BtoBのオウンドメディアは売上や受注への貢献が求められる。
売上や受注を増やすためには、まず「集客」が成立している必要がある。
一方で、BtoBの集客はBtoCよりも難易度が高く、効果が出にくい。
特に、リードを持っていない状態での集客は時間を要しがちだ。
「オウンドメディアを始めるので、集客方法を押さえておきたい」
「オウンドメディア運用を開始したが、集客がうまくいかない」
「記事の制作や公開以外に何をすれば良いか分からない」
本記事では、上記のような課題を持つ方々に対し、BtoBのオウンドメディアにおける集客方法や集客につながるコンテンツの内容、コンテンツを制作のポイント、マネタイズ例などを詳しく紹介していく。
1.成果につながるオウンドメディアの集客方法とは
まず、一般的な「オウンドメディアの集客方法」を整理してみよう。
まずは一覧で確認し、以降で1つずつ紐解いていこう。
検索流入 | SNS | Web広告 | 動画プラットフォーム | メルマガ | |
---|---|---|---|---|---|
内容 | ペルソナとジャーニーに沿ったコンテンツ制作 潜在ニーズを捉えたコンテンツSEOで長期で効果が見込める |
SNSアカウントからの流入 BtoBでは「バズ」の効果が限定的 |
信頼性の高いメディアへの出稿ならば活用すべき | BtoB関連動画の再生数が小さく流入が見込みづらい オウンドメディアへの流入とは経路が異なる |
ナーチャリング向き ゼロベースでの集客は効率が悪い |
効果 (短期/長期) |
△/◎ | ×/△ | ◎/△ | △/△ | △/○ |
コスト | 中 | 低~中 | 高 | 高 | 中 |
集客方法1.検索流入
検索流入による集客は、いたってシンプルだ。
質の高いコンテンツを制作し、継続的にオウンドメディアへアップし、検索上位を目指す。
検索流入は、BtoBのオウンドメディアにおける集客の大本命だ。
特に、SNSや動画プラットフォームからの流入があまり望めないBtoBでは、検索流入を地道に育てることが、数年後の大きな成果につながる。
ただし、ただ検索上位を目指すのではなく「具体的な顧客増」を想定してコンテンツを制作していこう。
どういうことかというと、読み手の属性を細かく定義し、そこから導き出されるキーワードに沿ってコンテンツを制作するのだ。
端的に言えば「ペルソナ」と「カスタマージャーニー(サーチジャーニー)」に沿ったコンテンツ制作が重要になってくる。
ペルソナとジャーニーによって導き出されたキーワードは、見込み客の状況を把握する重要なヒントだ。製品を「いますぐ欲しい」のか、「欲しいと思っているが、必要性は低いのか」など、「欲求」と「必要性」の間に揺れる顧客の姿が見えてくる。
見込み客に正しく届くコンテンツを積み重ねることで、徐々にではあるが確実に検索流入が増大していく。
集客方法2.SNS
SNSからの流入は、近年特に力を入れる企業が増えた印象だ。
しかし、BtoBにおいてはそれほど効果が見込めない。
その理由としては、以下が挙げられる。
- そもそもSNSでBtoB取引の相手を探したり、情報収集を行う企業が少ない。
- BtoCでは絶大な効果があるとされる「バズ」の要素が、必ずしもプラスに働かない。
そもそもSNSの流入は「インプレッション」と「拡散」に依存する部分が多い。
この2つを後押しするのは「話題性」や「物珍しさ」「意外さ」などである。
一方で、BtoBで重視されるのは「安定性」「信頼性」「実績」であり、過度に耳目を集めようとする行為がマイナスに働くこともある。
SNSアカウントの運用はマイナスではないが、オウンドメディアへの集客経路としては期待しないほうが良いだろう。
集客方法3.Web広告
Web広告は、使い方によっては絶大な効果をもたらす。
しかし、それはターゲットの設定やチューニング、投下予算などのバランスが良好な場合だ。
短期間での集客という点では優れているが、中長期でコストパフォーマンスを計算すると成功とは言えないケースも多い。
弊社としては、オウンドメディアの集客と広告の集客は別の軸で考えるべきであると考えている。(もちろん時には併用も検討する。)
ただし、被リンクを獲得するために、信頼性の高い媒体に広告を出し、オウンドメディアへの動線を作るという方法は効果がある。
これは誘導先のオウンドメディアが整っている(質の高いコンテンツが蓄積されている)場合には有効だといえる。
外部メディアへの露出を狙う場合は、そのメディアのイメージが自社に合致しているかなどの「見極め」が必要となるが、心当たりがあるならば積極的に活用していこう。
集客方法4.動画プラットフォーム
BtoBでは動画プラットフォームからの集客にも、過度な期待はできない。
その理由は、BtoBに属するキーワードでプラットフォーム内を検索していただければすぐに理解できるだろう。
