オウンドメディアはマーケティングツールのひとつであり、BtoBでも積極的に活用されるようになった。
しかし単に「自社サイトにコンテンツをアップする」ことがオウンドメディアだと考えているならば、それは誤りだ。
マーケティングツールである以上、明確な目的と確固たるメリット、構築のためのノウハウが存在する。
ここではオウンドメディアでしっかりと成果を出すために必要な知識を網羅的に解説する。
目次
1.オウンドメディア(owned media)の定義、特徴、種類
オウンドメディアは自社が「所有」するメディアの総称だ。
具体的には、公式サイトやブログ、キュレーションサイトや専門情報サイトなどが該当する。
オウンドメディアは「トリプルメディア」のひとつであり、「POEM(ポウム)」というメディア戦略の中で組み入れられることが多い。
POEMモデルでは、それぞれの特性を活かして以下のように事業への貢献を目指す。
- 集客:ペイドメディア(広告)でアクセスを集める
- リード獲得:オウンドメディアでリードを獲得する
- ブランディング:アーンドメディア(SNSや口コミサイト)でブランディング促進
POEMモデルに従えば、ペイドメディアとアーンドメディア経由で流入した見込み客を、オウンドメディアでリード獲得やナーチャリングにつなげるという形が想定される。
ただし、オウンドメディアは上記3つの役割を単独でこなすことも可能だ。このことから、BtoBでは特に重要なメディアでもある。
1.1.オウンドメディアの特徴
オウンドメディアの特徴は、以下3点に集約される。
- メディアの方向性や内容を、自由にコントロールできること
- 潜在層から顕在層まで幅広くアプローチできる
- 間接的に売上に貢献する
こうした特徴は、ペイドメディアと比較するとわかりやすい。
ペイドメディアは、広告やプロモーションに対価を支払うことで「露出」を獲得し、半ば一方通行とも取れる内容で顕在層を狙い撃ちする。
リスティング広告やバナー広告、純広告などはいずれも「欲しいものが明確である層」「近い将来、欲しくなるであろう層」に向けたものばかりだ。
内容については出稿の段階である程度の調整は効くが、顕在層を狙い撃ちしているという性質上、自由度はそれほど高くない。
これに対してオウンドメディアは、潜在層から比較検討層までを含む幅広い層にアプローチできる。
また、直接所有するメディアだけに、自社独自のノウハウや見解を発信できるという自由度の高さもある。
ペイドメディアのような即効性はないが、共感・理解を示した見込み客とのつながりを、「長期的な実利(売上)」に転換できるのだ。
また、オウンドメディアは、直接収益を上げることを目的としない。
マーケティングの一環である以上「売る」ことは意識するが、ブランディングやリード獲得、ナーチャリングなどによって「売るための導線」を作ることが主な目的だ。
以上がオウンドメディアの特徴だが、より具体的な内容については以下の記事も参考にしてみてほしい。
1.2.オウンドメディアの種類
オウンドメディアはその運営目的や使われ方に応じて、いくつかの異なる種類がある。ここでは、代表的な2つのタイプについて解説する。
売上貢献型(リード、コンバージョン獲得型)
売上貢献型は、自社のコア事業に対する貢献を目的としたタイプだ。
オウンドメディアを通して、製品の購入促進やサービスへの問い合わせを促す。
コンテンツマーケティングやインバウンドマーケティングの一環として運営されることが多く、新規顧客の獲得や既存顧客との関係強化を重点的に行う。
売上貢献型のオウンドメディアでは、訪問者がアクションを起こしやすいように設計されたコンテンツが中心だ。
例えば、製品やサービスの詳細情報を提供する、顧客の体験談や事例を紹介するといったコンテンツで訪問者の関心を引き、最終的には購入や問い合わせといった行動に繋げる。
BtoBではこちらのタイプが多いだろう。
独立型(メディア自体で収益を獲得する型)
独立型のオウンドメディアは、明確なコンセプトのもとに収益化を目指して運営される。
このタイプのオウンドメディアでは、読者に価値ある情報を提供することで、サイトの訪問者数を増やし、収益化を進める。
ユーザーの問題を解決するコンテンツなどを定期的に発信することで訪問者を引き寄せる。
また、最終的には広告収益や外部企業との提携によって利益を得ることを目指す。
BtoCで運営されるケースが多い。
2.オウンドメディアと他のメディアとの違い
企業が保有するメディアは、オウンドメディアだけではない。
オウンドメディアへの理解を深めるために、主要なメディアとの違いを整理しておこう。
2.1. 売上に貢献する4つのメディア(Pesoモデル)
オウンドメディアは、「PESO」と呼ばれる4つのメディアのうちのひとつだ。
- ペイドメディア(広告など)
- アーンドメディア(口コミサイトなど)
- ソーシャルメディア(SNS)
- オウンドメディア(企業運営メディア)
この4つのメディアを活用するモデルを「Pesoモデル」と呼ぶ。
各メディアの特徴は下記のとおりだ。
ペイドメディア(P)
ペイドメディアは、有料広告であり、ターゲットに即座にリーチできる。
例えば、Google広告やSNS広告が該当する。
ペイドメディアは、短期的に認知度を高め、大量のリードを獲得する際に有効である。
