Web広告の運用において、「ランディングページの利便性」という言葉に戸惑っている方は多いのではないだろうか。
ランディングページの利便性とは、広告をクリックした先のランディングページが、ユーザーニーズを満たし、かつ使いやすく見やすいものであるかを表す基準だ。
ランディングページの利便性が低いと広告はクリックされにくく、クリックされたとしてもCVにつながらない「効果がない広告」になってしまう。
費用をかけて広告を出している以上、このような事態は避けたいだろう。
一方で、
「言葉の意味や評価基準が曖昧で分かりにくい」
「ランディングページの利便性の上げ方が分からない」
「そもそもなぜ利便性を上げなければならないのか」
という疑問もあるだろう。
そこで本記事では、ランディングページにおける利便性の具体的な内容や評価方法、利便性を高めるための施策案を解説する。
1.ランディングページの利便性とは
ランディングページの利便性とは、言葉のとおり、ランディングページがユーザーにとって「便利なもの」かどうかの度合いだ。
もう少し深掘りして解説していこう。
1.1.ランディングページの利便性とは
ランディングページの利便性とは、広告をクリックした先にあるランディングページが、ユーザーとの関連性や有用性が高く、使いやすいページであるかどうかを表す。
Google広告のヘルプページでは、利便性の評価の基準を以下のように表現している。
- ページ上に掲載されている情報の有用性と関連性
- ユーザーの移動のしやすさ
- ページ上のリンクの数
- クリックした広告クリエイティブに対してユーザーが期待する内容
出典:ランディングページの利便性|Search Ads 360(new experience)ヘルプ
難しいと感じる項目もあるかもしれないが、つまりは、ユーザーが求めるものをユーザー視点に立って作っていく必要があるということだ。
Google広告におけるランディングページの利便性の評価は「平均より下」「平均値」「平均より上」の3段階でなされる。
「平均より下」の場合は、直ちに改善に取り組み、「平均より上」を目指していこう。
1.2.ランディングページの利便性を上げる必要性
ではなぜ、ランディングページの利便性を上げる必要があるのだろうか。
「Google広告の評価指標であるから」という答えでは、不十分だ。
マーケティング担当者であれば、もう一歩踏み込んだところまで考えてほしい。
結論、ランディングページの利便性を上げることは、限られた広告予算のなかで広告効果やCVを最大化するために必要となる。
ではなぜ、ランディングページの利便性を上げると広告効果やCVの最大化につながるのかを解説していこう。
そもそも、ランディングページの利便性という指標は、広告の「品質スコア」を決める1つの要素だ。
つまり、ランディングページの利便性を上げると、広告の品質スコアが上がる。
品質スコアについては次章で深掘りするが、簡単にいえば、広告の品質を1〜10の数値で表す指標だ。
品質スコアが上がると、Googleから「この広告は高品質だ」と評価され、ユーザーの目に触れやすいように、上位表示されるようになる。
すると、広告がクリックされる機会が増え、ランディングページへのトラフィックも増加する。
トラフィックが増加すれば、問い合わせや資料請求、商品の購入などのCVに至る数も増え、企業の売上・収益UPにつながっていく。
それぞれの指標の向上を目指して最適化していくうちに、定量的な部分だけではなく、ランディングページの操作性やデザインなど、定性的な部分も向上していく。
その結果、さらにCVRも高まるという好循環をもたらしてくれるのだ。
このように、広告効果・CVを最大化させるためには、ランディングページの利便性を上げることが非常に重要といえる。
1.3.ランディングページの利便性の確認方法
ランディングページの利便性は、以下の手順で確認できる。
- Google広告の管理画面へアクセス
- 該当の広告グループをクリック
- メニューの「キーワード」→「検索キーワード」をクリック
- 上部の「表示項目」→「表示項目の変更」をクリック
