直帰率とはユーザーが特定のページへ訪問した後、サイト内の他のページへ遷移せずに離脱した割合を表す。
ユーザーが「ページの内容に満足しているか」「自社に興味を持ったか」などのエンゲージメントを測る指標となる。
一方で、以下のような声も多い。
「直帰率が高いのは何が原因なのか」
「直帰率を改善するにはどのような方法があるのか」
「そもそも直帰率の目安はどれくらいか。改善の必要はあるのか」
直帰率が高い状態では、ユーザーがコンテンツに満足していなかったり、ユーザーニーズを捉えていなかったりする可能性があるため、原因の特定と改善策の実行が必要だ。
本記事では、直帰率の基礎からGA4を使った確認方法、改善のポイントまで詳しく解説する。
1.直帰率とは?
まずは、直帰率の基礎知識に加え、よく混同される「離脱率」との違いを明確にしよう。
1.1.直帰率とは
直帰率とはユーザーが最初にアクセスしたページだけを閲覧し、他の同一ドメイン内のページに遷移せずに離脱した割合を示す指標だ。
直帰率は以下の計算式で求められる。
直帰率(%)=最初のページからの離脱数/該当ページの総セッション数×100
たとえば特定のページのセッション数が100で、うち70セッションは他のページに遷移せずに離脱した場合、直帰率は70%となる。
1.2.直帰率と離脱率の違い
直帰率と混同されやすい指標に「離脱率」がある。
離脱率とはWebサイトへ訪れたユーザーが、そのページを最後に離脱した割合を測る指標のことだ。
たとえば1つのWebサイトにA、B、Cの3つのページがあり、以下の2つのセッションが計測されたとしよう。
- A→B→C→離脱
- A→B→離脱
上記の場合、Aのページを初めに訪れたが、どちらのセッションでもBのページへ遷移してくれているため、Aの直帰率は0%だ。
何か興味の引く内容や、Bページへ遷移しやすい構成だと想定できる。
一方、Cの離脱率は、Cが含まれるのが1セッションにもかかわらず、Cで離脱されているため、離脱率は100%だ。
※なお分かりやすいように、少ないパターンで解説している。
すなわち、離脱率が高いページは、ユーザーが次のページに進みにくい設計である可能性が高く、改善の余地があるといえる。
特に、コンバージョンに直結するページで離脱率が高い場合は、コンテンツの見直しや導線の最適化を進めるべきだろう。
<直帰率と離脱率の主な違い>
直帰率 | 離脱率 | |
意味 | 特定のページから始まったセッションのうち、他のページに遷移せずにそのページだけを見てWebサイトを離脱した割合 | ユーザーが特定のページを最後にWebサイトを離脱した割合 |
計算方法 | 最初に訪れた特定のページからの離脱数/特定のページから始まるセッションの数 × 100 | 対象ページからの離脱数/対象ページの全ページビュー数×100 |
2.直帰率の平均値
では、直帰率はどれくらいの値をめざせばよいのだろうか。
本章ではサイトの種類、業界別に直帰率の平均値を紹介する。
2.1.【サイトの種類別】直帰率の平均値
Webサイトの種類や目的によって、直帰率の平均値は異なる。
たとえば、ポータルサイトのニュース記事やブログ記事であれば、基本的に1ページ完結型のコンテンツとなるため、直帰率は高くなりがちだ。
一方、BtoB向けのサービスサイトやECサイトでは、Webサイト内の回遊を促す設計が多いため、直帰率の平均値は低くなるだろう。
以下に、サイト種類別の直帰率の平均値を紹介する。
<サイト種類別ページ離脱率の平均値>
サイト種類 | 直帰率の平均値 |
BtoB向けサイト | 25%〜55% |
ECサイト | 20%〜45% |
ランディングページ(LP) | 60%〜90% |
ポータルサイト・ブログ・辞書 | 65%〜90% |
出典:Bounce Rates: What’s Good, What’s Bad, and Why You Should Give a Damn|customedialabs.com:https://www.customedialabs.com/blog/bounce-rates/
2.2.【業界別】直帰率の平均値
ビジネスの業界別でも直帰率の平均値は異なる。
<業界サイト別ページ離脱率の平均値>
業界 | 直帰率の平均値 |
クラウド(SaaS) | 64.46% |
工事 | 67.24% |
情報技術 | 62.27% |
ECサイト | 58.11% |
不動産 | 46.85% |
旅行・レジャー | 54.66% |
飲食 | 56.62% |
教育 | 57.95% |
出典:Website Traffic Benchmarks by Industry|Databox:https://databox.com/website-traffic-benchmarks-by-industry#bounce-rate
