集客は、ビジネスの根幹をなすプロセスであるが、その効果を正しく把握することは容易ではなく、多くのIT企業やSaaS事業者が悩みを抱えている。
集客にもさまざまな施策が含まれるが、施策ごとの効果を把握しなければ、リソースやコストの配分も最適化できず、企業の成長は遠のいてしまうだろう。
集客の分野では、以下のような課題や悩みをもつ企業も多い。
「集客の効果を測定したいが、チェックすべき指標がわからない」
「効果測定の結果を集客戦略の改善に活用できていない」
「集客の目標を曖昧に定めてしまっている」
ここでは、BtoBにおける集客の効果を高める方法として、集客の効果測定の重要性や実際の測定方法、集客効果を高めるためのポイントなどを詳しく解説する。
1.集客方法と「効果測定」の重要性
集客の効果を高めるには、継続的な改善が必須だ。
そして継続的な改善のためには、効果測定が最も重要であり、土台となる。
まずは集客の効果測定の重要性を整理しておこう。
なお、効果測定で得られたリードを「商談化」につなげるには、その後のナーチャリング設計が欠かせない。詳しくは以下の記事で解説している。
1.1.意思決定の根拠となる
マーケティングの難しさの1つとして「意思決定のための基準がわかりにくい」ことが挙げられる。
常に数字を追いかける営業部門とは異なり、マーケティングではROIの視点が欠けていることも珍しくない。
しかし集客では、効果測定によってROIの数値化が可能である。
「どの程度コストをかけた施策で、何リード獲得でき、そのうち顧客に至ったのはどれくらいか」
「どの施策で商談率が高かったか」
マーケターの所感も重要だが、数値という客観的な指標を扱うことで、意思決定の根拠が示しやすくなる。
これは集客の効果測定が重要となる最も大きな理由だ。
1.2.戦略の改善に役立つ
集客戦略の「改善」においても、効果測定は重要な意味を持つ。
BtoBにおける集客戦略は「SMARTの法則」を前提とした立案が推奨される。

【SMARTの原則】
- S(Specific:具体的に)
- M(Measurable:測定可能に)
- A(Achievable:達成可能に)
- R(Relevant:関連的に)
- T(Time-bound:期限を決めて)
簡単にまとめると「具体的な数値や期限を持つ、達成できそうな目標」を戦略に盛り込む必要がある。
抽象的な戦略ではないので、効果測定によって細かい改善が可能だ。
戦略は頻繁に変更するものではないものの、さまざまな施策の基礎となるものだけに、多少のズレであっても大きな損失を生んでしまう。
このズレを修正するために、定量的な指標を用いた継続的な効果測定が役立つ。
BtoBでの集客戦略については、以下の記事でも解説している。
1.3.顧客理解が進む
集客の基本は、顧客を理解することだ。
集客の対象となる未来の顧客候補がもつニーズ、価値観、購入の動機など理解できなければ、効果的なメッセージを生み出せない。
この顧客理解のヒントになるのが、効果測定による行動の可視化だ。
現代の顧客はオンライン上での行動が多い。
検索ニーズの把握やオウンドメディアでの行動履歴など、オンラインでの効果測定から得られる情報は非常に多い。
これらを計測することで、より精度の高いターゲティングとメッセージのカスタマイズが可能となり、顧客に刺さるマーケティングを実現できるのだ。
・IT企業特有の注意点
特にIT企業やSaaS事業者では、SNS(Instagram・Twitter・LINE公式アカウント・YouTube・TikTok)での投稿反応や、メールマガジン配信の開封率・クリック率、Webサイトやブログのアクセス解析といった多様な指標を組み合わせることが重要である。
これにより、「どの媒体が成果につながっているのか」「どの顧客層が反応しやすいのか」を把握できる。
さらに、地域やエリア別に効果を比べることで、展示会やチラシ・ポスティングの反応と、オンライン広告やリスティング広告の成果を比較的に検討できる。
こうしたデータを徹底的に活用することで、単なる集客活動から費用対効果を最大化する戦略的な集客へと進化させることが可能になる。
2.集客の効果測定方法
では、集客の具体的な効果測定方法を把握しておこう。