アーンドメディア(E)
アーンドメディアは、第三者からの評価や口コミ、報道など、企業が直接的にコントロールできないメディアである。
顧客のレビューが主体になることが多く、コントロールはできないものの信頼性は高い。
近年BtoBでも急速に広まっているメディアだ。
ソーシャルメディア(S)
SNSは、ターゲットとのリアルタイムな対話が可能な点が特徴だ。
一般的にはブランドの認知を広げ、エンゲージメントを高めるために使われる。
オウンドメディア(O)
オウンドメディアは、企業が運営するブログ、ウェブサイト、メールマガジンなどを指す。自由にコンテンツを発信でき、長期的な信頼性の構築に貢献する。
この4つのメディアを組み合わせることで、企業のマーケティング戦略が強化され、売上にも大きく貢献する。
PESOモデルについては下記の記事でも詳しく解説している。
2.2. ホームページ(公式サイト)との違い
オウンドメディアと混同されがちなメディアに「ホームページ(公式サイト)」がある。
しかし、オウンドメディアとホームページ(公式サイト)は、その役割と目的が異なる。
- ホームページ(公式サイト)
ホームページは、企業の基本的な情報を提供し、「名刺」のような役割を果たす。
企業情報、サービス内容、問い合わせフォームなどを掲載し、主に企業の成り立ちや歴史、属性情報を伝えるためのものだ。
その目的は「信頼性」「正当性」の確保にある。
簡単に言えば、事業を行っているA社という企業が確かに存在し、現在も活動していることを証明することが目的だ。 - オウンドメディア
一方のオウンドメディアは、企業がコンテンツマーケティングを行うための施策であり、企業の「名刺」や「看板」とは意義が異なる。
オウンドメディアが提供するのは「ニーズ」「キーワード」「課題」に対応した情報であり、企業の属性ではない。
3.オウンドメディアの目的
次に、オウンドメディアの目的について理解しておこう。
オウンドメディアの目的は、ざっくり言えば「コンテンツマーケティングの強化」である。
しかしこれは目的と言うよりも戦略的な「使命」に近い。もう少し現実的な目線でオウンドメディアの目的を整理すると、以下6つが挙げられる。
目的1. ブランディング
オウンドメディア運用の主な目的のひとつが、ブランディングだ。
ブランディングとは、企業やブランドの認知度を高め、そのイメージを強化することだ。
ブランディングは「価格競争から脱する手段」としても有効であり、オウンドメディアの恒久的な目的だ。
オウンドメディアを活用することで、企業のビジョンやミッションを消費者に直接伝えることができ、ブランドの価値が明確になる。
具体的には、製品やサービスの独自性を強調したり、業界での立ち位置を証明するようなコンテンツを作成する。
他にも、製品開発に関する舞台裏を紹介したり、独自の市場分析を提供したりと、「なぜこの製品・サービスが存在するのか」を伝えることで、ブランドメッセージが強くなる。
目的2. エンゲージメントの強化
エンゲージメントとは、顧客との「結びつき」や「関心」を深めることを指す。
強いエンゲージメントが生まれることで、長期的な顧客関係の構築が可能となり、リピーターやファンの獲得につながる。
オウンドメディアでは、ターゲットのペルソナに合わせたコンテンツを提供することで、見込み客(リード)とのつながりを強化できる。
また、双方向的な要素を含むコンテンツや、ユーザーからのフィードバックを取り入れたコンテンツは、エンゲージメントを一層強化する。
さらに、オンラインコミュニティを設けることで、顧客との距離を縮め、ロイヤルカスタマーを生み出すこともできる。
エンゲージメントが強い顧客は、新しい製品や価格改定に対して理解を示すなど、事業の成長には欠かせない存在だ。
目的3. 集客
集客は、端的に言えばPV(ページビュー)数の増加を目指すことだ。
しかし、もっと重要なことは「顧客になってくれそうな見込み客」を優先的に集めることだ。
オウンドメディアは、コンテンツSEOを通して「顧客になってくれそうな見込み客」を狙う。
SEO対策としては、キーワード選定やタイトル、見出しの最適化などが一般的だ。
しかし、近年では表面的なSEO対策だけでは不十分となってきている。
現在の検索エンジンに評価されるためには、質の高いコンテンツが必要不可欠だ。
また、検索流入を最大化するためには、ユーザーの潜在ニーズを先取りし、価値のある情報を提供し続けることが求められる。
目的4. リード獲得
BtoBのオウンドメディア運営で最も効果を体感しやすいのがリード獲得(リードジェネレーション)だ。
リード獲得は、見込み客の情報を収集し、後の商談や購入に繋げるプロセスの起点となる。
少数の顧客と長い取引を続けるBtoB領域では、リード1件当たりの価値が高い。
オウンドメディアを活用することで、専門知識を含んだホワイトペーパーやeBookなどを提供し、その対価としてメールアドレスや会社名などのリード情報を得ることができる。
目的5. ナーチャリング
ナーチャリングは見込み客の購買行動を促進するため、マーケティングの中でも特に重要なプロセスだ。
オウンドメディアでは、リードに対して有益なコンテンツを定期的に提供し、契約や商談に至るまでの心理的な障壁を取り除いていく。
