1件の受注単価が大きく、顧客との関係性づくりに時間もかかるBtoB企業の場合、自社の信頼性を高める取り組みを怠ってはならない。
Webマーケティングにおいて「サイテーション(=引用・言及)」は信頼性を高めるための重要な取り組みの一つである。
一方で
「サイテーションについての知識が曖昧である」
「サイテーションの具体的な獲得方法がわからない」
「サイテーションの獲得には本当に効果があるのか」
という疑問も多い。
サイテーションに関する知識を得て適切な取り組みを行えば、SEOやMEOに効果を発揮し、自社サイトの流入や認知度の向上にもつながる。
本記事ではサイテーションの意味や種類、重要性、具体的な取り組み方法を詳しく解説するため、ぜひ参考にしていただきたい。
1. サイテーションとは
まず、サイテーションの定義や種類、被リンクとの違いも含めて解説する。
1.1. サイテーションとは
サイテーション(citation)は「引用」や「言及」を意味する言葉であり、Webマーケティングの世界では、外部のWebサイトやSNSで自社の企業名やサービス名などが言及されることを指す。
サイテーションの例としてたとえば以下のようなケースが挙げられる。
- 業界誌に自社サービスの紹介が掲載されている
- 他社のウェビナーやセミナーで自社の調査データが引用されている
- SNS上で業界の著名人が自社製品に言及している
1.2. サイテーションの種類
サイテーションには主に以下の4つの種類がある。
サイテーションの種類 | 詳細 |
企業名・個人名・サイト名 | 企業の名前だけでなく経営者や従業員の個人名、オウンドメディアの名前などが該当する。BtoB企業においては従業員が業界の専門家として権威を発揮したり、コンテンツ豊富なオウンドメディアを入口として認知を獲得したりするケースも多いため、意識する必要がある。 |
製品名・サービス名 | 製品名やサービス名が言及されるサイテーションは、特定のプロダクトやサービスの認知度を高めるために効果的である。たとえば、自社製品やサービスがレビュー記事や比較サイトで紹介された場合、ユーザーと検索エンジンの両方から信頼性が高まる。 |
所在地・電話番号 | 所在地や電話番号といった連絡先情報が記載されたサイテーションは、主にローカルSEO(MEO)において重要である。特に地域密着型のBtoB企業には重要なサイテーションとなる。 |
リンクの設定がないURL | ほかのWebサイトで自社のURLがテキストとして言及されるものの、クリックできるリンクとして設定されていないケースを指す。直接的な被リンク効果は得られないが、検索エンジンはURLの記載を参考にしてその企業やページの関連性を把握し、信頼性評価に間接的に影響を与える場合がある。 |
1.3. サイテーションと被リンクの違い
外部のWebサイトから自社サイトへのリンクを受ける「被リンク」とサイテーションは何が違うのか、疑問に思う人もいるだろう。
具体的には以下のような違いがある。
サイテーションはリンクの有無にかかわらず、ほかの情報源やコンテンツで自社やサービス、データが参照・言及されることを指す。自社ブランドの信頼性や知名度を高める要因となる。
一方で被リンクは、ほかのWebサイトから自サイトへのリンクが設置されることを指し、SEO(検索エンジン最適化)において重要な役割を果たす。
特に権威性や信頼性の高いサイト(政府や大学、大手企業など)からの被リンクが増えれば検索エンジンからの評価が向上し、オーガニック流入の増大が期待できる。
上記のとおり被リンクは検索エンジンの評価において直接的な効果を持つ(※)が、サイテーションはそのものが検索順位の上昇に寄与すると明言はされていない。
ただし、自社の認知度や信頼度が高まって、指名検索が増え、結果としてSEOにつながるといった間接的な効果は期待できる。
※参考:Googleが掲げる10の事実|Google:https://about.google/philosophy/
2. BtoB企業におけるサイテーションの重要性
BtoB企業におけるサイテーションの重要性を「SEOへの効果」と「MEOへの効果」の2つの観点から解説する。
2.1. SEOへの効果
上述のとおり、サイテーションがSEOのランキング要因になると明言はされていないが、少なくとも以下の3つの点から、サイテーションは間接的にSEO成果に影響を及ぼすといえるだろう。
①信頼性の強化
Googleがコンテンツの品質を評価する際のポイントとして、E-E-A-T(経験、専門性、権威性、信頼性)がある。リンクがないサイテーションでも、一定の量が蓄積されるとE-E-A-Tの評価においてプラスになると考えられる。
②ブランド認知度とトラフィックの向上
サイテーションが増えると、ブランド認知度が向上し、サイトへの直接アクセスが増加する。
検索エンジンはユーザーの行動(クリック率や直帰率)を評価基準に含めているため、サイテーションによって間接的に流入が増えればSEO効果が期待できる。
