オウンドメディアは2010年代中盤から広まり、今では業界業態を問わず主要なマーケティングツールとなっている。
しかし、ここ数年は「作っても意味がない」「更新し続ける意味がない」といった声も挙がっている。
そこで本記事では、
「オウンドメディアを立ち上げるべきか判断したい」
「運用中のオウンドメディアがあまり上手くいっていないため、継続するか判断したい」
「営業部門からオウンドメディアの価値が理解されない」
といった方々に対して、オウンドメディアはどのような場面で役立つのか、逆にどのようなケースだと役立たないのかといった情報をはじめ、オウンドメディアの役割や特に力を発揮する場面について詳しく解説する。
目次
1.「意味のないオウンドメディア」とはどういう状態か?
オウンドメディアは2010年代に盛り上がりを見せ、有効なマーケティング施策のひとつとして定着した。
しかし、「PV=成果」ではないことが徐々に知れ渡ると、「意味がない」と断じられることが多くなった。
よく耳にする「オウンドメディアの意味がない」という状態は、端的に言えば以下のような状態だろう。
- アクセスはそこそこ集まるが、それ以外にメリットがない
- 認知拡大やリード獲得はほかの施策で十分であり、存在意義がわからない
- そもそも手間がかかっている割にはすぐに成果がでない
これらはいずれも正当な批判だが、実は誤解を含んでいる部分もある。
2.オウンドメディアは「意味がない」とされる4つの理由
まず、オウンドメディアについて「意味がない」と語られる理由を整理してみよう。
理由1.PVが伸びず露出が増えない
オウンドメディアには「検索上位表示による露出増」が期待されがちだ。
リード獲得にしてもナーチャリングにしても、露出が増えれば増えるほど効率が良くなることは間違いない。
しかし、PVは一朝一夕に伸びるものではない。
例えば、ビックキーワードを狙いすぎると、競合他社のコンテンツに負けてしまい、上位表示は難しくなる。
一般的にビッグキーワードはレッドオーシャンだ。
すでに上位に強いコンテンツが並んでいる場合は、ミドルキーワードやロングテールキーワードを狙うべきだろう。
理由2.売上に直結しない
オウンドメディアはECサイトとは異なり、何かを直に販売しているわけではない。
このことから「運営しても売上につながらない」という文脈で「意味がない」と指摘されることがある。
確かにオウンドメディアは売上に「直接」関係しない部分がある。
しかし、ホワイトペーパーやセミナーへの誘導、さらには商談に行き着くための「意識変化」を担うことから、広い意味で言えば売上に貢献するツールだ。
理由3.コストセンターとみなされる(投資回収の見込みがない)
前述の売上の問題に関係して、「コストセンター」と見なされることもある。
コストセンターとは経営学用語のひとつで、「コストが集約される(利益が集約されない)」部門を指す言葉だ。
コストセンターでは、営業やマーケティングと異なり「低コスト」であることが評価されるようになる。
特にブランディングを目的としている場合、その効果は定量的に把握しにくいため、コストセンターのレッテルを貼られることも珍しくない。
理由4:短期的な成果が出ない
オウンドメディアが「短期的な成果」を生んでいない場合、意味がないと批判されることが多い。
ご存じの方も多いと思うが、オウンドメディアは短期目線の施策ではない。
新しいオウンドメディアでは、検索順位の向上に数ヶ月以上を要する。
弊社の肌感覚としては、ロングテールキーワードでも最短2~3か月、ミドル以上のキーワードならば、上位表示までに半年~1年を要することも珍しくない。
特にBtoB業界のキーワードは検索ボリュームが小さく、閲覧回数も少ないために評価が固まるまでに時間がかかる。
評価までの過程を知ろう
Googleのアルゴリズムは、サイトの評価に多くの要素を取り入れている。
まず、検索エンジンはサイトをクローリングし、コンテンツやメタデータ、内部リンク、外部リンクをチェックした後、そのページをインデックスに登録する。
しかし、インデックスに登録されてもすぐに上位表示されるわけではない。
Googleは、さまざまな評価基準に基づいてランキングを作成し、これには一定の時間がかかる。
特に新しいサイトでは、信頼性が十分に評価されるまで時間を要する。
オウンドメディアの成果は、コンテンツの質や検索エンジンによる評価の蓄積を通じて、少しずつ効果が現れる。
最初は目に見える成果が少ないかもしれないが、時間をかけてリードを獲得し、コンテンツが評価されることで、徐々にPVやコンバージョンに繋がる。
3.オウンドメディアは本当に「意味がない」のか?
