SEOにおいて「網羅性」は重要だと考える人がほとんどだろう。
しかし「ただ情報を詰め込んだコンテンツ」が網羅性の高いコンテンツとはいえない。
SEOで求められる「網羅性」とは、ユーザーが検索に至った背景や検索意図を考慮し、そのニーズを包括的に満たすことだ。
本記事では、SEOの成果につながる「真の網羅性」を高める方法や注意点について、詳しく解説する。
1. SEOにおける網羅性とは?
SEOにおける網羅性とは、特定の検索クエリやトピックに対して、ユーザーの検索意図を満たす情報を過不足なく提供することを指す。
ユーザーニーズを網羅するには「Webサイトコンテンツ全体での網羅性」と「1つのコンテンツ内での網羅性」の2パターンがある。
1.1. Webサイトコンテンツ全体での網羅性
Webサイトコンテンツ全体での網羅性とは、サイト全体で扱うトピックやテーマに関連する情報を包括的に提供することを指す。
たとえばIT企業をターゲットにしているWebサイトであれば、「クラウド」「セキュリティ」「ソフトウェア開発」「DX」「IT人材戦略」などさまざまなサブトピックについて専門性の高い情報の提供が考えられる。
これはWebサイト全体でターゲットとなりうるユーザーのニーズを網羅し、いわば「見込み客を逃さない」ことにもつながるため、BtoBでは重要な観点だ。
SEOに関するツールやリサーチデータを提供するソフトウェア会社Mozは「あるトピックに関する網羅性の高いWebサイトほど検索上位に表示されやすい」という独自の調査結果を明らかにしている。
参考:5 Things I Learned About E-A-T by Analyzing 647 Search Results|Moz
1.2. 1つのコンテンツ内での網羅性
1つのコンテンツ内での網羅性とは、個々のページや記事が、検索者のニーズやトピックに関連する情報を過不足なく詳細に提供することを指す。
Google公式サイトでは、ページを評価するガイドラインの1つに以下のような質問を設けている。
“コンテンツには、特定のトピックに対して実質的な内容を伴う詳細または包括的な説明が記載されていますか。”
参考:有用で信頼性の高い、ユーザー第一のコンテンツの作成|Google検索セントラル
上記の「包括的な」という言葉がここでいう「網羅性」と同等の意味合いである。
検索エンジンを通じてページに訪れるユーザーには必ず何らかの検索意図がある。
その検索意図を多角的にカバーできているコンテンツは網羅性が高いコンテンツだといえる。
たとえば「クラウドセキュリティ」について説明するコンテンツの場合、「クラウドセキュリティとは何か」だけではなく、「クラウド環境の主な脅威とリスク」「クラウドセキュリティ対策の種類」「クラウドプロバイダーごとのセキュリティ対策」など、想定される複数の検索意図それぞれへの対応が必要である。
2. 網羅性はなぜ重要なのか?
コンテンツを作成するうえで網羅性は重要であると語られる場合が多いが、具体的になぜ重要なのだろうか。
網羅性は必ずしもSEOのためだけではなく、さまざまな利点を生むからだ。
コンテンツの網羅性がもたらす4つのメリットを説明しよう。
2.1. ユーザーエクスペリエンスの向上
網羅性が高いページは情報の収集を1ページで完結できるため、知りたい情報を知るために再検索し複数のサイトを横断する必要がない。
そのためユーザーの満足度が向上し、再訪問の促進にもなる。
また、GoogleはSEOのノウハウのひとつとして、検索エンジンのためではなくユーザーにとって真に有益なコンテンツの作成を推奨している。
ユーザー視点を徹底し、ユーザーが求める情報を網羅したコンテンツは、必然的にユーザー行動を向上させ、上位表示へつながるからだ。
2.2. 専門性の向上
特定のトピックについて包括的な情報の提供は、その分野における専門性を示す。
もちろん「広く浅く」ではなく「広く深く」網羅していることが重要だ。
特にBtoBは高単価かつ高度な知識・スキルを必要とする商材を扱っているケースが多いため、企業の専門性の高さは信頼性に直結する。
提供しているコンテンツが信頼できる情報源と認識されると、企業のブランディングやリード獲得につながる可能性が高まる。
2.3. エンゲージメント・コンバージョン率の向上
ユーザーの検索意図を網羅的に満たすと、ユーザーの離脱率が下がったり、再訪が促進されたりする。
つまり自社(のコンテンツ)とユーザーの関わり(エンゲージメント)が深くなり、購買意欲が醸成されやすい。
もちろん、問い合わせや資料請求といったコンバージョンにつながる可能性も高くなるだろう。
