BtoBでの集客はオンライン、オフラインの両方で行うことが一般的だ。
ただし近年はオンライン上での集客方法に特化した企業が成功をおさめるケースが多い。
オンラインを中心とした集客は、コンテンツマーケティングやSEOなど複数の戦術を用いる。
そこで重要になるのがこれらの戦術をどのように組み合わせ、どのように進めていくか、つまり「戦略」だ。
この記事では、
「自社に適した集客方法の選び方がわからない」
「集客戦略を立案するノウハウがなく、無駄な投資が発生しないか不安である」
「長期的なビジネスの成長につながる集客戦略を確立したい」
などの課題を抱えるマーケティング担当者や経営者に向け、BtoBでの集客戦略の基礎と実践方法を詳しく解説する。
1.集客の目的は「人を集めること」ではない
BtoBでの成果につながる集客戦略を立案するためには、集客の「目的」を理解する必要がある。
ご存じの方も多いだろうが「集客=人を集めること」ではない。
集客とは「顧客になり得る対象」を集めることだ。
具体的には、下記4つの目的がある。
- 「売りやすい」見込み客を引き寄せること
- 新規顧客の獲得
- LTVの増大
- 認知拡大
順に詳しく見ていこう。
1.1.「売りやすい」見込み客を引き寄せること
集客の最も重要な目的は「売りやすい見込み客(将来の顧客候補)」を集めることだ。
新規・既存に関わらず、「自社の製品やサービスを使ってくれそうな対象」をターゲットにする。
言い換えれば、自社の製品やサービスとの親和性が高い層を引き寄せることが集客の第一歩だ。
また、BtoBマーケティングでは、BtoCと比較して専門性の高い商材を限定された層に提供する傾向が強く、集客の難易度は高いと言える。
オンライン・オフラインを含めた複数の戦術を使い分けたり、予算と成果のバランスを考えてリソース配分を行ったりと、さまざまな工夫が必要だ。
BtoBマーケティングにおける集客のポイントについては、下記でも詳しく解説しているため参考にしてみてほしい。
1.2.新規顧客の獲得
一般的な集客の目的としてよく知られるのが「新規顧客の獲得」だ。
既存顧客を参考にしながら、ターゲットやペルソナを明確にし、そこに向かってさまざまな集客戦術を実行していく。
ただし、集客の段階では、顧客の前段階である「見込み客の候補(≒リード)」の獲得がメインになると言って良い。
実際に顧客となるまでには、リード獲得の後に、ナーチャリングやクオリフィケーションという複数のプロセスを経るためだ。
ただしもちろん、初めに獲得するリードの質によってナーチャリングやクオリフィケーションの効率やコンバージョン率も変化するため、非常に重要なフェーズであることには変わりない。
1.3.LTVの増大
集客は既存顧客も対象にする。
BtoBでは顧客の絶対数を増やすことよりも、既存顧客のLTVを向上させる方が利益率が高いためだ。
具体的には、アップセル、クロスセルへのアプローチや、リピートを狙った施策が中心となる。
1.4.認知拡大
端的に言えば、認知拡大は「とにかく知ってもらうこと」であり、集客は「使ってみたいと思わせること」だ。
ただし、別の概念ではなく、両者の目的は連続している。
認知されていなければ集客にも結びつかないためだ。
認知拡大がうまく進むことでスムーズに集客が行われ、また認知が拡大する。
その結果、次の集客がやりやすくなるという具合に、正の相互作用が働く。
2.集客戦略の立案ステップ
次に、集客戦略を立案する具体的なステップを見ていこう。
戦略とは「ある目標を達成するために必要な方向性や戦術を定めたもの」といえる。
前章で解説した集客の目的を達成するには、あらゆる戦術の性質や効果を理解し、それらを適切に組み合わせること、つまり「戦略の立案」が必須である。
難しい印象を持つかもしれないが、やるべきことはシンプルだ。
前提:「SMARTの法則」を意識
まず、戦略立案のための予備知識として「SMARTの法則」を知っておこう。
