コンテンツマーケティングのメリットとデメリット|IT企業が取り組むべき理由を解説

IT企業やSaaS事業者のマーケティング担当者、経営層の方にとって、コンテンツマーケティングをどう活用すべきかは重要な課題である。

以下のような悩みや課題を抱える方が多いのではないだろうか。

「コンテンツマーケティングの費用対効果はどうなのだろうか」

「広告費と比べて本当に安く始められるのか?」

他のwebマーケティング施策との使い分けが分からない

コンテンツマーケティングは、Web広告に比べて低コストで着手できるイメージがある。

確かに、少額の予算から始められSEOやSNSを通じて長期的にリードを獲得できる特性を持つのはコンテンツマーケティングのメリットだ。

しかし、実際には状況に応じた広告との使い分けや継続的に情報発信を行う体制の構築など、成果を出すにはいくつかのポイントとコツを押さえる必要がある。

その使い分けを適切に行うには、施策のメリット・デメリット・使いどころを把握しておく必要がある。

この記事では、コンテンツマーケティングの主なメリットやデメリット、広告や他の施策との比較、企業が成果を上げるための実践ポイント、投資対効果を高める方法を考慮した使いどころについて解説していきたい。

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1.コンテンツマーケティングのメリット・デメリットと課題

近年の調査では、営業接触前に買い手の検討が7割完了しているとされる。

つまり、営業がアプローチする時点ではすでに候補が絞られているのだ。

BtoBの購買プロセス

その背景には、情報収集行動のデジタル化がある。

顧客はGoogle検索や比較サイト、YouTube解説動画、セミナー資料などを通じて自ら情報を集めることが当たり前になっており、営業の役割は「最後の後押し」にシフトしている。

ERPやクラウドPBXといったBtoB商材でも、導入担当者は営業に会う前に「選定基準」や「費用感」を把握しているのが現実だ。

 だからこそ、検討プロセスに先回りして顧客の関心に応えるコンテンツが必要になる。

ここで注意したいのは、コンテンツマーケティングを単発施策(点)として実行しても十分に機能しないという点である。

各施策がバラバラに動いてしまえば、集客や商談につながる導線が欠けてしまう。

SEO記事を書いてもホワイトペーパーやメルマガにつながらなければ、リードは途中で途切れてしまうのだ。

そのため、点を線に、線を面に広げる全体設計の視点が不可欠である。

詳しくは以下の記事で整理しているので、先に確認したい方はぜひ参考にしてほしい。

マーケティング施策がバラバラで終わらないために:売上につながる全体設計・構造化の考え方

本記事ではまずはじめに、コンテンツマーケティングのメリットとデメリットを把握していこう。

1.1.コンテンツマーケティングのメリット

コンテンツマーケティングの主なメリットは、以下の7つだ。

コンテンツマーケティングのメリット

  • コストパフォーマンスが良い
  • コンテンツが自社の資産になる
  • 潜在層から明確層まで広範囲な訴求力
  • SEOによるオーガニック流入増加
  • ナーチャリング(信頼関係構築)
  • ブランドの認知度と専門性向上
  • マルチチャネルによる効率化

それぞれみていこう。

メリット1.コストパフォーマンスが良い

コンテンツマーケティングは、しっかりと機能すればコストパフォーマンスの高いWebマーケティング施策である。

初期コストが高いインターネット広告とは異なり、月々数万円程度の少額から継続的に情報発信を始められるからだ。

したがって、ROI(Return On Investment=投資利益率)というKPI指標の面でいえばリスティング広告などのインターネット広告よりも優れた施策といえるだろう。

もちろん、成果をどれだけ得られるかにもよるが「検索経由の自然流入の持続性」「リードのナーチャリングの効果」「顧客とのタッチポイント増加」などを含めると、その効果は決して広告に引けを取らない。

特に、SEOと質(内容の濃さ、有益性)を両立したコンテンツは、Webサイト訪問者やSNS経由の流入ユーザーとの接点を、中長期にわたって維持・拡大し、見込み客との接点になる

また、制作したコンテンツは、ブログ形式からウェビナー資料、ホワイトペーパー、メールマガジンなどと形を変えながら再利用でき、複数のチャネルからのリード獲得やコンバージョン向上にもつながる。