- 「品質スコア」をクリック
- 「ランディングページの利便性」及び確認したい項目にチェックをいれ、「適用」をクリック
これで、管理画面には選択した項目の指標が表示される。
2.品質スコアとは
ここで、品質スコアとは何かを明確にしておこう。
品質スコアは、広告の品質を1〜10の10段階で評価した指標だ。
品質スコアを決める要素は以下の3つである。
- ランディングページの利便性
- 推定クリック率(広告がクリックされる可能性の高さ)
- 広告の関連性(広告がユーザーの検索意図と一致する度合い)
3つの指標は、それぞれが完全に独立しているわけではない。
ユーザーの求めるものを追求していけば、それぞれのパフォーマンスは向上し、お互いに良い影響をもたらす。
例えば、広告の関連性が高ければクリック率は上がり、クリック率が高ければランディングページへのトラフィックも増え、分析・改善がしやすくなるだろう。
品質スコアは、7が平均以上、5〜6が平均、4以下が平均以下と考えよう。
品質スコアが平均以下であれば、ランディングページの利便性に加え、推定クリック率と広告の関連性の改善も必要な可能性が高い。
なお、以下で解説する施策を実践すれば、ランディングページの利便性向上はもちろん、他2つの要素の評価にも良い影響を与えてくれるため、ぜひ参考にしてほしい。
3.ランディングページの利便性を上げる5つの方法
ランディングページの利便性を上げる5つの方法を解説する。
3.1.関連性と独自性が高いコンテンツを提供する
ランディングページの関連性と独自性を高めよう。
1つずつ解説する。
関連性を高める
検索キーワードと広告文、または遷移先のランディングページとの関連性を高めることを指す。
そもそも、ユーザーは知りたい情報や、やりたいことがあって検索をしているため、関係なさそうな広告はクリックしない。
仮にクリックしたとしても、期待する内容と異なればユーザーは興味を失い、すぐに離脱するだろう。
広告クリエイティブ、ランディングページの内容を見直すとともに、ユーザーの検索意図を深掘りし、設定する検索キーワードを選定し直すことが重要だ。
独自性を高める
広告文やランディングページでは、自社独自のセールスポイントや、期間限定のキャンペーンなどを明記しておこう。
ユーザ視点で考えると、現代は「似たようなサービス」が多すぎる。
広告は、自社のCVや売上につなげるために出稿するはずだ。
他社と比較した「自社である必要性」をアピールする必要がある。
3.2.操作のしやすさとデザインの改善
ランディングページは、ユーザーが操作しやすく、見やすいものにする必要がある。
広告文に興味を持ってクリックしたものの、知りたい情報がすぐに見つからなければ、離脱率や直帰率は高まってしまうためだ。
ページ内をあちこち探さなくても、必要な情報が瞬時に得られるページにしていこう。
ランディングページの操作性やデザインの改善ポイントは以下のとおりだ。
- ユーザーが求める情報・重要な情報をスクロールせずに見える範囲に表示する
- CTAボタン(問い合わせ・資料請求などへのボタン)やフォームを見つけやすい位置に配置し、ユーザーが何をすれば良いかを明確にする
- CTAボタン自体の色よりも、背景とのコントラストを重視し、見つけやすくする
- 画像や動画を活用する
- 情報を詰め込みすぎず、シンプルなデザインにする
サービスの魅力を伝えようとするあまり、情報を詰め込み過ぎてしまうことはよくある。
そうならないためにも、ユーザー目線に立ち、メリハリのあるランディングページに仕上げよう。
こちらの記事も参考にして欲しい。
3.3.信頼を得るための情報を充実させる
ユーザーは、企業の連絡先や所在地が分からなかったり、導入事例や口コミが一切なかったりすると、安心して行動を起こせない。
前項では、情報を詰め込み過ぎないことが重要だと述べたが、企業や商品の信頼につながる情報は行動(問い合わせや資料請求)へのブースターとなるため、最低限記載しておかなければならない。
例えば、以下のような項目が挙げられる。
- 連絡先(電話番号、メールアドレス)