SMARTの法則を前提とすることで、「具体的で」「定量化された」「実現可能性の高い」戦略を立てることにつながるからだ。
SMARTは、組織の目標設定におけるフレームワークである。
1981年にGeorge T. Doran(ジョージ・T・ドラン)氏が公開した論文で提示され、近年はマーケティングの分野でも活用され、集客戦略の設定においても極めて有用だ。
S(Specific:具体的に)
M(Measurable:測定可能に)
A(Achievable:達成可能に)
R(Relevant:関連的に)
T(Time-bound:期限を決めて)
具体的(Specific)
「次の四半期でオンラインでのリード獲得数を現状の月平均から20%増加させる」といった具体的な目標を設定することで、集客施策の方向性やリソース配分の精度を高めることができる。
測定可能(Measurable)
「ランディングページのコンバージョン率」や「ウェビナー参加者数」など、具体的な数値で測定できる目標を設定する。
測定可能な目標は、改善の必要性や次に取るべきアクションを示す指標となり、改善策の解像度も大きく高まる。
達成可能(Achievable)
予算、時間、リソースを考慮し、現実的に達成可能な目標を設定することが重要である。
例えば、集客担当が1~2人にもかかわらず「月間リード数を10倍にする」といった目標を立てても実現可能性は低い。
達成可能な目標を設定することで、集客活動のモチベーションを維持しやすくなる。
関連性がある(Relevant)
集客目標は、組織の全体的な戦略やビジョンと関連している必要がある。
組織の目指す方向性と集客目標を一致させることで、全体の成果を最大化することができる。
時間に基づいた(Time-bound)
集客目標には、明確な期限を設けよう。
期限を設定することで、明確なスケジュール設定が行え、効率よく目標達成に向けて行動できる。
また、時間的なプレッシャーも生まれ、実行力が高まるだろう。
ステップ1.目標(ゴール)の設定
以上の前提を踏まえたうえで、まずは目標(ゴール)を設定しよう。
目標がなければ、必要な戦術もリソースも具体的に設定することができない。
戦略立案のノウハウがない場合は、定量的に表せる目標を設定しよう。
集客という点でいえば、「新規リードの獲得数」「名刺情報の獲得数」「オウンドメディア経由での問い合わせ数」などが適当となる。
- 集客戦略における目標(ゴール)の例
-
- 次の四半期で新規リードを300件獲得する
- 名刺情報を現状の4倍に引き上げる
- オーガニック検索によるサイト訪問者数を月間2000件、リード転換率を2倍にする
ステップ2.集客対象の具体化
次に、集客対象、つまり集客のターゲットを具体化しよう。
これは「自社製品やサービスと親和性が高い人物及び企業像の炙り出し」ともいえる。
既存顧客を分析し、成約やリピートに至りやすい企業や担当者の特徴を洗い出そう。
顧客の業界や企業規模のみならず、「問い合わせ時に抱えていた課題」や「初回コンタクト時の担当者の特徴」などの情報もまとめておこう。
こうした情報を満たしたペルソナは、自社製品・サービスを使ってくれる可能性が高いためだ。
また、集客対象を具体化することは、後述するステップ3の「何を売るか(自社価値の把握)」と密接に関わる。
「売るもの(価値)」と「価値を感じてくれそうな対象(集客対象)」の検討を何度も往復することで、適する施策や訴求メッセージが明確になってくるためだ。
一度で完成させるのではなく、ステップ3と交互に繰り返しながら精度を高めていこう。
ステップ3.「何を売るか」を明確にする
集客戦略の立案で意外と見落とされがちな工程が「自社が提供する価値」の定義だ。
「何を売るか」つまり「自社が提供する価値は何か」を明確にすることで集客の精度が上がる。
ここで言う価値とは「製品やサービスそのもの」ではない。
顧客視点を徹底し「どの機能がどのような課題を解決するか」を定義することだ。
例えば、「請求決済の自動化サービス」を利用する企業の課題として「月末のリソース不足」や「担当者が専任でないことによる業務遅滞」などが挙げられる。