このように、オウンドメディアは「意味がない」と見なされがちだ。
しかし、意味があるかないかは、「目的次第」である。
オウンドメディア自体はマーケティングツールであり、その特徴やメリットと「目的」がマッチしていないと意味がなくなる(=成果がでない)のだ。
一方で、しっかりと目的に適合したオウンドメディアは、ペイドメディアやアーンドメディアを凌ぐ成果を上げる。
しかも、その効果は長期にわたり、コストパフォーマンスも高い。
そこで、オウンドメディアの役割と特徴、特に力を発揮しやすい業界について知っておこう。
オウンドメディアの役割と特徴は以下のとおりである。
3.1.オウンドメディアの役割
一般的なオウンドメディアの役割は、「集客」「リード獲得」「ナーチャリング」「ブランディング」「売上への貢献」の4つだ。
集客
検索上位にコンテンツを露出させることで、PVを増やし、見込み客候補を誘引する。
オウンドメディアの場合は、「集客=PVの確保」と考えても良い。
特にBtoBではSNSなど他のチャネルからの流入が望めないため、オウンドメディアのPVがそのまま集客に結び付きやすい。
リード獲得
検索流入から得られるPVを、ホワイトペーパーDLやセミナー申し込みへつなげ、メールアドレスなどを含む連絡先を取得する。
リードは厳密にいえば「見込み客」だが、オウンドメディア運用では「メールアドレス」「電話番号」「企業情報」などが該当する。
いずれも顧客との重要な接点となりうる。
ナーチャリング
有益な情報やノウハウを提供することで信頼感を高めつつ、顧客の意識変化を狙う。
オウンドメディアでは、コンテンツごとに役割を設け、コンテンツ内を周回させながらナーチャリングを行う。
また、MAから配信したメールにURLを記載し、オウンドメディアのコンテンツを紹介するといった施策も有効だ。
ブランディング
ブランドイメージの向上や顧客の帰属意識、所有欲求などを刺激し、顧客にとっての価値を高めていく。
オウンドメディアが注目され始めた2010年代初頭は、ブランディングが主な役割であった。
今でもブランディングは重要だが、リード獲得やナーチャリングの過程である程度は達成されるため、最優先事項とまでは言えないのが実情だ。
売上への貢献
BtoBでは売上への貢献が求められる傾向が強まっている。
冒頭で「売上に直結しない」と述べたので矛盾しているように聞こえるかもしれない。
オウンドメディアに求められる「売上への貢献」とは、端的に言えば「オウンドメディアが起点となって生まれた売上の額」である。
つまり、オウンドメディアの訪問者が見込み客(リード)となり、ホワイトペーパーDLやセミナー参加、商談を経て売上につながった場合を指している。
一昔前のオウンドメディアは「PVが増えて、自社の認知度が向上した」という証明があれば存在意義を認められた。
しかし最近は、オウンドメディアからセールスにどれだけ橋渡しができているかもチェックされる。
また、ECサイトとの連携を強化する企業も増えており、今後も売上の貢献という役割は重視されるだろう。
3.2.オウンドメディアの特徴
オウンドメディアの特徴は、主に以下3点に集約される。
特徴1.リード獲得までに時間を要する
広告などのペイドメディアとは異なり、オウンドメディアは基本的に「待ち」のメディアだ。
つまり、訪問者の意識が変化し、行動(ダウンロードや問い合わせ)が起こるまでは目に見える成果がない。
特に時間を要するのが意識変化だ。
企業としての意識変化は、担当者が何度もコンテンツに触れ、社内へ持ち帰って情報共有し、上長や同僚に理解されたあたりでようやく起こる。
そのため、数か月から数年単位の時間を要することも珍しくない。
特徴2.いますぐ客へアプローチし、まだまだ客に広く浸透させる
ある市場に存在する見込み客を4段階に分けると、以下のようになる。
- いますぐ客(必要性、欲求ともに高い状態で購入に近い)
- おなやみ客(必要性の割には欲求が低い)
- そのうち客(魅力を感じていて欲求はあるが、必要性が低い)
- まだまだ客(必要性も欲求も著しく低い、もしくは気づいていない)
また、下記のようにそれぞれの見込み客の割合には大きな隔たりがある。
一般的に広告は1%の「いますぐ客」をターゲットにするが、オウンドメディアはいますぐ客と同時に「まだまだ客」にもアプローチする。
まだまだ客に対して時間をかけてアプローチし、徐々にいますぐ客に近づけていくことがオウンドメディアの強みだ。
