集客は、マーケティングの一部だ。
BtoBでは、顧客ごとの売上規模が大きく長期的な取引が前提となる。
よって一つでも多くの優良顧客と出会うために、集客には戦略的に取り組む必要がある。
一方で、以下のような課題を抱えている企業も多い。
「マーケティング施策としての具体的な打ち手がわからない」
「営業主導の集客を続けていて、マーケティング主導の集客戦略が分からない」
「自社にとって有望な集客方法を探している」
特に営業主導の集客が長く続いた企業ではこの傾向がみられる。
BtoBにおける集客では、一定のセオリーがあるため、まずはそのセオリーを理解し、実践することで集客が精緻化され、売上の増大につながる。
本記事では、BtoBマーケティングによる集客のセオリーや特徴、具体的な集客方法、選定のポイントなどを詳しく解説していく。
目次
1.集客とは?基本の定義と目的
まず、集客の定義や目的を理解しておこう。
ここでは一般論としての集客と、マーケティングにおける集客に分けて解説する。
なお、集客施策を検討する際には「どのチャネルを用いて顧客と接点を持つか」という視点も重要である。
詳しくは以下の記事で解説している。
マーケティングチャネルとは?IT企業のための完全設計ガイド
1.1.既存製品・サービスに「見込み客」を呼び込む
集客とは、「すでにある製品、サービスに対して顧客を呼び込むこと」だ。
言葉にすると非常にシンプルなのだが、単に「人を集めること」ではない。
「製品やサービスが想定しているターゲット=見込み客」を集めることが集客だ。

BtoBにおける集客の難しさ
BtoBの集客は、BtoCに比べると難易度が高い。
BtoB企業の製品・サービスは専門性が高く、訴求対象が限定されるからだ。
さらに取引額も大きく、意思決定には時間がかかる。
単に認知度を上げるだけならマス広告(テレビCMなど)に投資すれば良いが、「見込み客になりうる対象」に届くとは限らない。
これがBtoBにおける集客の難しさである。
営業主導の集客には限界がある
営業主導の集客では、営業担当者個人の経験や人脈が集客につながる。
その反面、市場全体を広く俯瞰した戦略的なアプローチがしにくい。
特にプッシュ型の営業が忌避される現代では、この傾向が強まっている。
市場全体を俯瞰的にとらえて効率よく集客するためには、マーケティング主導の戦略的な集客が欠かせない。
1.2.マーケティングにおける集客の位置づけ
マーケティング目線での集客とは、下図のように表現できる。

よくあるのが「販促」と「集客」の混同だ。
「販促」は「見込み客に製品やサービスを買ってもらうための活動」である。
一方、集客は「見込み客を集めること」だ。
見込み客の「像」はターゲティングによって具体化され、プロモーションの一部として集客が実行される。
プロモーションには販促も含まれるが、上記のように狙いが異なるため明確に分けて考えたい。
リードジェネレーションと集客の違い
リードジェネレーションは、厳密に言えば「潜在見込み客(見込み客の前段階)」の情報を取得することだ。
Web広告から、サービスLPやウェビナーの参加申込に誘導し、個人情報を取得する。
ただし、情報を取得したからと言って全員に「見込み」があるとは限らない。
つまり「潜在見込み客」なのだ。
これに対して集客は、その名の通り「客を集める」、つまり製品を購入する「顧客を増やす」ことを指す。
かなり混同されやすいが、集客という大きな括りのなかに、リードジェネレーションがあるといえる。
ただし、実際の施策として見ると同一視されることも多い。
明確な区別はしにくいだろう。
特に「売り手」「買い手」ともにニッチなBtoBでは、集客がそのままリードジェネレーション施策になることもある。
2.集客におけるBtoBマーケティングの特徴
次に、BtoBマーケティングにおける集客の特徴を把握しておこう。
2.1.BtoBマーケティングの特徴
BtoBマーケティングの特徴は下記3つだ。
- DMU(意思決定組織)に訴える必要がある
- プロセスが複雑で利害関係者が多い
- 出会いから意思決定までの時間が長い
順に詳しく見ていこう。
特徴①:DMU(意思決定組織)に訴える必要がある
BtoBマーケティングでは、複数の関係者の集合体(DMU:意思決定組織)に訴える必要がある。
DMUには、業務担当者(利用者)のほかに技術担当者、財務担当者、最終決定者などが含まれ、それぞれが異なるニーズを持っている。
このうちの誰を対象とするかによって、施策は変わってくる。
