ロイヤルカスタマーとは、企業にとって「コアなファン」のような顧客だ。
さらに、「他社への推奨による新規顧客の獲得」や「継続利用による収益の安定」など、企業へさまざまなメリットをもたらす存在である。
一方で、下記のような課題があることも事実だ。
「優良顧客やリピーターとの見分けがつきにくい」
「売上上位顧客とどのように線引きすべきかが不透明だ」
「新たに獲得、育成する方法がわからない」
ロイヤルカスタマーは、BtoBにおいて特に重要度が高く、企業の成長に欠かせない。
本記事では、ロイヤルカスタマーの定義や他の顧客との違い、メリット、獲得・育成のノウハウを紹介する。
1.ロイヤルカスタマーとは?
まず、ロイヤルカスタマーの定義やほかの顧客との違いを確認しておこう。
1.1.ロイヤルカスタマーの定義
ロイヤルカスタマーとは、以下3つの要素を兼ね備えた顧客だ。
- 顧客ロイヤルティとLTVが高い
- 関係構築や育成が終わっている
- リピーターであり、かつ推奨者である
順に詳しく解説する。
①顧客ロイヤルティとLTV(顧客生涯価値)が高い
ロイヤルカスタマーとは「顧客ロイヤルティとLTVが十分に高い顧客」だ。
顧客ロイヤルティとは、「顧客が自社に対して感じている愛着心や信頼」、LTVは「顧客との取引の全期間における利益の総額」を指す。
つまりロイヤルカスタマーは、自社製品・サービスの品質を高く評価しており、自社にとって長期間に渡り多大な利益をもたらしてくれる存在である。
自社へのブランドイメージも良好なことから、アップセルやクロスセルへの反応も良く、LTVはさらに自然と高まっていく。
toCビジネスで言えば「常連さん」や「お得意さん」のようなイメージだ。
②関係構築や育成が終わっている
ロイヤルカスタマーは、自社との関係性が良い方向に確立されており、特別なサポートやアプローチを必要としない顧客でもある。
具体的には以下のような特徴を持つことが多い。
「契約更新時に、追加の説明や金額交渉などを必要とせず、スムーズに契約が進む」
「自社製品・サービスの内容を十分に理解しており、その価値を評価している」
「営業担当者やサポート担当者を信頼し、好感を持っている」
ポイントは自社への「信頼」が確立していることだ。
今までの実績や取引を通して、自社を信頼してくれていれば、特別なコストをかけずとも、安定して売上に貢献してくれるのである。
③リピーターであり、かつ推奨者である
ロイヤルカスタマーは「リピーター」としての側面も持つ。
一般的にリピーターは、定期的な再購入によって企業に継続的かつ安定した収益をもたらす。
ただし、全てのリピーターがロイヤルカスタマーになるわけではない。
ロイヤルカスタマーは、リピート購入した製品・サービスを様々な手段で他者へ推奨する。
特に現在は、レビューサイトやSNSなどを通じて評価を拡散することができる。
実際に製品・サービスを利用している人間による評価は信ぴょう性が強く、新規顧客やリードの獲得に効果を発揮する。
特にBtoBのIT製品などでは「業務で使ってみなければ見えてこない具体的な効能」「課題解決につながる使い方」などが含まれるため、閲覧者にとっては参考にしがいのある情報となる。
こうした特徴を持つロイヤルカスタマーからの推奨は、ときに営業・マーケティングの活動を凌駕するほどの成果をあげる。
1.2.一般顧客、優良顧客、リピーターとの違い
ロイヤルカスタマーは、一般顧客、優良顧客、リピーターその他の顧客分類とは明確に異なる。
違いを細かく見てみよう。
顧客分類 | 特徴 |
一般顧客 |
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優良顧客(売上上位顧客) |
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リピーター |
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ロイヤルカスタマー |
|
一般顧客は購入履歴こそあるものの、競合他社との比較を頻繁に行い、購入頻度もそれほど高くない。
優良顧客は一般顧客と似た行動をとるが、購入回数や金額が大きい。
リピーターは優良顧客の一部で、定期的に再購入を行い、自社に安定した収益をもたらす。
ロイヤルカスタマーは、リピーターの要素に加え、評価の拡散や他者への推奨など、自社へのロイヤルティがあり、自社にとってプラスの行動をとることが特徴だ。