無料で掲載可能なメディアも多く、広告のように出稿停止=効果ゼロというわけではない。

初期コストの低さのみが強調されがちだが、実際には「再利用性」や「継続性」の面でも、費用対効果に優れたマーケティング手法といえるだろう。

メリット2.コンテンツが自社の資産になる

コンテンツマーケティングは、複数のコンテンツを積み上げながら行う「ストック型のWebマーケティング施策」である。

「ストック型の施策」とは、コンテンツを継続的に制作・公開し、それを蓄積していくアプローチであり、一度制作したコンテンツは将来にわたって活用される。

例えば、専門的なノウハウや知識を共有するブログ記事は、サイトに公開することで長期間にわたって読まれるようになるだろう。

また、メールマーケティングや広告、ウェビナーへの利活用など、幅広いマーケティング施策に活用可能だ。

つまり、蓄積されたコンテンツは時間の経過とともに自社の価値を拡散する「デジタル資産」となる。

そのほか、コンテンツマーケティングは以下のような効果も期待できる。

  • 専門領域で信頼を獲得した結果、優良顧客との出会いにつながる
  • サイテーション(言及、引用)やシェアが増えて権威性が増す

BtoBでは特に後者の効果が大きいことから、検索上位表示のみに捉われない施策として活用されている。

メリット3.広範囲に訴求できる

認知段階から意思決定段階に至るまで、顧客の購買ステージ(カスタマージャーニー)に応じたアプローチが可能である点も、コンテンツマーケティングの大きな強みだ。

例えば、まだ課題が明確でない潜在層には、話題性や初心者向けの入門記事・SNS投稿などで「気づき」を促すコンテンツが有効だ。

一方で、明確層(購入検討フェーズ)には、実績紹介・商品比較表・導入事例・料金ページへのリンク・FAQなどの具体的な情報が重要になる。

このように、記事や資料・動画などの発信内容を「ペルソナ」と「検索キーワード」に合わせて段階的に設計することで、各フェーズのニーズに合った情報提供が可能となり、コンバージョンや営業成約にもつながりやすくなる。

広告でもこうしたチューニングは可能だが、コンテンツマーケティングほど精彩かつ濃密なアピールはできないため「信頼形成」や「価値提供」を含んだ深いコミュニケーションは難しい。

メリット4. SEOによるオーガニック流入増加

検索エンジンに評価される記事やホワイトペーパーは、広告費をかけなくても安定した流入を生み出す。

特にIT商材の検討段階では「比較」「導入事例」「費用感」といったキーワード検索が多く、これらを押さえたコンテンツは新規リード獲得に直結する。

広告停止後にゼロになるリスティングとは異なり、SEO効果は長期的に残り続ける点が強みである。

メリット5. ナーチャリング(信頼関係構築)

