メールマガジン(通称メルマガ)は、低コストでプッシュ型の訴求ができ、かつ効果測定による最適化が進めやすいなど、メリットが大きく多くの企業で導入されている。
特にBtoB企業では、店舗を持たず、顧客との接点が限られ、顧客の購買検討期間が長いので、メルマガは重要なコミュニケーション手段の一つだ。
一方で、多くの企業がメルマガを配信しており、受け手にとっては飽和状態ともいえる。
「何をしても開封率が上がらない」
「競合他社では開封率が担保できているのか」
「開封率を上げるための真の方法を知りたい」
と悩む人は多いだろう。
そこで本記事では、メルマガ開封率の計算方法や調べ方などの基本情報に加え、開封率の平均値、さらに開封率を上げるためのコツを解説する。
1. メルマガの開封率とは?
まずはメルマガの開封率の計算方法と、あわせて確認すべきその他の計測指標をおさえておこう。
1.1. メルマガの開封率とは?計算方法
メルマガの開封率とは配信されたメールマガジンが受信者によってどれだけ開封されたかを示す割合である。
具体的には以下の数式で計算できる。
開封率(%)= (メールを開封した人数 ÷ メールを送信した人数) × 100 |
たとえば、5,000件メルマガを配信して開封されたのが1,000件だった場合、(1,000÷5,000)×100=「20%」が開封率である。
1.2. その他のメルマガの計測指標
メルマガの効果は開封率だけでなく、以下の4種類を計測すればより精緻に分析できる。
計測指標 | 内容 |
開封率 | 開封率(%)=(メールを開封した人数 ÷ メールを送信した人数) × 100
メルマガの件名や送信タイミングが受信者にどれだけ魅力的か、また、メルマガ自体にどれだけ興味を持たれているかを判断する基準 |
クリック率 | クリック率(%)=(メール内のリンクをクリックした人数 ÷ メールを送信した人数)×100
メルマガ内のリンクがどれだけ興味を引き、受信者が行動を起こすきっかけになっているかを判断する基準 |
送信エラー率 | 送信エラー率(%)=(メール送信エラーになった人数 ÷ メールを送信した人数)×100
配信リストの質やメルマガが正確に届けられているかを判断する基準 |
配信停止率(購読解除率) | 配信停止率(%)=(配信停止した人数 ÷ メールを送信した人数)×100
メルマガの内容や配信頻度が受信者にとってどれだけ価値のあるものか、または煩わしさを感じさせていないかを判断する基準 |
2. メルマガの開封率の平均値
「メルマガの開封率は一体どれくらいをめざせばよいのか」と悩む人も多いだろう。
母集団をどこに置くかによっても平均値は大きく異なるため、ここではいくつかの切り口からメルマガの開封率の平均値を紹介する。
2.1. 日本全体の平均値
メール配信ツールを提供するBenchmark Emailの2023年の調査によれば、日本のメルマガ開封率の平均値は31.75%である。
ただし、開封率は業種や業態によっても大きく異なる。
次に紹介する業種・業態別の平均値を参考にするほうが、より適切な指標となるだろう。
出典:平均メール開封率・クリック率レポート (2024年度版) 業種別・地域別(国別)の最新情報|Benchmark Email:https://www.benchmarkemail.com/jp/email-marketing-benchmarks/
2.2. 業種別の平均値
以下は同調査における業種別の平均値である。
たとえば弊社がマーケティング支援を行うIT企業(=以下表においてテクノロジー/通信)の平均値は、20.33%となっている。
ただしこの数値はBtoB・BtoCを問わない。
業種別 | 平均開封率 |
広告/マーケティング/PR/メディア/デザイン | 26.41% |
建築・建設 | 16.86% |
観光/エンターテイメント/ホスピタリティ | 27.59% |
教育(大学、社会人) | 12.77% |
コンサルタント/HR/人材 | 20.33% |
ファイナンス | 17.94% |
医療 | 28.14% |
保険 | 17.92% |
製造/物流/エンジニアリング | 17.03% |
NPO/行政サービス | 32.65% |