前提として集客の目的は、単に「人を集めること」ではなく「売りやすい見込み客を引き寄せること」である。
さらに具体的にいうと、集客の目的には以下の3つがある。

- 新規見込み客の獲得
- LTVの増大(既存顧客の維持と拡大)
- 認知拡大
これらを達成するために、効果測定はオンラインとオフラインの両方で行う。
できる限り多くの顧客接点を分析することで、より効果測定の精度が高まるためだ。
では、具体的な集客の効果測定方法を、オンラインとオフラインに分けてみていこう。
2.1.オンライン集客の効果測定方法
オンライン集客では上記3つの目的に応じた効果測定がやりやすい。
オンラインでの行動履歴がさまざまなログに残されるからだ。
この特性をうまく活用し、集客の目的に応じて効果測定を進めていこう。
目的ごとに設定すべき指標は以下のとおりだ。
| 集客の目的 | 効果測定の指標 |
| 新規見込み客の獲得 |
(PV数、SS数、UU数)
|
| LTVの増大 |
|
| 認知拡大 |
|
新規見込み客の獲得
新規顧客の獲得を計測するには、オウンドメディア経由のトラフィック分析、問い合わせやホワイトペーパーダウンロードなどのコンバージョン状況などをチェックする。
特にセッション数(SS)に注目したい。
PVは単純にページを参照した数であるが、SSはいわば「ユーザー単位での訪問数」だ。
訪問した回数が多いユーザーは、自社の製品・サービスに強い関心を持っていると推測できる。
UUとともにSSも伸びていれば、「見込み客」となりうる新規ユーザーがメディアを訪れていることになる。
一方で、新規ユーザーが増えているのにコンバージョン数が増えていない場合は、コンバージョンに直結するLPやCTAのどこかにボトルネックがあることが考えられる。
| 指標 | 詳細 |
| PV数 | ユーザーがページを1回表示するごとにカウントされる指標。あるユーザーがサイト内の異なるページを5ページ訪問した場合、そのユーザーによるPVは5となる。集客効果の分析という意味ではやや大雑把な指標だが、トラフィック量やユーザーニーズ、興味関心の大枠などを把握できる。 |
| SS数 | ユーザーがウェブサイトを訪れてから離脱するまでをカウントする。1つのセッションは、ユーザーがウェブサイトで活動を開始してから、一定の時間(通常30分)何もしないか、ブラウザを閉じるなどして終了するまで続く。SSが増える=集客が成功していると推測できるため、重要な指標の一つ。 |
| UU数 | 特定の期間内にウェブサイトを訪問したユニークなユーザーの数を指す。一般的には、ユーザーのブラウザやデバイスに保存されるクッキー(Cookie)を使用して識別されるため、同じユーザーが何度ウェブサイトを訪れても、その期間内では1人としてカウントされる。UUの増加は、集客の裾野の拡大につながる。 |
| コンバージョン数/率 | 問い合わせや資料ダウンロードなど、特定のゴールに転換された数や率を表す。集客=リード獲得と定義する場合には、コンバージョン数/率の増減に注目する。 |
LTVの増大
集客の目的には、既存顧客に対して新しい商材の訴求を行い、LTV(顧客生涯価値)の増大を達成することも含まれる。

この場合は、平均購入額、購入頻度、顧客維持率、行動パターン分析(アップセル、クロスセルへの反応)などをチェックしていこう。
| 指標 | 詳細 |
| 平均購入額 | 顧客が過去に購入した額の平均を表す指標。「平均購入額が大きい顧客」をリストアップして分析することで、集客のターゲット選定に活かすことができる。 |
| 購入頻度 | 任意の期間における購入の頻度を表す指標。平均購入額と同じように、集客対象の選定に活用する。購入頻度が高い顧客は、自社製品やサービスに対するエンゲージメントが高く、LTVも大きくなりやすい。 |
| 顧客維持率 | 特定の期間内における自社製品・サービスの継続状況を表す指標。「(期間終了時の顧客数-新規顧客数)÷期間開始時の顧客数」で算出できる。集客効果が維持知的なものではなく、長期的にLTVの増大につながっているかを判断するための重要な指標だ。 |