③被リンク獲得への影響
サイテーションが多い企業やサービスは業界内での信頼性が高まるため、ほかのサイトから自然に被リンクを獲得する可能性が高まる。
被リンクはSEO効果を直接引き上げる要因となるため、サイテーションが多いことは被リンクの促進に間接的な影響を及ぼす。
2.2. MEOへの効果
特定の地域に密着したBtoBビジネスを行っている場合、サイテーションはMEO、すなわちローカル検索最適化にも影響を与える。
ローカル検索とは、特定の地域や場所に関連する情報に関する検索だ。
ある企業のビジネス名(企業名)、住所、電話番号(=「NAP情報」と呼ばれる)が一貫して複数のWebサイトでサイテーションされている場合に、検索エンジンはその企業のローカルプレゼンスを高く評価する。
これにより、Googleマップやローカル検索結果での露出が増加するのだ。
MEOへの効果は、特にサービスエリアや特定地域に密着したビジネスモデルの場合に顕著だ。
ローカル検索の最適化(MEO)を行うと、地域に密着した信頼性のある企業として認識されやすくなる。
また、ローカル検索で上位に表示されれば、その地域内の顧客や企業からのアクセスや問い合わせが増え、ビジネスチャンスの拡大につながる。
3. サイテーションを獲得する方法8選
それでは、サイテーションを獲得するにはどのようなことを行えばよいのだろうか。
前提として、自社が発信するコンテンツの品質を高める(ユーザーニーズを研究し、満たすコンテンツを作る)と、サイテーションや被リンクの獲得につながるという考え方を持つことが重要である。
さらに、以下のような施策に取り組めば、よりSEO評価を高めやすくなるだろう。
- 構造化データのマークアップ
- 業界メディアへの寄稿やプレスリリースの活用
- 業界イベントやセミナーでの発表・登壇
- ケーススタディやホワイトペーパーの公開
- 業界リーダーやインフルエンサーとの連携
- 広告の出稿
- 口コミサイトやレビューサイトの活用
- Googleビジネスプロフィールに登録する
それぞれ見ていこう。
方法1. 構造化データのマークアップ
構造化データを用いて企業情報、製品情報、所在地などをマークアップすれば、検索エンジンは自社情報を正確に把握しやすくなる。
さらに、検索結果にリッチスニペット(リッチリザルト)として表示されやすくなり、ユーザーの目にも触れやすくなるので、サイテーション獲得の機会が増える。
構造化データマークアップの方法はいくつかあるが、Googleが公式に出している「構造化データマークアップツール」(https://www.google.com/webmasters/markup-helper/u/0/)を利用する方法は取り組みやすいだろう。
<Google構造化データマークアップツールの使用手順>
①「構造化データマークアップツール」(https://www.google.com/webmasters/markup-helper/u/0/)にアクセスする
②構造化データをマークアップしたいページのカテゴリーとURLを入力し、「タグ付けを開始」をクリックする
③右側の枠にマークアップに必要なレコードの一覧が表示される(下記画像はカテゴリーが「記事」の場合の要素」)。左側のページにおいて要素をクリックし、レコードにタグ付けをして、最後に「HTMLを作成」をクリックする
④コードが自動生成されるので、コピーしてHTMLの<head>セクション内に張り付ける
方法2. 業界メディアへの寄稿やプレスリリースの活用
業界メディアや業界誌への寄稿は、信頼性のあるサイテーションを得るための効果的な方法である。
専門的な知識やトピックに関する記事を執筆し、業界で権威のあるメディアに掲載されると、企業の知名度が向上し、検索エンジンにも信頼されるサイテーションとして認識される。
また、プレスリリースを活用して企業の新しい取り組みやサービスを発表して、ニュースメディアや業界のニュースサイトでの言及機会を増やすことも重要である。
たとえば、新商品やサービスのリリース情報を広く告知すると、多くのサイテーションを獲得できる可能性がある。
ただし、質の高いサイテーションを得るには、PV数や会員数が多いなど、信頼性や権威性が高いメディアの選定が重要だ。
方法3. 業界イベントやセミナーでの発表・登壇
業界イベントやセミナーに参加し、講演やパネルディスカッションで発表を行うこともサイテーション獲得につながる。
登壇内容が業界にとって有益であれば、メディアや参加者が企業や登壇内容をほかのサイトで紹介する可能性がある。
特に信頼性の高い業界メディアに取り上げられると、検索エンジンにも評価されやすいサイテーションとなる。
また、セミナー参加者がSNSやブログで発表内容を共有すれば、自然な形でのサイテーションが生まれるだろう。
このことからも、コンテンツの内容やセミナーの内容自体が大前提として重要だとわかる。
方法4. ケーススタディやホワイトペーパーの公開