一度で成約に至らないBtoB商材では、リードとの中長期的な接点が欠かせない。

記事・メルマガ・ウェビナー資料といったコンテンツを継続的に提供することで、「自社から学べる」体験を積み重ね、信頼形成につながる。

SaaS企業の多くが、休眠リードを掘り起こす際にコンテンツ配信を軸にしているのもこのためである。

リード育成の本質

メリット6. ブランドの認知度と専門性向上

コンテンツを継続発信する企業は「業界をリードする専門家」として認知されやすくなる。

たとえばERPの技術解説やクラウドPBXの導入事例などは、検索ユーザーだけでなくSNSやセミナーで二次利用され、企業ブランドを強化する副次効果も生む。

メリット7. マルチチャネルによる効率化

制作した記事や資料は、ブログ・SNS・セミナー資料・動画・メールマガジンと複数の媒体に再利用できる。

これにより、チャネルごとにゼロから制作する手間を削減しながら、幅広い接点を獲得できる。

1.2.コンテンツマーケティングのデメリット

適切なリスク回避のため、コンテンツマーケティングのデメリットを把握しておくことも重要だ。

コンテンツマーケティングのデメリットとして、以下の3つが挙げられる。

コンテンツマーケティングのデメリット

  • 即効性が低い
  • コンテンツ制作やSEOのノウハウが必要
  • コンテンツの質によって効率が変わる

それぞれみていこう。

デメリット1:即効性が低い

検索ボリュームや競合コンテンツの質にもよるが、一般的にコンテンツマーケティングの効果があらわれるまでには数か月以上の時間を要する

実際に海外のSEO対策企業の調査において、検索上位コンテンツは公開から平均1年以上経過しているとの結果が出ている。

さらに、BtoBの場合は顧客企業の「態度変容」に時間がかかることも覚えておいてほしい。

特にBtoBにおいては、CV(コンバージョン)や商談に至るまでのステップが多く、社内稟議など複数のステークホルダーが関与する。

このため、顕在層を含めた「態度変容」のプロセスに時間がかかるという背景がある。

もし「リード獲得」が今すぐ達成したいKPIなど短期的な最重要ミッションの場合は、コンテンツマーケティングの取り組みだけでは不十分かもしれない

この場合は、リスティング広告やSNS広告、動画配信などのほかの施策も検討すべきだろう。

施策別のリード獲得難易度や費用の比較は、こちらの記事を参考にしてほしい。

リードジェネレーションとは?手法の選び方と課題対策・成果の測定方法を紹介

デメリット2.コンテンツ制作やSEOのノウハウが必要である

コンテンツ制作には戦略設計・発信手順・編集体制の整備など、多くの専門的ノウハウと社内体制構築の工数が必要だ。

特にBtoBのコンテンツマーケティングでは、専門性の高いニッチなロングテールキーワードを狙い、専門性や権威性、信頼感を高めていく。

BtoCのように知名度に比例して優良顧客との出会いが生まれるわけではなく、長期目線でのパートナーと出会う必要があるからだ。

ロングテールキーワードをテーマにしつつ、質の良いコンテンツを制作するためには、業界知識・製品知識・基礎技術に関する知識やノウハウが求められる。

記事コンテンツで検索流入の増加を目指すなら、SEOの細かい知識も必須だ。

また、ライター陣や編集ユニットの確保など、体制面の整備、マネジメントスキルも欠かせない。

近年では、社内にコンテンツ制作・編集チームを持つ企業も増えてきたが、ノウハウや人材獲得に要するコストの面から、まだまだ一般的とはいえないのが実情だ。

デメリット3.質の差が成果に直結

コンテンツの質によって効果が大きく変わることもデメリットだ。

単に数を増やして投稿・掲載しても、オリジナリティや専門性が伴わなければ、SEOにもユーザーにも評価されず、KPI未達やCV率の低下につながる可能性がある。

信頼性は「人」が判断するものであることから、低品質なコンテンツは実務担当者に評価されず、未来のパートナー企業を遠ざけてしまうだろう。

裏を返せば、質の良いコンテンツであれば、広告よりもはるかに小さなコストで良質なパートナーを引き寄せられる可能性がある

コンテンツマーケティングは広告よりも安定した効果が見込めると思われがちだが、実際にはコンテンツの質によって大きな差が生まれることを覚えておいてほしい。

1.3.コンテンツマーケティングのよくある課題

多くの企業がコンテンツマーケティングに取り組みたい。

という意識は持っているが、実際に実行へ移そうとすると、以下のような悩みをよく耳にする。

「どこから手をつけてよいかわからない」

「一度始めても継続的に回せない」

“やるべきことは分かっているのに進まない”状態には、共通する構造的な理由がある。

単なるリソース不足ではなく、施策そのものが止まってしまう仕組み的な課題が潜んでいるのである。

その「動けない構造」を整理し、なぜ多くの企業でコンテンツマーケティングが途中で失速するのか、その背景を3つの課題にわけて解説していく。

課題① リソース不足

コンテンツ制作は、記事企画・ライティング・デザイン・配信など多くの工程が必要である。

しかし営業や開発が多忙で、マーケティング専任リソースを十分に割けない企業は多い。

その結果、更新が止まり、成果が出る前に取り組みが失速するリスクがある。

よくある課題としては以下のような状況が挙げられる。

課題 状況
マーケ担当者が業務に追われてリード育成に時間を割けない 展示会・広告・広報などの業務による短期施策が優先され、中長期的なナーチャリング施策の検討や実行まで手が回らない
専門的な内容を扱うため、マーケだけでコンテンツ制作を完結させることが難しい 技術領域は専門的な内容で、マーケだけでは判断が難しく、他部門との調整に時間がかかる技術部門は既存案件で忙しく、コンテンツ制作に手を動かしづらい
外注を検討してもIT領域に強い会社が少ない 品質への懸念から発注をためらい、結果として施策が進まないまま時間だけが経過する