現在は、MA(マーケティングオートメーション)ツールとオウンドメディアを連携させ、リードの状況やニーズに応じてパーソナライズされたコンテンツを提供するなど、リードが自発的に行動するきっかけを作る手法が中心だ。
また、内部リンクを活用したナーチャリングも有効だ。
オウンドメディア内を循環させ、リードが関心のあるコンテンツにアクセスしやすくする。
オウンドメディアは静的なコンテンツの塊と思われがちだが、内部リンクによって見込み客の教育を自動化することも可能なのだ。
目的6. 売上への貢献
近年のオウンドメディアにおける主要な目的は「売上への貢献」だ。
BtoBでは、オウンドメディアが直接的な売上を生み出すケースは少ない。
しかし、検索流入による認知拡大や、リード獲得、ナーチャリングを経て、最終的に商談へとつなげるプロセスを太くすることはできる。
また、製品サイトやECサイトとの連携により、売上を生み出すことも可能だ。
オウンドメディアを活用することで、これまでの営業プロセスとは異なる軸で売上を創出できる点は大きなメリットになる。
ただし、オウンドメディアが売上に貢献し始めるのは、早くても2年目以降であり、1年目は投資期間となることが多い。
売上貢献を評価するためには、ROI(投資対効果)を意識した計画が必要となる。
目的7.クロスチャネル戦略の起点
クロスチャネル戦略は、異なるマーケティングチャネルを統合的に活用し、成果につなげるアプローチだ。
オウンドメディアを他のチャネル(SNSやメールマーケティング、Web広告など)と連携させ、相互に補完し合うことで、リード獲得や商談の増加などの効果が見込める
オウンドメディアを単体で運用した場合、SEO対策がうまくいけば露出が増えるが、そうでない場合は大きな効果を生みにくい。
しかしオウンドメディアのコンテンツを、SNSを通じてシェアする、メールで配信するなどのアプローチにより、より多くの読者を獲得できる。
SNSは拡散力、メールは浸透力に優れるため、こうした特長をオウンドメディアと組み合わせることで成果を生みやすくなる。
また、SNSやメールで獲得したリードに対して、オウンドメディアのコンテンツを利用したナーチャリングを施すなど、さまざまな使い方ができる。
目的8.潜在顧客の取り込み
潜在顧客はどこにどれだけいるかを把握しづらい。
一般的に、市場の8割は潜在見込み客と言われる。
しかし、広告やLPが取り込めるのは「顕在顧客」であり、全体の1~10%程度だ。
この2つは潜在顧客にアプローチしにくいため、オウンドメディアが適している。
この点は、下記の記事でも詳しく解説している。
オウンドメディアは、「今は動く気配がないが、これから購買行動を起こす可能性がある見込み客」に広くリーチできる。
「将来的に顧客になる可能性があるユーザー」を少しずつ取り込み、ニーズに気づいていない段階からアプローチできる。
目的9.SNSなど他のチャネルの受け皿
クロスチャネル戦略と似た目的になるが、SNSなど他のチャネルの受け皿としても機能する。
SNSやメールは、拡散力や浸透力を持つものの、説得力に欠ける面がある。
この点でいえば、SNSやメールから流入したユーザーを、オウンドメディアで定着させ、リードに転換するという目的は理にかなっている。
また、SNSで獲得したユーザーの行動をトラッキングし、オウンドメディアで関連コンテンツを提供することで、ユーザーをさらにターゲット化し、次のアクション(フォーム入力や購入)へと導くこともできる。
状況別に個別具体的な目的にも対応
これら9つの目的はあくまでも一般論だ。
実際には、企業が置かれている状況によって、さらに具体的な目的の設定が必要になるだろう。
例えば、
- 付加価値化、差別化を進めたい(レッドオーシャンから脱したい)
- 保有しているリードを活かしたい(受注に近づけたい)
- 流入とリード獲得のコスパを上げたい
- ニーズ、課題を共有した顧客と出会いたい
- 既存メディアのPVを売上につなげたい
オウンドメディアは、これら具体的な目的にも十分対応できる。
付加価値化、差別化を進めたい
オウンドメディアを使って、自社独自の付加価値や差別化要因を伝え、顧客の意識を変えることができる。
レッドオーシャンやコモディティ化された市場では、製品やサービスが標準化されており、価格や機能だけで競合と差別化するのが難しい。
ブランドイメージ向上やエンゲージメントの強化が必要であり、オウンドメディアはその実現に貢献する。
保有しているリードを活かしたい
リードに対してアクションを起こさない時間が続くと、機会損失が発生する。
もしナーチャリングを行う人員が不足しているならば、オウンドメディアのコンテンツでリードを育成することができる。
リードが十分に確保できているならば、SEO対策にとらわれる必要もなくなる。
SEOから離れて、質重視のコンテンツを提供すると、ナーチャリングは一層すすめやすくなる。。
また、MAツールを活用してオウンドメディアに誘導し、ホワイトペーパーDLやセミナー参加を促進することで、商談や受注に繋げやすくなる。
流入とリード獲得のコスパを上げたい
オウンドメディアは、検索流入とリード獲得のコスト効率を高めるためにも有効だ。