例えば一般的な利用者を想定する場合は、UIの使いやすさなどをアピールする。
一方で、財務担当者がターゲットの場合はコストパフォーマンスを、最終決定者の場合は企業としての信頼性をアピールしなくてはならないだろう。
このように複数の人物を想定しなくてはならないことが、BtoBマーケティングにおける最大の特徴である。
特徴②:プロセスが複雑で利害関係者が多い
BtoBマーケティングの購買プロセスは、BtoCよりも複雑だ。
前述のように利害関係者が多数存在し、各関係者が異なる観点から評価を行う。
特にITシステムやSaaSにおいては、情報システム担当者の要件確認や技術的な承認が必要となる。
使いやすさ、コストパフォーマンスのほかに、機能性・技術的な適合性・セキュリティ要件を確認し、最終的には経営陣が投資判断を行うという流れが一般的だ。
このようにBtoCよりも多角的に購買をチェックされるという点も押さえておきたい。
特徴③:出会いから意思決定までの時間が長い
BtoBの取引では、初めての接触から意思決定に至るまでの期間が長い。
前述のように複数の意思決定関与者が、異なる視点で検討・評価を繰り返すためだ。
また、「予算の都合から導入時期がずれこむ」「競合他社との比較に時間を要する」などの理由から、購買・契約まで年単位の時間がかかることもある。
2.2.BtoB集客で失敗しがちな注意点(NG施策の整理)
BtoBの集客では一定のセオリーが存在する一方で、誤った施策や短期的な発想により成果を上げられないケースも少なくない。
代表的な失敗例を整理しておく。
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注意点 |
内容 |
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短期的な成果のみを追求する |
展示会や広告施策で即時リード獲得に偏重すると、継続的な関係構築が疎かになりやすい。 |
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営業部門依存の属人的な集客 |
営業担当者の人脈や行動力に依存しすぎると、再現性が低くスケーラブルな集客につながらない。 |
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ターゲット精度が甘いまま集客を行う |
ペルソナや購買関与者を十分に想定せずに施策を打つと、的外れなメッセージになり、成果が出にくい。 |
|
チャネルの選定を誤る |
顧客層に適さないチャネルにリソースを投じても効果は薄く、むしろ機会損失となる。 |
これらのNG施策を避けるためには、ターゲット設定と施策選定を戦略的に行い、営業部門とマーケティング部門が連携しながら取り組むことが不可欠である。
2.3.BtoBマーケティングにおける集客のポイント
これらBtoBマーケティングの基礎を踏まえつつ、集客におけるポイントをまとめてみる。
ポイント①:「売りたいもの」「ターゲット」「ペルソナ」の3点を精密に結ぶ
集客では、何を売りたいか(製品やサービス)、誰に売りたいか(ターゲット)、そしてそのターゲットの具体的な像(ペルソナ)を明確にしよう。
BtoBでは、BtoCのように「数を打てば当たる」という方法論が通用しにくい。
専門性が高くニッチな市場では特にこの傾向が強まる。
「売りたいもの」が合致するターゲットとペルソナの設定、さらに競合他社との力関係も考慮しながら集客を進めよう。
ポイント②:「使われ方」を意識する
多くの企業では、BtoB製品をスタンドアロンで使用せず、何かと組み合わせる。
そのため、既存の業務プロセスやシステムとの親和性も意識し、集客時のメッセージに組み込みたい。
自社の製品を「誰」が使うかに加え、「どのように使われるか(使いたいか)」という業務視点での理解も組み込むと、集客時のメッセージに具体性が生まれる。
例えばSaaS型のCRMを売りたい場合は、CRM単体の機能に加えて、
- 既存の製品情報が取り込めること(API連携、csvなど)
- コールセンターシステムと連携できること
- SFAやMAが内包されていて他部門と連携できること
などを含めたアピールが有効である。
既存システムとの親和性は情報システム部門や意思決定者へのアピールにつながる。
また、コールセンターシステムやSFA・MAとの連携は、営業担当者やカスタマーサポート担当への訴求になる。
つまり、複数の利害関係者にアピールしつつ「製品を購入した後に発生するメリット」をストーリーとして想像してもらいやすくなる。
