オウンドメディアのKPIとは?目的・フェーズごとに設定すべきKPIを解説

オウンドメディアのメリットを最大化させるためには「定量的な指標=KPI」を設け、定期的にパフォーマンスをチェックすることが重要だ。

しかし、オウンドメディアのKPIに関して「PV」以外の指標を持たないケースが意外に多い。

「PV(ページビュー)やSS(セッション)以外の指標が知りたい」
「運営開始当初から同じKPIを使っているが、適切に評価できているか不安だ」
「オウンドメディアを評価したいがどのようなKPIを設定すべきか分からない」

といった課題を抱えている人も多いだろう。

しかも、オウンドメディアのKPIを調べると山のような種類が出てくるため、非常に混乱しやすい。

そこで本記事では、オウンドメディアの一般的なKPIを解説したうえで、目的別やフェーズ別に設定すべきKPIについて解説していく。

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目次

1.オウンドメディアのKPIとは?

KPI(Key Performance Indicator)は、企業やプロジェクトの目標達成度を測るための定量的な指標だ。

オウンドメディアにおけるKPIは、運営方法や施策の成果を評価するために使われる。

KPIを使うことで、オウンドメディア運営の成果が可視化され、長期的な目標達成に向けた調整が可能になる。

オウンドメディアでよく使われるKPIとしては、PV(ページビュー)やセッション数(SS)がある。

アクセス数や訪問回数を示す指標だが、単独ではパフォーマンスを十分に評価することはできない。

たとえば、PVが多いからといって、必ずしもビジネス成果に直結するわけではない。

メディアのコンテンツが、ターゲットユーザーの関心を引き、リード獲得やコンバージョンに繋がったかを測定することが、本質的な成果を評価するための方法だ。

1-1.PVとSS以外のKPIも活用しよう

オウンドメディアのKPIは目的に応じた指標を選ぶべきだ。

たとえば、「認知拡大」を目的にした場合、PV数やユニークユーザー数(UU数)が重要となる。

一方で「リード獲得」や「商談化」を目指すのであれば、CVR(コンバージョン率)や再訪問率、フォーム通過率など、ユーザーの行動に基づいた指標が必要となる。

1-2.複数のKPIを連続的に監視する

オウンドメディアのKPIは、「どれだけ質の高いリードを生み出しているか」を見極めるために使う。

この点においては、複数のKPIを連続的に評価する方法も有効だ。

例えば、ブランディングを目的にした場合、初期段階ではPV数やUU数に注力し、認知度が進んだ中期以降は、ファン層の獲得や再来訪率、滞在時間などを注視する。

さらに、リード獲得や商談化を目的とする場合は、CVRや特定ページへの到達数、フォーム通過率など、ユーザーの行動に関わる指標を見ていくと良いだろう。

2.KPI設定に関する基礎知識

オウンドメディアのKPIを設定する際の基礎知識としては以下2点がある。

  • KGIの設定とKPIとの紐づけ
  • SMARTの原則

2-1. KGIの設定とKPIとの紐づけ

まず理解しておくべきは「KGI(Key Goal Indicator)」だ。

KGIは、「最終的な目標」を示す指標であり、オウンドメディア運営においても重要な役割を果たす。

オウンドメディアの場合、「売上目標」や「リード獲得数」、「商談化数」などがKGIに該当する。

これに対して、KPIはKGI達成の進捗を測る指標だ。

KGIを達成するためにどのKPIを追跡し、改善すべきかを決定していく。

KGIに連なるKPIを適切に設定することが、オウンドメディア運営の成功を導くカギとなる。

2-2.実現可能性を高める「SMARTの原則」

次に、オウンドメディアのKPI設定において特に重要なSMARTの原則を紹介する。

SMARTは、KPI設定に役立つフレームワークで、設定した目標が具体的で達成可能であることを保証する。

S(Specific): 具体的であること

例えば、「リード獲得数を増加させる」といった漠然とした目標ではなく、具体的な数値を設定することが重要だ。たとえば、「月間100件のリードを獲得する」などだ。

M(Measurable): 測定可能であること

設定したKPIが測定可能、つまり数値化されていれば、進捗を追いやすくなる。

