フルファネルマーケティングとは?BtoBでの重要性、実践のポイントを解説

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フルファネルマーケティングはファネルを活用した購買行動プロセス全体の最適化だ。

その効果は、コンバージョン率の向上やLTVの最大化など売上に直結する。

しかし、

「そもそもファネルを活用したことがない」

「ファネルについては理解しているが、階層ごとの打ち手がわからない」

「営業主導の案件が多く、検討段階にいるリードの行動を可視化・分析できていない」

といった理由から、フルファネルマーケティングに着手できないケースもある。

ただし、マーケティングの成果を上げるためには、ファネルを活用した購買行動の可視化が欠かせない。

ここでは、フルファネルマーケティングの定義や重要性、BtoB ITでの具体的な実践方法などを解説する。

 

1.フルファネルマーケティングとは

 

まず、フルファネルマーケティングの定義や重要性を整理しておこう。

 

1.1.ファネルによる顧客行動の全体最適

 

フルファネルマーケティングとは、ファネル全体を活用したマーケティング施策を指す言葉だ。

ファネルは「フェーズ(層)」で区切られており、各フェーズに滞在するユーザーは、それぞれ異なる心理や思考を持っている。

これらに応じたアプローチを行うことで、顧客はファネル上をスムーズに進むようになる。

 

つまり意思決定(購入・契約)にいたるまでの速度や量が改善するということだ。

これがファネルを活用したマーケティング、「フルファネルマーケティング」である。

ファネルとは?セールス・マーケティングの違いとBtoBで成果につなげるポイント

 

フルファネルマーケティングでは、ファネル全体がうまく機能するように最適化を施すことが求められる。

つまり、「ファネルを用いた購買行動の全体最適」だ。

「認知」「興味・関心」「検討・比較」「購買・契約」というフェーズごとに施策を打ちつつ、それぞれの施策が相互にメリットをもたらすような戦略設計が必要となる。

 

「購入・契約後」のフェーズも含める

 

フルファネルマーケティングでは「購買・契約後」の顧客に対しても、継続的にアプローチする。

一般的なファネルでは、「購買・契約」がゴールとなり、アプローチは一旦終了するが、SaaSビジネスのように継続率が重要な場合は、契約後も施策を続け、定着を図らなければならない。

例えば、オンボーディング支援やカスタマーサクセスツールによる利用状況の可視化などが必要だ。

このことから、現代のフルファネルマーケティングは、以下のように砂時計型のファネルで図式化されることが多い。

 

1.2.フルファネルマーケティングの重要性

 

フルファネルマーケティングが重視される背景には、以下2つの理由がある。

  • BOFU特化型の伝統的なマーケティングに限界がある
  • 垂直統合型、連携重視のマーケティングが必須の時代になった

順に詳しく解説する。

 

BOFU特化型のパフォーマンスマーケティングに限界がある

 

従来型のパフォーマンスマーケティングでは、ファネルの下部(BOFU)に注力する傾向がある。

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つまり、購入や受注に近い見込み客へのアプローチに力を入れ、素早く売り上げに結び付けるのだ。

BOFUまで下りてくる顧客は課題感が明確で、広告の効果が出やすい。

さらに、トラッキングによる数値化とも相性がよく、測定も容易だ。

一方で、常に「枯渇」というリスクにさらされる。

BOFUに位置し、成果につながりやすい顧客は絶対数が少なく、競争も激しいからだ。

その結果、当初はパフォーマンスがよかったものの、徐々にROIが低下していくという企業は少なくない。

そんな中、フルファネルマーケティングは、ファネルの全フェーズに対して適切なアプローチを行い、購入から遠い見込み客に対しても投資する。

これが後々の「見込み客の枯渇」を防ぎ、長期的な売上の確保につながるということだ。

 

垂直統合型、連携重視のマーケティングが必須の時代になった

 

ニーズの多様化が進んだ現代では、マーケティングとセールス、カスタマーサポートまでを含めた垂直統合型のアプローチが売上の増大につながる。

また、新規顧客の獲得においては、マーケティングファネルで「問い合わせ(MQL)まで」、セールスファネルで「問い合わせ(SQL)から契約まで」という連携が必須だ。

さらに、継続率を上げるためには、カスタマーサポートとセールスから吸い上げた情報をマーケティング施策にも反映させなくてはならない。

フルファネルマーケティングによって顧客の購買行動プロセス全体を俯瞰し、部門の垣根を超えた連携は、今や必須である。

 

継続率重視のビジネスではさらに重要に

 