「使われ方」まで意識した集客であれば、購買・契約の確度も上がるだろう。
ポイント③:「出会いの場」を意識して作る
BtoBでは、BtoCのように広告やSNSで一気に大多数へ訴えにくい。
集客を仕掛ける対象が狭いので、「出会い」も少ない。
これは、飽和状態の市場、新規性の高い市場のどちらにも当てはまる。
BtoBの集客ではこの弱点を補うために、出会いの機会を作る工夫が必要だ。
また、できれば出会いは「1:1」の要素、つまりパーソナライズされていることが望ましい。
例えばウェビナーやABMは、一度に多数を対象とするが、具体的な課題へのアプローチや双方向型の要素を含むなど、パーソナライズされている。
こうした出会いの積み重ねが集客効果を高める。
3.集客方法10選とメリット・デメリット
続いて、BtoB企業が実践すべき集客方法を複数取り上げて解説する。
ここでは、以下10種をメリットとデメリットを付記して紹介する。
- 展示会
- セミナー(ウェビナー含む)
- 交通広告
- オウンドメディア(コンテンツSEO)
- メルマガ
- Web広告
- ABM(アカウントベースドマーケティング)
- 紹介(リファラルマーケティング)
- DM(ダイレクトメール)
- 代理店・販売パートナー
集客方法①:展示会
展示会は、企業がブースを出展し、潜在見込み客と直接交流する場だ。
オフラインの集客施策の中では最もポピュラーで、定期的に開催されている。
Webで情報を収集していない層も展示会に参加する傾向があり、裾野が広い。
・メリット
出会いの場として強い
1:1で直接対面する機会は相手方の記憶に残りやすい。
名刺情報や担当者の人柄など、オフライン特有の情報も届けられる。
こうした独自の情報交換が、年単位で実を結び、購買・契約につながることも多い。
ブランド認知度の向上
展示会での出展は、広範な対象にリーチし、ブランドの認知度を高める絶好の機会だ。
前述のようにWebリサーチを用いない企業であっても、展示会ならば好意的に記憶してくれる可能性が高い。
リード獲得
近年の名刺交換は「挨拶」以上の意味を持っている。
名刺情報を蓄積するCRM・MAが普及しており、取得した名刺がそのままリードになることもあるからだ。
1日という単位でみた場合の集客効果も大きい。
IT系の比較的規模の大きな展示会であれば、名刺ベースのリードが50~200件に到達するケースも珍しくない。
・デメリット
コストが高く、リソースが必要
展示会への出展には、出展スペースに応じた基本料金、ブース製作費や施工費、印刷物の製作費などが必要だ。
実際の費用はイベントによって異なるが、目安として1回あたり100~150万円以上のコストがかかる。
また、ポスターやプレゼン、アメニティの準備など、リソースの確保も欠かせない。
ROIの測定が難しい
展示会での収穫は、終了後しばらくして現れる。
集客という意味ではある程度の効果が見込めるが、展示会で獲得したリードが実際にどれくらいコンバージョンへと向かっているのか、明確な測定が難しいことも多い。
競争が激しい
大規模な展示会ほどライバルが多く、来場者の割には集客が進まない可能性がある。
ROIを重視するならば、小規模で専門的な展示会に絞るなど、戦略的な出展も重要だ。
集客方法②:セミナー(ウェビナー含む)
勘違いされがちだが、セミナー(ウェビナー)は、「不特定多数に何かを教える」イベントではない。
その実態は、「特定の課題やテーマに焦点を当てた情報提供のためのイベント」である。
つまり、ターゲットへの情報共有を通じた集客方法だ。
・メリット
集客効果が高い
セミナーやウェビナーは特定の課題をテーマにしたものが多く、課題に関心を持つ参加者が集まりやすい。
また、担当者レベルから決裁権を持つ上長レベルまで、幅広い職位に直接アプローチできる。
告知の方法次第だが、質と量を両立しやすい施策だ。
商談につながりやすい
課題感が強くニーズが明確な参加者が多く、他の施策と比較して商談に発展する可能性が高い。
メールマガジンやオウンドメディアとの組み合わせによっても、さらに効果が倍増する。
・デメリット
準備と運営の手間がかかる
コンテンツの準備や日程調整、当日の運営などの手間がかかる。
ウェビナーの場合でもコンテンツの内容を何度もブラッシュアップする必要があり、その工数は決して小さくない。
参加者数の変動
日程やテーマによって参加者数が大きく変動する。
ウェビナーの場合は複数回の開催やアーカイブ配信によって、集客効果を底上げするなどの工夫が必要だ。
