ブランディング戦略の構築・実践9ステップを徹底解説

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ブランディングの強化を図りたい企業は多いが、十分に取り組めている企業は少ないのが事実だ。

中小企業白書(*)によると、BtoB企業のうち、ブランドの構築・維持のための取り組みを行っているのは34%に過ぎない。

戦略立てやリソース・コスト配分のノウハウがなく、一歩を踏み出せない企業も多いのではないだろうか。

そこで本記事では、ブランディング戦略の概要や具体的なステップ、成功のポイントについて解説していく。

*出典:中小企業庁(2022)「中小企業白書 第1節 ブランドの構築・維持に向けた取組」

 

1. ブランディング戦略とは

 

ブランディング戦略とは、企業が自社の製品やサービス、企業そのもののイメージを市場において強く印象付けるための一連の計画だ。

顧客に企業やブランドの価値観や特徴を理解してもらい、強固な関係を築くことを目的としている。

ブランディング戦略立案の具体的な内容としては、企業のミッションやビジョンを明確にすること、ターゲットとなる市場や顧客層を理解し、適切なメッセージを伝えることなどが挙げられる。

ロゴ、スローガン、デザイン、企業文化など、視覚的・感情的な要素も重要視され、ブランドの存在感や信頼感を確立するための戦略だ。

そもそもブランディングは一度きりではなく、長期的な視点で行う必要がある。

だからこそ行き当たりばったりではなく、あらかじめ戦略を立てることが重要だ。

 

1.1. ブランディング戦略とマーケティング戦略の違い

 

ブランディング戦略とマーケティング戦略の違いは、目的と焦点にある。

ブランディング戦略では、企業や製品の価値観・ビジョンを明確にし、顧客との信頼関係を長期的に築くことを目指す。

一方でマーケティング戦略では、製品やサービスをどのようにして市場に出し、ターゲット顧客に販売を促進するかという短期的・中期的な活動に焦点を当てる。

売上向上や市場シェアの拡大を目標としており、具体的なキャンペーン、広告、プロモーション、価格設定、販売チャネルの選択などが重要だ。

簡潔に言えば、ブランディング戦略は「企業や製品のイメージを築き、維持すること」マーケティング戦略は「そのイメージを活用して顧客にリーチし、売上を上げること」を目的としている点が異なる。

 

2. IT企業においてブランディング戦略が必要な理由

 

ここでは、なぜ企業にはブランディング戦略が必要なのか、特に当社が支援しているIT企業に焦点を当てながら解説する。

 

2.1. 信頼を獲得・維持するため

 

企業イメージや成約率を向上させるには、顧客からの信頼を獲得することが重要だ。

特にIT企業においては、データの安全性やプライバシーの保護などの観点で、信頼性が重視される。

また、サービスの品質や専門性の高さを訴求する土台としても、信頼性は非常に重要となる。

特にサブスクリプション型サービスを提供するSaaS企業などでは「長期的な関係性」をいかに構築できるかにかかっているといってもよい。

目先のマーケティング施策だけでなく、ブランディングにも本腰を入れて取り組みたい。

 

2.2.リソースを最適に配分するためし、ROIを最大化するため

 

ブランディング活動には、多くのリソースが必要となる。

人材、時間、予算をどこに集中させるかを決定するためには、計画的な戦略が必要だ。

戦略を立てず無計画にリソースを使うと、効果が出にくい施策に多くの時間や資金を費やすことになりかねない。

ブランディング戦略を立てることで、優先順位が明確となり、限られたリソースを最大限に活用できるだろう。

 

2.3. 効果の測定・改善を行いやすくするため

 

具体的で測定可能な(定量的な)目標を設定し、戦略を構築することで、最適化を図りやすくなる。

ブランディング活動では、情緒面で訴えかける部分もあり、得られる効果は抽象的なものだというイメージが大きいだろう。

効果を定量化しにくい場合は、企業独自の指標を設定することも可能だ。

これにより、どの活動が成功しているのか、改善すべき点は何かを評価でき、PDCAを回しやすくなる。

 

2.4.競合優位を確保するため

 