| 行動パターン分析 | 行動パターン分析では、主にアップセルやクロスセルに対する反応をチェックする。アップセルやクロスセルに反応しやすいユーザーは、自社製品・サービスとの親和性が高い(=適切な集客対象)だと判断できる。こういったユーザーの傾向を分析し、新規の集客施策に活かすことがLTVの増大につながる。 |
認知拡大
認知拡大を目的とする場合には、主に広告関連の指標や検索順位の状況をチェックしていこう。
| 指標 | 詳細 |
| インプレッション数 | 広告やコンテンツがユーザーに表示された回数を示す指標。広告が適切な集客対象に表示されているか、露出が十分かなど確認するために使われる。想定していた集客対象に高いインプレッション数を達成できているかどうかをチェックしよう。 |
| インプレッション単価 | 広告が任意の回数表示されることにかかるコストの指標。任意の期間における購入の頻度を表す指標。インプレッション単価を低く抑えることで、より多くの集客対象に広告を表示し、ROIを最大化することができる。逆にインプレッション単価が高ければ、「コストのわりに集客効果は低い」という判断ができる。 |
| リーチ数 | 広告やコンテンツがユニークなユーザーにどれだけ届いたかを示す指標。インプレッションとは異なり、特定のユーザーに1回でも表示された回数をカウントする。広告が届いた集客対象を、ユニーク数として把握できるため、集客の「範囲」に対する効果測定に用いられる。同じコストでもリーチ数が高ければ、より高い認知拡大効果が得られていることになる。 |
| 検索順位 | 特定のキーワードで検索した際に、自社サイト・メディアのページが表示される順位を示す指標。「検索順位が高い=検索意図に対する合致度や情報の質が高い」と判断できる。集客対象の検索意図に沿った適切な情報を提供できているかのチェックに使用する。 |
2.2.オフライン集客の効果測定方法
続いて、インターネットを活用したオフライン集客の効果測定について見ていこう。
BtoBにおけるオフラインの主な集客方法は「イベント」「セミナー」「展示会」である。
オフラインのセミナーや展示会は、IT業界において長らく「王道」として活用されてきたチャネルである。
特に展示会は、製品の特長を直接伝えられるため、意思決定層に強力なアプローチが可能だ。
さらに、来場者予定数やブース規模・会期日数をもとに名刺獲得目標を数値化することで、費用対効果を事前に算出しやすいというメリットもある。
ただし、来場者の多くは情報収集段階にあり、ある程度、導入が半年〜1年以上先になるケースも多い。
会社の名刺交換後はメルマガやウェビナー招待によるナーチャリングが必須となる。
営業部門との連携を前提に、来場直後のフォロー体制を整えておくことが成果を左右する。
これらは、下記のような測定方法が有効だ。
| 測定項目 | 指標 |
| リード情報 |
|
| 確度の精査(質の判断) |
|
| コンバージョン率 |
|
リード化が可能な情報の数
端的に言えば「名刺情報の数」だ。
ただし競合他社の名刺情報は除外してカウントする。
展示会やイベントで獲得した名刺情報は、MAやCRMに取り込んでリード情報に転換できる。
したがって、名刺情報の数は集客効果を測るもっともわかりやすい指標といえる。
問い合わせ数や商談数と併せて注視していこう。
確度の精査
オフライン集客は、オンラインよりもリードの質を判断しやすい。
対面で密度の高い情報交換を行うため、確度が高いリードを判別しやすいのだ。
ただし定量化という点では弱い。
この点を補うために、アテンドメモや商談メモ、参加者アンケートなどを常に作成するようにし、その内容から定量化につなげていこう。
具体的には、顧客対応者に主要な項目を記載したフォーマットを配布し、相手方に記載してもらう。
選択形式のテンプレートにしておけば、あとからNPSやCSATのように定量化することも可能だ。
コンバージョン率
オフライン集客のコンバージョン率は計測が難しい。
しかし、営業と連携し、データを残す仕組みができていれば、信頼性の高い数値が出せる。
BtoBでは、オフラインも含めた集客経路ごとにトライアルへの申込やサービス説明会などのコンバージョン地点を設置しておくことがおすすめだ。
集客経路ごとCV率を確認することで、各集客施策の効果を定量的に把握し、リソース配分を最適化できる。
2.3 オンラインとオフライン、どちらに投資すべき?