その工数も事前に見積もっておこう。
ウェビナー集客で商談化率を高める!IT業界向け実践ステップと少人数体制の成功事例
集客方法③:交通広告
交通広告は、電車やタクシー、バスなどの交通機関を利用する人々に向けた広告である。
移動中のビジネスパーソンを対象とするため、都市部であれば一定の効果が見込める。
・メリット
自然に目に入りやすい
電車やタクシー、バス利用時の移動時間に何気なく目に触れるため、自然な形で認知度を高められる。
ビジネスパーソンへの訴求力が高い
近年はタクシー車内でのデジタルサイネージが増えている。
これは特に都市部のビジネスパーソンに向けた訴求力があり、BtoBの新たな集客経路として注目されている。
・デメリット
コストが高い
オフライン広告であるため、広告出稿費用が高く、集客力に対して割安とは言えない。
ターゲティングが難しい
オンラインに比べるとターゲットを絞ることが難しく、必ずしも狙った層に届くとは限らない。
集客方法④:オウンドメディア(コンテンツSEO)
オウンドメディアは、自社が所有するウェブサイトやブログでコンテンツを発信し、コンテンツSEOの力で集客だ。
コンテンツマーケティングの中心的な存在であり、BtoBでは集客の柱になることもある。
オウンドメディアの【実際の】メリットとは?デメリットやおすすめの運用方法も解説
・メリット
持続的な集客効果
一度作成したコンテンツは長期間にわたり集客効果を生む。
SEOの効果次第ではあるが、ロングテールキーワードやトピッククラスターなどBtoBで効きやすい施策に特化することで集客効果を高められる。
「コンテンツは資産」という意識を常に持ち、質と量を保ちながら根気強く取り組むことが求められる。
長期的な信頼構築
専門的な知識や情報を提供することで、潜在見込み客からの信頼を得やすい。
定期的かつ継続的なコンテンツ提供が必須であるが、低リスクで信頼を獲得できるという点で非常に強い。
・デメリット
ROIの測定が難しい
オウンドメディアは、効果測定が難しい。
サイト分析やアクセス解析など種々のデジタルツールを駆使する必要があり、これらを活用するノウハウも必要だ。
時間と労力が必要
質の高いコンテンツを継続的に作成・更新するためのリソースが必要だ。
検索上位の情報だけをまとめるのではなく、E-E-A-Tに配慮した実務者視点での情報提供を心掛けたい。
E-E-A-Tとは?SEOでGoogleが重要視する評価基準と対策方法を徹底解説!
集客方法⑤:メルマガ
メルマガは、電子メールを通じて定期的に情報を配信する集客方法である。
既存の顧客やリードに対して、ニュースやプロモーション情報を提供する。
・メリット
コストが低い
メルマガは、リストさえ揃えば低コストでの集客につながる。
またMAツールを活用することで、ある程度自動化できる点もメリットの一つだ。
他の施策との連携が可能
メルマガは、オウンドメディアやウェビナーなど他の集客方法への誘導が可能だ。
実際のところメルマガ単体での効果よりも、他の施策の集客力を高める触媒としての効能が大きい。
・デメリット
リストの獲得・作成に労力がかかる
初期のリスト作成に時間と労力、コストがかかる。
営業が保持しているリストを流用したり、他の集客施策で得たリード情報を活用したりなどの工夫が必要となる。
即効性が低い
メルマガは、単体でコンバージョンまでもっていきにくく、時間もかかる場合が多い。
また、開封率やクリック率を向上させにくいことも難点だ。
集客方法⑥:Web広告
Web広告は、検索エンジンやSNSなどのオンラインプラットフォームで広告を配信し、トラフィックを集める方法だ。
リスティング広告やリターゲティング広告、SNS広告などさまざまな種類がある。
・メリット
即効性が高い
Web広告は、配信開始後すぐにトラフィックが発生するため集客の即効性が高い。
潤沢な予算があれば、配信初月から集客力を倍増させられるだろう。
ターゲティングの精度が高い
現代のWeb広告は、プラットフォームの技術が向上したことで高い精度を誇る。
キーワードや媒体によって広告を見せたいユーザー層を細かく設定できるため、ターゲットへの狙い撃ちが可能だ。
・デメリット
コストの変動率が高い
Web広告は、競争が激しいキーワードやターゲット層を狙うほどコストが大きくなる。
また、リターン(集客効果)が投下予算に比例しない場合もあるため、運用のスキルや戦略の定期的な見直しが必要である。
集客方法⑦:ABM(アカウントベースドマーケティング)