リソース不足とは、単なる人手の問題だけではなく、専門性・体制・実行力のいずれかが欠けている構造的な課題とも言える。

課題② プロセス設計が仕組み化できていない

単発の記事公開やイベント実施だけでは、リード獲得や商談には結びつかない。

SEO記事からホワイトペーパーDL、メルマガ配信、ウェビナー、営業接続といった一連のプロセスを設計しなければ、せっかくのアクセスも成果に変換できない。

よくある失敗パターン

課題③ 商材・部門が複雑

特に大手企業などで多くの商材を扱う場合や部門が多岐に渡る場合には、「誰に向けたコンテンツか」が曖昧になりやすい。

ERPや基幹システムのようなIT商材は、複数部門や役職が意思決定に関わるため、誰に向けて何を伝えるかが不明確になりやすい。

営業は商談、開発は機能、経営層はROIを重視するなど視点がずれると、内容が浅く広いだけで刺さらないコンテンツになる。

よくある課題としては以下のような状況が挙げられる。

課題 状況
商材や部門が多く、全体設計を描くことが難しい 企業規模が大きいほど取り扱う製品・サービスが多くなり、全体の方向性を統括しづらい。
発信テーマやMAシナリオが分散 各部門から依頼ベースで施策が発生し、優先順位があいまいなまま並行して施策が進む。結果、メッセージが単発的になってしまう。
情報発信の優先順位が定まらない リソースは限られているのに、どこに注力すべきかを判断できない。結果、施策が停滞してしまう。

上記のような状況の場合、全体を俯瞰して優先順位を設計する視点が成果の分かれ目になるだろう。

2.コンテンツマーケティング成功のための注意点

上記で紹介したコンテンツマーケティングのメリット・デメリットを踏まえて、コンテンツマーケティングを実施する際のマーケティング戦略の注意点をみていこう。

注意点1.自社の価値と顧客ニーズを紐づける

BtoBのコンテンツマーケティングは、SEOの効果のみを狙うものではない。

また、コンテンツSEOに注力する場合であっても「質」が問われる時代になりつつある。

出現キーワード数や共起語の数はほとんど順位に関係しなくなった。

しかし、検索キーワードの抽出が無意味なわけではない。

キーワードは「どのようなユーザーが何を求めているか」「自社の価値をいつどのように提供すべきか」を知る良い機会であるからだ。

具体的には、

  1. 自社の事業やサービスの持つ価値や特徴を把握する
  2. ペルソナからキーワードを抽出し、自社のもつ価値や目的と紐づきそうなキーワードをピックアップする
  3. 自社価値の方針を意識してコンテンツを続けて制作・運用

といったステップが重要となる。

つまり、「お客様の課題解決」につながる情報発信でなければならないということだ。

検索キーワードやソーシャルメディア(twitterやinstagram)上のトレンドを分析することは、「誰に・何を・どの時に」届けるべきかを知る有効な手段だ。

こうしたプロセスを通じて、自社の強みを最適な形で市場に示し、ブランディングやエンゲージメントの向上を図ることができる。

注意点2.レッドオーシャン化への対応

最近はあらゆるチャネルでコンテンツが氾濫しており、同じテーマに多くの他社が取り組む、ランキングの競争、「レッドオーシャン」状態になりやすい傾向にある。

コンテンツマーケティングは、インターネット広告に比べると確かにコストパフォーマンスが良い。

ただしそれは「想定通りにリードを獲得できた場合」だ。

BtoBでもキーワード単位、検索クエリ単位で見るとレッドオーシャン化が進んでいる。

レッドオーシャン化が進むと流入量の変動が大きくなり、リード獲得量が落ちるおそれがある。

こうしたレッドオーシャン化の弊害を防ぐためには、単に更新頻度を上げるだけではなく、

  • 定期的なコンテンツ配信のルートを多様化させ、トータルの流入量を維持する
  • 種類の異なるチャネルを組合せ、直接・間接両方のリーチを拡大する
  • キャンペーンやダウンロード資料など、参加しやすく気軽な接点を作る