広告とは真逆の性質を持つが、目的は似ているので併用すると効果的だ。
この点について、オウンドメディアのメリットでも詳しく解説しているので参考にしてみて欲しい。
3.3.オウンドメディアが「必須」となる業界の例
オウンドメディアは、意味がないどころか大いに力を発揮する業界もある。
例えば「レッドオーシャン化」や「コモディティ化」が起きやすい業界はその典型例だ。
レッドオーシャン化やコモディティ化が起こりやすい業界は、「標準化」が進んでいる。
つまり、機能や価格のみでは差別化しにくいのだ。
例えばPCやスマートフォンは、外形やデザインは異なるものの、機能・性能については似たり寄ったりな部分が多い。
価格についても、競争に次ぐ競争でいくつかの価格帯に落ち着いてしまっている。
こうした状況において、自社が顧客にとって「特別」であることを意識づけるには、時間をかけてブランディングを進めていくしかない。
さらに、オウンドメディアの主な役割のひとつである「ナーチャリング」は、「ブランディング」と切り離せない。
時間をかけて自社のことを知ってもらい、信頼や愛着を根付かせるというプロセスが共通しているからだ。
4.意味がないオウンドメディアができる原因と対応策
次に「意味がないオウンドメディア」ができてしまう原因と対応策を整理していこう。
4.1. そもそも基礎的なSEO対策ができていない
基礎的なSEO対策ができていないと、検索エンジンからの評価向上が非常に遅くなる。
多くの企業がSEOの重要性を認識しているものの、実際に対策できているケースは少ない。
特に、新規で立ち上げたオウンドメディアでは、タイトルタグやメタディスクリプションの最適化、内部リンクの整理、読み込み速度の改善、モバイル対応といった基本的なSEO対策が欠けていることが多い。
これらができていないと、ユーザー体験(UX)が著しく低下し、Googleなど検索エンジンからの評価が低くなる。
対応策:テクニカルSEO(外部対策、内部対策)を総合的に見直す
解決策としては、まずSEOの基本的な要素を網羅的に見直し、サイト全体をSEOフレンドリーな設計にし直すことだ。
具体的には「テクニカルSEO」について、内部対策と外部対策の2つの観点からサイト全体を見直す。
テクニカルSEOについては、下記で詳しく解説しているため参考にしてみてほしい。
上記の図のように、テクニカルSEOという土台ができていなければせっかくのコンテンツも評価されない。
メタディスクリプションやタイトル文字数、内部データの構造化、内部リンクの再設計など「検索エンジンが評価しやすい形」を整えよう。
4.2. SEOに偏りすぎてしまい内容が薄いコンテンツが増えた
ここで言うSEOとは、2010年代ころまで使われていた古いタイプのSEOだ。
SEOを「キーワードの詰め込み」と勘違いしていると、意味がないオウンドメディアがでてきてしまう。
メインのキーワードや共起語、関連キーワードは現在のSEO的に見ても重要なシグナルだ。
しかし、これらに偏りすぎて内容が薄いコンテンツが増えると、肝心の「人間」に訴えることが難しくなる。
現代のSEO対策は「検索エンジンに評価されるためのSEO的なシグナル」と、「人間が有益だと感じる情報」を融合させなくてはならない。
いわゆる「薄いコンテンツ」は、検索順位を一時的に上げることができても、ユーザーのエンゲージメントを低下させる原因となる。
対応策:コンテンツSEOで質を上げる
この場合の対応策は、コンテンツの質を最優先に考えつつ、戦略的にキーワードを選定することだ。
ユーザーのニーズに合った深い情報や実用的なノウハウを提供しながら、キーワードを効果的に使う。
コンテンツSEOでは、ターゲティングから始まり、キーワード調査や選定、実際のコンテンツ制作までを行う。
具体的なステップは下記の記事を参照して欲しい。
近年は検索エンジンにマルチモーダルな評価アルゴリズムが導入されたことにより、画像やインフォグラフィックの重要度も上がっている。
もしテキストだけのコンテンツがあるならば、画像やインフォグラフィックの追加も検討しよう。
4.3. 製品やサービスの訴求ができていない
製品やサービスの訴求ができていないと、「売上」につながらない。
結果的に「何も生み出さない」と判断されがちだ。
オウンドメディアの目的はリード獲得を起点として、「売上に貢献すること」だ。
オウンドメディアのコンテンツに製品やサービスの訴求がない場合、訪問者は単純に知識欲だけを満たして離脱してしまう。