ABMは、特定の企業(アカウント)をターゲットにして、パーソナライズされたマーケティング活動を展開する手法である。
・メリット
効果が高い
ABMは、ニッチ市場や特定の企業を狙う場合に非常に効果的である。
広告よりも小さい予算で、中長期的に狙い撃ちができるという強みを持っている。
個別のアプローチのため、労力はかかるが効果につながる可能性は高い。
・デメリット
実施のハードルが高い
一方で、国内ではまだノウハウが浸透しておらず、実施へのハードルが高い。
ABMに注力するためには相応のリソースが必要であり、他のマーケティング活動が手薄になる可能性もある。
集客方法⑧:紹介(リファラルマーケティング)
紹介は、既存顧客やパートナーからの推奨によって新規顧客を獲得する方法である。
- メリット
- 信頼度が高い:既存顧客や関係者の推薦は、高い確度で信頼を得られる。
- 成約率が高い:紹介経由の案件は、初動から関心度・検討度が高い傾向にある。
- 信頼度が高い:既存顧客や関係者の推薦は、高い確度で信頼を得られる。
- デメリット
- 再現性が低い:紹介の発生はタイミングに依存するため、計画的なリード創出には不向き。
- 規模拡大が難しい:紹介だけで大規模な集客を支えることは困難。
- 再現性が低い:紹介の発生はタイミングに依存するため、計画的なリード創出には不向き。
集客方法⑨:DM(ダイレクトメール)
DMは、郵送またはEメールで個別に情報を届ける手法である。
- メリット
- 直接的な接点:物理的な郵送DMは特に記憶に残りやすい。
- ターゲット精度:リスト精度が高ければ、関心度の高い層に絞り込める。
- 直接的な接点:物理的な郵送DMは特に記憶に残りやすい。
- デメリット
- コストがかかる:郵送の場合、印刷・発送費が負担になる。
- リスト依存:リストの質が低い場合、効果は大きく下がる。
- コストがかかる:郵送の場合、印刷・発送費が負担になる。
集客方法⑩:代理店・販売パートナー
代理店や販売パートナーを通じて市場にリーチする方法である。
- メリット
- 新市場への参入:自社だけでは難しい顧客層や地域へのアプローチが可能。
- 販売網の拡大:代理店の既存ネットワークを活用できる。
- 新市場への参入:自社だけでは難しい顧客層や地域へのアプローチが可能。
- デメリット
- コントロールが難しい:メッセージや価格設定が代理店依存になるリスク。
- 利益率が低下:マージンを支払うため、自社直販に比べて収益が下がる。
- コントロールが難しい:メッセージや価格設定が代理店依存になるリスク。
4.集客ターゲット別の方法と選び方
BtoBマーケティングにおける集客は「限定された範囲」に「適切な方法」でアプローチしなくてはならない。
下記のようにターゲット区分と集客方法の組み合わせを意識しよう。
- 潜在層
→オウンドメディア - 準潜在層
→オウンドメディア、展示会、セミナー、メルマガ、ABM - 顕在層
→オウンドメディア、Web広告(リスティング)、展示会、セミナー、ABM - 明確層
→オウンドメディア、Web広告(リスティング)、交通広告、ABM

4.1.潜在層に対しては地道な集客が効く
潜在層は市場の大半を占める、「ニーズやウォンツを自覚していない」層だ。
当然のことながら課題も認識しておらず、それに対応する製品やサービスの存在も知らない。
この層に対して即効性のある集客は難しい。
したがって、コンテンツSEOを施したオウンドメディアで地道に「気づき」を促す方法が適している。
ちなみにコンテンツSEOはコンテツマーケティングの一部であり、全ての層に対して有効性を持つ。
コンテンツSEOでは、ノウハウと長期的な取り組みが必要となるため、リソースが足りない場合は外部の支援も検討したい。
弊社においても、コンテンツマーケティングを支援するサービスを提供しているため、お気軽にご相談いただきたい。
サービス
4.2.準潜在層~顕在層には多角的な情報提供で集客
準潜在層は「ニーズやウォンツの自覚はあるが、対応した製品・サービスを知らない」層だ。
顕在層は「ニーズやウォンツに加えて課題も把握していて、解決のための情報を積極的に集めている」層と言える。
これら2つの層に対しては、情報の量と質を重視して多角的な集客方法でアプローチしたい。
端的に言えば「とにかく情報を欲している層」であり、どの集客方法でも一定の効果が見込める。
ただし、競合他社との競争が激しくなる層でもあるため、「コストの割に集まらない」「数は稼げるが質が悪い」といった事態になりかねない。