- 企業の所在地
- SNSアカウント
- 商品・サービスの詳細情報
- 商品・サービスの導入事例、クライアントのリスト、口コミ など
商品の詳細情報や導入事例を、HPやオウンドメディアで既に公開している場合は、リンクを設置して誘導することも1つの手段だ。
3.4.モバイルフレンドリーにする
ランディングページは、スマートフォンで見やすく操作しやすいものにする必要がある。
なぜなら、インターネットのユーザーの利用端末で最も多いのがスマートフォンだからだ。
これは総務省の統計でも明確にされている。
モバイルフレンドリーにするための具体的な方法は、以下のとおりだ。
- レスポンシブWebデザインを採用する
- フォントサイズ・行間・一文の長さを調整する
- タップできる要素(CTAボタンなど)の位置や大きさを調整する
- モバイルフレンドリーチェックを行い、問題点を改善する
ページを作成・改善する際、常にモバイル表示で確認したり、実際にスマートフォンで操作したりすることが重要だ。
また、Google Chromeには、モバイルフレンドリーをチェックできる拡張機能「Lighthouse」があるため、活用するとよいだろう。
3.5.ページの読み込みスピードを速くする
ページの読み込みスピードは2秒以下が望ましい。
Googleの調査によると、読み込みに3秒以上かかるページからは53%のユーザーが離脱するという。
また、読み込み速度の改善によりCVが向上した事例は数多く報告されているため、読み込み速度は速ければ速いほど良い。
改善するには、以下のような方法が効果的だ。
- 画像の容量を軽くする(画像サイズの縮小、webpへの変換、ファイルサイズの圧縮など)
- コードの容量を軽くする(コード圧縮ツールの使用、WordPressのプラグインで対応)
- 遅延ロードを設定する(JavaScriptの「Lazy Load」を実装、WordPressのプラグインで対応)
- サーバーのスペックを見直す
専門的な内容については、エンジニアや有識者と相談しながら取り組んでいってほしい。
また、WordPressではコードの圧縮や遅延ロードを簡単に実装できるプラグインもあるため、検討してみよう。
4.ランディングページの利便性改善を検証する方法
ランディングページの利便性を改善し、広告の品質を上げてCVを最大化するには、前章の施策を実践するだけではなく、改善・検証を繰り返す必要がある。
なぜなら、ランディングページの利便性や品質スコアは、競合サイトとの相対的な評価であり、流動的なものだからだ。
一度高い評価を得たとしても、競合の状況やトレンドによって変動する可能性は大いにある。
ランディングページの利便性を改善・検証する方法を具体的に解説していく。
4.1.KPIを設定し、追跡する
ランディングページの利便性改善・検証のために、GoogleAnalytics4やGoogle広告のレポートなどを活用して、以下のKPIを定期的に確認しよう。
- コンバージョン率の向上
- 平均セッション時間の向上
- クリックスルーレート(CTR)の向上
- 直帰率の低下
- リード獲得コストの低下
- ページの読み込み時間の短縮
KPIの確認と見直しの頻度は、キャンペーンの期間によって異なる。
短期的なキャンペーンの場合は高頻度(毎日または週に数回)、長期的なキャンペーンの場合は週次または月次単位で確認・改善するとよいだろう。
4.2.A/Bテストを行う
ランディングページの改善では、実際にアクセスしたユーザーがどのような行動をしているのかを分析し、A/Bテストを繰り返して検証・最適化を行うことが重要だ。
仮説のみをもとにページを作成しても、実際のユーザーが仮説どおりにページ上を行動するとは限らない。
まずは、ヒートマップツールなどで、ユーザーがよく見ている要素やよくタップするエリアを確認し、ユーザーが興味を持ちやすくCVにつながる要素について仮説を立てる。
仮説をもとに特定の要素(見出し・画像・CTAボタン・フォーム・レイアウト)を変え、CV向上に寄与する要素や要因を分析して改善を繰り返していこう。