結論から言えば、IT企業はオンラインを中心に据えつつ、オフラインを戦略的に組み合わせるのが最も効果的である。
両者は特徴や用途が異なる集客手法であり、2025年現在も市場や業種、ターゲット層の性別や年齢、店舗形態などに応じて投資配分を明確にすることが重要だ。
・オンライン施策の魅力と拡大傾向
オンライン集客(SEO・SNS・メルマガ・リスティング広告・バナー広告など)は、予算を抑えつつ幅広い層にアプローチできる。
特に検索エンジンや公式アカウントを通じた情報発信は、購買意欲がまだ顕在化していない潜在層にも届きやすい。
GoogleやSNS広告を活用すれば、表示内容や掲載場所を細かく調整できる機能も豊富で、キャンペーンやクーポンを組み合わせた導線づくりも可能である。
また、メールやダイレクトメール(DM)、プレスリリース、インターネット広告を組み合わせることで、拡散性を高め、リピーター獲得や新規開拓にもつながる。
さらに、参加登録や資料ダウンロードの際に属性データを集められるため、社内のCRMで管理・分析しやすく、改善サイクルを回す際の参考データとして使えるのも魅力だ。
・オフライン施策の強みと投資判断
一方で、展示会・セミナー・店舗イベントといったオフライン集客は、意思決定層との対面コミュニケーションを深められる点が強みである。
来場者と直接対話することで、商品やサービスの具体的な体験を提供でき、ブランドイメージを強くアピールできる。
看板・ポスター・雑誌・新聞といった媒体も依然として一定の信頼を持ち、場所や会場でのリアルな印象形成はオンラインでは得にくい効果を発揮する。
ただし、出展費用や会場準備の労力は高いため、予算やROI(費用対効果)の見積もりを徹底することが大切だ。
展示会では名刺交換や商談の場を確実に設け、セールス部門と連携して商談化率を高める仕組みを構築することが求められる。
・ハイブリッド戦略の実行ポイント
「新規顧客の母数を増やしたい」「効率的に広い層へ届けたい」場合はオンラインへの投資が適している。
逆に「成約確度の高いリードを獲得したい」「対面での信頼関係を築きたい」場合はオフラインを選ぶべきだ。
効果的な戦略は、オンラインで広く集めたリードをナーチャリングし、オフラインで意思決定層を後押しするハイブリッド戦略である。
このとき、リードの種類や状態に合わせて選び方を明確にし、配信タイミングや案内メールの内容を工夫することが重要だ。
さらに、成功事例を社内で共有したり、定期的に取り組むことで施策の精度を高め、長期的なブランド構築や顧客満足度向上へとつなげることができる。
3. IT業界の効果的な集客方法
IT業界では集客の方法が多様化しており、オンライン・オフライン双方でさまざまな手法が用いられている。
その中でもウェビナーは比較的新しく、コロナ禍を機に急速に拡大し、現在も継続的に活用されているのがウェビナーである。
集客効果の高い集客方法い選択肢のひとつであり、いろいろな施策と並行して実施する価値がある。
3.1 ウェビナーは低コストで効果的に実施できる
ウェビナーは、広告や展示会と比べて低コストで開催できる点が大きなメリットである。
特にIT企業やSaaS事業者にとっては、専門的な知識・新製品開発のデモ・導入事例紹介・ノウハウ発信といったテーマと相性が良く、幅広いターゲット層に効率的にリーチできる。
現在では、Webサイトやホームページ、ランディングページと組み合わせた導線設計が重要で、Google検索やSNSに掲載する告知を通じて認知度を高める施策が主流だ。
最新の成功事例では、動画配信とテキスト資料を組み合わせることで、参加者にとって理解が深まりやすい「体験型コンテンツ」をきっかけとして提供し、参加率が大きく向上している。
さらに、開催時の工夫として、参加登録フォームに特典やクーポンを提示したり、来店予約や商品紹介に直結するリンクを表示するなど、参加者が「もらえる」「得られる」と感じる仕掛けが効果的だ。
3.2 外部委託や共催で社内リソースを抑えられる
「毎回の企画や運営に手間がかかるのでは?」という懸念に対しては、外部委託や共催パートナーの活用が有効である。