A(Achievable): 現実的で達成可能であること

無理な目標設定は、チームの士気を低下させ、結果的に成果を出しにくくする。

R(Relevant): 関連性があること

目標は、ビジネスの本質的な目的に関連していなければならない。

たとえば、「売上アップ」や「リード獲得」など、オウンドメディアの目的に沿った目標を設定することが重要だ。

T(Time-bound): 期限が決まっていること

KPIには期限を設ける必要がある。

たとえば、「1ヶ月以内にCVRを5%向上させる」といった具体的な期間を設けることで、目標達成が促進される。

特にBtoBのオウンドメディアでは、「測定可能で達成可能な指標」を選定することが重要だ。

たとえば、リード獲得に関しては、1ヶ月ごとの新規リード数やコンバージョン率(CVR)を測定し、その進捗を定期的に確認する。

3.オウンドメディアのKPI設定手順

ここからは具体的なKPI設定の手順を見ていこう。

オウンドメディアのKPI設定は、以下の4ステップで行う。

  • KGIの設定(目標の明確化)
  • KPIの洗い出し(関連指標の選定)
  • KPIツリーの構築
  • SMARTによる妥当性チェック

3-1. KGIの設定(目標の明確化)

KPIにはそのゴールであるKGIがセットになる。

KGI=最終目標であるため、まずは自社のオウンドメディアの最終目標を整理し、その目標に合った指標を選定しよう。

一般的なオウンドメディアでは、ブランディング、リード獲得、売上向上などがKGIになるだろう。

たとえば「ブランド認知度を50%高める」「月間100件のリードを獲得する」といった目標を掲げる。

3-2. KPIの洗い出し(関連指標の選定)

KGIが決まったら、その達成に向けて追跡すべき指標を選定する。

例えば、認知度向上がKGIであれば、PVやユニークユーザー数(UU)、検索順位などが重要な指標となる。

リード獲得が目標であれば、CVRやフォーム通過率、メール開封率など、ユーザーの行動に基づいた指標を重視する。

これらをピックアップし、次の「KPIツリー」の構築に使用する。

3-3.KPIツリーの構築

KPIツリーは、メディアの大目標を達成するために必要なサブ目標や指標を階層的に整理したものだ。

このツリーを作成することで、各KPIがどのように上位目標に繋がるのかを明確にすることができる。

たとえば、「PV数」を最上位に位置付け、その下に「検索流入数」や「SNS経由の流入数」を配置し、その下に「記事数」や「コンテンツ更新頻度」などを段階的に配置する。

KPIツリーの構築

3-4.SMARTによる妥当性チェック

最後に、設定したKPIが戦術のSMARTに基づいているかを確認する。

目標が具体的で達成可能であるかや、設定した期限が適切かどうかを再確認し、現実的なKPIを選定しよう。

4.オウンドメディアの一般的なKPI

まず、オウンドメディアの一般的なKPIを解説する。

オウンドメディアは、「PV」や「検索順位」などが重視されがちだが、実はその他にもさまざまなKPIが活用できる。

ここでは、オウンドメディアの改善に役立つ12のKPIを紹介する。

KPI 内容
PV(ページビュー数) 訪問者がオウンドメディア内のページを閲覧した合計回数
記事数 オウンドメディア上で公開されているコンテンツの総数
UU(ユニークユーザー)数 特定の期間内にオウンドメディアを訪問した「異なる個人の総数」
SS(セッション)数 ユーザーがオウンドメディアに訪れてから離脱するまでを一つのセッションとしてカウントしたもの
オーガニック検索流入数 検索エンジン経由でオウンドメディアに訪れたユーザーの数を
CV(コンバージョン)数
CVR(コンバージョン率)
オウンドメディア訪問者が「フォーム入力」「問い合わせ」「メール登録」など、特定の目標を達成した回数・割合
平均検索順位 オウンドメディアのコンテンツの検索順位を平均化したもの
特定ページへの到達数 入力フォームやホワイトペーパーダウンロードページなど、成果につながるページに到達したユーザーの数
読了率 訪問者がコンテンツを最初から最後まで読んだ割合
回遊率 ユーザーがあるページから別のページへと移動する割合
再来訪率 過去にサイトを訪問したことのあるユーザーが再び訪問する割合
直帰率 オウンドメディアに訪れた後、他のページを閲覧せずに離脱するユーザーの割合