IT業界では技術革新が早く、他社がすぐに同様の技術やサービスを提供できるため、技術的・機能的な優位性だけで差別化することは難しい。

戦略的なブランディングは、機能や価格以外の付加価値的な面で市場での独自性を維持し、競合優位性を確保するために有効だ。

戦略をもたずにブランディングを行うと、企業の強みや独自性が伝わらず、単なる価格競争に巻き込まれるリスクがある。

価格競争に一度巻き込まれると、コストを下げなければならないため、サービスや販売戦略の質まで低下し、悪循環に陥ってしまうだろう。

よって、早期にブランディング戦略に取り組んでおく必要があるのだ。

 

3. ブランディング戦略立案の9つのステップ

 

ここからは、ブランディング戦略を立案・実行するプロセスを9のステップに沿って解説していく。

ブランディング戦略立案の9つのステップ

 

ステップ1.何をブランディングの対象とするかを決める

 

まず、企業全体なのか、特定の製品やサービスなのか、採用活動なのか、ブランディングの範囲を明確に決める必要がある。

ブランディングの対象が不明確だと、ターゲットやメッセージが統一されず、ブランディング活動の効果が弱まってしまうためだ。

対象を明確にすることで、ブランディング戦略全体が一貫したものとなる。

 

ステップ2.ブランドのミッションを策定する

 

次に、ブランドが目指すべき理想像や、長期的な方向性を示すミッションを策定する。

いわばブランディングにおける「目標」であり「終着地点」だ。

ブランドの価値を感じるのは「顧客」である。

ミッションは自社本位のものではなく、顧客が共感できる内容でなければならない。

「自社の製品やソリューションがどのような社会課題の解決に役立つのか」といった、長期的な視野で考えてみてほしい。

例えば、Googleのミッションは「世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにする」だ。

企業利益ではなく、情報格差をなくすという社会利益を追及していることがわかるだろう。

特にIT企業の場合、もはや製品・サービスのスペックだけで他社と差別化することは難しい。

ブランドミッションは、顧客に「機能的な価値」だけではなく「情緒的な価値」を届けるために今の時代こそ必要とされている。

 

ステップ3.ターゲット市場およびポジショニングを策定する

 

ブランドが狙う市場と、その市場における自社の位置付け(ポジショニング)を明確にしよう。

このプロセスは、ブランディングの目的の一つである「他社との差別化」を実現するために重要となる。

ポジショニングを考えるうえでは、市場を縦軸・横軸で区切り、四象限のポジショニングマップを作成する方法が有効だ。

その市場のなかで、自社が優位に立てる軸を定める必要がある。

例えば「機能性」と「カスタマーサポート」の軸で区切り、同じ市場の競合他社はどのあたりに位置するのか、なぜ自社はそれらの企業より機能性やカスタマーサポートが優れているのかを言語化していこう。

ポジショニングマップの活用により、他社との関係性を意識したうえでブランディング戦略を立てられるようになる。

ブランディング戦略のポジショニング

 

ステップ4. ターゲット・ペルソナを策定する

 

次に、ブランディングにおける具体的なターゲット・ペルソナを策定する。

策定する際は「ブランドターゲット」と「ペルソナ」両方の視点で定義してみることが有効だ。

ブランドターゲットは「ブランドの世界観を体現する理想の顧客像」といえる。

世界観を体現するということは、自社のブランドに強く共感し、常に身近に存在するということだ。

そのため「どのような価値観をもっているか」を中心に示すのが望ましい。

また、自社のブランドミッションやメッセージに共感してくれることが重要なため、実在する人物をモデルにする必要はなく、理想像で構わない。

ところが、ブランドターゲットとして人となりを定めるだけでは、実際のコミュニケーション設計においてブレが生じるおそれがある。

そこで、実在する人物をモデルにして具体的な人物像を示す「ペルソナ」もやはり必要だ。

自社の製品やサービスを長年導入している重要顧客を複数洗い出し、共通点を見出すなどしてペルソナを決めていくとよいだろう。

ブランディング戦略におけるターゲット・ペルソナの策定

 

ステップ5.ブランド提供価値を策定する

 

定めたブランドターゲットに対して、どのような価値を提供するのかを明確にする。

これがブランドの「提供価値」であり、顧客が自社のブランドを選ぶ理由ともいえる。

提供価値を決めるにあたっては、顧客アンケートの結果など、実際にどのような理由で自社が選ばれているかを統計的に可視化する方法も有効だ。

また、上段で定めたターゲット・ペルソナがどのような課題をもち、何に価値を感じるのかをリサーチし、規定するのもよいだろう。

(例)クラウドサービス企業のブランド提供価値の例

ターゲット 中規模の製造業のIT部門マネージャー
課題 社内のシステムをクラウド化してコスト削減と運用効率の向上を図りたいと考えている。しかし、既存のオンプレミス環境からクラウドへ移行するには、データのセキュリティやシステムの安定性に対する懸念があり、社内の反対意見も強い。また、ITリソースが限られており、複雑な移行プロセスをどうやって効率的に進めるか悩んでいる。
ブランド提供価値 「安心と効率を兼ね備えたクラウド移行サービスで、スムーズなデジタルトランスフォーメーションをサポート」