BtoBの場合、ニッチキーワードやロングテールキーワードに焦点を当て、コンテンツを充実させることで長期的な成果をあげやすい。
オウンドメディアの成長には時間がかかり、最低でも半年から1年、できれば2~3年の期間を見込むべきだ。
MAやCRMを活用してリードを管理し、オウンドメディアに積極的に誘導することが重要となる。
リード管理が行われていない場合、営業やマーケティングのプロセスにオウンドメディア誘導を組み込み、相乗効果を狙う。
ニーズ、課題を共有した顧客と出会いたい
オウンドメディアの運営がうまくいくと、ニーズや課題を共有した顧客と出会える。
これらの顧客は、将来的に「付き合いやすい顧客」となり、自社とのシナジーが生まれやすい。
付き合いやすい顧客と出会うためには、成功事例や問題解決の事例が効果的だ。
市場に存在する見込み客は、自身が直面する「問題」や「課題」が「何を使って・どのように」解決されたかについて、情報を欲している。
このことから、自社が得意とする製品やサービスに関する事例を「成功事例」として示すことで、顧客と出会いやすくなる。
既存メディアのPVを売上につなげたい
既存メディアのPVを売上に結びつけたいという目的に適している。
コーポレートサイトなどの訪問者数は多いものの、実利の部分が広く伝わっていない場合、売上が付いてこない。
そこでオウンドメディアから事例紹介や製品紹介を行い、「特徴」ではなく「利点」を強調したコンテンツを作成する。
時間の節約や顧客満足度、コスト削減といった定量的な指標に焦点を当てていこう。
4.オウンドメディアのメリットとデメリット
続いて、オウンドメディアのメリットとデメリットを把握しておこう。
2つを同時に把握しておくことで、リスク回避や改善につなげることができるからだ。
4.1.最大のメリットは「アプローチ可能な範囲が広いこと」
オウンドメディアのメリットとしては、以下4つが挙げられる。
- 見込み客の大半にアプローチできる
- 長期的に事業へ貢献できる
- ブランディングの向上
- ナーチャリングコストの低減と自動化
メリット1.見込み客の大半にアプローチできる
オウンドメディアのメリットとして特筆すべきは「潜在層から顕在層まで幅広くアプローチできる」という点だ。
これはコンテンツマーケティングのメリットとも重なる部分だが、「まだまだ客」を含めて潜在見込み客に広くアプローチできるのは、オウンドメディアならではの強みなのだ。
上記の図のように、ペイドメディアが対象とする「いますぐ客」は一般的にたった1%程度であり、それ以外へのアプローチはオウンドメディアが適している。
特に見込み客の大半を占める「まだまだ客」は、そもそも自らの課題に気が付いていない。
それゆえに、必要性(ニーズ)も欲求(ウォンツ)もほぼ感じていない。
しかし、ノウハウ解説やトレンド解説など耳目を集めやすいコンテンツを通して、徐々に課題に気づいてもらうことはできる。
「まだまだ客」が欲求を高めれば「そのうち客」へ、必要性を感じれば「おなやみ客」へと変容していく。
さらにそのうちの一定数が「いますぐ客」になるわけだ。
この「いますぐ客」は、通常のいますぐ客とは性質が異なる。
オウンドメディアのコンテンツによって育成された層であり、自社製品やサービスの認知度が高い。
また、それまでの経緯から自社との親和性もあると考えられるため、受注に至る可能性は十分にある。
メリット2:長期的な事業への貢献
オウンドメディアがリード獲得、ナーチャリングを担うことで問い合わせや商談が増えれば、通常の営業に加えてもう一つの受注ルートが出来上がる。
つまり、事業基盤の強化につながるわけだ。
メリット3:ブランディングの向上が見込める
ブランディングはBtoCで重視されるが、BtoBでも当然意識すべきだ。
コモディティ化が進んだ市場では、ブランドイメージが受注の決定打になることもある。
「ブランディングが成功している状態=自社の価値が市場に浸透している」状態であり、あらゆる施策が通用しやすい状態だからだ。
BtoBにおいては、専門性の高いキーワードによってブランドイメージを高めることに注力しよう。
実務担当者をターゲットにしたブランディングは、企業の態度変容につながる。
メリット4:ナーチャリングコストの低減と自動化
あらかじめオウンドメディアにコンテンツを用意し、随時誘導するようにしておけば、ナーチャリングの自動化が可能だ。
近年のマーケティングは、SEOや広告、セミナーなど複数の施策によって進められる。
また、さまざまな経路から得たリードを常にナーチャリングし、受注に近づけていかなくてはならない。
要はナーチャリングに要するコストが大きいのだ。
オウンドメディアならば、このコストを低減できる。
4.2.デメリットは「時間」「ノウハウ」「コスト」
一方でデメリットとしては、
- ゼロからの集客に時間が掛かる
- コンテンツの作成にノウハウが必要
- 運用コスト
- 質の低いコンテンツによる悪影響
の4つが挙げられる。
デメリット1:ゼロからの集客に時間が掛かる
オウンドメディアは、ゼロの状態から軌道に乗るまでの時間が長い。
特にBtoBの場合はビッグワードでの集客が難しく半年~1年程度はPVが上向かないこともある。
もし集客が進まない場合は、獲得済みリードのナーチャリングに注力するという手もある。