などの戦略的な視点が必須となる。

これにより、リピーターやファンを増やし、最終的に安定した成果へつなげられる。

注意点3.「ありきたりな情報発信」を避ける

海外ではここ数年「コンテンツスパム」が問題視されている。

コンテンツスパムとは「ある程度の質はあるが、オリジナリティや新しい知見がない記事」のこと。

現在の検索エンジンのアルゴリズムでは、特に目新しい情報が含まれていなくても「害」とみなされない程度の質があれば、それなりに上位表示される。

これは、特にBtoCで問題視された現象だが、近年ではBtoBでも同じ傾向が見られる。

とはいえ、内容の濃さだけに注力すると検索エンジンから評価されずにコンテンツスパムに埋もれるリスクもある。

「ありきたりな記事」を量産すると読者に魅力を感じてもらえず、再訪問も期待できない。

特にBtoBでは、専門的で深みのある情報と、意思決定層にも伝わるわかりやすさの両立が不可欠だ。

そこで重要なのは「ニーズを的確に捉えた質の高い情報」にどう誘導するかだ。

具体的には以下のような内容を意識したコンテンツ制作を進めていこう。

  • 成功事例やデータに基づいたコンテンツを提示する
  • AIや最新トレンドに触れつつ、自社ならではの視点を加える
  • 社内の研究結果など、信頼できる情報源を引用する

これにより、直接的で有益な知識を提供でき、流入増加も期待できる。

詳しくはこちらの記事も参考にしてほしい。

SEOとコンテンツマーケティングの違いとは?活用法まで徹底解説

注意点4.ビッグワード・テーマをメインにしない

デメリットの部分でも少し触れたが、BtoBのコンテンツマーケティングではビッグワードだけをターゲットにすべきではない。

なぜなら、BtoBに属する企業は、DMU(購買ユニット)が常に購買をチェックしており、BtoCのように「知名度が高い=良い製品だろう」という単純な理論が働かないからだ。

ビッグワードで露出を狙うことも大切だが、それ以上にDMUを納得させるコンテンツを制作する必要がある

DMUは業界知識や製品知識をもつ人材であり、ビッグワードよりも細かく正確な情報を求めている

つまり「ロングテールに属するニッチなキーワード」でリサーチしている可能性が高い。

また、DMUを納得させるコンテンツは、ジャーニーやペルソナをしっかりと設計しなければ制作できない。

逆をいえば、ジャーニーやペルソナが精密になるほどキーワードはニッチになってくる。

ペルソナ別に見るキーワードの例

ペルソナの内容 推測されるキーワード
ペルソナA
  • 30代男性
  • 事業会社に属する社内SE
  • セキュリティ対策が主な職務
セキュリティ対策 ツール
(月間検索ボリューム 1300)
ペルソナB
  • 30代男性
  • 事業会社に属する社内SE
  • セキュリティ対策が主な職務
  • APIを用いた仕組みが多いことから、APIセキュリティに関する対策を任されている
APIセキュリティ 対策
(月間検索ボリューム 90)

ペルソナBではAよりも具体的に顧客像を設定しており、それに伴いキーワードもニッチになっている。

ニッチなロングテールキーワードはレッドオーシャン化しにくく、かつ専門的な知見が評価されやすい。

逆に「セキュリティ対策 ツール」のようなざっくりしたキーワードでは、APIセキュリティに関する専門的な知見がコンテンツスパムに埋もれてしまい、適正な評価を得られないリスクがある。

もちろんケースバイケースな側面はあるが、BtoBでは「切実なニーズに対して、的確に情報を届ける」ことが成果につながるため、ニッチなロングテールキーワードを積極的に狙うべきだろう。

注意点5.根拠・証拠を充実させる

高額取引が多いBtoBビジネスは、意思決定プロセスも大きいため、信頼を裏付ける「証明」が欠かせない。

徹底したデータ公開や成功事例の発信が効果的だ。

つまり、BtoCよりも取引金額が大きいBtoBでは、顧客側を納得させるための証明が必須といえる。

ここでいう証明とは「製品やサービスのスペック、機能」「スペックや機能を裏付ける数値」「過去の実績」「実績の中で確認できる具体的な効果」など。

これは、BtoCがメインのAmazonよりも、BtoBがメインのAlibabaのほうが製品ページの情報量が多いことからもわかるだろう。

単なる主張ではなく、事例やデータに裏付けられた情報発信を意識し、お客様に「この会社なら信頼できる」と感じてもらうことで、登録または採用といった具体的な行動へ進みやすくなる。