不動産 | 26.65% |
小売/消費サービス | 24.28% |
教育(小中高) | 16.73% |
テクノロジー/通信 | 20.33% |
フィットネス | 24.46% |
業種不明 | 21.44% |
出典:平均メール開封率・クリック率レポート (2024年度版) 業種別・地域別(国別)の最新情報|Benchmark Email:https://www.benchmarkemail.com/jp/email-marketing-benchmarks/
2.3. BtoB企業の平均値
それではBtoB企業に限定した開封率の平均はどの程度なのだろうか。
株式会社IDEATECHの2024年のアンケート調査によれば「(開封率が)11%~20%」が24.3%、「21%~30%」が24.3%、「6%~10%」が13.6%という回答結果となっている。
30%を上回る場合は一般的なBtoB企業よりも高い成果が出ており、逆に10%を下回る場合は改善の余地があると捉えてもよいだろう。
出典:【BtoB企業におけるメルマガ成果の実態調査】配信頻度は「月に2〜3本」開封率は「11%〜30%」が最多、メルマガ配信後のインサイドコール件数は「6件〜10件」が最多の実態! | 株式会社IDEATECHのプレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000249.000045863.html
3. メルマガの開封率はなぜ重要か?
メルマガの開封率が重要な理由は、その後の「リンククリック」や「コンバージョン」と密接に関連しており、全体的なマーケティングの成果に影響を与える点にある。
マーケティング担当者が最終的にめざすのはコンバージョンの増加だ。そのためにはまず開封してもらえるかどうかが、最初の関門になる。
逆にいえば、どれだけメルマガの内容やリンク先のページが魅力的でも、開封されなければ意味がない。
そのため、開封率が他社平均より低い、あるいは自社の普段の平均より低いと確認した場合は、積極的に改善の対策を打っていきたい。
4. メルマガの開封率の調べ方
自社のメルマガの開封率をどのように調べればよいかわからない人もいるだろう。
ここでは2通りの調べ方を説明する。
4.1. メール配信ツールを使った調べ方
メール配信スタンドやMAツールといったメール配信機能を持つツールを導入している場合は、特段の追加設定を行わずとも、簡単に開封率が確認できる場合が多い。
具体的な確認方法はツールごとのマニュアルを参照してもらいたいが「レポート」や「分析」のページでクリック率や配信停止率といった他の指標とあわせて確認できるだろう。
共通する留意点としては、開封率を調べるためには「HTMLメール」で配信することである。
メール内に埋め込まれたHTMLタグの発火によって開封イベントを計測する仕組みになっているため、テキストメールでは開封率が取得できない。
なお、以下の記事ではおすすめのメール配信ツールを紹介しているので、ぜひ、参照してもらいたい。
4.2. Google Analytics 4を使った調べ方
アクセス解析ツールのGoogle Analytics 4(通称GA4)を使った開封率の調べ方もある。
ほとんどのメルマガ配信ツールでは開封率の確認が可能だが、GAで他のウェブサイト指標も含め横断的に確認・管理したいという場合に活用するとよいだろう。
GA4で提供されている「Measurement Protocol」というAPIを使うと、ウェブページの訪問やアプリのイベントに限らず、サーバーから直接イベントデータをGoogle Analytics 4に送れる。
これにより、メールの開封など、通常のクライアントサイドの計測では捉えにくいデータもトラッキングできるようになる。
<GA4でメルマガ開封率を取得する手順>
- GA4にログインする
- ダッシュボードの「管理」セクションから「データストリーム」を選択し、「ウェブストリームの詳細」に進む
- 「Measurement Protocol API secret」をクリック
- 「作成」ボタンを押して新しいAPI Secretの作成画面に進み、任意の名前を設定して「作成」をクリック