たとえば不動産や旅行、飲食といったBtoCサービスでは、ひとつのWebサイト内に数多くのページを用意し、不特定多数のユーザーへ多様な情報コンテンツを提供している場合が多い。
また、これらのサイトへ訪問するユーザーは、サイト内で情報収集を行うため、複数のページを回遊して直帰率が低くなる傾向にある。
一方、クラウド(SaaS)や工事などのBtoB業界や専門業種は、専門性が高く選択肢の幅は広くないと考えられる。
よって、BtoC向けのサイトと比較して直帰率は高いと考えられる。
3.直帰率の確認方法
上述したように、Webマーケティングにおいて直帰率の確認はサイト改善の重要な要素のひとつとなる。
ここでは、直帰率の確認に必要なツールや実際の確認手順を解説しよう。
3.1.直帰率を確認・改善できる主なツール
Webサイトの直帰率を確認するには、以下のようなツールが役立つ。
特にGoogleが提供するGA4では、Webサイトを運営していれば無料で詳細なデータ分析が可能となる。
後段では実際の確認方法を解説するため、ぜひ使い方をマスターしていただきたい。
ツール名 | 特徴 |
Googleアナリティクス(GA4) | もっとも一般的な無料利用できるアクセス分析ツール。サイト全体や特定のページの直帰率を簡単に分析できる。
訪問者の属性や訪問経路も併せて分析可能なため、直帰率の変動要因を深掘りするのに適している。さらに、ユーザーの行動フローやページ遷移も視覚的に確認でき、ユーザーが離脱しやすいポイントも見つけやすくなる。 |
ヒートマップツール | ページ内のどこがクリックされているのか、どこまでスクロールされているのかを可視化すると、ユーザーがページ内でどのように行動しているかを視覚的に把握できる。
クリックやスクロールの傾向から、訪問者がどこで関心を失ったのか、離脱の原因を特定しやすくなる。 |
A/Bテストツール | 直帰率改善において、複数の異なるコンテンツやデザインを用意し比較・検証して、より効果的かつ最適な施策を選択できる。
さらに、異なるデザインやコンテンツを比較テストすれば、直帰率改善に効果がある要因を見つけ出せる。 |
3.2.Googleアナリティクスを活用した直帰率の確認方法
はじめに、GA4が定義する直帰率について正しく理解しておこう。
GA4では、直帰率は「エンゲージメントが発生しなかったセッションの割合」と定義されている。
ここでいう「エンゲージメントセッション」には、以下のセッションが該当すると公表されている。
- ユーザーがページ訪問後に10秒以上継続したセッション
- キーイベントが 1 件以上発生したセッション
- ページまたは画面の閲覧または視聴が2件以上発生したセッション
参考:[GA4] エンゲージメント率と直帰率|アナリティクスヘルプ:https://support.google.com/analytics/answer/12195621?hl=ja
すなわち、GA4では上記の「エンゲージメントセッション」が発生しなかったセッションを「直帰」と捉えているのだ。
このことを前提に、GA4における離脱率の確認方法をみていこう。
手順1.Googleアナリティクス(GA4)メニューから「探索」を開く
Googleアナリティクスにログインし、左側のメニュー一覧から「探索」をクリック。
手順2.「データ探索メニュー」から任意のレポートを選択する
ここでは、例として「空白」を選択して新しいレポートを作成する。
手順3.直帰率レポートの作成
(1)「変数」セクションからディメンションの「+」をクリック。「ページ/スクリーン」から「ページ タイトル」を選択して「確定」ボタンをクリック
(2)指標から「セッション」を開き「直帰率」にチェックを入れて「確定」ボタンをクリック
(一覧から見つからない場合は「指標を検索」に直帰率と入力して検索する。)
(3)「設定」セクションの「行」に「ページ タイトル」を選択。同じく「値」に「直帰率」を選択すれば直帰率のレポートが完成。
4.直帰率が高い原因と改善策
直帰率が高い場合、ユーザーがWebサイトに対して不満を感じたり、期待に応えられなかったりしている可能性が高い。
Webサイトの直帰率が高くなる原因は多岐にわたるが、それぞれの要因を見極め、適切な施策を講じれば、ユーザー満足度の高い魅力的なサイトに改善できる。
以下に、直帰率が高くなる代表的な原因と改善方法を解説していこう。
原因1.ファーストビューの質が低い
ユーザーがほしい情報を一目で確認できなかったり、デザインが魅力的でなかったりすれば、ユーザーはページの内容に興味を抱かず、離脱される可能性が高まる。
改善策
アメリカのミズーリ州にあるミズーリ工科大学の研究によると、人は初めて訪れるWebサイトの印象を2.6秒間で決めるという報告がなされている。
つまり、Webサイトで初めに目にするファーストビューの重要性は高く、ユーザーがもっとも知りたい情報を瞬時に提供する必要がある。
たとえば、導入効果や第三者機関からの評価、価格情報など、ユーザーのベネフィットや自社の強みを具体的な数字で伝えるのも有効だ。