3.成果に繋げる実践ポイント

続いて、コンテンツマーケティングの弱点である「即効性の低さ」を克服するためのポイントを紹介していきたい。

前述したように、BtoBでは態度変容のスパンが長いことから、コンテンツを公開しても思うように反応が得られないことがある。

そのため、広告との組み合わせや、購買フェーズに応じた戦略的な設計が必要となる。

ここでは、成果につなげるための5つの実践ポイントを紹介する。

ポイント1.商材・テーマの優先順位を決める

まずは「どの商材を優先するか」を決め、発信テーマを明確にすることが第一歩である。

単純に「売りたい商材」ではなく、顧客の課題や関心軸に沿って優先順位を設計する必要がある。

特に複数商材を扱う場合は、顧客属性や購買フェーズを掛け合わせて整理しないと、配信が分散して成果が出にくい。

そのためには、ペルソナを購買フェーズレベルで整理する必要がある。

ペルソナ設計は、属人的なイメージだけで行うと精度がぶれやすい。

以下のような「ペルソナ作成テンプレート」を利用すると、誰もが同じ基準でペルソナ像を共有できる状態をつくることができるため、ぜひ活用してほしい。

ペルソナ「企業属性×担当者」の例
ペルソナ設計シート「企業属性×担当者」の例

さらに、ペルソナを「購買フェーズ」の各段階に応じて設計しよう。

ペルソナ「企業属性×担当者×フェーズ」の例
ペルソナ設計シート「企業属性×担当者×フェーズ」の例

「認知」「興味・関心」「比較・検討」といった購買フェーズに対応づけて、ペルソナをより具体化することが重要だ。各フェーズに適切な情報提供が可能となる。

ポイント2.購買フェーズ別のコンテンツ設計

顧客は「課題認知前→課題認知→解決策収集→比較検討→意思決定」と段階的に進む。

それぞれのフェーズに合わせ、トレンド記事や用語解説(認知)/比較ガイドや事例(検討)/ROI解説や稟議サポート資料(決定)といった形で、必要な情報を段階的に提供することが重要だ。

コンテンツマップ

ポイント3.通常配信とナーチャリング配信の使い分け

メール配信は「関係構築」と「関係深化」に分けて考えるとよい。

通常配信(関係構築):定期的にトレンドや新規コンテンツを発信し、顧客に役立つ存在として認知される。休眠顧客の掘り起こしにも有効。

ナーチャリング配信(関係深化):ホワイトペーパーDLやウェビナー参加などの強いアクションをした顧客に、関連ノウハウや事例、サービス情報を段階的に提供し、検討を促進する。

この二つを意識的に分けることで、効果的にリードを育成できる。

ポイント4.イベントを起点にしたプロセス設計

展示会やセミナー、ウェビナーといったイベントはリード獲得の起点となる。

重要なのは、イベント参加後にどのような流れでナーチャリングを行い、営業に接続するかを設計することだ。

ホワイトペーパー化や記事化、メールでの継続配信、インサイドセールスによるフォローなどを組み合わせ、単発で終わらないプロセスを作ることが成果の分かれ目となる。

・セミナー開催を起点とした設計フローの例
セミナー起点の設計フロー図

ポイント5.リード育成を止めない現実的な体制設計

理想はすべてを内製化することだが、多くのIT企業ではリソースが限られている。

その場合は「戦略や方向性は社内、制作や運用は外部パートナー」といったハイブリッド体制が現実的だ。

外部は“作業委託先”ではなく、専門性を補完する伴走者として位置づけると、長期的に成果を出しやすい。

外部体制は、以下のような社内と外注を柔軟に組み合わせるハイブリッド体制を取ると、ノウハウが社内に蓄積しやすく、今後の継続的な運用が可能になる。

領域 主担当 外部の活用方法
戦略・優先テーマの設計 社内(+外部伴走) 戦略フレームや優先軸の整理支援・設計パートナー
コンテンツ設計・制作 外部(+社内監修) ITに強い外部パートナーによる制作
運用・改善 外部代行+社内確認 MA・メール・レポート設計支援

4.コンテンツマーケティングの効果測定と改善

コンテンツマーケティングは、制作・配信して終わりではない。

成果を最大化するには、定量的な指標で効果を測定し、改善サイクルを継続的に回すことが不可欠である。

BtoB領域ではリード獲得から商談化、成約までのプロセスが長いため、適切なKPI設計とレポート活用が成果の分かれ目となる。

4.1 KPI設計(MQL、SQL、商談化率、CVR)

まず重要なのは、コンテンツマーケティングの効果を「どの指標で評価するか」を明確にすることだ。

  • MQL(Marketing Qualified Lead):ホワイトペーパーDLやセミナー参加など、マーケティング施策で獲得した見込み顧客
  • SQL(Sales Qualified Lead):営業がアプローチ可能と判断したリード
  • 商談化率:MQLからSQLに転換し、実際に商談へつながった割合
  • CVR(Conversion Rate):フォーム入力や資料請求といったアクションの発生率

これらを設計することで、単なるアクセス数やPV数ではなく、実際に売上につながるプロセスを可視化できる。

MQLとSQLを解説!リード判定の評価基準と売上向上のポイントを徹底解説!