ただし、A/Bテストは十分なデータが蓄積されていなければ、実施する意味がない。
はじめから2パターンのページを作成するのではなく、ある程度のアクセスやCVが発生してから実施しよう。
4.3.ユーザーフィードバックを収集する
ユーザーからの直接の声も、ランディングページの利便性の改善に役立つ。
ページ内にアンケートへのリンクを設置したり、フィードバック用のフォームをポップアップ表示したりすれば、ユーザーの感想や要望を直接得ることができる。
5.コンテンツマーケティングにおけるランディングページの活用方法
特定のキャンペーンのために作成し、改善を重ねたランディングページが独立したものであるのはもったいない。
自社の持つ貴重なコンテンツ(オウンドメディア・自社HP・商品詳細・ブランドページなど)と連携することで、企業にとって大きな相乗効果を得られる可能性があるからだ。
そこで最後に、コンテンツマーケティングにおけるランディングページの活用法をみていこう。
なお、コンテンツマーケティングの基本についてはこちらの記事で詳しく解説している。
活用法1.オウンドメディアやSNSとの連携
オウンドメディアやSNSアカウントへのリンクをランディングページに設置し、コンテンツ同士を連携すると、以下のメリットを得られる。
- 複数コンテンツの活用によりユーザーが求める情報をよりリッチに伝えられる
- 自社のサービスや企業に対する知識が増え、信頼度が上がる
- 広告から流入したユーザーを、質の高いリードに変換しやすくなる(ナーチャリング効果)
- 複数コンテンツ間のユーザー行動の分析ができるようになる
ただし、ランディングページとほかのコンテンツを連携させる場合、それらのコンテンツも十分な情報量があり、権威性が高い状態に整えておく必要がある。
(例:リンク先のオウンドメディアの更新が止まっていたり、記事コンテンツが非常に少なかったりすれば、逆効果になるおそれがある。)
活用法2.パーソナライズされたコンテンツの提供
ランディングページのフォームにユーザーが入力した情報をもとに、ユーザーの属性や興味に沿った自社のコンテンツを提供するのも効果的だ。
ユーザーと関連性が高い内容を提示できる可能性が高くなり、サイトの滞在時間・ページ内リンクのクリック率向上が期待できる。
その結果、自社コンテンツ全体のアクセス数やSEO評価が高まるという好循環が生まれる。
また、ユーザーの情報はWeb上のコンテンツだけではなく、メルマガやDMの内容のパーソナライズにも活用できる貴重な資産となるだろう。
活用法3.導入事例や成功事例、体験談の提示
自社サービスの導入事例や成功事例も、企業が持つ貴重なコンテンツだ。
ユーザーの興味を惹きつけ、安心や信頼を生むため、ランディングページでも提示すべきだろう。
また、既にHPやオウンドメディアで公開している事例紹介ページへのリンクを設置し、誘導するのも1つの手段だ。
前項のパーソナライズと組み合わせるのであれば、ユーザーと同程度の規模・業種の企業事例が表示されるように設計すると、よりユーザーの共感を得やすくなる。
6.まとめ
ランディングページの利便性とその改善方法、さらに具体的なKPIやCV最大化のための活用方法などを解説してきた。
広告運用において、ランディングページの利便性が「平均値」または「平均より下」である場合は、ぜひ改善に取り組んでほしい。
同時に広告の品質スコアを決める「推定クリック率」や「広告の関連性」も確認してみよう。
Google広告やYahoo広告では、ただ広告費用を投じれば多くの人の目に触れ、効果が見込めるわけではない。
広告出稿後も、広告クリエイティブやランディングページの改善・最適化に取り組むことではじめて、限られた費用のなかでの広告効果やCVを最大化できるのだ。
広告運用において「自社サービスを売り込むこと」だけを考えている場合は、考えを改める必要があるだろう。
まずはユーザー目線に立ち、検索キーワードから推測されるユーザーニーズや、広告文からユーザーが期待する内容を分析し、ランディングページの利便性向上を目指していこう。