自社の事例をもとにしたケーススタディやホワイトペーパーを作成し、Webサイト上で公開することも効果的である。
業界の関係者が役立つ資料として参照し、ほかのサイトで紹介されることでサイテーションを獲得できる。
また、第三者が自社の資料を引用した際に出典としてサイテーションが行われるため、企業の専門性や信頼性が強調される。
特に高度な技術や知見が求められるBtoB分野では、自社独自の専門知識や深い洞察などを含むケーススタディやホワイトペーパーを通じたサイテーションの獲得により、ユーザーの信頼を得られるだろう。
方法5. 業界リーダーやインフルエンサーとの連携
業界のリーダーやインフルエンサーと連携した取り組みも、影響力が高い人物からの言及として質の高いサイテーションが得られる可能性が高まる。
たとえば、共通のテーマに基づく対談やインタビューを行い、その内容をSNSやブログ、業界ニュースに掲載することが挙げられる。
また、SNSにおいても、業界リーダーやインフルエンサーが抱える多くのフォロワーが自社を認知する機会にもなり、リード獲得への波及効果も期待できる。
方法6. 広告の出稿
広告を活用すればサイテーションを増やせる。
主に業界メディアやニュースサイトの広告枠への出稿を通じて、多くの人々に認知してもらい、メディアやユーザーがその広告やサービスについて言及する可能性が高まる。
特に影響力のある業界メディアへの広告出稿は、ターゲット層への認知拡大と同時に、自然な形でのサイテーション獲得のきっかけとなる。
ただし広告は「自然な形」での言及ではないことは事実なので、ほかの施策との併用が重要である。
方法7. 口コミサイトやレビューサイトの活用
BtoB企業が口コミサイトやレビューサイトでサイテーションを獲得することも有効である。
顧客が利用体験や製品の評価を口コミとして投稿すれば、自然な形でのサイテーションが増えやすい。
特に評価の高いレビューが多い場合、検索エンジンやユーザーからの企業の信頼度が向上する。
方法8.Googleビジネスプロフィールに登録する
特定の地域に密着したBtoBビジネスを行っている場合は、MEOにつながる対策も有効だ。
Googleビジネスプロフィール(GBP)に登録し、企業情報を正確に記載すれば、ローカル検索やマップ検索でのサイテーション獲得が期待できる。
Googleビジネスプロフィールでは、企業名、住所、電話番号(NAP情報)の記載ができ、これをWebサイトと一貫して正確に登録すれば、検索エンジンに信頼されやすい。
また、写真や営業時間、サービス内容などを充実させ、定期的に更新すると、検索エンジンが企業を「活発なビジネス」と評価しやすくなる。
GBPでの情報が一貫性を持って、ほかのWebサイトにも広がれば、さらにサイテーション効果が強まる。
4. サイテーションの獲得状況を調べる方法
サイテーションの獲得をめざすうえでは、現在自社サイトがどの程度サイテーションを獲得しているかの把握は欠かせないだろう。
サイテーションの獲得状況を調べる方法は2つある。
確認方法1. Google検索を使う方法
Google検索では「“調べたい情報(製品名・サービス名など)” -site:自社サイトURL」の形式で検索すると、ほかのサイトでの言及状況を確認できる。
「-site:自社サイトURL」を追記すれば自社サイト内のページは検索結果から除外されるため、自社の製品やサービスについて、ほかのWebサイトでどれだけ言及されているかを効率的に把握できる。
確認方法2. Yahoo!リアルタイム検索機能を使う方法
Yahoo!リアルタイム検索機能は、SNSやニュース記事、ブログなどの最新情報をリアルタイムで検索できるツールである。
企業名や製品名をYahoo!リアルタイム検索に入力すると、Xでの最新の言及状況が確認できる。
特にSNSでの口コミや話題性を確認したい場合に有効で、リアルタイムに発信された情報のタイムリーな把握が可能である。
5. ネガティブなサイテーションへの対処方法
ネガティブなサイテーションを受けてしまった場合、まず内容をよく確認する。
掲載された情報が誤解や不正確なものである場合は、早急に発信元に訂正を依頼し、正確な情報伝達が求められる。
一方、事実に基づくネガティブなサイテーションは削除しにくい。
そのためポジティブなサイテーションを増やし、バランスを取ることが効果的である。
顧客の成功事例や好意的なレビューを積極的に共有するなど、ポジティブな情報を発信し、信頼性とブランドイメージの向上に努める。
6. まとめ
サイテーションの重要性や獲得方法、ネガティブなサイテーションへの対処方法などを理解していただけただろうか。
サイテーションを増やすためには、多方面からアプローチをする地道な努力が求められる。
自社だけでは何から取り組むか、どの程度の優先度で取り組むかなど判断が難しい場合もあるだろう。
弊社ではIT、SaaSなど、BtoB企業のマーケティング全般のコンサルティングを行っている。
お困りのことがあればぜひお気軽に問い合わせいただきたい。