ここで注意しておきたいのが「リピーターは必ずしもロイヤルカスタマーではない」という点だ。
外面的な行動だけを見れば、リピーターとロイヤルカスタマーはよく似ている。
しかし、リピーターの場合は顧客ロイヤルティが低い場合もある。
例えば、
「予算の都合上、仕方なく契約している」
「代替製品を探す手間が惜しい」
「社内の慣習上、取引実績のない企業との契約に理解が得られない」
などの事情が絡んでいる場合は、リピーターではあってもロイヤルカスタマーではない。
後述する「ロイヤルカスタマーの獲得・育成方法」などを参考にしながら慎重に見極めていこう。
1.3.「推し」から見えるロイヤルカスタマーの輪郭
ロイヤルカスタマーをより分かりやすく説明してくれるのが「推し」の文化だ。
「推し」とは、2010年代中ごろから若年層を中心に広まった消費文化である。
その根底にあるのは、自分が応援したい対象を他社に「推奨」し、さらなる成功を願う考えだ。
「誰を推しているか」は、言い換えると「だれのロイヤルカスタマーか」ということになる。
「推し活」に熱中する人々は、「推しの対象」に対してお金と時間を惜しみなく注ぐ。
そこには、「安くて良いものが評価される」といった市場力学は働かない。
愛着・熱意・信頼を根底とした評価が第一であり、コストパフォーマンスは二の次だ。
もっとも、BtoBでは個人の感情や愛着がそのまま消費行動に結びつくわけではない。
しかし、意思決定権を持つ人間が、特定のブランドや製品に思い入れを持つ可能性は十分にある。
もしロイヤルカスタマーの定義が分かりにくい場合は、推しの文化を分析してみることも一つの方法だ。
2.ロイヤルカスタマーが企業にもたらすメリット
ロイヤルカスタマーが企業にもたらすメリットとしては、以下7つが挙げられる。
- LTVの最大化による収益力向上
- 不況期、市場衰退期における生存力の向上
- 新規顧客獲得の推進
- 安定的・持続的な売上高
- 「体験」をもとにした誘因力高いプロモーション
- 競合企業の情報提供と改善提案
- 新たなロイヤルカスタマーの獲得
順に詳しく見ていこう。
メリット1.LTVの最大化による収益力向上
最もよく知られているメリットが「LTVの最大化および収益力の向上」だ。
ロイヤルカスタマーは一度の購入にとどまらず、長期間にわたって複数回の購入を行うため、LTVが高い。
この高いLTVは、企業の収益力を安定的に向上させる要因となる。
さらに、購買に至るまでに必要なコストが新規顧客に比べて圧倒的に低いため、ROIが高いという点でも、企業にとって理想的な顧客と言える。
メリット2.不況期、市場衰退期における生存力の向上
ロイヤルカスタマーは企業やブランドに強い愛着を持っている。
前述の「推し」の例えからもわかるように、金銭的な損得を除いた価値基準を持っている。
そのため、経済的・景気的に厳しい時期でも購入を続ける傾向がある。
市場が縮小傾向、もしくは景気自体が悪化した際にも、安定した収入源となるわけだ。
不況期においては、こうした顧客の存在が企業の生存力を大きく支えてくれる。
メリット3.新規顧客獲得の推進
ロイヤルカスタマーは、企業や製品・サービスに対する満足度が高い。
そして、その高い満足度を「推奨」として他者へ拡散する。
その結果、ロイヤルカスタマーの紹介によって新規顧客を獲得できる可能性が高まる。
口コミや紹介による新規顧客の獲得は、コストをかけずに成果を生むための効果的なマーケティング手法だ。
近年はWeb上での拡散行動が広告以上の効果を生むこともある。
ロイヤルカスタマーだけが持つメリットといっても過言ではないだろう。
メリット4.安定的・持続的な売上高
ロイヤルカスタマーはリピーターとしての側面を持ち、定期的に製品・サービスを購入する。
SaaSのようなサブスク型のビジネスであれば、継続率や契約更新率が高い顧客だ。
自社に安定した売上をもたらし、ロイヤルカスタマーが増えれば増えるほど、持続可能な収益基盤が形成される。
安定して持続する収益基盤は、経営計画や財務予測を容易にし、対外的な信頼性も向上する。
メリット5.「体験」を基にした誘因力の高いプロモーション
ロイヤルカスタマーは、自らの体験をベースにした推奨を行う。
近年はBtoB向けのレビューサイトが登場しており、企業向けIT製品においても「推奨」の効果を得られやすくなった。