BtoB関連の動画は再生数が非常に少ない。
BtoCに属する商材に比べると、10~100分の1の再生回数が相場だ。当然のことながら、アカウントのお気に入り登録者数も少ない。
動画プラットフォームでBtoBに関する話題を検索しているのは、「リサーチしても答えがよくわからなかった」人々だ。
つまり、すでにGoogleの一般検索などで一通りの情報は得ており、さらに一歩踏み込んだ「有識者による深い解説」を求めている。
そのため、集客というよりは「獲得済みリードに対するナーチャリング」などの効果のほうが高い。
集客方法5.メルマガ(MAから配信)
メルマガについても、ゼロベースで集客するという意味では、あまり効果がない。
メルマガに設置したURLのクリック率は数%台だといわれている。
そこからオウンドメディアへの流入、リード獲得となればさらに数は少なくなる。
また、スパムとして振り分けられてしまうと、逆にアプローチ不可能な状態になってしまうため、リスクも伴う。
こちらも、既存顧客や獲得済みリードに対するナーチャリングという文脈で考えたほうが期待値は高いだろう。
2.オウンドメディアの集客はコンテンツの質で決まる
BtoBにおけるオウンドメディアの集客方法を整理してみると、「コンテンツの質を上げて検索流入で稼ぐ」という方法に徹すべきだとわかる。
そこで、オウンドメディアの集客を左右する「コンテンツの質」を高めるためのポイントを紹介する。
2.1.コンテンツの質とは何か
まず「コンテンツの質」について定義しておこう。
弊社では以下のような特徴を持つものを「質の高いコンテンツ」としている。
- 納得感のある情報を提供し、信頼を得られるコンテンツ
- 新たな視点や視座を提供するコンテンツ
- オンラインには出回りにくい希少性の高いコンテンツ
- 実務者の目線で作られた、具体的で正確な情報を含むコンテンツ
- 潜在ニーズを刺激するコンテンツ
特に最後の「潜在ニーズ」には十分に配慮したい。
ご存じのとおり潜在ニーズは「本人も気が付いていない本質的な痛み(必要性)」である。
「必要なのに気が付いていないのか?」と疑問に思うかもしれない。
ここで言いたいのは「今感じている必要性が、本質をついたものかどうか」だ。
「とりあえず今すぐに必要なもの」をニーズだと勘違いしがちだが、その奥に潜む根本的な必要性にまで到達できていないことが多い。
だからこそ「潜在」と表現しているのだ。
潜在ニーズを刺激するコンテンツは、キーワードと自社製品・サービスをつなげる導線になりうる。
キーワードから直接連想しにくい製品であっても、潜在ニーズに絡めることで興味・関心の対象になるからだ。
潜在ニーズについては以下の記事で詳しく解説している。
2.2.逆に、質の低いコンテンツとは?
潜在ニーズに配慮した高品質なコンテンツを、ゼロから作るのはノウハウや労力面からハードルが高くなるというのが現実だ。
ただしその逆、つまり「質の低いコンテンツ」を回避することは可能だ。
質の低いコンテンツとは、端的に言えば「離脱率が低く、コンテンツスパムと誤解されかねない」コンテンツだ。
具体的には、以下が挙げられる。
- 顕在ニーズ(表面的な○○したい)だけにフォーカスした内容で、読者が本当に解決したいことの手助けにならないコンテンツ
- 上位記事の見出し構成や内容を模倣しまとめただけのコンテンツ
- 独自の視点や見解、具体的なノウハウ、例、数値などを一切含まないコンテンツ
こうしたコンテンツの量産は、一時的な集客にはつながるかもしれない。
ただし中長期的に考えると、オウンドメディアだけでなく自社の評価・信頼性が低下するおそれがある。
自然と投資対効果も低くなり、売上や受注へ貢献しない「お荷物」になりかねないため注意しよう。
3.SEOも考慮した良質なコンテンツを作成するポイント
とはいえ、質の低いコンテンツの量産にも一定の効果はある。
短期間とはいえ検索上位に露出すれば、集客効果があるからだ。
そこで弊社では、SEOにも配慮した質の高いコンテンツの制作をおすすめしている。
具体的には次のようなポイントを押さえつつ制作に臨みたい。
ポイント1.ペルソナを煮詰める
優れたコンテンツは、想定読者に価値を届けるものである。
これを実現するためには、ペルソナを具体化し、顧客の詳細な「像」を把握することが重要である。
ポイント2.顕在ニーズと潜在ニーズを整理する
ペルソナ設定においては、顕在ニーズと潜在ニーズを整理することが肝要だ。
特に潜在ニーズの把握は、ペルソナに新たな気づきを与える機会を提供する。
ポイント3.ジャーニーを設計する
カスタマージャーニーやサーチジャーニーの設計は、ユーザーの認識の変化をまとめ、意識変遷を先回りしたコンテンツを提供するために不可欠である。
ポイント4.「ヌケ・モレ」を特定する
競合コンテンツの分析を行い、視点や情報の漏れを発見し、それを埋める。