配信環境の構築、動画や画像デザインの制作、プレスリリースやDM(ダイレクトメール)配信などを外部に依頼すれば、社内は限られたリソースでも継続的に届けることができる。
たとえば2025年現在、多くのIT企業が外部の専門ベンダーと共催する形式を選んでいる。
共催では顧客リストの共有や広告出稿費の分担が可能で、費用対効果を大きく発揮できる。
また、社内では最低限の体制を確保しつつ、相手企業とのつながりを強化できるため、ブランディングや認知拡大にも直結する。
体制例としては、社内担当者はテーマ選定と内容調整に注力し、外部は配信機能の管理や参加者データの整理を担うなど、役割を明確に分けると効率的だ。
体制の例を以下に示す。
| 領域 | 主担当 | 外部の活用方法 |
| 戦略・優先テーマの設計 | 社内(+外部伴走) | 戦略フレームや優先軸の整理支援・設計パートナー |
| コンテンツ設計・制作 | 外部(+社内監修) | ITに強い外部パートナーによる制作 |
| 運用・改善 | 外部代行+社内確認 | MA・メール・レポート設計支援 |
限られたリソースで運用・改善まで回せるよう、社内と外部を組み合わせたハイブリッド体制がおすすめだ。
3.3 録画コンテンツを二次利用して「資産化」する
ウェビナーは単発で終わらせるのではなく、録画コンテンツをアーカイブ化しオンデマンド配信することで長期的な資産に変えられる。
この手法は、短期的な宣伝ではなく中長期的なリード獲得につながりやすく、認知度やブランドイメージを高める。
また、過去の録画を組み合わせて一覧ページや特集サイトを作り、カテゴリー別に表示することで、読者が興味を持つ内容を探しやすくなる。
これにより、定期的に更新する記事や資料として再利用でき、Web上での検索順位や掲載順位を上げるSEO効果も期待できる。
さらに、参加者に「参考になる内容を繰り返し見られる」という印象を与えられるため、リピーターやファンの口コミによる拡大にもつながる。
3.4 参加者データを営業・マーケティングに活用可能
展示会では名刺交換が主なデータ源となるが、ウェビナーでは視聴時間・アンケート回答・クリックデータ・資料ダウンロード履歴といった詳細なアカウントの行動データが得られる。
これらをCRMやMAに取り込み、営業やマーケティング施策に連携すれば、より正確にターゲットを絞ったテレアポなどのアプローチが可能だ。
たとえば、参加者が動画を途中で離脱した時間や、資料をもらい受けたタイミングを把握することで、商談化しやすい層を特定できる。
また、参加者が抱えるニーズに合わせて、ダイレクトメールや定期的なニュースレターを送付することで、顧客満足度を高めリピートや来店促進につながる。
こうしたデータ活用の手順を体系化すれば、営業部門とマーケティング部門の連携も強化できる。
社内全体で施策を繰り返し改善することで、費用対効果の高い運営サイクルを構築できる。
4.集客効果を高めるポイント5つ
最後に、集客の効果を高めるために押さえておくべきポイントを5つ解説する。

- KPIの設定
- ツールの使用と継続的なデータ収集
- 定性データの活用
- セールスとの連携
- カスタマーサポートとの連携
それぞれ見ていこう。
ポイント1.KPIの設定
集客効果を高めるためには、適切な指標(KPI)の設定が必須だ。
前述のとおり、集客の目的によって注視すべきKPIは決まる。
特にオンラインの集客ではすぐにデータを収集できるため、KPIに対する理解が浅いと誤った効果測定につながってしまう。
KPIを常にモニタリングすることは当然として、「その項目の増減が何を意味するか」についてもしっかりと理解を深めておこう。
BtoBの集客基盤としては欠かせないオウンドメディアのKPIに関しては、こちらでも解説している。
ポイント2.ツールの使用と継続的なデータ収集
集客効果の測定には、GA4などのデジタルツールを用いることが大前提だ。
近年は無料・有料かかわらず、さまざまなツールで定量的なデータを収集できる。
また、複数のツールを組み合わせ、自社の戦略に応じて「システム化」しておくことで、継続的なデータ収集が効率的に行える。
