クリック率は、デジタルマーケティングにおける「集客」を計測するための重要な指標だ。
一般的に検索順位が上昇すると「露出(インプレッション)」は増える。
しかし、実際に自社サイトに流入する量(≒集客量)はクリック率に依存する。
つまり、集客という観点では検索順位よりもクリック率のほうが重要なのだ。
本記事では、検索順位とクリック率の関係性、クリック率の確認方法、そして「集客力」を高める方法を紹介する。
「検索順位は上がってきたが、流入量が思わしくない」
「インプレッションとコンバージョンの関係性が理解できていない」
という方は、ぜひ参考にしていただきたい。
1.複数社を比較 検索順位ごとのクリック率は?
まず、検索順位とクリック率の関係性について把握しておこう。
ここでは、複数のデータを用いて検索順位とクリック率を説明する。
1.1.見逃されがちなクリック率
SEO対策では、「検索順位」がベンチマークになりがちだ。
多くのSEO担当者は、特定のキーワードで上位にランクインすることが「成果」だと考えてしまう。
検索順位は確認が容易だし、基準も明確だ。
しかし「検索結果に表示されただけ」では集客につながらない。
検索結果に表示されたタイトルリンクがクリックされることで「集客」が成立する。
裏を返せば、クリック率が高ければ、検索順位は低くても集客は成立する。
一方で、クリック率が検索アルゴリズムにどの程度影響を与えるかについては、明確な答えがない。
「Googleの公式情報ではない」という点で曖昧さが残っており、クリック率を重視する声が小さいことの一因となっている。
1.2.クリック率の計算方法
クリック率、つまり「Click Through Rate=CTR」は、タイトルリンクのクリック数を検索結果への表示回数(インプレッション数)で割ったものだ。
ちなみにタイトルリンクとは、「検索結果に表示されるタイトル」のこと。
タイトルリンクについてはこちらの記事でも解説しているので参考にしてみてほしい。
クリック率の実測値は以下の式で算出できる。
- クリック率=クリック数/表示回数(インプレッション数)
一般検索では、検索ボリューム=インプレッション数と考えられるので、クリック数を検索ボリュームで割る。
また、Google Search Consoleで確認できるインプレッション回数を活用してもよい。
Web広告の場合は、配信プラットフォーム内に表示されるインプレッション回数を使っても良いだろう。
1.3.検索順位とクリック率には「正の相関」がある
検索順位とクリック率は相関関係にあり、検索順位があがるほどクリック率も上昇していく。
以下の表は、国内外のSEO事業者による検索順位とクリック率の関係を示したものだ。
検索順位 | FirstPage Sage(2024年) | SISTRIX(2020年) | SEO CITY(2021年) |
1位 | 39.8% | 28.5% | 13.94% |
2位 | 18.7% | 15.7% | 7.52% |
3位 | 10.2% | 11.0% | 4.68% |
4位 | 7.2% | 8.0% | 3.91% |
5位 | 5.1% | 7.2% | 2.98% |
6位 | 4.4% | 5.1% | 2.42% |
7位 | 3.0% | 4.0% | 2.06% |
8位 | 2.1% | 3.2% | 1.78% |
9位 | 1.9% | 2.8% | 1.46% |
10位 | 1.6% | 2.5% | 1.32% |
1位:30%、2位:15%、3位:10%程度が目安
上記の表を見てもわかるように、検索順位ごとのクリック率は調査主体によってかなりのバラつきがある。
1位だけを見ても、最小で約14%、最大で約40%という結果だ。
ただし、ほかの調査結果も総合すると、1位は30%、2位は15%、3位は10%程度が目安となる。
また、検索順位1位〜3位のクリック率の合計は、全体の4割〜約6割だ。
「検索順位3位までのクリック率は50%程度」とざっくり記憶しておいても良いだろう。
4位以下は1.5~5%が目安
4位以下も同様にバラつきが大きいが、目安はおよそ「1.5〜5%」になる。
検索順位 | FirstPage Sage(2024年) | SISTRIX(2020年) | SEO CITY(2021年) |
4位 | 7.2% | 8.0% | 3.91% |
5位 | 5.1% | 7.2% | 2.98% |
6位 | 4.4% | 5.1% | 2.42% |
7位 | 3.0% | 4.0% | 2.06% |
8位 | 2.1% | 3.2% | 1.78% |
9位 | 1.9% | 2.8% | 1.46% |
10位 | 1.6% | 2.5% | 1.32% |
もう少し詳しく分類すると、
- 4位~7位では「3.5~5%」
- 8位~10位では「1.5~3%」
程度が目安になりそうだ。
例えば、検索順位が6位でクリック率が1%など、目安との乖離が大きい場合は、改善の余地があると考えて良いだろう。