特にコンテンツの内部にCTA(コールトゥアクション: 問い合わせなどの行動を喚起するリンク)を適切に設置していれば、その可能性はより高まる。
2.4. サイテーションの獲得
単なる情報の羅列ではなく、ユーザーが求める情報を漏れなく整理し、無駄なく提供する姿勢はコンテンツの品質や完成度を高める。
その結果、他サイトからの参照や引用といったサイテーションの獲得につながる。
サイテーションの獲得は、検索エンジンが権威性を評価するうえでも重要な指標だ。
一方、検索エンジンからの評価向上だけでなく、読者から「このページを見れば必要な情報がそろう」と認識され、長期的な信頼獲得にも寄与する。
3. 網羅性の高いコンテンツを作成するうえでのポイント
網羅性の高いコンテンツを作成するうえで押さえるべきポイントを解説する。
ポイントを意識しないでやみくもに網羅性を高める行為は逆効果になるおそれがあるため、注意しよう。
ポイント1. キーワードではなく、検索意図に対しての網羅性を意識する
「網羅性を高める」ときに特にやってしまいがちな誤りが、関連するキーワードを1つのコンテンツにとにかく詰め込むことである。
たとえば、以下の例を見てみよう。
想定検索キーワード:「クラウド DDoS 攻撃 対策」 |
目次:
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一見すると、多種多様な情報が取り上げられている網羅性の高いコンテンツのように見えるかもしれない。
しかし、「クラウド DDoS 攻撃 対策」というキーワードで検索するユーザーの目線では、これが良質なコンテンツでないとはすぐにわかるだろう。
たとえば以下のような点がその理由である。
- 「クラウド DDoS 攻撃 対策」で検索するユーザーはおそらく「クラウド」や「DDos攻撃」の意味はすでに理解しているのに、記事が「クラウドとは」「DDoS攻撃とは」などの基礎知識の解説から始まる
- 「サイバー攻撃の最新トレンド」「AIを活用したクラウドセキュリティ」「ゼロトラスト」など、DDoS攻撃対策と直接関係のない内容を無理に入れている
- 目次の構成からして関連するキーワードを詰め込んだだけで、論理的な一貫性が見られない
このような過ちを回避するための最大のポイントは、キーワードではなく「検索意図」の網羅性を意識することである。
そのキーワードで検索している人がどのような情報を求めているかをリサーチし、それに対する答えを最大限提供することが本当の意味での網羅性だといえる。
この点については、Google公式サイトも以下のように明言している。
“Google 検索で上位に表示されるためには、検索エンジンでの掲載順位を上げることを主な目的として検索エンジンを第一に考えて作成されたコンテンツではなく、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成に注力することをおすすめします。”
参考:有用で信頼性の高い、ユーザー第一のコンテンツの作成|Google検索セントラル
コンテンツが検索エンジン第一ではなくユーザー第一の内容になっているか、改めて見直してみてほしい。
ポイント2. サジェストキーワードを活用して検索意図を理解する
網羅性を高めるには検索意図の理解が重要であると述べたが、キーワードの検索意図がわからない、挙げきれないという人は少なくないだろう。
「クラウドセキュリティ 対策 ツール」など複数語句を組み合わせたロングテールキーワードであれば内容が具体的であるため、まだ検索意図はわかりやすいかもしれない。
対して、「クラウドセキュリティ」のような一単語の検索意図を、何にも頼らずに網羅するのは誰にとっても難易度が高い。
そこで、是非、活用してほしいのが「サジェストキーワード」の機能だ。
サジェストキーワードとは、検索エンジンで特定のキーワードを入力した際に、自動的に表示される関連語句を指す。
またサジェストキーワードはユーザーが過去に検索した傾向や、検索ボリュームが多いクエリをもとに、検索エンジンが提示するものである。
サジェストキーワードをもとにコンテンツの構成を決めていくと、ユーザーの検索意図に沿った内容になりやすい。
サジェストキーワードの具体的な調べ方やツールなどは以下の記事で詳しく解説しているので、是非あわせて参照してほしい。
ポイント3. トピッククラスターを利用し、複数コンテンツで体系的に情報を網羅する
1つのコンテンツで検索意図のすべてを網羅するように詳細情報を提供しようとすると、キーワードによっては記事が長くなりすぎ、かえって情報の探しにくいページになってしまう場合がある。