- Event BuilderにGA4と同じアカウントでログインする
- 以下の通り、入力する
- client: gtag.jsを選択
- api secret: 手順4で作成したAPI Secretの名前を入力
- measurement id: GA4の計測IDを入力
- client id: 任意のIDを入力
- event category: Customを選択
- event name: 任意のイベント名を入力
- Parameters: nameに任意のパラメータ名、string valueに「open」と入力
- 「VALIDATE EVENT」をクリック
- GA4の「レポート」→「エンゲージメント」→「イベント」セクションで、イベントの発火を確認
- 「Request info」にあるコードをコピーし、HTMLメールに埋め込む
5. BtoBのメルマガの開封率を上げるコツ10選
最後に、メルマガの開封率を上げるためのコツを紹介する。
コツ1.件名(タイトル)は簡潔で興味を引くものにする
メルマガのタイトルは受信者が最初に目にする部分で、開封率を大きく左右する要素だ。
よって、受信者の興味を引きやすい内容にする必要があるが、瞬時に主旨を理解できるシンプルな構成にすることも意識したい。
また、タイトルが長すぎると受信環境によっては重要な部分が見切れるおそれもあるため、一般的には日本語で15〜25文字程度が推奨される。
また、特に重要なキーワードはできるだけ件名の先頭に持ってくるほうが、どの受信者にも間違いなくメルマガの要点を伝えられる。
コツ2.プリヘッダーテキストを工夫する
プリヘッダーテキストは、件名に続けて表示される短い説明文だ。
プリヘッダーテキストを工夫すると、件名と組み合わせて受信者にさらに興味を持たせ、開封を促せる。
たとえば、件名と補完し合う内容にする、緊急性や限定感を強調するといった工夫だ。
プリヘッダーテキストには、基本的にメール文の冒頭が表示されるが、メール配信ツールによって個別にプリヘッダーテキストを設定できる場合があるので、チェックしてみよう。
コツ3.宛名は個人名に、差出人を営業担当者にする
BtoBのメルマガでは、一斉送信感が出ると開封されにくい傾向がある。
そのため、受信者が「自分宛に送られたメッセージ」だと感じられるよう、宛名を相手の個人名にすることが効果的である。
また、差出人も企業名だけではなく、実際に担当している営業担当者の個人名にすると、信頼感や親近感が高まり、開封率の向上につながる。
メール配信ツールでは、宛名や差出人の名前を簡単に差し込める機能もある。
コツ4.開封されやすい曜日や時間に送る
BtoBのメルマガは開封されやすい曜日や時間を意識して配信すると、開封率を効果的に高められる。
一般的に、火曜日から木曜日の朝(9:00〜10:00)もしくは昼休憩中(12:00〜13:00)が理想的とされる。
朝は一通りメールをチェックする時間を取っている人が多く、また昼はランチをしながらPCを見る人が多いからだ。
逆に週初めの月曜日のビジネスパーソンは先週から持ち越した業務に追われている可能性が高く、メルマガに目を通す余裕がない場合が多いため、メルマガの配信を避けるべきだ。
また、金曜日は週末を控えてメールチェックの頻度が下がるため、同様に避けたい。
ただし、これらはあくまで一般論であり、ターゲットリストや業界、企業のサービスによって異なるケースもある。
まずは、一定期間ごとに複数の曜日での配信を行い、開封率が高い曜日を見極める方法もおすすめだ。
コツ5.配信頻度に注意する
メルマガの配信頻度も開封率に影響を与える。
おすすめの頻度は週に1回程度だ。
あまりに頻繁に配信すると、受信者は「メールが多すぎる」と不快に感じ、開封されずにスルーされたり、配信停止率が高まったりするリスクがある。
とはいっても、間隔が空きすぎると認知度が下がり、企業やサービスの存在を忘れられてしまうおそれもある。
株式会社WACULの調査によれば、週4回以上の配信は開封率やクリック率が低下する傾向がみられた。
また株式会社IDEATECHのBtoB企業向けの調査によれば、配信頻度は月に2〜3本の企業が29.1%でもっとも多く、次いで週に1本の企業が24.3%という回答だった。