そして、デザインがターゲット層のニーズや好みに合っているかも見直してみるとよいだろう。
出典:Eye-tracking studies: first impressions form quickly on the web:https://news.mst.edu/2012/02/eye-tracking_studies_show_firs/
原因2.コンテンツがユーザーのニーズに合致していない
ユーザーがサイト検索時に期待している情報と実際のコンテンツとの間にギャップがあれば、離脱の大きな原因となる。
たとえば、検索キーワードや広告コピーの選定が不適切であったり、コンテンツ内容が薄く情報不足であったりする場合が多い。
改善策
ターゲットユーザーの検索意図に基づいた、関連性の高いコンテンツの提供が重要となる。同時に検索キーワード設定や広告の訴求文を見直し、自社のターゲットに合致するユーザーがサイトに訪れるような調整も必要だ。
これらを実現するためには、ペルソナの見直しを通じた検索意図の深掘り、カスタマージャーニーの設計など、顧客理解を根本から見直す必要があるだろう。
加えてて、コンテンツがターゲットに刺さる内容か判断するためには、直帰率だけでなくサイト滞在時間を合わせた分析が有効だ。
原因3.ページの読み込み速度が遅い
Webサイトのページ読み込みに時間が長くかかると、ユーザーの直帰率が急増する。
特にモバイルユーザーはページ読み込み速度に敏感であるため、読み込み遅延はクリティカルな離脱要因となる。
参考として、Think with Googleの調査によると、モバイル端末における離脱率は、ページの読み込み速度が1〜3秒の場合32%、1〜5秒の場合90%に達するとの結果が公表されている。
参考:New Industry Benchmarks for Mobile Page Speed|Think With Google:https://www.thinkwithgoogle.com/marketing-strategies/app-and-mobile/mobile-page-speed-new-industry-benchmarks/
改善策
Webページで使用する画像や動画の圧縮、不要なスクリプトの削除、キャッシュの活用など、サイトの速度改善を行う。
サイト速度の確認には、Googleが無料で提供する「PageSpeed Insights」が便利でおすすめだ。
技術的な面での対策も必要となるので、Web制作会社やエンジニアなどと連携して改善を進めるとよいだろう。
原因4.使いやすさ(UI・UX)の問題
サイトでの操作がしにくい、またはナビゲーションが分かりにくいと、ユーザーはWebサイト内で迷い、ほしい情報にたどり着けない。
結果、ユーザーはストレスを抱えながら離脱してしまい、、サイトに再訪したいとは思わないだろう。
改善策
第三者の評価を交えながら客観的なUI/UXの改善を行い、ユーザーが直感的に操作できるデザインをめざそう。
先に紹介したA/Bテストやヒートマップツールなら、どこでユーザーが離脱しているか具体的な改善ポイントを確認できる。主観に頼らず、データに裏付けられた効果的な改善策を導く手助けとなる。
また、Webサイト全体の設計を見直して内部リンクの適切な設置も重要だ。
これにより、ユーザーのサイト内回遊を促し、直帰率の低下とサイト滞在時間の改善に役立つ。
原因5.モバイル対応が不十分
一般的にWebサイトへの訪問はPCよりもスマートフォンなどのモバイル機器が多いといわれている。
よって、モバイル端末の画面サイズに合わないデザインや表示崩れなどの問題は、直帰率を高くする原因となる。
改善策
Webサイトの制作時には、レスポンシブデザインを採用し、各デバイスで最適な表示が行える環境を整えよう。
また、実際にモバイル端末を用いたデザインやボタンの配置、テキストの見え方などの動作確認は欠かせない。ユーザーが快適に利用できる、モバイルフレンドリーの徹底が重要だ。
原因6.強引なポップアップや広告表示
ユーザーがコンテンツを読む前に強制的に表示されるポップアップや広告は、ユーザー体験を損ない、直帰率を高める要因となる。
改善策
広告やポップアップは必要最小限にとどめ、ユーザーがコンテンツに集中できる環境の提供を優先しよう。
特にファーストビューで強制的に表示される要素は、本当に顧客に価値のあるものかを熟考し、表示しても閉じやすくする工夫が必要である。
原因7.サイトの信頼性や専門性が不足している
BtoBでは特にサイトや企業に対する信頼性が重要となる。
企業やサービスについての情報が薄い、専門性や実績の提示がないなどのケースでは、ユーザーの興味を引けず、離脱につながってしまう。
改善策
既存顧客からのレビューや導入事例、第三者機関からの評価など、客観的な評価情報をコンテンツに盛り込むと、ユーザーに対し安心感や専門性をアピールできる。