かといって、過度に訴求すると「売り込みのきつさ」が出てしまい、ユーザーの足は遠のく。
このバランスの難しさがBtoBのオウンドメディアにおける課題と言える。
対応策:課題、テーマ軸に沿って導線を設計する
まず読者の課題を推測し、そこに対して有益な情報を提供し、自然に製品やサービスの訴求につなげる、という「型」を作ろう。
例えば、事例紹介や成功事例ならば、製品やサービスがどのように顧客の課題を解決するのかを具体的に示すことができる。
事例はリッチコンテンツとして、AI時代も生き残るといわれる。
また、CTA(Call to Action)を適切に配置し、訪問者を製品やサービスの詳細ページや、ホワイトペーパー、セミナーなどに誘導する仕組みを作ることで、商談に繋がる確率が高まる。
4.4. 短期的な成果を追いすぎてしまう
短期的な成果とは広告のように「3か月で数十件のリード獲得」などを目指すことだ。
リード獲得や売上に即効性を期待するあまり、オウンドメディアの強みである信頼構築やナーチャリングの機能を無視してしまう。
オウンドメディアの運営においては、長い時間軸でリードを獲得し、育成することが成功への近道だ。
また、オウンドメディアの主要な役割である「ブランディング」の点から言っても、短期目線の施策はマイナスだ。
ブランド形成の下地は「ファン層」の獲得であり、ファン層は徐々に広まっていく。
短期の成果を追いすぎると、ファンの前段階である「リピーター」が徐々に離れる原因になる。
対応策:リード→リピーター→ファンへの道のりを作る
リードを段階的に育成する仕組みを整えよう。
リード獲得後は、メールマーケティングやパーソナライズされたコンテンツで、リードが徐々に商談に至るまで育てる。
さらに、ブランドストーリーや成功事例などを通じて自社の価値を伝え、リピーターやファン層を形成する。
また、ユーザーとのエンゲージメントを高めるために、コミュニティ形成やSNSでの対話も有効だ。
オウンドメディアを起点とし、時にはコンテンツの配信を織り交ぜながら段階的にリードを育成することが、長期目線での成果につながる。
BtoBのブランディングについては、下記で詳しく解説しているため参考にしてみてほしい。
4.5. 継続的な運営体制が整っていない
オウンドメディアは数年単位での長期運営が基本となるため、それなりのリソースが必要だ。
定期的なコンテンツ更新、SEOの最適化、効果測定など、さまざまな業務を支えるには運営体制が整えられていなくてはならない。
特に定期的なコンテンツの更新が不可能になると、検索エンジンからの評価が低下し、意味のないオウンドメディアになってしまう。
対応策:外注化を含めた運営基盤を作る
オウンドメディアの運営が失敗する理由の大半が「リソース不足」だ。
社内の人材はそれぞれコア業務を抱えており、オウンドメディアの「専任担当」がいない企業は多い。
コア業務が忙しくなると、兼任の担当者はどうしてもオウンドメディア運営へリソースを回せなくなる。
解決方法は単純で、「リソースが必要な業務を外注化する」というものだ。
特にサイト分析やコンテンツ更新など定常的な業務を専門の業者に委託することで、担当者は上流の意思決定のみに注力できる。
4.6. 他のマーケ施策との連携ができていない
オウンドメディアが「単体」でPVだけを稼いでも、売上には到達しにくい。
売上に貢献しないオウンドメディアのほとんどが、ほかの施策から切り離されている。
対応策:複数の施策の集合体である「面」の一部として活用する
オウンドメディアを他の施策とシームレスに統合し、リード獲得・ナーチャリング・商談化が「面」として回るようにしよう。
オウンドメディアに限ったことではないが、マーケティング施策は単体で設計してもあまり意味がない。
点から面へ、さらに面を動かし続ける「立体」へと昇華してこそ売上につながる。
この「点→面→立体」の流れにオウンドメディアを組み込むことが、オウンドメディアの価値をさらに上げる。
この点については、下記でも詳しく解説している。
5.オウンドメディアの「意味」が発揮されるケース
ここからは、オウンドメディアが「意味」を持ちやすいケースを具体的に紹介していく。弊社が考えるケースは、以下4つだ。
ケース1.十分なリードを確保できている場合
「いますぐにでもオウンドメディアを使うべき」というケースがこれだ。
日々の営業・マーケティングの中でリードが蓄積されているならば、寝かせている時間は「ロス」になる。