KPI1.PV(ページビュー)数

PV数は、訪問者がオウンドメディア内のページを閲覧した合計回数を指す。

この数値が高いほど、より多くのコンテンツが閲覧されていることを意味する。

ただし、同一ユーザーによる複数のページビューも含まれるため、実際の訪問者数よりも大きくなることに注意したい。後段で紹介するUU数やSS数と一緒に追跡しよう。

KPI2.記事数

記事数は、オウンドメディア上で公開されているコンテンツの総数を指す。

記事数=メディアの評価ではないものの、長期的にみると記事数に比例してPVや売上が増えていく。

KPI3.UU(ユニークユーザー)数

UU(ユニークユーザー)数は、特定の期間内にオウンドメディアを訪問した「異なる個人の総数」を指す。

オウンドメディアを訪問した「実人数」を把握できるため、認知拡大の程度を知ることが可能だ。

一般にアナリティクスツールが各訪問者の識別情報を使用してカウントする。

KPI4.SS(セッション)数

SS(セッション)数は、ユーザーがオウンドメディアに訪れてから離脱するまでを一つのセッションとしてカウントしたものだ。

一人のユーザーが複数回サイトを訪問すると、それぞれ異なるセッションとして記録される。

KPI5.オーガニック検索での流入数

オーガニック検索での流入数は、検索エンジン経由でオウンドメディアに訪れたユーザーの数を指す。

PVやUUと並んで、SEO(検索エンジン最適化)の効果を測定する重要な指標となる。

KPI6.CV(コンバージョン)数/CVR(コンバージョン率)

CV(コンバージョン)数は、オウンドメディア訪問者が「フォーム入力」「問い合わせ」「メール登録」など、特定の目標を達成した回数を指す。

また、CVR(コンバージョン率)は、訪問回数の中でどれだけをコンバージョンが発生したかを割合で示したものだ。

具体的には以下の計算式で算出できる。

CVR=CV数÷SS数×100

どちらも、オウンドメディアが目標に対してどの程度効果を出せているかを知るための指標だ。

コンバージョン率(CVR)の意味、目安、改善方法をわかりやすく解説

KPI7.平均検索順位

平均検索順位は、オウンドメディアのコンテンツの検索順位を平均化したものだ。

当然、上位に表示されるほど集客力があり、PVやUUも上昇しやすくなる。

KPI8.特定ページへの到達数

特定ページへの到達数は、入力フォームやホワイトペーパーダウンロードページなど、成果につながるページに到達したユーザーの数を表す。

目標とするページへの訪問者数を知ることで「導線設計に不備はないか」「ページ自体の訴求力」「キャンペーンの効果」などを知ることができる。

KPI9.読了率

読了率は、訪問者がコンテンツを最初から最後まで読んだ割合を指す。

高い読了率は、コンテンツの質が高く、ユーザーの関心を引きつけていることの証拠だ。

読了率は以下の式で算出できる。

読了率= 完全に読まれたページの数÷ページビュー数×100

KPI10.回遊率

回遊率は、ユーザーがあるページから別のページへと移動する割合を示している。

高い回遊率は、オウンドメディア内のコンテンツやナビゲーションが適切である証拠だ。

回遊率の計算方法は以下のとおり。

回遊率= 複数のページを訪れたセッション数÷総セッション数×100

KPI11.再来訪率

再来訪率は、過去にサイトを訪問したことのあるユーザーが再び訪問する割合だ。

この数値が高いと、ユーザーがオウンドメディアのコンテンツに対して、継続的な関心を持っていると推測される。

KPI12.直帰率

直帰率は、オウンドメディアに訪れた後、他のページを閲覧せずに離脱するユーザーの割合を指す。

直帰率が高い場合は、ニーズを捉えておらず、ユーザーが求める情報を提供できていないと考えられる。

また、デザインやUIに難点がある可能性も高い。直帰率は以下の式で計算できる。

直帰率=1ページのみを訪問してサイトを離れたセッション数÷総セッション数×100

直帰率とは?業界別の平均値、離脱率との違い、改善の実践ポイントを徹底解説

5.オウンドメディアの目的別|KPI設定方法

このように、オウンドメディアで考慮すべきKPIは多岐にわたる。

しかし、常に全てのKPIを常にチェックするのではなく、目的に沿って着目するものを変えることでより効果測定を精緻に行える。

オウンドメディアの目的として主に挙げられるものは以下だ。

  • ブランディング
  • エンゲージメントの強化
  • 集客
  • リード獲得
  • ナーチャリング
  • 売上への貢献(リード→顧客への転換)