口コミやレビューは「広告に出てこない実際の使用感」を知るための貴重な情報であり、誘因力の高いプロモーションだ。
「ステマ規制」や「サードパーティークッキーの利用制限」など、広告に対して逆風が吹く昨今、ロイヤルカスタマーによるプロモーションは魅力的である。
メリット6.競合企業の情報提供と改善提案
ロイヤルカスタマーは、自社が属する業界や類似の製品・サービスに対しても深い関心を持っていることが多い。
したがって、競合企業の動向にも敏感である。
彼らは他社の製品・サービスとの比較を行い、その情報を自社にフィードバックしてくれることがある。
「御社を使い続けたいが〇〇社のような機能は開発しないのか」
「同業の△△社と同じようなサービスが出たらすぐにでも契約する」
といった具合に、「自社を選択する前提」で競合他社の状況を知らせてくれるのだ。
ロイヤルカスタマーの意見は、実際の使用体験に基づいているため、具体性を持つ改善案でもある。
新製品・サービスの開発においても、具体的なニーズを惜しみなく提供してくれる存在だ。
自社のみのVOC活動よりもスムーズに、精度の高い情報が得られる。
メリット7.ロイヤルカスタマーの獲得が連鎖することで急成長も
ロイヤルカスタマーが持つ高いロイヤルティは、新たなロイヤルカスタマーの獲得に繋がる。
情報が氾濫する現代は、見込み客は自らが持つニーズをダイレクトに満たす製品を探すことが難しい。
そこでリサーチのコストを小さくするために「同様のお悩みや課題を持つ人間」の声を参考にする。
この種の見込み客は、既存のロイヤルカスタマーの推奨によって購買行動を活性化させる。
また、ロイヤルカスタマーと同じニーズ・課題・痛みを持つ見込み客は、自社の製品やサービスに満足する可能性が高い。
適切に接していけば、新たなロイヤルカスタマーとなってくれる可能性が高いのだ。
この「ロイヤルカスタマーがロイヤルカスタマーを生む」という連鎖が成功すれば、ビジネスの大きく・かつ急激な成長が期待できる。
特に新規顧客獲得のコストが大きいBtoBのIT製品や、サブスクリプション型のSaaSビジネスでは、このメリットが非常に大きい。
3.ロイヤルカスタマーの獲得・育成方法
ロイヤルカスタマーが企業にとって大きなメリットと成長をもたらしてくれることはわかったが「どのように獲得すれば良いのか」に悩む企業は多い。
本章ではその方法について、以下の6ステップに沿って詳しく見ていこう。
- ロイヤルカスタマーの状態、要素を整理する
- 既存顧客の中からロイヤルカスタマー候補を抽出する
- 態度的ロイヤルティの向上要因を把握する
- 行動的ロイヤルティの向上要因を把握する
- カスタマージャーニーマップへ落とし込む
- ロイヤルティプログラムを設定する
ステップ1.ロイヤルカスタマーの状態、要素を整理する
ロイヤルカスタマーを含む顧客は、下記図のように4つの状態に分けられる。
ロイヤルカスタマーになるためには、左下の「ロイヤルティなし」の状態から、右上の「真のロイヤルティ」に移行しなくてはならない。
このとき、「態度的ロイヤルティ」と「行動的ロイヤルティ」という2つの要素を高めていく必要がある。
態度的ロイヤルティとは、「製品・サービスに対する論理的、感情的な好意」である。
これに対して行動的ロイヤルティとは、その好意を実際に行動に移す(繰り返し購入・契約する)ことだ。
態度的ロイヤルティは「好評、好感、愛着」といった内面的な要素であり、行動的ロイヤルティは態度的ロイヤルティを具現化したものとも言える。
この2つの要素を満たすことで「顧客ロイヤルティが高い状態」になり、ロイヤルカスタマーを生み出すというわけだ。
ステップ2.既存顧客の中から「ロイヤルカスタマー候補」を抽出する
ステップ2では、ロイヤルカスタマーの候補を既存顧客のデータを用いて見つけだしていく。
BtoBのIT領域やSaaSビジネスでは、長期契約やサブスクリプションモデルが大半だ。
こうしたビジネスモデルでは、「契約期間が長く、更新率が高い顧客」がロイヤルカスタマーになりうる。
そこで、まずは契約期間の長さや更新率の高さを指標にして抽出してみよう。
さらに、下記のような断面でスクリーニングもかけていく。
- 定期的なアップグレードや追加ライセンス・オプションを購入している
- サポートに対する満足度が高い
- 好意的なフィードバックやクレーム以外の前向きな要望を出してくれる