フルファネルマーケティングは、継続率や定着率が重視されるSaaSビジネスにおいて特に重視される。

SaaSビジネスにおける「継続率」は、ときに新規顧客の獲得よりも重要な指標となるためだ。

フルファネルマーケティングならば、BOFU重視のパフォーマンスマーケティングではカバーできなかった「購買・契約後」の部分を改善し、売上の安定につなげられるだろう。

 

1.3.パフォーマンスマーケティングとの違い

 

パフォーマンスマーケティング フルファネルマーケティング
目的 売上の拡大
  • LTV向上
  • 長期的なコンバージョン率の改善
  • 新規リードの継続的な獲得
施策の傾向
  • BOFU(ファネルの下層)に特化
  • 広告や購買促進キャンペーンに注力
  • TOFU、MOFU、既存顧客にもリソースを配分
  • 認知拡大や商品理解に注力し、将来的な顧客獲得につなげる
測定のしやすさ ROIが見えやすい 売上への貢献度が計測しにくい

従来型のファネルマーケティングは、成果に応じた広告料金を支払う「パフォーマンスマーケティング」がメインだった。

購入や受注に近い「BOFU(下層)」へのアプローチがメインであり、BOFU以外にはほとんど予算を割かないケースもある。

この場合、目先の成果は出やすいものの、前述のような見込み客の枯渇など、長期的な成長を阻むリスクがある。

一方で、フルファネルマーケティングでは、単一の目的を定めて顧客行動の全体最適を目指す。

最終的な目的は「売上」であったとしても、TOFU(ファネル上部)・MOFU(ファネル中部)、そして成約後の顧客に対しても、それぞれKPIを設けて適切なアプローチを行う。

売上発生から遠い部分である認知拡大や商品理解度の向上のためにもリソースを配分するため、継続なリード獲得と将来的な売上への貢献を目指すことができるのだ。

 

2.フルファネルマーケティングのメリット

 

ここで簡単にフルファネルマーケティングのメリットを整理しておく。

フルファネルマーケティングはBOFU重視のパフォーマンスマーケティングと比較して、数値的なメリットが見えにくい。

しかし、下記のようなメリットは高確率で確認できるはずだ。

 

メリット①:LTVが向上する

 

厳密にいえば、LTVの向上はフルファネルマーケティングの実施による結果論だ。

しかし、LTVが向上する過程で、ロイヤルティやリピート率の向上も得られる。

ファネル全体を意識したマーケティング施策の実施により、顧客とのつながりが強化され、徐々に太い導線となって売り上げに結びついていくイメージだ。

 

メリット②:ボトルネックの特定と可視化が可能

 

フルファネルマーケティングでは、フェーズ間の転換率にもKPIを設定することが多い。

例えば、「認知」から「比較・検討」にどの程度のユーザーが流入しているかを可視化する。

その結果、ファネル上でボトルネックが特定できるようになる。

ファネル上でのボトルネックとは、「購買行動が停滞しがちなポイント」を指す。

ボトルネックが明らかになれば、フェーズに応じた的確な改善策を実施できる。

ちなみに、BOFU重視のパフォーマンスマーケティングに比べると、ボトルネックの改善・強化にかかるコストは小さい。

BOFU重視のパフォーマンスマーケティングでは、広告の見直しや投下予算の増強など多額の費用がかかる。

一方でフルファネルマーケティングならば、コンテンツの改善や導線の見直しがメインになり、それほどコストはかからないのだ。

 

メリット③:部門間の情報共有が促進される

 

フルファネルマーケティングは、顧客行動の全フェーズを可視化するため、他部門との情報共有が必須だ。

結果的にマーケティング、セールス、カスタマーサポートの間で連携力が高まる。

また、施策の目的やKPIも共有することで、複数の部門が「単一のユニット」として機能する。

全体的な組織力の強化にもつながるだろう。

 

メリット④:成熟した事業の売上を底上げする

 

BroBのフルファネルマーケティングがもたらす最大のメリットが「頭打ちになった事業の売上を伸ばす」ということだ。

すでに成熟し、製品やサービスが安定的に供給され、顧客層が固まっている場合、新たな顧客の獲得は難しくなる。

広告を打ったとしても「同じフェーズの同じ見込み客」が繰り返し見ているだけという状況になりかねない。

一方で、フルファネルマーケティングでは「購買から遠い層(潜在見込み客)」や「購買後の既存顧客」に対してもアプローチする。

新たな見込み客を取り込みつつ、既存顧客からの売上も伸ばすことで、頭打ちになった事業の活性化をもたらす。

 