そのためには、どのツールでどのようなデータが得られるのかを把握しておく必要があるだろう。
以下は、集客効果の測定に役立つツールと、得られるデータの一例だ。
| ツール | 得られるデータ |
| Google Analytics | 集客対象がどの経路から訪問し、どのコンテンツが効果的かを分析する。集客チャネルごとのパフォーマンスを評価し、最適化を行う。
|
| Google Ads | 集客の効果をリアルタイムでモニタリングし、ターゲティングや予算の調整を行う。異なる経路での集客パフォーマンスを比較し、最も効果的な経路に集中する。
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| MA(マーケティングオートメーション)ツール | 各集客経路からのリードがどれだけの価値をもたらしているかを測定し、リソース配分を最適化する。
|
ポイント3.定性データの活用
定性データの活用は難易度が高いが、AIを活用することで集客効果の改善に活用できる。
例えば、アテンドメモや商談メモ、アンケートの自由記述欄に記述された内容を、AI(チャットGPTなど)に投入してみよう。
AIにKJ法を使ったグルーピングや因果関係の分析、仮説の立案を命令すると、定性データの内容から有益なデータを作成してくれる。
数値化は難しいが、セミナーや展示会参加者の全体的な感想の傾向やパターンが見えるため、次の集客施策に活かしやすい。
もちろん、AIからのアウトプットは人の目で確認し、分析やグルーピングの内容が不自然でないか確認しよう。
ポイント4.セールスとの連携

集客は、セールスとの共同作業だ。
具体的には、上の図のように「集客活動から創出されたMQLが、TQLやSALにどの程度転換されたか」をチェックしよう。
もしTQLやSALへの転換率が低ければ、そもそもの集客戦略におけるターゲティングや施策の内容が適切ではないおそれがある。
セールスからのフィードバックを繰り返し取得しながら、集客の質を高めていこう。
ポイント5.カスタマーサポートと連携
SaaSのように継続率が重視される商材では、カスタマーサポートとの連携も重視したい。
カスタマーサポートには、集客対象が感じている価値や使用用途、改善要望などさまざまな情報が集まる。
これらを集客のメッセージに盛り込むことで、訴求点のブラッシュアップが進む。
集客とカスタマーサポートは対極に位置するように見えるが、「カスタマーサクセス(顧客の成功)」という点では同一の視点を持つ。
カスタマーサクセスには、顧客が抱える課題・痛み・悩みの解決が含まれるからだ。
カスタマーサクセスと連動した集客メッセージを常に意識することで、効果を高めることができる。
5.まとめ
ここでは、BtoBビジネスにおける集客の効果測定について、重要性や実践ポイントを解説してきた。
BtoBの集客は対象が限定されているため、「集客対象の質」にこだわり、短期間で成果を出すのではなく、長期的な視点で精度を高めていく必要がある。
その際には、定量データと定性データの両方を使い分け、同じ目標を持つ営業やカスタマーサポートと連携することが良い結果を促す要素となる。
例えば、電話でのフォローやメール配信、バナー広告、facebook広告、ディスプレイ広告を活用したリアルタイムな拡散施策など、オンラインとオフラインの違いを理解した上で構成を組み立てていくことが重要だ。
また、BtoBであっても飲食店や小売業界のように顧客接点が多い業種の成功事例から学べる点は多い。
PR施策や公式のプレゼントキャンペーン、ニュース配信を組み合わせることで、フォロワーやリピーターを増やすことができる。
さらに、集客の使い方や導線設計をガイド化してステップを仕組み化することで、初心者や新任の担当者でも実行できる体制を作ることが望ましい。
集客施策は「一つの施策で終わり」ではなく、複数の要素を組み合わせて最初の計画から改善を続けていくことがゴールへの近道となる。
データを基盤にした効果測定と改善の積み重ねが、BtoB集客の信頼性と収益向上を確実に実現するだろう。