ポイント5.キーワード出現数や共起語を重視しすぎない
現代のコンテンツSEOでは、キーワードの出現数や共起語の数はそれほど重視されない。
これらはタイトルや見出し程度に意識するに留めるべきである。
ポイント6.SEOで露出させ、質で読ませる
従来型のSEOを完全に無視することはできないが、検索エンジンに読ませる部分と人間に読ませる部分のバランスをとることが必要である。
ポイント7.エバーグリーンコンテンツを狙う
エバーグリーンコンテンツ、つまりトレンドに左右されない永続的な話題のコンテンツは、質が高く、中長期的に検索上位を獲得する傾向にある。
質の高いコンテンツについては、下記の記事も参照してみてほしい。
4.オウンドメディアの集客に要する時間とは
次に、オウンドメディアでの集客に要する時間についても紹介しておこう。
4.1.成果を出すには1〜3年の取り組みが必要
BtoBのオウンドメディアで、ゼロから集客を行う場合は、効果が表れるまでに半年~1年以上の時間を要する。
また、最低でも月に5~8記事のコンテンツをアップするなど、定期的な更新と記事の蓄積が求められる。
月2本のようなペースで制作する会社も多いが、これは成果につながりにくい。
まずは100記事を貯めることを目標に、1年~3年のスパンで集客に取り組んでほしい。
4.2.Web広告の活用も視野に
もし、「今すぐリードが欲しい!」ということであれば、「Web広告」で一気に流入を増やしたうえで、「ホワイトペーパー」や「セミナー」に着地させるといった施策がおすすめだ。
広告は「蛇口を一気に緩める」行為と似ており、内容はともかくとして流入量は確実に増える。
短期間での流入は必ずロスが出るが、ホワイトペーパーやセミナーでしっかり受け止められれば、一定の「客」が生まれる。
5.オウンドメディアのマネタイズ例
集客が期待できるようになれば「マネタイズ」も進めやすくなる。
基本的にこの2つはセットで考えるべきだ。
マネタイズまで計画できれば、社内稟議も通りやすくなる。
以下は、オウンドメディアにおけるマネタイズ計画の例だ。
マネタイズ例1.社内にリードがない場合
リードを保有していない場合は、向こう3年程度のスパンで計画を立てよう。
以下は、基幹系のソフトウェアのマネタイズ計画の一例だ。
<前提条件>
- CVR(1%)
- 有効商談率(10%)
- 契約率(40%)
- 契約単価(500,000円)※月額
1年目 | 2年目 | 3年目 | |
---|---|---|---|
問い合わせ数 | 100 | 130 | 170 |
有効商談数 | 10 | 13 | 17 |
契約数 | 4 | 5 | 7 |
売上目標(月) | 200万円 | 450万円 | 800万円 |
売上目標(年間) | 400万円 | 3900万円 | 7500万円 |
費用(年間) | 1800万円 | 1800万円 | 1800万円 |
利益目標(年間) | ▲1400万円 | 2100万円 | 5700万円 |
この例からもわかるように、大抵の場合、初年度は「投資期間(赤字)」になり、2年目以降で「マネタイズ」が成功し始める。
BtoBでは販売サイクルや顧客の態度変容にかかる期間が長いため、初年度から黒字という計画は現実味がない。
マネタイズ例2.社内にリードが蓄積されている場合
逆に社内にリードが蓄積されている場合は、初年度から黒字になる可能性が大いにある。
数百~数千など一定以上の母数が必要だが、MAなどからコンテンツを配信してナーチャリングしていくことで、初年度から受注につながる可能性がある。
SEOによる集客を考慮する必要がないのであれば、顧客の課題解決に焦点を置いたコンテンツの制作のみで済むため、コンテンツの制作コストもおさえられる。
SEOでの検索流入に重きを置いたオウンドメディアのように、短期間で大量のコンテンツを制作する必要がないからだ。
5.まとめ
ここでは、オウンドメディアの集客方法について解説してきた。
BtoBのオウンドメディアは、動画やSNSからの流入はあまり見込めず、検索流入をしっかり育てることが大切である。
また、検索流入は「量」よりも「質」が重要であり、PV至上主義からは脱するべきだろう。
オウンドメディアでの集客は年単位で取り組むべき施策であるため、スタートからしばらくは投資の期間が続く。
しかし、集客の質が良ければ結果(売上、受注)はついてくる。
苦しいスタートの時期を乗り越えるためにも、外部企業によるサービスの利用を検討してみてはいかがだろうか。
弊社では、ITやテクノロジー分野の専門知識やスキルを持つスタッフにより、IT企業のマーケティング支援やオウンドメディアの構築支援、記事制作支援などを提供している。
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