かといって、ナーチャリングやブランディングを施すには人手が足りない。
こうしたケースでは、オウンドメディアのコンテンツを周回させることでナーチャリングやブランディングが進む。
また、検索流入を意識した(SEOを考慮した)コンテンツである必要がないため、独自色を出しやすいこともメリットだ。
コンテンツの種類としては、対談記事や(成功)事例記事、セミナー記事、ノウハウ記事などが適しているだろう。
大まかな流れとしては、「MAなどで既存リードへメール配信」しつつ、オウンドメディアへの流入を促し、ホワイトペーパーやセミナーの閲覧を促していく。
その中の一定数は、勝手にオウンドメディア内を周回し、知識やノウハウを得て自社に対する興味関心を深めていく。
さらにそこから商談や受注が発生するという仕組みだ。
オウンドメディアの内容次第では、この「ナーチャリング→成果(商談、受注)」という流れが半ば自動化される。
ケース2.時間をかけて長期でコストパフォーマンスを出したい場合
このケースは、ゼロベースでリード獲得を狙うが、ある程度時間をかけられる場合だ。
具体的には、他のチャネルでリード獲得や受注の流れができていて、時間をかけながら+アルファのチャネルを育てるというケースに向いている。
つまりマーケティングや営業の補強だ。
BtoBではニッチキーワードやロングテールキーワードを軸とし、地道にコンテンツを充足させるため、オウンドメディアの成長には時間を要する。
一方で、ある程度育ってしまえばWEB広告と比較してもかなりコストパフォーマンスが良いツールになる。
ちなみに、どんなに記事を量産してもリード獲得から受注・売上というタームが確立されるまで、半年から1年はかかると考えたほうが良い。
一般的な目安は2~3年程度だ。
このケースでは、既存のチャネル(セミナー、展示会、DMなど)とオウンドメディアをいかに連携させるかが重要なポイントになる。
もしMAやCRMでリードを管理しているならば、前述のケースと同じようにオウンドメディアへの流入を促すべきだろう。
反対に特にリードを管理していない場合は、営業・マーケティングプロセスの中に「オウンドメディアへの流入」というタスクを設ける必要がある。
メルマガや営業用資料、DMの中にオウンドメディアの案内を記載するなど、既存チャネルといかにシナジーを発生させるかがカギになりそうだ。
ケース3.ニーズ、課題を共有した顧客と出会いたい場合
BtoBのオウンドメディアでは、事例(成功事例、解決事例)の持つ力が非常に強い。
見込み客の多くは、自らが抱える「痛み、悩み、課題」をどのような製品で、どのようなプロセスで解決できたかを重視している。
裏を返せば「自社が得意とする製品、サービス、導入プロセス」の組み合わせ、つまり「成功パターン」を具体的にアピールしやすいのだ。
強みとニーズが合致した顧客との付き合いはうまくいくことが多く「長期、優良顧客との出会い」にもつながる。
成功事例はニーズのニーズ(裏のニーズ、つまり実利)を突いていることが多く、見込み客に対する強い訴求となる。
ケース4.公式サイトなど他で流入が稼げるメディアがある場合
このケースでは、オウンドメディアの役割をさらに限定し、ナーチャリングに特化させる。
例えば、社名や製品名の知名度が高く、すでに公式サイトから十分な流入がある場合などだ。
オウンドメディアは、「本体(公式サイト)」をサポートして付加価値を上げる別動隊のようなイメージになる。
具体的には、製品の特設サイトや事例サイトという形で「特徴」ではなく「利点」を解説し、売上につなげていく。
社名や製品名で十分な知名度があるため、「名前は聞いたことがあるが、実際にどのように、どれくらいの効果があるのか」という点を補強するだけで売上に貢献する。
こちらも検索流入を意識する必要がないので、良質なコンテンツを作りやすい。
6.まとめ
ここでは、「オウンドメディアは意味がない」という指摘の理由や、効果が出やすいケースなどを紹介してきた。
オウンドメディアが「意味ない」と判断される背景には、目的とのアンマッチがある。
また、自社が保有する資産(リードや公式サイトへの流入)によっても有用性は変わる。
オウンドメディア自体は、目的とのマッチングができていれば長期にわたって絶大な効果を発揮するツールだ。
初期段階では、現状分析と戦略、コンテンツの制作ノウハウが欠かせないため、この点を外注化してしまう方法もおすすめだ。