こうした既存顧客の情報は、「人」と「システム」の2軸で収集する。
「人」とは営業チームやカスタマーサポートチームなど顧客と直接対面する人材だ。
「フィードバックの内容」「継続利用の意志」「自社に対する印象」「信頼の度合い」といった定性的な情報は、営業やCSに蓄積されていることが多い。
これに対して、契約更新率やアップセル実績、サポートチケットの解決時間といった定量的な情報はシステムから抽出していこう。
ちなみにシステムとは、CRMやSFAなどだ。
これらのデータに基づき、ロイヤルカスタマーの候補をあぶり出していく。
ステップ3.態度的ロイヤルティの向上要因を把握する
ステップ2で抽出した対象に対し、ステップ1で整理した2つの要素(態度的ロイヤルティ、行動的ロイヤルティ)を高めるための施策を打ち出していく。
態度的ロイヤルティを向上させる鍵は、「利便性」と「信頼性」に対する評価を同時に高めることだ。
BtoB ITやSaaSの領域ならば下記の施策が有望だ。
- コンテンツマーケティングを通じて顧客ニーズへの解決策を提示する
- アップデートやバグ修正の迅速さを強調する
- ユーザーが自覚していない潜在的な不具合やリスクに対して、優先的に対応する
- 機能追加、改善要望に対して「可/不可」の回答を迅速に行い、理由も付記する
- 導入事例、顧客の声など既存のロイヤルカスタマー(候補)の評価を前面に押し出す
- 伴走型支援(ユーザーガイド、トレーニングなど)が手厚いことをアピールする
BtoB ITやSaaS製品を利用する顧客は、単なる製品の「機能」ではなく、それが自社の中で「どう使えるか」、より有効活用するために「どう対応してもらえるか」という点でロイヤルティを変化させやすい。
「顧客が本来の課題を解決するまで伴走する」という点が明確であれば、態度的ロイヤルティを高めてもらいやすいだろう。
すると、カスタマーサクセス部隊の強化など、具体的な施策が見えてくるはずだ。
ステップ4.行動的ロイヤルティの向上要因を把握する
行動的ロイヤルティの向上には、顧客が実際に繰り返し製品を利用し、さらなる投資を行うための動機が必要だ。
BtoB ITやSaaSビジネスならば、下記のような施策が挙げられる。
- 法改正、ビジネストレンドに応じた新機能の追加
- サブスクリプションプランの価格改定(長期契約割引などの新設)
- API連携などによる他社製品との柔軟な連携機能の追加
- 日常業務の効率アップに関する機能の追加
- 複数のベンダーの販売パートナーとなることで取り扱い製品を増やす
法改正やビジネストレンドなど「外的要因」への迅速な対応は、購入の決め手になりやすい。
また、長期契約によるコスト低減、API連携による既存システムとの親和性の高さなども、意思決定を後押しする要素だ。
さらに5つ目の「複数のベンダーとの提携」も、行動的ロイヤルティを向上させるきっかけになりうる。
複数のベンダーとパートナー契約を結び、取扱製品を増やす施策は、本来「バラエティシーキング型の顧客」を取り込むための施策だ。
バラエティシーキングとは、「さまざまな製品・サービスを試してみたい」といった思考を指す言葉で、本質的にはロイヤルカスタマーと真逆の性質を指す。
しかし、リピーターの中にバラエティシーキング型の顧客が混じることも多いため、抽出の段階では区別がつきにくい。
バラエティシーキング型の顧客に対しては、「CRMにマーケティング自動化機能やデータ分析機能を追加する」など、クロスセルを積極的に行うことでニーズを満たし、「いくつも契約するよりここで賄ったほうが得だ」と感じてもらいやすいように努める。
幅広いニーズを満たすことで、長期的な目で徐々にロイヤルティを高めてもらうわけだ。
ステップ5.カスタマージャーニーップへ落とし込む
さらに、これらのロイヤルティ向上策をカスタマージャーニーに落とし込むことにも取り組んでいこう。
BtoB ITやSaaSビジネスでは、顧客が初期の導入フェーズからサポートやトレーニング、契約更新までのプロセス全体でどう接触しているかを整理する。
整理した情報をカスタマージャーニーマップに落とし込み、「ロイヤルティが高まりやすいポイント」や各接点での「効果的なアプローチ」を明確にしていこう。
特に導入後のオンボーディングや、定期的な利用状況レポートの提供は、ロイヤルティを高めるきっかけとなる大きなポイントである。