それぞれの目的に応じたKPIを見ていこう。

目的1.ブランディング

ブランディングが目的のオウンドメディア運用では、以下のKPIに着目したい。

    • PV(ページビュー)数
    • UU(ユニークユーザー)数
    • SS(セッション)数
    • 直帰率
    • 平均滞在時間

ブランディングが成功しているかどうかは、認知拡大や興味関心の増加度合いで判断できる。

認知拡大が成功していれば「PV」や「UU」「SS」が全体的に右肩上がりになっているはずだ。

特に初期段階では、PVとUUの増え方に注目したい。

そのうえで、直帰率が低く、平均滞在時間が長くなっていれば、さらに興味関心が強まっていると判断できる。

目的2.エンゲージメントの強化

エンゲージメントの強化が目的の場合、ユーザーが「一歩踏み込んだ行動」をとっているかをチェックしたい。

よって、以下のようなKPIに着目したい。

  • 読了率
  • 回遊率
  • 再来訪
  • メルマガ登録数
  • 資料請求数

エンゲージメントの強化が成功すると、コンテンツを熱心に読み込んだり、複数のコンテンツに触れようとしたりするユーザーが出てくる。

つまり、読了率や回遊率の向上につながる。

その中の一定数が何度もオウンドメディアを訪れ、やがて「定期的な情報提供を得たい」「より詳しい情報を得たい」とメルマガ登録や資料請求に進んでいくわけだ。

目的3.集客

集客が目的の場合は、次の3つのKPIをチェックしよう。

  • PV(ページビュー)数
  • UU(ユニークユーザー)数
  • オーガニック検索流入数

初期段階で最も重要なKPIは「オーガニック検索での流入数」だ。

オーガニック検索での流入数が伸びなければ、PV数もUU数も成長しない。

検索流入はコンテンツSEOに取り組むことで、ゆっくりではあるが確実に伸びていく。

ただし、SEOだけに軸足を置いた対策にならないように気を付けたい。

内容が伴わないコンテンツによって直帰率が高くなり、PVやUUの伸びが止まってしまうためだ。

後述するリード獲得やナーチャリングにつなげるための「呼び水」というイメージを持ち、コンテンツの質を高めながら記事数を増やしていこう。

オウンドメディアの集客方法とは?選択肢の比較や集客につながるコンテンツのポイントを解説

目的4.リード獲得

目的がリード獲得の場合は、以下のKPIに着目しよう。

  • CVR(コンバージョン率)
  • フォーム通過率

BtoBのオウンドメディアの場合、CV(コンバージョン)は「問い合わせ」「資料ダウンロード」「ホワイトペーパーダウンロード」などが該当する。

また、こうした行為は特定のページやフォームで行われるため、「フォーム通過率」も併せてチェックしたい。

ダウンロードページや入力フォームへの到達率が良くても、実際にユーザーが情報を入力するとは限らない

「フォームの入力項目が多すぎる」「エラーが出る」といった理由でユーザーは入力をやめてしまうからだ。

この場合は、EFO(Entry Form Optimization=エントリーフォーム最適化)を施すことも重要だ。

EFOでは、入力項目を削減したり、入力補助や自動変換などの機能を実装することで、ユーザーが使いやすいエントリーフォームに改善し、CVRを高めるための取り組みだ。

こちらの記事でも詳しく解説しているため、ぜひ参考にしていただきたい。

EFO(エントリーフォーム最適化)とは?実装方法や11個の対策ポイント、ツールなどを紹介

目的5.ナーチャリング

ナーチャリングが目的の場合は、以下のKPIをチェックする。

  • 読了率
  • 回遊率
  • 再来訪
  • メール開封率

ナーチャリングは、獲得したリードに知識・ノウハウを提供し「意識変容(パーセプションチェンジ)」を誘導する取り組みだ。

ナーチャリングが進んでくると、ユーザーはさまざまなコンテンツに「長く」「熱意をもって」「頻繁に」触れるようになり、読了率や回遊率が向上する。

また、コンテンツに触れる頻度も増えることから、再来訪率も上昇する。

したがって、初期段階ではコンテンツの読了率や回遊率、再来訪をチェックしよう

