし、どのファネル層に向けて書いたコンテンツなのか、どこに遷移させたいのか、といった“意図”が欠けた記事は、成果に結びつきにくい。
また、次のステップ(ホワイトペーパーDLや事例紹介など)への明確な導線がないケースもユーザーの離脱を招きやすくなる。
「誰に・何を・なぜ届けるか」をコンテンツごとに明確化し、次のアクションへ誘導する構成設計(CTA設置、内部リンク設計)を徹底しよう。
5.4 効果検証が表面的で改善アクションにつながっていない
オウンドメディア運用では、アクセス解析ツールやMAなどを用いた定期的な効果検証が欠かせない。
しかし、単に「PVが増えた」「CVが減った」といった表層的なデータの把握にとどまり、その後の改善アクションまで落とし込めていないケースも多い。
たとえば、特定の記事のPVが高いがCVがゼロの場合、「なぜCVが発生していないのか?」を深掘りし、CTAの訴求力、導線の位置、対象ペルソナとのミスマッチなどを検証・改善する必要がある。
また、カテゴリ別・ファネル別での成果分析を行うことで、メディア全体のコンテンツ数やリソース配分も最適化しやすくなる。
成果が出ない場合は「数字を活かしきれていない」ことが多いのだ。
6.オウンドメディア運用は「外注」でレバレッジが効く
最後に、オウンドメディアを外注化するメリットを紹介する。
オウンドメディア運用は、企画・制作・分析・改善など多岐にわたるタスクを継続的にまわす必要がある。
しかし実際には、すべてを内製で完結させようとすると以下のような限界が見えてくる。
- 施策のスピードが落ちる
リサーチやSEO対策、構成案作成、執筆、分析など、1記事あたりにかかる負荷が大きく、数が出せない。 - ノウハウが属人化する
一部の担当者に依存しやすく、離職や異動があった場合にナレッジが途切れるリスクがある。 - 戦略的な視点が後回しになる
日々の運用に追われ、テーマ設計や成果検証の見直しが後手に回る。
このように、リソース面・継続性・戦略性の3点において、内製には明確な限界がある。
6.1.外注化すべき3つのタイミング
もちろん、すべてを外注すべきというわけではない。
だが、次のような状況にある場合は、「外注」を取り入れることが運用の打開策となる。
①立ち上げフェーズで成果の出る型を素早くつくりたいとき
最初の3〜6か月で成果の出る運用サイクルを確立するには、プロの支援が必要だ。
自社にノウハウがない状態で内製をスタートするよりも、素早くノウハウを吸収し、効果検証のステージに進める。
②すでに運用中だが改善の打ち手が見えないとき
コンテンツ数はある程度増えたが、CVが伸びない・SEO順位が上がらないといった場合、外部視点からの改善提案によって新たな突破口が開ける。
③コンテンツ戦略がうまく定まっていないとき
「誰に」「何を」届けるのかが曖昧なまま、記事だけを量産している状態では成果につながらない。
戦略設計に強い外部パートナーを起点に全体の方針を再設計すべきかもしれない。
コンテンツ設計についてはこちらの記事でも詳しく解説しているため参考にして欲しい。
6.2.「全部外注」ではなく「一部外注」でレバレッジをかける
オウンドメディアにおける外注の最適な活用法は「全部丸投げ」ではない。
社内で戦略や事業理解を担いつつ、「設計」や「制作」「リライト」など特定の工程を外注することで、効率と成果の両立が可能となる。
たとえば以下のような分業パターンがある。
社内:戦略設計/テーマ立案/効果検証
外注:キーワード選定/構成案作成/執筆/SEOリライト
このような分業体制をとることで、オウンドメディアの運用は効率よく進む。
また、外注パートナーからノウハウを吸収し、将来的に内製化比率を高めていくこともできる。
適切な外注バランスを設計することが、持続可能で成果の出るオウンドメディアを築くカギとなる。
7.まとめ
ここでは、オウンドメディア運用の概要や目的別の運用パターン、成功のためのポイントなどを紹介してきた。
オウンドメディア運用は、「戦略」があり「目的」に沿ったものでなければ成果が出にくい。
特に「集客には成功したが、リード獲得やナーチャリングがうまくいかない」といった場合には、目的と運用サイクルが乖離している可能性が高い。
オウンドメディアの運用状況を改善したいのであれば、目的に沿った運用方法に変えてみよう。
また、運用方法の変化によってノウハウやリソースが不足する場合は、外部の力を借りる方法も検討してみてほしい。