デメリット2:コンテンツの作成にノウハウが必要
オウンドメディアで成果を出すためには、複数のノウハウが必要だ。
例としては、実務経験や専門知による裏付け、ペルソナに沿った企画構成などが挙げられる。
さらにコンテンツの配置や関連付けに関するノウハウも必要だ。
こうしたノウハウを獲得する前にリソース不足に陥り、オウンドメディアの成長が阻害される可能性もあるだろう。
さらに、成長が止まればそれまでに投じたコストは無駄になる。
デメリット3:運用コスト
オウンドメディアの運用には「コンテンツ制作費用」や「サイト運用」などの人件費が発生する。
成果が出やすくなるライン(毎月最低5~10本)を維持するには、年間で1000~2000万円程度のコストを見込む必要があるだろう。
コストの例
- ライター2人、編集担当1人の場合
- 人件費(月):15×2(ライター)、20×1(編集担当)=50万円
- 人件費(年):50×12=600万円
- CMS構築、サーバー運用、デザインなどの外注費:約1000万円
- 合計:年間1600万円(月133万円)
デメリット4:質の低いコンテンツは逆効果
「露出とPV集め」だけに傾倒した低品質なコンテンツは、長期的にメディアの信頼性を低下させる要因となる。
短期的にはPVが増えたとしても、やがて「直帰率の上昇」が起こり始め、CVRは一切上向かないという状況が生まれる。
可能な限り質の高いコンテンツを積み上げていき、直帰率の低下とCVRの向上を狙っていきたい。
ちなみに「では良質なコンテンツとは何なのか?」という疑問も湧いてくるだろう。
そんな方には、以下の詳細記事を確認していただきたい。
5.BtoB向け 成功するオウンドメディアのコンテンツとは
BtoBのオウンドメディアは、BtoCよりも複雑な購買行動をキャッチし、売り上げにつなげていかなくてはならない。
どのようなコンテンツが評価されやすいかを理解しておこう。
5.1. 業界向けの有益な情報を含むコンテンツ
BtoBオウンドメディアでは業界や市場のトレンド、法規制の変更、最新テクノロジーの情報など、読者にとって有益でタイムリーな情報が評価される。
製造業向けのオウンドメディアであれば、最新の生産技術や業界のベストプラクティスになどが該当するだろう。
ポイントは「単なる情報の羅列」にならないように、情報をかみ砕いて解説することだ。
また、自社の見解を明確な理由とともに述べると、読者からの信頼性が高まる。
5.2. ノウハウを含むコンテンツ
ノウハウに関するコンテンツもBtoBのオウンドメディアで評価されやすい。
業界で一般的によくある課題に対し、解決策やヒントを「具体例」とともに提示するコンテンツだ。
また、ノウハウは「すぐに実行に移せるレベルの粒度」であれば、興味関心を喚起しやすくなる。
ただし、以下のようなコンテンツは逆効果になることもあるため注意しよう。
- 「ノウハウ」だけを提供していて、自社の強みに対する訴求がない
- SEOに寄りすぎていて内容が薄い
ノウハウだけを単純に提供すると、「情報収集目的」の読者だけが集まるようになる。
これでもオウンドメディアの評価は上がるのだが、「見込み客を集める」という視点ではやや弱い。
「ノウハウはあるが、それよりももっと良い解決方法がある」など、自社の訴求につなげる内容も織り交ぜることでリード獲得が進む。
また、SEO的な評価を気にするあまり文字数とキーワードだけに注力すると、どうしても内容が薄くなる。
基礎的なSEO対策を講じたあとは、内容重視でコンテンツを作っていこう。
IT企業のコンテンツ設計については、下記内容でも解説しているため参考にしてほしい。
5.3. 事例コンテンツ
事例コンテンツは、「企業の体験談」をストーリー形式で紹介することで、間接的に自社の強みを訴求できる。
製品やサービスを直接アピールするよりも信頼性が高く、事例に似た課題を持つ企業に刺さりやすい。
BtoB IT企業がリード獲得を目指すのであれば、下記のような構成がおすすめだ。
A.顧客企業の課題と業務的な背景
B.Aがどのような痛みを伴っていたか(離職率が高い、契約の継続率が低いなど)
C.Bを解決するために検討した選択肢
D.Cの結果として自社を選んだ理由とその効果
この構成であれば、「顧客が何に悩んでいて、実際にどのような痛みがあり、それをどういうプロセスで解決したか」が明確になる。
また、CやDの部分で競合他社に対する客観的な優位性もアピールできる。
5.4. 具体的なニーズを満たすコンテンツ
オウンドメディアのコンテンツは見込み客の「ニーズ」に沿ったものが望ましい。
見込み客が抱える「具体的なニーズ」を満たすコンテンツが多ければ多いほど、リードを獲得しやすくなる。
ニーズは、顕在・潜在の両面から狙いたいが、即効性が高いのは顕在ニーズだ。
一方で、中長期でリードを増やしたいのであれば、潜在ニーズも狙う。
例:
顕在ニーズ:老朽化したシステムをリプレイスしたい
潜在ニーズ:システムインフラの運用や保守にかかる負担を減らしたい
ニーズを満たすコンテンツを作るには、ニーズをキーワードに置き換える作業が欠かせない。
この作業には経験やノウハウが必要であり、自動化が難しい。
必要に応じて外部のパートナーを活用するなどの方法も検討していこう。