その中の一定数が、メルマガを読み始め(メルマガに登録し)、自ら進んでコンテンツ内を回遊するようになる。

BtoBの場合は、オウンドメディアとMA(マーケティングオートメーション)ツールを併用し、「MAからメール配信→オウンドメディアへ誘導」というパターンが多い。

そのため、メール開封率も重要な指標だ。

https://it-bell.com/open-rate-newsletter/

目的6.売上への貢献(リード→顧客への転換)

オウンドメディアの目的の中で、近年特に重視されるのが「売上への貢献」である。

売り上げへの貢献でチェックすべきKPIはさまざまだが、代表的なものは以下4つだ。

  • オウンドメディア経由の問い合わせ数
  • 有効商談数
  • 新規契約数
  • 売上

BtoBのオウンドメディアでは、直接何かを売るわけではない。

したがって「売上への貢献」という観点からの追跡は意外に難しいのだ。

そこでこの場合はオウンドメディア経由の問い合わせや売上を、ROI(投資対効果)という視点で計測するとわかりやすくなる。

つまりは、オウンドメディアの運用コスト(投資)に対してどれくらいの売上(効果)が出ているかの追跡だ。

予算が膨大にあり「オウンドメディアがブランディングや認知のために機能していれば良い」といいう企業は少ないだろう。

ほとんどの企業では「コストをかけるなら成果をもたらしたい」はずだ。

オウンドメディアは長期的な運用が必要で、大きなコストがかかるため、ROIの正確な測定と追跡は欠かせないだろう。

以下の記事でも、オウンドメディアの「マネタイズ」の観点からROIや売上予測の計算方法を解説しているため、ぜひ参考にしていただきたい。

オウンドメディアのマネタイズ方法とは?マネタイズ計画の立て方や代表的なシナリオを解説

6.【目的×フェーズ別】オウンドメディアのKPI設定例

続いて、オウンドメディアの目的とフェーズ別に、着目すべきKPIを紹介する。

上述のとおり「目的」によって着目すべきKPIは異なるが、ここに「フェーズ」を加味することで、より具体的なKPI設計が可能になる。

オウンドメディアは、あらゆるマーケ施策の中でも特に長期的な運用が必要だ。

運用していくにつれてその効果や着目すべき数値、目指すべき数値も変化していくため、フェーズ別のKPIについてもしっかりと押さえておこう。

なお、開始から1年未満を初期、2~3年を中期、3年以上を後期としている。

目的1.ブランディング

ブランディングの目的×フェーズ別KPIは以下のとおりだ。

フェーズ 着目すべきKPI
初期
(開始〜1年)
  • PV(ページビュー)数
  • 記事数
  • UU(ユニークユーザー)数
  • SS(セッション)数
  • オーガニック検索での流入数
中期
(2〜3年)
  • 自社製品に関する検索ボリューム
  • 関連キーワードでの平均検索順位
  • 直帰率
後期
3年〜
  • 平均滞在時間
  • セッションあたりのページビュー数
  • 再来訪率

ブランディングでは、まず初期フェーズで「露出」がうまくいっているかをチェックする。

同時に、記事数に応じてPVやUU、SS、検索流入が増えているかも見ていこう。

中期フェーズでは、認知拡大の進み具合を見るために、自社製品の名称や関連キーワードで検索し、評判や口コミを見ていく。さらに検索ボリュームもチェックしよう。

また、ブランディングの目的は、顧客ロイヤルティを高め、ファンを作ることである。

認知拡大が進んだ後期は、「ファン層」がどれくらい存在するかを知るために、平均滞在時間やPV数、再来訪率もチェックしていきたい。

目的2.エンゲージメントの強化

フェーズ 着目すべきKPI
初期
(開始〜1年)
  • UU(ユニークユーザー)数
  • SS(セッション)数
  • オーガニック検索での流入数
  • 読了率
中期
(2〜3年)
  • SS(セッション)数
  • 平均滞在時間
  • 読了率
  • 回遊率
後期
(3年〜)
  • 読了率
  • 回遊率
  • 再来訪率
  • メルマガ登録、資料請求の数など