また、導入実績やサービスの安定性など、自社内で用意できる定量的なデータの明示も、信頼性の向上につながるだろう。
原因8.CTA(Call to Action)が分かりづらい
たとえ訪問ユーザーがコンテンツ内容に満足しても、その後の導線が不明瞭な場合、次のアクションを起こさずに離脱してしまう可能性が高い。
改善策
CTAボタンを目立たせたり、常に目に付く位置に配置しておけば、ユーザーは次のアクションを理解し行動をしやすくなる。
たとえばBtoBの場合「資料を請求する」や「デモンストレーションを依頼する」「無料トライアルに申し込む」など具体的なアクションを明示すると、コンバージョンにつながりやすくなる。
5.直帰率を確認・改善する際のポイント
最後に、実際に直帰率を確認し、改善を進めていく際のポイントについて解説する。
- デバイス別に原因を分析する
- 直帰率が高くても問題とならないケースもある
- 直帰率と他の指標を組み合わせて分析する
それぞれ詳しくみていこう。
ポイント1.デバイス別に原因を分析する
直帰率を確認する際には、流入元やデバイス別の違いを分析して、ユーザーの利用状況を詳細に把握しよう。
たとえば、PCの直帰率は低いにもかかわらず、モバイルでの直帰率が高い場合、スマートフォン向けのUI・UXの改善が必要かもしれない。
Googleアナリティクス(GA4)の「セグメント」から細かいレポート出力設定が可能なため、ぜひ試していただきたい。
ポイント2.直帰率が高くても問題とならないケースもある
Webサイトにおいて、直帰率が高いことが必ずしも問題となるわけではないことも理解しておこう。
たとえば、業界特化の用語集のようなコンテンツであれば、ユーザーの検索意図が調べたい用語の意味を即座に検索し、理解することなので、、直帰率は高くなりがちだ。
また、長期間をかけてリードを獲得・育成するオウンドメディアの記事も、エンゲージメント(読了率や滞在時間など)が高ければ、直帰率が高くてもそれほど問題ではない。
一方で「資料請求」や「デモ依頼」のようなコンバージョンの入り口となるランディングページにおいて、エントリーフォームへ到達する前に離脱(直帰)されるケースは大きな問題となる。
以上のように、ユーザーの検索目的やWebサイトの情報提供目的によっても、直帰率の評価基準は左右されることを頭に入れておこう。
なお、直帰率の高さが必ずしも問題とならないことは、Googleからも公表されている。
参考:直帰率|アナリティクス ヘルプ:https://support.google.com/analytics/answer/1009409?hl=ja
ポイント3:直帰率と他の指標を組み合わせて分析する
Webサイトの改善に着手する前に、直帰率だけではなく他の指標を組み合わせたサイト分析が効果的といえる。
その理由は、上述したように直帰率が高くても必ずしも問題とはならないケースがあるからだ。
たとえば、直帰率が高くても、そのページの滞在時間が長ければ、検索意図を満たしユーザーへ満足感を提供できている可能性が高い。
裏を返せば、直帰率が低いサイトの中でも優先的に対策が必要なのは、滞在時間が短いサイトといえるだろう。
このように、直帰率に加えてページ滞在時間やコンバージョン率などの指標を組み合わせた、複合的なサイト分析がおすすめといえる。
<Webサイトの改善に役立つ指標の一例>
指標 | 特徴 |
ページビュー(PV)数 | ある一定期間における、サイトの各ページが表示されてユーザーに閲覧された回数。 |
セッション(SS)数 | ある一定期間における、Webサイトへのユーザー訪問回数。Webサイトへの流入から離脱までを1セッションとしてカウントする。 |
フォームへの遷移率 | Webサイトへの訪問者のうち、離脱せずにエントリーフォームへ到達した数の割合。 |
フォームの入力完了率 | エントリーフォームへ到達したユーザーのうち、入力完了までに至った数の割合。 |
コンバージョン(CV)率 | Webサイトへの訪問者のうち、最終的な成果を達成した数の割合。 |
上記以外にも役立つWebサイトの分析方法が存在するため、ぜひ以下の記事を確認してほしい。
6.まとめ
直帰率とはユーザーがWebサイト訪問後に他のページへ遷移せず、離脱した割合を示す指標である。これはWebマーケティング担当者にとって、ユーザー満足度やサイトの課題を把握するための重要なデータとなる。
その理由は直帰率の高さがユーザーの期待に応えられていない可能性や、コンテンツ、デザイン、ユーザビリティの問題を示唆するからだ。
また、直帰率が改善されない場合、SEOに間接的な悪影響を及ぼすおそれもあるため、早急な対策が求められる。
一方、直帰率の高低が常に問題を示すわけではなく、1ページ完結型のコンテンツでは高直帰率が許容される場合もある。
ゆえに、直帰率を含めたさまざまな指標による複合的な分析が、効果的な改善施策を導き、サイトパフォーマンスの向上につながるのだ。