4.2 ROIの測定

KPIに加え、投資対効果(ROI)の算出も重要だ。

広告と比べるとコンテンツマーケティングは中長期的な効果が強みだが、成果を数字で示さなければ社内稟議を通すのは難しい。

ROIを測る際は、制作コスト(外注費・人件費)+運用コストに対し、成約件数・売上貢献額を算出し、リスティング広告など他施策と比較する。

特にSaaSやクラウドサービスでは、LTV(顧客生涯価値)を加味したROIの評価が有効である。

・改善サイクルの回し方(PDCA/MAレポート活用)

効果測定の結果を基に、PDCAを定期的に回す仕組みが必要になる。

  • Plan(計画):KPI・テーマ・ターゲット設定
  • Do(実行):記事・ホワイトペーパー・セミナー施策の展開
  • Check(検証):MAやアナリティクスを活用し、CVR・商談化率をレポート化
  • Act(改善):テーマの見直しや導線設計を修正

特に、マーケティングオートメーション(MA)ツールを使えば、顧客の閲覧行動やメール開封率をトラッキングし、改善ポイントを具体的に把握できる。

コンテンツマーケティングに関するツールは以下の記事でも詳しく解説している。

コンテンツマーケティングツールの選び方とおすすめの種類を解説

5.広告とコンテンツマーケティングの比較

最後に、インターネット広告とコンテンツマーケティングについて、労力や制作コスト、成果までのスピードなどを比較していこう。

インターネット広告とコンテンツマーケティングの比較表

インターネット広告とコンテンツマーケティングの比較表

比較項目1.コスト構造の違い

費用に関しては、インターネット広告のほうが高額となりやすい。

そもそもの製作単価が異なるうえに「成果連動型(クリック数やインプレッション数で金額が決まる)」が主流になっているため、効果とコストは正比例の関係にある。

一方、コンテンツマーケティングは、成果と費用が連動しないため、うまくいけば非常にコストパフォーマンスが良い施策となる。

比較項目2.スピードと持続力

ただし、コンテンツの数と質を両立させるための難易度が高く、効果が出るまでの時間も長い。

例えば「イニシャルコストをおさえてじっくりメディアを育てたい」のであれば、コンテンツマーケティングが向いているだろう。

しかし、時間短縮を望むのであれば、早い段階でインターネット広告の併用も検討すべきだ。

比較項目3.制作と運用の工数差

また、コンテンツマーケティングでもっとも労力を要するのは「ライター陣と編集ユニットの確保」であることから、この点を外注で賄う方法も視野に入れてみてほしい。

内製化は理想的な選択肢だが、コア人材のリソースを消費してしまうリスクもあるためだ。

6.まとめ

この記事では、コンテンツマーケティングのメリットとデメリット、注意点、活用ポイントや広告との比較を紹介してきた。

コンテンツマーケティングはコスパの良さや資産化といったメリットがある一方で、即効性の低さが問題視されている。

また、コンテンツSEOが行き過ぎることで、信頼性の低下を招くリスクもある。

限られた予算のなかで結果を出すためには、コンテンツマーケティングと広告をうまく使い分け、それぞれの利点が噛み合うように運用していくことが重要だ。

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監修者情報

野崎 晋平(btobマーケティングコンサルタント)

SIerにてERPの開発・導入を経験後、東証プライム上場企業の情報システム部門にてIT企画や全社プロジェクトを推進。情シス向けに個人で立ち上げたオウンドメディアは月間10万PVを達成。現在は、ITとマーケティングの知見を組み合わせて、IT企業向けにBtoBマーケティング支援を手がけている。

アイティベルのコンテンツマーケティング全体戦略設計は、
ディレクター・ライター全員がIT業界出身。

アイティベルは、コンテンツマーケティングの全体戦略設計を行っています。ペルソナ・カスタマージャーニー・チャネルを一気通貫で設計。顧客に「選ばれる」ための仕組みづくりを支援します。

このような課題にお応えします。

ぜひお気軽にご相談ください。