そのような場合には「トピッククラスター」の戦略の利用をおすすめしたい。
トピッククラスターとは、トピック(テーマ)の関連性を重視し、クラスター(群)のようにコンテンツを構成して、オウンドメディア全体のSEO評価の向上を狙う施策である。
ピラーコンテンツ(中心となる包括的な記事)とあわせてクラスターコンテンツ(個別の詳細記事)を作成し、ピラーコンテンツに適切に内部リンクを設定すれば、SEOの面でもユーザビリティの面でも網羅性および質の高いコンテンツになるだろう。
トピッククラスターの詳しい内容や作成ステップについては、以下の記事で解説している。
ポイント4. フレームワークを活用してユーザーが読みやすい文章にする
情報の網羅を意識しすぎるあまり、論理性や一貫性に欠けていたり、主張がぼやけた文章になってしまったりするケースはよくある。
ユーザーニーズを満たすためには、情報の網羅も重要だが、大前提として読みやすい文章であることが重要だ。
適宜、以下のような文章作成のフレームワークを活用しながら、読み手に取ってもっともわかりやすい文章や記事構成を心掛けてほしい。
フレームワーク① PREP法
PREP法では、最初に結論を述べるので、読者がゴールを理解したうえで読み進められる。
- Point(結論):まず結論を述べる
- Reason(理由):結論を裏付ける理由を説明
- Example(具体例):理由を補強する具体的な事例を提示
- Point(結論の再確認):最後に結論を再確認
フレームワーク② ゴールデンサークル理論(WHY→WHAT→HOW)
ゴールデンサークル理論では、大枠や概念を説明してから具体的な説明に移り、読者は自然な流れでトピックを理解できる。
- WHY(なぜ必要か) → そのトピックが重要である理由を示す
- WHAT(何をすべきか) → 具体的な対策やポイントを説明
- HOW(どうやって実践するか) → 実践的な手順や事例を紹介
ポイント5. 網羅性とあわせて「専門性」も担保する
検索意図を網羅すれば、網羅性の高いコンテンツを作れるが、同時に、それぞれの情報に対する「専門性」の担保を忘れてはならない。
たとえば、さまざまな検索意図を包括してはいるものの、それぞれに対する説明が短く、有用な出典なども一切述べていないコンテンツは、ただ網羅性だけが高く、専門性の低いコンテンツになってしまう。
実際にGoogleは、コンテンツの品質を測るうえで「E-E-A-T(Experience:経験, Expertise:専門性, Authoritativeness:権威性, Trustworthiness:信頼性)」の観点を大切にしていると述べている。
そのうちの専門性とは、たとえば以下のような質問で測れるとされている。
“
- コンテンツは、明確な情報源、掲載されている専門知識の証左、著者またはコンテンツを公開しているサイトの背景情報(例: 著者のページへのリンク、サイトの概要ページ)を示すなど、掲載内容の信頼性が高いと示すための情報を提供していますか。
- コンテンツを制作しているサイトを誰かが調査したら、対象トピックの権威としてサイトが信頼されている、または広く認知されているという印象を受けますか。
- このコンテンツは、確実にトピックを熟知している専門家または愛好家によって執筆され、レビューされていますか。
- コンテンツに明らかな事実誤認はありませんか。
”
参考:有用で信頼性の高い、ユーザー第一のコンテンツの作成|Google検索セントラル
コンテンツを書き終わったあとは、上記のような観点に照らし合わせて有用な内容になっているかチェックするとよいだろう。
また、以下の記事では、E-E-A-Tの定義や実践方法について詳しく解説しているので、あわせて参考にしてほしい。
4. まとめ
網羅性の意味や重要性、そして対策するうえでのポイントを解説した。
「網羅性」という言葉だけが一人歩きしてしまい、ただ関連キーワードを網羅した脈絡のないコンテンツもまだ散見されるが、ユーザーの検索意図をしっかり理解したうえで網羅性を高めることの重要性を改めて強調したい。
網羅性だけに気を取られず、読み手にとってわかりやすい文章で、専門性も担保しながらコンテンツ制作を進めることが大切だ。
とはいえ、網羅性を担保しながら良質な記事を多く制作するのは多くの労力を要するため、外部の専門家を頼るのも一つの手だ。
当社では、IT企業に向けてSEO記事制作などのマーケティング支援を行っているため、ぜひお気軽に是非お問い合わせいただきたい。