1.5.検索ボリューム×クリック率で測る集客効果予測の実例
ここで実際にどのくらいの集客力があるのかを予測してみよう。
「集客力=自社サイトへの流入量」と定義すると、以下のような式が建てられる。
- 集客力=キーワードの月間検索ボリューム×検索順位ごとのクリック率
ちなみに「キーワードの月間検索ボリューム」は、SEO対策ツールで確認できる。
これにクリック率をかけると「実際の流入量」を予測できる。
以下は、「ファネル分析(月間検索数1900)」における集客効果予測だ。
なお、クリック率は「First Page Sage(2024年)」を採用した。
ファネル分析(月間検索数1900)
キーワード:
ファネル分析 |
クリック率
First Page Sage(2024年)」 |
推定集客力
(推定流入数) |
1位 | 39.8% | 756 |
2位 | 18.7% | 355 |
3位 | 10.2% | 194 |
4位 | 7.2% | 137 |
5位 | 5.1% | 97 |
6位 | 4.4% | 84 |
7位 | 3.0% | 57 |
8位 | 2.1% | 40 |
9位 | 1.9% | 36 |
10位 | 1.6% | 30 |
このように実数で見ると、「検索順位ごとの集客力」がイメージしやすくなる。
月間検索ボリュームもクリック率も実測値ではないので仮定ではあるが、「マーケティング施策としてのSEO対策がどの程度の集客力を生むか」を他者に説明する際に活用できるだろう。
2.クリック率の確認方法
検索順位ごとのクリック率を確認する方法としては、以下3つが挙げられる。
2.1.Google Search Console
Google Search Consoleでは、「検索パフォーマンス」レポートを利用することで、クリック率だけでなく、インプレッション数やクリック数、検索順位も確認可能である。
まずGoogle Search Consoleにログインし、対象のプロパティを選択する。
次に「パフォーマンス」セクションに移動し、期間やデバイス、地域などのフィルタを設定して分析を進める。
レポート内の「クエリ」タブを開くと、検索キーワードごとのクリック率(CTR)を具体的に確認できる。
2.2.サードパーティのSEOツール
SISTRIXやAhrefs、SEMRushといったサードパーティのSEOツールでもクリック率を確認可能だ。
これらのツールはGoogle Search Consoleと連携し、データを可視化することで高度な分析を提供する場合が多い。
また、リッチスニペットの活用状況やクリック率に影響を与える要因も併せて分析可能だ。
一部のツールでは、過去のデータを保存してトレンドを追跡する機能も提供されており、クリック率の改善に活用できる。
2.3.広告プラットフォームの機能
Web広告の場合は、Google AdsやFacebook Adsなどの広告プラットフォームを活用しよう。
広告プラットフォームでは、インプレッション数とクリック数から自動的にクリック率が計算されている。
さらに、キーワードやターゲティング設定によってクリック率がどのように変化するかも詳細に分析可能だ。
たとえば、Google Adsでは「検索用語レポート」を活用することで、特定のキーワードやフレーズがどれほど効果的かを把握できる。
3.クリック率は検索順位に影響するのか?
ここまでは「検索順位ごとのクリック率」について解説してきた。
検索順位とクリック率には正の相関があり、検索順位が上がるとクリック率も大きくなる。
ではこの逆、つまり「クリック率が上がると検索順位も上がる」という説についてはどうだろうか。
結論から述べると、クリック率の上昇は、検索順位に良い影響を与える可能性が高い。
まず、Googleの公式見解から見ていこう。
Googleの公式見解として「クリック率が検索順位に直接的な影響を与える」という情報はない。
参考:https://developers.google.com/search/docs/appearance/ranking-systems-guide?hl=ja
ただし、この公式見解を覆すような説がある。
この説は「Navoost」と呼ばれる順位変動のシグナルに関するものだ。
米国のSEO業界では、2023年頃から検索順位変動のシグナルのひとつとして「Navoost」というアルゴリズムが注目されている。
Navoostは過去13か月間のユーザー行動を学習し、よくクリックされるページがニーズを満たしていると判断する。
ちなみにNavoostは2017年以前から存在していて、当時は過去18か月を対象としていた。
しかし2023年の情報では直近13か月(つまり約1年)を対象としている。
この内容は、米国の反トラスト聴講会の内容から明らかになったとされる。
参考:https://www.blindfiveyearold.com/what-pandu-nayak-taught-me-about-seo