配信頻度の確保も重要だが、自社のリソース状況を考慮し、内容の質を落とさずに送り続けられる自社に合った頻度を探すことが大切である。
コツ6.ABテストを実施してPDCAを回す
メルマガの開封率を向上させるには、ABテストを実施し、結果をもとに配信の内容や方法を最適化することが重要だ。
ABテストでは1つの要素を複数パターンに変更したメルマガを用意し、どれが高い開封率につながるかを比較検証する。
たとえば、3パターンのメール件名を用意し、無作為に3分割した配信リストに対し、同じタイミングで送信する。
その中でもっとも開封率が高かった件名をフォーマットとして採用するといった形だ。
開封率の向上を目的として検証する要素としては、件名や配信時間、送信者名などが挙げられる。
テスト結果に基づき、開封率が高いパターンを特定し、次回の配信に反映すると、データに基づいた効果的な改善が可能になる。
コツ7.セグメント配信を行う
受信者の特性に応じたセグメント配信も効果的だ。
BtoBにおいては、業種、役職、過去の行動履歴、購買ステージなどの属性に基づいて受信者をグループ分けできる。
これらの各セグメントに適した内容を提供すると、メルマガがより受信者にとって関連性の高いものとなり、開封率の向上が期待できる。
たとえば、経営層向けには業界の最新情報や市場動向を、マネジメント層向けには実務に役立つノウハウや製品情報を提供するなど、各セグメントのニーズに合わせた内容を作成するとよい。
セグメント配信は受信者が興味を持つテーマに集中できるため、関心を引きやすく、メルマガ全体のエンゲージメントが向上する。
コツ8.タイムリーな内容やトレンドを意識したテーマ選びをする
BtoBのメルマガはタイムリーな情報や季節に関連したテーマを取り入れると、受信者の関心を引きやすくなる。
たとえば、年度末に近い時期には予算編成に関する内容、年始には新しい事業計画やトレンド予測に関する内容を提供すると、受信者が「今必要な情報」と感じ、開封しやすくなる。
また、業界のトレンドやホットワードを取り入れたテーマは、メルマガの新鮮さや関連性を保つ上で効果的である。
また、常にトレンド情報をリサーチし、競合企業よりも早い発信を徹底すれば、差別化につながるとともに「有益な情報をいち早く提供してくれる」という意識を受信者に植え付けられるだろう。
コツ9.定期的なコンテンツの見直しと改善を行う
BtoBメルマガの開封率を継続して高めるには、内容や構成の定期的な見直しと改善が重要である。
長期間、同じような内容やフォーマットで配信していると、受信者が内容に飽きてしまい、開封率が低下する可能性がある。
なにより、メールに対する「期待」がなくなってしまうと、受信者は開封しなくなるだろう。
そのため、フィードバックやABテストの結果を参考にしながら、コンテンツの見直しや新しいアイディアを取り入れることが求められる。
たとえば、新しいセグメント向けの特集や、インタラクティブな要素を加えた配信内容などを試すと、メルマガが常に新鮮で価値あるものと受信者に感じてもらえるように工夫する。
コツ10.配信リストを定期的に見直す
間接的な要因ではあるが、配信リストの精査も開封率を上げるためには必要である。
長くメルマガを運用すると、配信リストにはアクティブな受信者だけでなく、メールをほとんど開封しない受信者や退職などでエラーになっているアドレスが含まれる場合があるため、定期的に見直し、不要なアドレスの除外が必要である。
6. まとめ
メルマガの開封率は、その先のウェブサイトへのリンククリックやコンバージョンといったアクションにつながる重要な指標だと確認した。
メール配信ツールやGoogle Analyticsで簡単に確認できる指標のため、自社と近しい業種・業態の平均値を参考にしながら1件1件のメルマガの良し悪しを判断してほしい。
もし改善の余地がある結果の場合は、本記事で参考にした10選のコツをできる限り実践するとよいだろう。
また弊社はIT企業のマーケティングをサポートするサービスを多く提供している。
メルマガの開封率についてより具体的な改善方法のアドバイスがほしい場合は、お気軽にお問い合わせいただきたい。