全体コストや顧客獲得単価など、明確なKPIをもって取り組んでいこう。
4.3.ターゲットの質と量を意識した集客の最適化
ターゲットを集める際には、単に「数」を追うのではなく「質」とのバランスを考える必要がある。
数が多くても商談化に結びつかないリードばかりでは効率が悪く、逆に商談化率が高くても数が少なければ全体の成果は限定的となる。
下図は「集客数」と「商談化率」の関係を示したものである。

- 認知段階(トレンド解説型):テーマは広く集客数は多いが、すぐに商談化しにくい。ブランド浸透や見込み客層の母集団形成に有効である。
- 評価・選定段階(製品デモ型):テーマが狭く集客数は少ないが、参加者は導入意欲が高く、商談化率は高い。
つまり、BtoBの集客では「認知拡大」と「商談化率向上」の両方を意識しなければならない。
そのためには、展示会・セミナー・Web広告・オウンドメディア・DM・紹介(リファラル)といった 複数の施策を戦略的に組み合わせることが重要である。
例えば、トレンドを解説する記事や動画で幅広いユーザーに興味を持ってもらい、WebサイトやInstagram、LINEなどの情報発信で自社商品の魅力を伝える。
さらに、条件や年齢・職業といった属性に合わせたセミナーやチラシ配布で接点を強化し、商談の際にはデモや事例掲載で成果をイメージさせる。
こうした 「量を確保する施策」と「質を高める施策」を掛け合わせる仕組みが、マーケティング戦略を成功させるカギとなる。
PDCAサイクルを回しながら最適化を図ることで、最終的に売上拡大やリピーター獲得にもつながるのである。
4.4.顧客条件に応じたアプローチ方法(IT業界向け)
ターゲットは層別だけでなく、属性・年齢・職業・役職といった条件に応じて適切な訴求が異なる。
特にIT業界では、関与する部門や役割ごとに評価軸が大きく変わるため、次のように整理できる。
- 情報システム部門の担当者:技術的要件や既存システムとの親和性を重視する。API連携やセキュリティ要件への対応を明確に伝える必要がある。
- 経営層・意思決定者:投資効果や企業全体への波及効果を重視する。ROI、業務効率改善、ガバナンス強化などの観点から訴求する。
- 現場ユーザー:日々の業務における使いやすさや導入後の利便性を重視する。UI/UXや操作性、導入後の教育コスト削減を強調する。
このように、ターゲット層の「条件」に合わせてメッセージをチューニングすることで、同じ商材であっても刺さる確度を大きく高められる。
BtoBマーケで必須のペルソナ設定|BtoCとの違い、設定・活用方法を徹底解説
5.集客方法は企業の成長フェーズを意識
どの集客方法が最善であるかは、ビジネスのステージによる。
そこで最後に、ビジネスのステージに適した集客方法を紹介する。
5.1.創業期:Web広告、ウェビナー
創業期でリード保有量がゼロに近い場合は、即効性の高い集客方法を選択したい。
具体的にはWeb広告やウェビナーなどが適している。
これらの施策は、製品やサービスがニーズに一致していればある程度の効果が見込める。
ただし、Web広告のみに頼っていると後々リードが枯渇する。
よって、効果が出るまでに時間がかかるが、低リスクのコンテンツSEOにも早い段階から着手し、資産を積み上げておきたい。
5.2.成長期:コンテンツSEO、Web広告、ウェビナー、セミナー、展示会
資金投下量が多くなる成長期では、即効性と長期性を両立した集客が望ましい。
即効性の高いWeb広告やウェビナーに注力しつつ、長期的な目線でコンテンツSEOや展示会への出展も進めよう。
オンライン・オフライン双方から集客を狙うことで、自社の認知度も上昇していくはずだ。
5.3.安定期:セミナー、展示会、交通広告、Web広告、ABM
安定期になると、新規顧客との出会いが少なくなり、集客効果=売上にならないことが多い。
したがって、対象を厳選して地道に集客していくことを意識しよう。
ABMは社内にある程度の実績データが集まり、オウンドメディアが成長したあとに進めやすくなる。
また、資金に余裕がある場合は交通広告や展示会に投資しても良いだろう。
5.4.全てのフェーズに共通する集客:AI検索
ここまで、創業期・成長期・安定期といったフェーズ別に最適な集客方法を整理してきた。
近年は AI検索やゼロクリック検索の台頭 により、従来の「検索流入モデル」が変化しているため、これはどのフェーズの企業にも共通して影響を与える。
これまで見てきたように、創業期・成長期・安定期によって最適な集客施策は異なる。