また、「決裁者以外のキーマン」を見つけ出しておくことも大切だ。
BtoBでは企業内の意思決定プロセスが複雑であり、複数の役職者が関与する。
決裁者だけではなく、影響力のあるスタッフに対しても適切なタイミングでフォローアップを行うことで、ロイヤルカスタマーの育成につながる。
例えばCRMの導入においては、現場(カスタマーサポートセンターなど)のリーダークラスの意見が非常に強いことが多い。
決済権は上長が持っていても、現場のリーダーが納得できなければGOサインが出ない。
この場合、決裁者のジャーニーではなく現場のリーダーをペルソナとしたジャーニーを作成すべきだ。
現場のリーダークラスがロイヤルカスタマーになれば、その企業に対する他製品の導入もスムーズに進む。
顧客企業の一部に「推奨者」がいることで、徐々に企業全体でロイヤルティが高まっていくからだ。
ステップ6.ロイヤルティプログラムを決定する
最後に、これらの施策を具体的なロイヤルティプログラムに落とし込む。
ステップ2で抽出した顧客に対し、態度的ロイヤルティや行動的ロイヤルティを高める施策をまとめて打ち出すわけだ。
あくまでも一般論だが、態度的/行動的ロイヤルティを向上させるプログラムとしては下記が挙げられる。
態度的ロイヤルティ |
|
行動的ロイヤルティ |
|
各プログラムの詳細については、こちらで詳しく解説している。
4.ロイヤルカスタマーの獲得、育成に役立つ指標
最後に、ロイヤルカスタマーの獲得や育成度合いを評価するための指標をいくつか紹介する。
顧客ロイヤルティを数値で把握できるため、ぜひとも参考にしてみてほしい。
指標1.LTV(顧客生涯価値)
LTV=顧客単価×購買頻度×平均顧客継続期間
LTV(顧客生涯価値)は、顧客が自社製品・サービスの利用開始から終了までにもたらす価値(利益)の総合値を表す指標だ。
LTVが高い顧客は、長期間にわたって製品やサービスを購入する傾向があるため、ロイヤルカスタマーとして育成しやすい。
指標2.RFM(購入日、頻度、総額による分類)
R=Recency(最新購入日):最新の購入日から現在までの日数
F=Frequency(購入頻度):過去一定期間内の購入回数
M=Monetary(購入総額):過去一定期間内の購入総額
※各項目にスコアをつけ、合計スコアで顧客を評価する
RFMは、顧客を購入日(Recency)、購入頻度(Frequency)、購入総額(Monetary)の3つの要素で評価する手法だ。
最新の購入日が近く、購入頻度が高く、総額も多い顧客は、すでに企業や製品に対するロイヤルティが高いと推測できる。
したがってRFM分析の結果が良好であれば、ロイヤルカスタマーの候補だと言えるわけだ。
具体的には、購入日が近く、かつ頻度も高い顧客に対して特別なキャンペーンやプロモーションを提供することで、リピート購入を促進し、ロイヤルティを強化できる。
また、購入総額が高い顧客に対しては、ロイヤルティプログラムを展開するなど、特別待遇を提供する戦略も有効だ。
指標3.CSAT(カスタマーサティスファクションスコア:顧客満足度)
CSAT=(満足と答えた顧客の数/全回答者数)×100
CSATは、顧客満足度を評価するための指標だ。
CSATが高い顧客は、製品・サービスに対する評価が高く、ロイヤルカスタマーへと移行しやすい。
また、CSATスコアを定期的にモニタリングすることで、満足度の低下を早期に察知し、改善策を講じることができる。
指標4.NPS(ネットプロモータースコア)
NPS=推奨者の割合−批判者の割合
NPS(ネットプロモータースコア)は、「推奨度」を定量化するための指標だ。
「あなたはこの製品やサービスを友人や同僚にすすめますか?」という質問に対する回答を元に、推奨者(Promoters)、中立者(Passives)、批判者(Detractors)の3つに分類し、それらの割合からNPSを計算する。
例えば、推奨者:70%、中立者:10%、批判者:20%の場合、
NPS=70(%)ー20(%)=50となる。
5.まとめ
本記事では、ロイヤルカスタマーの定義や分類、獲得・育成の具体的な方法などを解説した。
ロイヤルカスタマーはBtoB企業にとって、収益の柱になりうる存在だ。
既存顧客から候補を抽出し、カスタマージャーニーによる分析とロイヤルティプログラムの提供で、徐々にロイヤルカスタマーを増やしていこう。