6.「オウンドメディアは意味がない」という指摘について
オウンドメディアの目的の中には、ブランディングやエンゲージメントの強化など定量化しにくいものがある。
そのせいか、効果が可視化されない状態が続き「意味がない」と判断されるケースもある。
確かに「オウンドメディアは意味がない」と判断されやすい状況はある。
例えば、
- 最も効果が出やすいはずのPVが増えない
- 売上につながる問い合わせがない
- コストに見合った効果がない
などである。
しかし、意味がないと断じる前に、「オウンドメディアの役割」や「特徴」を振り返ってみてほしい。
特にオウンドメディアの特徴を理解していないと、投資を回収し損ねるリスクがある。
前述したようにオウンドメディアには、
- メディアの方向性や内容を、自由にコントロールできること
- 潜在層から顕在層まで幅広くアプローチできる
- 間接的に売上に貢献する
という特徴がある。
要は「自由度は高いが、効果が出るまでに時間を要する」のだ。
ここで言う時間とは「1年半~2年以上」であり、年単位で効果測定を続けることが必須になる。
6.1.「オウンドメディアの意味」を体感しにくいケースとは
さらに、自社の状況に合わない運用方法によって「意味がない」状態に陥っている可能性もある。
例えば「来月にでも数件の受注が欲しい」といった状況では、オウンドメディアの意味が発揮される可能性は限りなく低いだろう。
もちろん、それまで進んでいたナーチャリングが功を奏し、ある月にまとまった受注が入ることはある。
しかし、狙って起こせる類のものではなく、半ば偶然に近い。
運営1面目にもかかわらず「来月」や「下半期」という短期目線で効果を期待してしまうと、「意味がない」という判断に陥りやすいのだ。
6.2.オウンドメディアが「存在意義あり」と判断されやすい4つのケース
一方で、オウンドメディアに「意味がある」と判断されるケースは確かに存在する。例えば、以下のようなパターンだ。
ケース1:リードが確保できている場合
獲得済みリードを有効活用できていないならば、オウンドメディアの意味が発揮されやすい。
オウンドメディアのコンテンツを周回させることでナーチャリングやブランディングが進むからだ。
ケース2:時間をかけて長期でコストパフォーマンスを出したい場合
「時間はかかっても良いから、まったくリードを保有していない状態からのリード獲得を狙いたい」という場合にも意味がある。
「時間の制限が緩い」ことはオウンドメディアとの親和性が高い。
具体的には、リード獲得から受注・売上というタームが確立されるまで、半年から2年程度を想定しておこう。
また、メルマガ・営業用資料・DMの中からオウンドメディアへの流入を促すなど、既存チャネルとのシナジーを狙うことでより効果が出やすくなる。
ケース3:ニーズ、課題を共有した顧客と出会いたい場合
相性の良い顧客と出会いたい場合にも有効だ。
これはオウンドメディアが持つ「プル型(誘引型)」の特性が活きるためだ。
例えば、事例記事をコンテンツSEOによって露出させる。
この事例に強い興味を示したユーザーは、事例の内容(痛み、悩み、課題をどのようなプロセスで解決できたか)に共感を覚える。
このユーザーとの間には、課題やニーズの合致がある。
したがって、もし受注につながれば、「付き合いやすい顧客」になる可能性が高い。
ケース4:公式サイトなど他で流入が稼げるメディアがある場合
すでに公式サイトから十分な流入がある場合は、オウンドメディアを「本体(公式サイト)のサポート役」にすることで、大きな意味を持たせることが可能だ。
端的に言えば、製品の特設サイトや事例サイトという形で運用していくわけだ。
このように、オウンドメディアが意味を持ちやすいケースはいくつもある。
オウンドメディアの意味についてより深く知りたい場合は、下記の記事を参照してみてほしい。
7.オウンドメディアの作り方
オウンドメディアの作り方を「コンテンツ制作」と混同しているケースがある。
コンテンツ制作は、オウンドメディアのフェーズで言えば「運用」に該当する。
オウンドメディアの作り方としておさえておくべきは、戦略設計、体制構築、サイト構築の3点だ。
順に見ていこう。
7.1.戦略から予算策定まで
まず、オウンドメディアの「戦略」を決める。
戦略とは簡単に言えば「目的や方向性」の部分だ。
具体的には、「オウンドメディアのコンセプト」「目的の明確化」や「ターゲットとペルソナの把握」「カスタマージャーニーの設計」などを行う。
戦略が決まったあとは効果測定のための目標値、つまりKPIを策定する。
下記は、オウンドメディアの指標として使われるKPIの一例だ。
- ブランディング:PV、UU、SS、直帰率、平均滞在時間
- エンゲージメントの強化:読了率、回遊率、再来訪、メルマガ登録、資料請求の数
- 集客:PV、UU、オーガニック検索流入数
- リード獲得:CVR、フォーム通過率
- ナーチャリング:読了率、回遊率、再来訪、メール開封率
- 売上への貢献:オウンドメディア経由の問い合わせ数、有効商談数、新規契約数、売上
また、目的別にKPIを設定する場合の例は、こちらの記事で解説している。
KPIの策定後は、予算策定に着手しよう。
予算策定では、まずいくつかの指標を用意し、推測値を算出し、年間コストとの比較で投資対効果を予測する。