この場合、自社が提供する価値は「リソース不足や業務遅滞の解決」と定義できる。
自社製品やサービスが持つ機能と、顧客の悩みや課題を紐づけることで「提供価値」が見えてくるだろう。
提供価値を具体化するフレームワークとして「バリュープロポジションキャンバス(以下、VPC)」もおすすめだ。
VPCを作成することで、顧客が抱える悩みや課題と自社の提供価値を紐づけが明確になる。
VPCの作成方法については、下記の記事で解説している。
繰り返しになるが、提供価値は、上述のステップ2で紹介した集客対象とセットで考えよう。
また、集客の戦術となる記事コンテンツやホワイトペーパーの内容、ウェビナーのテーマなどに直結するため、調整を繰り返していこう。
ステップ4.集客方法のピックアップと選定
このステップでは「戦術の選定」を進める。
一般的な集客戦術としては、以下が挙げられる。
- コンテンツSEO
- Web広告
- 展示会
- セミナー・ウェビナー
- オフライン広告
- メルマガ
コンテンツSEO(オウンドメディア、ホームページ)
コンテンツSEOでは、ペルソナの精緻化やキーワード選定、E-E-A-Tに準拠した高品質なコンテンツ作成を行い、検索結果からの集客を加速する。
キーワードやコンテンツの内容によっては、市場に存在する全ての顧客セグメントに対して、広告に頼らない長期的な集客力を高められる点が特徴だ。
Web広告
BtoBの集客に使われるWeb広告は、主に以下3つだ。
- リスティング広告
指定したキーワードで検索したユーザーに表示される。顕在層向け。 - SNS広告
SNS上で配信される広告。潜在層~顕在層向け。 - リード保証型広告
成果保証型の広告。潜在層から顕在層までの全セグメント向け。
一般的にWeb広告では、費用を投じれば一定のインプレッションが得られるため即効性が高く、短期間での集客に向いている。
長期目線での効果が大きいコンテンツSEOと併用して取り組むことがおすすめだ。
展示会
オフライン集客の代表格であり、1~3日で50~200件程度の集客が見込める。
対面であることから信頼性を担保しやすく、長期にわたって相手の記憶に残りやすい。
セミナー・ウェビナー
セミナー・ウェビナーは、テーマを明確かつ具体的にすることで、濃いニーズを持った実務者を集客することができる。
特に、現代ではパンデミックを経て、ウェビナーが急速に普及した。
ウェビナーは物理的・時間的な制約が少なく参加のハードルも低いため、BtoBの集客施策の中でも量と質のバランスが良い。
ウェビナーの集客には、ビジネスと親和性の高いLinkedInやFacebookのディスプレイ広告などを活用するケースが多くみられる。
オフライン広告
オフライン広告は、現在でも有効な集客方法だ。
特に交通広告のように、都市部のビジネスパーソンに向けた訴求力を持つものは前向きに検討したい。
電車やタクシー、バス利用時の移動時間に何気なく目に触れるため、自然な形で認知度を高めることができる。
メルマガ
メルマガは、リストさえ入手できればコストパフォーマンスの高い集客方法だ。
近年はメルマガにURLを貼り、オウンドメディアやウェビナーへ誘導するという戦略を取る企業が多い。
単体で運用するよりも、他の集客方法の呼び水として活用したほうが効果を得やすいだろう。
複数の戦術を組み合わせる
このように、あらゆる集客方法が存在するが実際には、自社製品・サービスや集客対象の性質によって、適切なものを選定していかなくてはならない。
まだノウハウや実績が積み重なっていない場合、コンテンツSEOやウェビナーなどのオンラインを中心とした集客方法がおすすめだ。
オンラインの集客方法は「効率」「定量化」という点で優秀であり、手早く実行し、最適化を進めやすい。
3.BtoB企業が押さえるべき集客戦略のポイント
ここまでの内容は、一般的なBtoBの集客戦略について述べてきた。
ここからはさらに実際に集客戦略を実行する際のノウハウを解説する。