近年のGoogleは、「ユーザーニーズの充足」「ユーザー体験の向上」をランキングアルゴリズムの重要要素としている。
ユーザーニーズや体験に深く関係する「クリック」という行動が、アルゴリズムに組み込まれていても何ら不思議ではない。
つまり、クリック率も検索順位の決定に何らかの影響があると考えるほうが自然なのだ。
4.クリック率と実際の集客力を高める方法
このようにクリック率は、検索順位と集客力の向上に深く関係する。
ここで注意したいのは「クリック率だけ」に注力した施策にとらわれないことだ。
クリック率はあくまでも「変数」や「指標」のひとつだからだ。
クリック率が高いに越したことはないが、その目的は集客(自社のコンテンツにアクセスしてもらうこと)である。
このことを踏まえ、「クリック率対策」と「集客力対策」の2軸でマーケティング施策を練っていこう。
4.1.既存コンテンツのクリック率を上げたい場合
クリック率対策は、「既存コンテンツ」に対して行われることがほとんどだ。
この場合の施策としては、以下2つが挙げられる
- タイトルとディスクリプションの改善
- 構造化データによるリッチリザルト(目立ち度の向上)
タイトルとディスクリプションの改善
検索結果で目立つためには、タイトルとディスクリプションが非常に重要である。
文字数を意識して「タイトルの前半25文字程度まで」に要旨をまとめることを心がけよう。
また、検索キーワードを自然に組み込み、数値やメリットを具体的に組み合わせる。
タイトルの工夫については、以下の記事も参考にしてみてほしい。
加えてディスクリプションでは、コンテンツの価値やユニークさを簡潔に伝えたい。
構造化データによるリッチリザルト(目立ち度の向上)
タイトルやディスクリプションは「対ヒト」を意識した施策だ。
これに対し、構造化データは「対ロボット(検索エンジン)」を想定した施策だ。
構造化データを使うことで、検索結果にリッチリザルトが表示される可能性が高まる。
リッチリザルトとは、文字どおりリッチ(豊富)な検索結果であり、数値ベースの評価や質問と回答、製品情報などが表示されることを指す。
リッチリザルトは検索結果での目立ち度を上げ、クリックを促す効果がある。
このリッチリザルトを実現するためには、構造化データを用いて検索エンジンに「データの意味」を理解させなくてはならない。
構造化データについては、下記ページでも解説している。
4.2.集客力を上げたい場合
クリック率よりもダイレクトに「集客力」を上げたい場合は、以下のような施策が有効だ。
- 強調スニペットへの表示を目指す
- ロングテールキーワードへの注力
強調スニペットへの表示を目指す
強調スニペットとは、検索1位の上に表示されるボックスで、「検索0位」とも呼ばれる。
強調スニペットのクリック率は1位よりも高く、40数%であるとされる。
前述のように一般的なクリック率は検索1位でも30%程度なので、強調スニペットが持つ集客力はかなり強い。
弊社でも、検索ボリューム1万以上のキーワードで強調スニペットを獲得した経験があり、その集客力は十分に理解している。
ただし強調スニペットへの表示は非常に難易度が高い。
検索キーワードの競合状態やビジネストレンドの傾向、コンテンツをアップするタイミングなど「運」の要素も絡むため、意図的に表示させるのは至難の業だ。
そこで弊社では、強調スニペットや検索上位を狙いつつ、ロングテールキーワードへの対策も並行する方法をおすすめしている。
ロングテールキーワードへの注力
ロングテールキーワードとは、「長期的に、尾を引くように一定の検索ニーズが発生しているキーワード」だ。
ロングテールキーワードの大半は、月間検索ボリュームが3桁程度の「スモール、ミドルキーワード」だ。
このロングテールキーワードは、検索ボリュームに反して優秀な集客力を持つとされる。
なぜなら「検索順位が下がっても、クリック率が落ちにくい」からだ
一般的なミドル・ビッグキーワードは、検索順位が落ちるとクリック率も大幅に落ちる。
特に1位→2位、2位→3位の落ち方は大きく、「1位でなければ意味がない」と言われることもある
一方でロングテールキーワードは、2位以降のクリック率低下が非常にゆるやかだ。
裏を返すと、2位以下のクリック率がかなり高い。
10位~15位以内に入っていれば、それなりに集客(自社サイトへのアクセス)が見込めるのだ。
また、ロングテールキーワードでは、コンテンツの品質さえしっかりしていれば、比較的容易に上位表示ができる。
集客量を稼ぐためにはコンテンツの数を増やす必要があるが、計画的に集客力を高められるというメリットがある。
5.まとめ
本記事では、検索順位とクリック率の関係性や、クリック率と集客力を高めるための施策を解説してきた。
検索順位とクリック率には正の相関関係があり、検索順位を上げると集客力も高まる。
また、検索10位以内にランクインしていて、クリック率が1~3%未満の場合は改善の余地があると考えよう。
計画的に集客力を高めたいのであれば、検索順位を上げやすく、クリック率が下がりにくいロングテールキーワードへの注力も検討したい。