近年は、AI検索(AIモード)やゼロクリック検索の普及により、どのフェーズにおいても共通して「AIに取り上げられるかどうか」が集客成果に直結するようになってきた。
ここで重要になるのが E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性) の強化と、記事以外のブランディング施策である。
・AI検索時代に求められる「認知」と「信用」
従来のWebマーケティングでは、SEOを通じて検索結果の上位表示を目指すことが基本戦略だった。
しかしAI検索が主流になると、ユーザーは検索結果をクリックせずに「AIがまとめた回答」だけで満足してしまうケースが増える。
このときAIが参照するのは、単に記事コンテンツの量ではなく、社会的に信頼されている情報源であるかどうかだ。
そのため、記事コンテンツに加え、外部での言及や評価を増やすブランディング施策が欠かせない。
・サイテーションと被リンクの重要性
ブランディングを考える上で代表的なのが サイテーション(自社名やサービスが外部で言及されること)である。
サイテーションは検索順位への直接効果は明言されていないが、「社会の中で語られている会社」として信頼性を高める。
特にAI検索では、外部メディアやSNSでのサイテーションが AI Overviewsにおけるメンション表示に影響すると考えられている。
一方で、被リンクは外部サイトから自社サイトへリンクが設置されることを指し、SEOの直接的な順位要因となる。
BtoB集客においては、この両者を意識的に増やすことが、検索・AI双方で評価されるための仕組みとなる。
主なブランディング施策
ブランディング施策は多岐にわたるが、資産として蓄積されるものを優先することが大切である。
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区分 |
主な施策 |
特徴 |
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コンテンツ・記事系(資産性◎) |
企業ブログ、業界専門メディア寄稿、レビュー記事、ニュース掲載 |
長期間Web上に残り、AI学習データにも反映されやすい |
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広報・PR系(資産性◎) |
プレスリリース、共催ウェビナー、書籍出版、展示会 |
二次引用が発生しやすく、サイテーション拡大につながる |
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デジタル・動画系(資産性◎) |
YouTubeチャンネル、タイアップ動画、ウェビナーアーカイブ |
視覚的に「経験」を伝えやすく、E-E-A-Tの裏付けとなる |
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広告・SNS系(短期施策△) |
リスティング広告、ディスプレイ広告、Instagram発信、Twitter/X投稿、タクシー広告 |
即効性はあるが持続性に乏しい。資産施策と併用すべき |
成長フェーズと最新トレンドの結びつけ
- 創業期:Web広告・ウェビナーに加えて、プレスリリースやブログ記事を早期に整備し、AI検索で引用される基盤を築く。
- 成長期:展示会・コンテンツSEOに加えて、YouTube動画や業界メディア寄稿を展開し、専門性・権威性を強化する。
- 安定期:ABMや交通広告に加えて、書籍出版・PR記事・ウェビナーアーカイブなどで信頼を資産化し、ブランドをAIに長期的に学習させる。
AI検索時代における集客の成功は、単なる「表示回数」や「広告費」では測れない。
重要なのは、ユーザーが信頼を寄せるコンテンツをどれだけ社会に残せるかであり、記事・動画・PR・サイテーション・被リンクを組み合わせた ブランディング施策の最適化 が、どのフェーズでも不可欠である。
6.まとめ
BtoBマーケティングにおける「集客」の定義や具体的な方法論について解説してきた。
集客はマーケティングの一部であり、ロジックや戦略が活きる領域だ。
BtoBではビジネスの成長フェーズやリスク・リターンのバランスから最適な手法を選択することが重要となる。
Web広告やウェビナーなどの即効性が高い手法に加え、蓄積型のコンテンツSEOにも取り組み、バランスを取りながら進めていこう。
リソースやノウハウが不足している場合は、外部の支援を頼るのも一つの選択肢だ。