3.BtoBにおけるフルファネルマーケティングの実践ポイント

 

最後に、BtoBでフルファネルマーケティングを実践するうえでの重要ポイントを紹介する。

ここでは特にSaaSビジネスを想定する。

 

ポイント①:最終目標から逆算して施策を設ける

 

最終目標からさかのぼるように施策を設定することで、フェーズごとの成果が連動してくれる。

例えば、最終目標が「LTV向上」であれば、「購入→継続」のフェーズ、「比較・検討→購入」のフェーズとさかのぼり、施策を策定していく。

SaaSビジネスの場合は逆に購買後から継続に向かうような導線も必要になるだろう。

この導線においては、「ロイヤルティプログラム」や「サポート」の新設などが該当する。

 

ポイント②:BOFUに集中していたリソースを分散させる

 

BOFU特化型のパフォーマンスマーケティングからフルファネルマーケティングに移行する場合は、購買の前後(BOFU)に集中していたリソースを、TOFUやMOFUに分散する。

ここでいうリソースとは、予算以外の「人的リソース」も含む。

具体的には、TOFUやMOFUにリソースを配分し、コンテンツマーケティングやオウンドメディアの充実を図るのだ。

コンテンツマーケティングとオウンドメディア運用は、長期的に見込み客を獲得・育成するための施策である。

購入フェーズから遠い認知や興味関心フェーズのリードも重視し、BOFUへの流入量を増やす。

ただし、BOFUに集中していたリソースをTOFUやMOFUに振り分けるには、上長など周囲の理解が必須だろう。

結果的に予算の承認が下りず、フルファネルマーケティングに移行できないケースも多い。

その場合、フルファネルマーケティングによる効果を数値で見せることが難しい。

もし周囲を説得するだけの材料がそろえられない場合は、実績とノウハウを持つ外部企業のサービスも視野に入れてみよう。

弊社においても、コンテンツマーケティングを筆頭に、BtoB IT企業のマーケティングを支援するサービスを展開しているため、お気軽にご相談いただきたい。

 

ポイント③:ツール・システムの連携力を高める

 

意外と見落としがちなのが、「ツール・システムの連携力」だ。

現代のマーケティングはデジタルマーケティングが主体になっており、ツールやシステムの活用が欠かせない。

フルファネルマーケティングでは、ファネルの全層に対してツールとシステムを対応させ、データも共有できるような仕組みが理想だ。

 

ファネル図を起こしてそれぞれの階層でどういったツールを使い、どのデータを連携し、KPI設定を行うべきか検討してみよう。

一般的なツール・システムとしては以下が挙げられる。

 

SEO対策ツール

 

見込み客をファネルの上部に誘導するための効果的なコンテンツ戦略を構築することを目的とする。

機能としては、キーワード選定や検索ボリューム、競合調査などが提供される。

 

MAツール

 

リードジェネレーション、ナーチャリング、スコアリング、パーソナライズドメールの送信などのタスクを自動化する。

マーケティングチームの作業負担を軽減し、リードを効率的に育成するほか、見込み客をMOFUやBOFUに移動させ、購買意欲を高めることができる。

 

CRM

 

顧客の連絡先情報、商談履歴、購入履歴、サポート履歴などのデータを一元管理し、営業チームが効果的に顧客対応を行うための支援を提供する。

マーケティング、セールス、カスタマーサポートをつなぐデータ基盤として活用でき、BOFUの顧客をリピーターに変えるための重要な役割を果たす。

 

カスタマーサクセスツール

 

顧客が製品やサービスを効果的に活用できるように支援し、顧客満足度とロイヤルティの向上を促す。

顧客の利用状況のモニタリング、フィードバックの収集、問題解決のサポート、アップセルやクロスセルの機会の特定などの機能がメインだ。

既存顧客の継続率を強化し、LTV向上に貢献する。

 

4.まとめ

 

ここでは、フルファネルマーケティングの定義やパフォーマンスマーケティングとの違い、BtoB SaaSビジネスでの実践ポイントなどを解説してきた。

フルファネルマーケティングでは、BOFUだけでなく、TOFUやMOFUに対する補強も行う。

また、SaaSビジネスなどでは、購入後の継続フェーズに対してリソースを割く必要がある。

今まで取り組んだことがない場合は、予算取り、リソースの配分、ツールの導入など、企業にとって大きな変化となるかもしれない。

効率的、かつ成果につなげる体制を整えるためにも、外部の支援も視野に入れつつ取り組むことをおすすめする。

 

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