2年目以降の黒字化を見込んで予算を策定していけば、周囲の理解を得られやすいだろう。
7.2.体制構築
次に運用体制を構築する。
オウンドメディアの運用では、「プロジェクトオーナー(リーダー)」「ディレクター」「ライター/デザイナー/エンジニア」などのポジションに対し、誰をどの程度アサインするかなどの計画が必要になる。
この計画作成が、運用体制の構築における要諦だ。
また、コンテンツ制作は内製でまかなうのか、外部委託に頼るのかといった判断も進めていこう。
7.3.サイト構築
サイト構築では、CMSやベンダーの選定など「サイトとしての物理的な構築作業」を進める。
オウンドメディアの規模にもよるが、中~大規模サイトを想定した低コストなCMSを選定しておこう。
8.オウンドメディアの運用方法
「作る」フェーズが完了した後は「動かす」フェーズ、つまり運用方法について検討していくことになる。
オウンドメディア運用の全体像は以下の通りだ。
8.1.テーマの立案とキーワード設定
テーマ立案/キーワード選定では、戦略設計の段階で設定したターゲットとペルソナをさらに具体化していく。
また、テーマに沿ったキーワードをリサーチし、難易度やボリューム、トレンドの変遷も把握しておこう。
8.2.コンテンツ制作
続いて、テーマ/キーワードに従ってコンテンツ制作を進める。
コンテンツ制作のステップは、
- 企画案の作成
- コンテンツの執筆
- 校正とリライト
の3つだ。
企画案の作成
企画案は上位記事の「抜けや漏れ」を補強し、さらに自社価値として「独自の視点」や「成功事例」を盛り込むように練りこんでいく。
実務経験を持つ専門家や有識者を集め、「実務担当者に刺さる内容」を目指そう。
コンテンツの執筆
コンテンツの執筆では、企画案の内容を再現しつつ「SEOライティングの3原則」に沿うことを徹底したい。
SEOライティングでは「漏れなく・だぶりなく」「可読性を上げる」「権威性と信頼性を担保する」を3原則とする。詳しくは以下の記事を読んで欲しい。
校正とリライト
校正とリライトは、言い方を変えれば「コンテンツのチューニング」である。
校正によって実現された可読性の高い日本語は、読者からの信頼性向上に効果がある。
また、SEO対策ツールやヒートマップのデータを参照しながらリライトを施すことで、SEO的な評価の向上が期待できる。
8.3.効果検証
制作したコンテンツはスピーディーに公開し、その後は効果検証に移行する。
効果検証では、下記のようなKPIを注視していこう。
- PV(ページビュー)数
- 記事数
- UU(ユニークユーザー)数
- SS(セッション)数
- オーガニック検索での流入数
- CV(コンバージョン)数
- 平均検索順位
上記KPIを一ヶ月単位で計測し、PDCAを回転させることでオウンドメディアは成長していく。
ここで述べた内容は一般論であり、実際にはさまざまな運用方法がある。
「目的別の運用方法」については、こちらの記事も参考にして欲しい。
9.オウンドメディアの集客とマネタイズ
最後に、オウンドメディアの集客とマネタイズに関して理解を深めておこう。
この2つは、BtoBで重視される目的「売上への貢献」を実現するために欠かせない要素だ。
9.1.集客の本命は検索流入
集客については、下記のように5つの方法がある。
検索流入 | SNS | Web広告 | 動画プラットフォーム | メルマガ | |
内容 | ペルソナとジャーニーに沿ったコンテンツ制作潜在ニーズを捉えたコンテンツSEOで長期で効果が見込める | SNSアカウントからの流入BtoBでは「バズ」の効果が限定的 | 信頼性の高いメディアへの出稿ならば活用すべき | BtoB関連動画の再生数が小さく流入が見込みづらいオウンドメディアへの流入とは経路が異なる | ナーチャリング向きゼロベースでの集客は効率が悪い |
効果(短期/長期) | △/◎ | ×/△ | ◎/△ | △/△ | △/○ |
コスト | 中 | 低~中 | 高 | 高 | 中 |
BtoBのオウンドメディアでは「検索流入」が集客の大半を占める。
したがって、集客効率を高めたいのであれば、コンテンツSEOへの理解と注力が必須だ。
9.2.コンテンツの質=オウンドメディアの集客
コンテンツSEOとは、「内容を伴う情報の塊(=コンテンツ)」によって検索エンジンからの評価を高め、検索上位表示やPVの向上などを目指す施策のことだ。
ここで注意したいのが、検索エンジンからの評価に加えて「人からの評価」も重視する必要があるということ。
つまり「内容」の質を高めていかなくては、本当の意味での集客には結びつかない。
例えPVだけが増えたとしても、離脱率が高ければ「集客」とは言えないだろう。
集まったPVを以下に維持し、リードに転換できるかが集客の本質である。
これを実現するためには、どうしてもコンテンツの質を高める必要がある。
では質の高いコンテンツとは何だろうか。弊社では高品質なコンテンツを以下のように定義している。
- 「納得ある情報を提供し、信頼を得られるコンテンツ」
- 「新たな視点や視座を提供するコンテンツ」
- 「オンラインには出回りにくい希少性の高いコンテンツ」
- 「実務者の目線で作られた、具体的で正確な情報を含むコンテンツ」