ポイント1.「誰を対象とするか」をさらに具体化する
BtoBでは、意思決定の場に関与する人間が多い。
一般的には業務担当者の影響力が強いが、実際に契約するとなれば財務担当者や技術担当者などの意見も聞く必要がある。
集客の際には、これら複数の関与者が持つニーズにも焦点を当てたい。
そのうえで、「誰を(どのニーズを)ターゲットとして集客するか」を決定しよう。
下記の図のように集客対象候補の企業の内情を整理し、図に起こすと分かりやすい。
経営幹部を集客対象とする場合は、月・年単位での業務効率向上を訴えるべきだろう。
一方で、業務担当者ならば「業務負荷の軽減」「ミスの削減」などが耳目を集めやすい。
同じように技術担当者ならば「既存システムとの親和性」、財務担当者ならば「イニシャルコストもしくはランニングコストの小ささ」の訴求が集客につながる。
このように組織内の誰をターゲットにするかでニーズが変化し、それに伴って「提供価値」を変えていくことがポイントだ。
ポイント2.複数のチャネルで、高頻度にアプローチする
BtoBでの集客は、複数のチャネルの活用を前提としよう。
BtoBの集客対象は、信頼性や実績を重視するため、大げさな広告やキャッチコピーは逆効果になることもある。
どちらかと言えば、的確な訴求を頻繁に行うほうが成果につながりやすい。
具体的には、
- コンテンツSEOによって検索結果の上位に表示させる
- Web広告をサービスページやオウンドメディア、LPに着地させる
- 展示会やウェビナーを定期的に開催する
- 上記の施策に関する案内をメルマガで発信する
などの対策が有効だろう。
ただし、これらの成果を着実に出すためには、SEOやWeb広告の運用など、専門的なノウハウが必要となる。
場合によっては、外部の支援も検討に入れながら戦略の立案・実行を進めていこう。
ポイント3.効率性と信頼性を両立させる
オンライン中心の集客戦略は、オフラインよりも効率的だ。
一方で、信頼性の面ではどうしても不足する部分がある。
対面の要素がない、双方向のコミュニケーションがとりにくいなどの弱点があるからだ。
裏を返せば、これらオフラインの要素を取り込むことでオンラインの集客が強化される。
例えばウェビナーがよい例だ。
ウェビナーはオンラインの施策でありながら、疑似的な対面の要素と双方向性を実現している。
ウェビナーの有効性については、こちらでも詳しく解説しているので参考にしてほしい。
ポイント4.データドリブンを前提とする
長期的に成果につながる集客戦略には、定量化と可視化が欠かせない。
つまり、「データドリブン」な戦略にするための環境が必要なのだ。
データドリブンな集客戦略を実現するためには、ITツール・システムの活用が不可欠だ。
顧客行動の可視化とマーケティングプロセスの自動化を促進する「MA」や「CRM」の活用はマストだろう。
近年はCRM、MA、SFAの融合が進んでおり、製品ごとに特長が異なる。
ポイント5.コンテンツは起点であり終点とする
長期的な集客効果という点で、コンテンツSEOはとても優れている。
コンテンツSEOを施したオウンドメディアやホームページは、集客の入り口であると同時に、CVを促す終点にもなるためだ。
また、検索結果への上位表示が安定すれば、広告に頼らなくとも長期的な集客が実現する。
Web広告と比較して即効性は低いものの、長期的な成長を見据えてコンテンツの質は可能な限り高めておこう。
4.まとめ
BtoBにおける集客戦略の基礎と実践ポイントを紹介してきた。
BtoBでの集客は、単に「人を集める」のではなく「確度の高い層」をどれだけ集められるかが重要である。
製品やサービスそれぞれの分野に特化しており、そもそもターゲットの母数が少ないため、精度を意識した戦略立案が必須となる。
集客といえば広告が思いつきやすいが、広告費だけを増やしても集客は進みにくい。
コンテンツSEOやウェビナー、展示会などオンライン/オフラインの戦術を併用しながら長期的な視点で戦略構築を進めていこう。