目的がエンゲージメント強化の場合も、初期はブランディングと同様に「露出できているか」をチェックする。

中期ではSS数や平均滞在時間、読了率、回遊率に着目し、ユーザーがメディアにどの程度定着したかを計測する。

後期フェーズは、メルマガ登録や資料請求など「オウンドメディア以外の情報ソース」に触れているかも見ていこう。

目的3.集客

フェーズ 着目すべきKPI
初期
(開始〜1年)
  • 記事数
  • UU(ユニークユーザー)数
  • SS(セッション)数
  • オーガニック検索での流入数
  • PV(ページビュー)数
中期・後期
(2〜3年・3年〜)
  • 記事数
  • UU(ユニークユーザー)数
  • SS(セッション)数
  • オーガニック検索での流入数
  • PV(ページビュー)数
  • リファラー別の流入数

集客のKPIは比較的わかりやすい。

初期は検索流入と露出の状況を、中期は検索流入以外の経路も加味して継続的に追跡していこう。

目的4.リード獲得

フェーズ 着目すべきKPI
初期
(開始〜1年)
  • 記事数
  • UU(ユニークユーザー)数
  • SS(セッション)数
  • PV(ページビュー)数
  • オーガニック検索での流入数
  • リード獲得数
  • 特定ページ(入力フォームなど)への到達数
  • 入力フォーム通過率(実際の送信数/到達数)
中期
(2〜3年)
  • リード獲得率(訪問者からリードへの転換率)
  • リードの質(セグメンテーション、リードスコア)
後期
(3年〜)
  • リードから顧客への転換率(MAなどと連動して計測)
  • CPA(Cost Per Acquisition:顧客獲得コスト)

オウンドメディアの目的の中で、最もKPIが多いのがリード獲得だ。

初期は露出とフォーム通過率、中期はリードへの転換率と質、後期は転換率とコストをチェックする。

後期になると売上が発生しているはずなので、CPAは必ずチェックしたい

広告を併用している場合は、初期フェーズからCPAをチェックしても良いだろう。

目的5.ナーチャリング

フェーズ 着目すべきKPI
初期
(開始〜1年)
  • UU(ユニークユーザー)数
  • SS(セッション)数
  • メール開封率
中期
(2〜3年)
  • メール開封率
  • メール内URL(リンク)クリック数・率
後期
(3年〜)
  • CV(コンバージョン)数
  • CVR(コンバージョン率)

ここでのナーチャリングは「MAメール配信→オウンドメディア」というパターンを想定している。

MAからのメール配信は獲得済みのリードに対して行うため、PVはそれほど重視する必要がない

初期フェーズでは、メール開封率と誘導先のオウンドメディアにおけるUU数やSS数を重視しよう。

中期では引き続きメール開封率をチェックしながら、URLクリックの状況も見ていこう。

ナーチャリングが進むとレコメンドが効きやすくなり、URLのクリック率が向上していくためだ。

後期フェーズでは「ナーチャリングの成果」となるCV数やCVRが上昇しているかを重点的に監視したい。

目的6.売上への貢献

フェーズ 着目すべきKPI
初期
(開始〜1年)
  • 記事数
  • PV(ページビュー)数
  • 問い合わせ数
  • 有効商談数
  • 新規契約数
  • 売上
中期
(2〜3年)
  • 問い合わせ数
  • 有効商談数
  • 新規契約数
  • 売上
後期
(3年〜)
  • 問い合わせ数
  • 有効商談数
  • 新規契約数
  • 売上
  • LTV(Lifetime Value:顧客生涯価値)

売上への貢献が目的の場合は少し特殊だが、全フェーズで「問い合わせ数」「有効商談数」「新規契約数」「売上」をチェックする

これに加えて、初期段階では記事数に比例してPVが増えているかをチェックし、後期フェーズではLTV(顧客生涯価値)にも着目しよう。

また、全フェーズでROIを意識しながら、最終的には「取引開始から終了までの利益が多い顧客」のパターンを掴むわけだ。

7.オウンドメディアのKPIにおける注意点

最後に、オウンドメディアのKPIを運用する際の注意点を列挙する。

KPIは一度設定して終わりではなく、年単位で注視しつつ、状況に応じて変えていくことも必要だ。

1. 定期的な見直し(市場や検索ボリュームの変化)