- 「潜在ニーズを刺激するコンテンツ」
同時に、「質の低いコンテンツ」の排除も進めていこう。
質の低いコンテンツには、オウンドメディア自体の評価を下げてしまうリスクがある。
「顕在ニーズ(表面的な○○したい)だけにフォーカスしたコンテンツ」
「上位記事の見出し構成や内容を模倣し、まとめただけのコンテンツ」
「独自の視点や見解、具体的なノウハウ、例、数値などを一切含まないコンテンツ」
コンテンツの質を高め、集客につなげる方法については、こちらの記事もおすすめだ。
9.3.事業貢献で間接的に稼ぐ
一般的にオウンドメディアのマネタイズとしては、以下2パターンがある。
- パターン1:商業メディアとしてのマネタイズ(直接稼ぐ)
- パターン2:事業貢献によるマネタイズ(事業貢献で間接的に稼ぐ)
BtoBのオウンドメディアは、パターン2に該当する。
つまり、コンテンツSEOによって露出させ、高品質なコンテンツでリード獲得、ナーチャリングを経て受注につなげるという方法が王道だ。
さらに以下のようなマネタイズ計画も立案しておくと、稼ぐ能力を高めやすくなる。
- ステップ1:受注率や受注金額で「粗い目標」を立てる
- ステップ2:コストの算出と予算策定
投資対効果の算出と共通する点もがあるが、ここで重要なのは「自社製品・サービスの性質を考慮した計画にする」ことだ。
例えば、月額課金型のソリューションと、初期投資額が大きいソリューション(売り切り型)ではマネタイズ計画の内容は異なる。
製品やサービスの性質に沿った計画にすることで、「どの時点でどの程度の収益が見込めるか」が明確になり、予算の稟議が通りやすくなるだろう。
製品・サービスの性質によるマネタイズ計画については、こちらの記事で紹介している。
10.AI時代でもオウンドメディア活用は必須
AIの進化により、検索行動や情報収集の方法は急速に変化している。
特に生成AI(Chat GPTやGeminiなど)の発達により、検索エンジンを使わずにAIによって情報を集めるユーザーが増えてきた。
また、AIが検索エンジンに回答を表示する仕組み、つまり「AIO(AI Overview)」の登場により、検索行動は大きく変わった。
従来の「検索ワード入力→検索結果をクリック」といった行動が減り、検索流入の急激に減少が起こっている。
そのため、「オウンドメディアはもう意味がない」という意見が増えた。
しかし、結論から言えば「オウンドメディアは今後も必要」である。
ここでは、AI時代におけるオウンドメディアの活用方法とその必要性についてまとめてみたい。
10.1. AIOの台頭で検索流入が減少
AI技術が進化したことにより、検索結果ページでのクリック数が減少する現象が現れている。
これは「ゼロクリックリサーチ(クリックなしで情報収集を完結させる行動)」が普及したためだ。
ユーザーは検索エンジンを通さず、AIが提供する即時の回答を求める傾向が強くなっている。
当然、オウンドメディアによる検索流入の獲得にも影響が出ている。
このままいけば、検索エンジンのランキング上位を獲得することの効果は薄れ、オーガニック流入の減少が予測される。
これまでの検索エンジン起点の集客だけでは、限界が近いと言わざるを得ない。
10.2.「AI時代=オウンドメディアは不要」ではない
しかし、AIが登場したからといって、オウンドメディアが不要になるわけではない。
むしろ、オウンドメディアは企「AIが提供しきれない独自の価値」を伝える重要な手段であり続ける。
リッチコンテンツに注力
AIによる検索や情報提供は、主に大枠の質問や広範なニーズに対応する。
要は無難な一般論が多いのだが、より具体的で深い情報や個別最適な内容は提示しづらい。
特に「導入事例」や「インタビュー記事」のようなリッチコンテンツは、AIが生成しづらく、要約にも出てこない。
生成AIとの差別化という意味では、リッチコンテンツへの注力がねらい目かもしれない。
AIへの最適化でAIに選ばれやすく
今後オウンドメディアで成果を出すためには、「いかにAIに選ばれるか」という観点も欠かせない。
つまり従来のSEOだけではなく「AI/GAIO」や「LLMO」といった考え方も運営方針に織り込むべきだ。
- AIO/GAIO(AI Optimization):生成AIを含めたAI全体への最適化の考え方
- LLMO(Large Language Model Optimization):AIO/GAIOとほぼ同じ意味でつかわれ、大規模言語モデルへの最適化によってAIに選出されやすいコンテンツを目指す考え方
単に検索結果で上位表示を目指すのではなく、「AIに拾われやすいコンテンツ設計」を心がけることで、「濃い流入」を維持できる。
この点については、下記の記事も参考にしてみてほしい。
11.まとめ
ここでは、「オウンドメディアとは何か?」という問いに対し、概念的な部分から実際のメリット、運用にまで網羅的に回答を提示してきた。
オウンドメディアはコンテンツマーケティングの中核を成す重要な戦術のひとつである。
企業の”看板”としての役割だけではなく、マーケティングツールとして認識し、成果につながる運用を心掛けよう。
もしオウンドメディア構築・運用のノウハウがない場合は、外部の支援を受けながら徐々に蓄積する方法もおすすめである。