オウンドメディアにおけるKPIは、一度設定したら終わりではない。

トレンドや検索ボリューム、ユーザーの検索行動は時間とともに変化するため、定期的な見直しが欠かせない。

具体的には、キーワードの検索ボリュームが減少したり、検索エンジンのアルゴリズムが変更された場合、それに応じてKPIを調整する必要がある。

例えば、ある企業が「クラウドサービスの導入」に関するコンテンツを提供していたとする。

当初、このテーマは検索ボリュームが多く、オウンドメディアでのトラフィック増加に貢献していた。

しかし、数ヶ月後に検索ボリュームが減少し、「クラウド移行支援」のような新しいテーマに検索需要が移ったとする。

この場合、従来のKPIではもはや効果的な評価ができない。

新たに検索ボリュームが増えているキーワードにフォーカスし、KPIの見直しが必要となる。

また、Googleのアルゴリズムが変更された場合、検索順位が大きく変動することがある。

例えば、ある企業が「ビジネス向けセキュリティソフト」のキーワードで高い検索順位を維持していたが、アルゴリズム変更により検索順位が下がったとしよう。

この影響を受けてPV数やUU数が減少する可能性がある。

すぐにKPIを再設定し、SEO対策を強化するなどの対応が求められる。

2. 測定可能な指標を選ぶ

オウンドメディアのKPI設定において、最も重要なことの一つは、「測定可能な指標」を選ぶことだ。

KPIは成果を定量的に測定するために設定されるもの。

定性的な評価に依存してしまうと、目標達成の進捗を正確に把握することができない。

例えば「認知度を高める」という抽象的な目標だけでは、どこまで進捗しているのか、どの施策が効果的なのかが見えづらくなる。

まずは認知度を構成する要素を分解し、「PV数」や「CVR」などの数値に置き換えていく。

3. データ分析は常に回す

KPIを設定した後の最も大きなタスクは「分析」になる。

分析がなければKPIはほとんど意味がないと言っても良いだろう。

データ分析を「常に回し続ける」ことによって、何が効果的であり、何がそうでないかを常に把握し、改善策を講じることができる。

例えば、PVやUU数が増えていても、それだけではオウンドメディアの成果を正しく評価することはできない。

読了率や回遊率などの「深いデータ」を分析し、コンテンツの質やユーザーエンゲージメントを評価していく。

その結果をもとに、コンテンツの改善点を洗い出してこそ、次の施策に活かすことができる。

また、データ分析を行う際は、単独の指標ではなく複数の指標を組み合わせて総合的に評価することが大切だ。

たとえば、PV数に加えて「CVR」や「再訪率」を分析すれば、いわゆる「リピーター」の候補がどれくらいいるのかがわかる。

定期的に自社のコンテンツをチェックしているユーザーならば、リードや顧客になる可能性は当然高い。

こうしたユーザーを増やしていけば、徐々にオウンドメディアは成果を生むようになる。

データ分析では、こうした「KPIの組み合わせによる新たな知見」を獲得できる。

8.まとめ

ここでは、オウンドメディアにおいて注視すべきKPIを目的やフェーズごとに紹介した。

目的をもって・成果を目指してオウンドメディアを運用するのであれば、KPIの設定と追跡はかかせない。

本記事の内容を参考にしつつ、まずはPVやUU(ユニークユーザー数)、SS(セッション数)といった普遍的なKPIを設定し、徐々に目的×フェーズに応じて適切なKPIを設定する方法がおすすめだ。

オウンドメディア運用においては、KPIの設定や戦略だけでなく、SEOの知識やノウハウ、ライターやディレクターなどのリソースが不可欠となる。

外部の支援も視野にいれつつ、計画的に取り組んでいこう。

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監修者情報

野崎 晋平(btobマーケティングコンサルタント)

SIerにてERPの開発・導入を経験後、東証プライム上場企業の情報システム部門にてIT企画や全社プロジェクトを推進。情シス向けに個人で立ち上げたオウンドメディアは月間10万PVを達成。現在は、ITとマーケティングの知見を組み合わせて、IT企業向けにBtoBマーケティング支援を手がけている。