  • 簡単かつ迅速にクラウド移行を実現できるソリューションを提供
  • セキュリティに重点を置き、データの暗号化や多層防御を強調することで、安心してクラウドを導入できる環境を整えている
  • 専門的なサポート体制を整え、少ないリソースでも効率的に導入を進められる

 

ステップ6.ブランドメッセージを策定する

 

先に定めたブランド提供価値をもとに、顧客に伝えるメッセージを策定しよう。

ブランドメッセージは、その提供価値をシンプルでわかりやすく、ターゲット顧客に強い印象を与えられるように言語化したものだ。

例えば、AmazonのAWSは「Build on AWS.(AWSで構築しよう)」という短くインパクトの強いメッセージで、企業や開発者がクラウド環境で簡単にシステムやサービスを構築できることを強調している。

コピーライティングのスキルも必要となるため、リソースがない場合はコピーライターやマーケティング会社の支援を受けることも検討しよう。

サービスや企業をよく知る社員から人材を募集するのも一つの手段だ。

 

ステップ7.ビジュアル・アイデンティティを構築する

 

ブランドメッセージに基づいて、ロゴやカラーパレット、フォントなどの視覚的な要素を決定する。

これらのビジュアル・アイデンティティは、顧客にブランドを直感的に認識させ、一貫性のあるイメージを形成するための重要な要素だ。

ブランドガイドラインを作成するなどして、どのようなツールにおいても一貫したビジュアルが担保されるように工夫しよう。

BtoBでのブランディングデザインの本質|ビジネスの成果につなげるポイントは?

 

ステップ8.コミュニケーション施策を策定する

 

次に、ブランドをどのようにしてターゲット顧客に伝えるか、具体的なコミュニケーション施策を立てる。

ウェブサイトやソーシャルメディア、広告キャンペーン、プレスリリース、イベントなどが代表的な施策だ。

コミュニケーションの各チャネルで一貫性のあるメッセージを発信することで、信頼感が高まり、顧客の選択肢に残りやすくなる​

つまり「マインドシェア」を高める効果があるのだ。

特にBtoBでは、専門知識や信頼性を強調し、顧客の課題に対して適切な解決策を提示できる点を伝える必要がある。

HPや広告、展示会などに加えて、ホワイトペーパーやウェビナーなどのコンテンツマーケティングを通じたブランディングがおすすめだ。

コンテンツマーケティングとは?メリットや戦略、コンテンツの種類やツールなどを網羅的に解説

ブランディング戦略のコミュニケーション施策

 

ステップ9.KPIを設定し効果検証を行う

 

最後に、ブランディング活動がどれだけ成功しているかを評価するために、KPI(重要業績評価指標)を設定する。

ブランド認知度の向上、リードの獲得、ウェブサイトのトラフィック、ソーシャルメディアでのエンゲージメントなど、デジタル領域での具体的な指標を設定し、定期的に効果を検証することが重要だ。

この評価をもとに、戦略の修正や改善を行い、ブランドを持続的に強化していこう。

 

4. ブランディング戦略を成功させるためのポイント

 

ブランディング戦略を実践するうえで、特に気をつけてもらいたいポイントは以下の3つだ。

 

ポイント1.ブランディングの対象は「差別化のしやすさ」を考慮して決める

 

ブランド化する対象を決めるにあたって「どんなものでもブランドにできる」とは思わないほうがよい。

ブランドは顧客をコントロールして築くものではなく、顧客のなかで芽生えていくものだ。

そのため、ほかのブランドと差別化しやすい(=顧客の印象に残りやすい)ポテンシャルをもっていることが求められる。

もしコンセプトやターゲットの異なる自社製品が複数あるのならば、どの製品が最も差別化しやすいかを検討し、対象を絞っていこう。

そのうえで、ブランド力の強い製品をマグネットとして、ほかのプランや製品へのアップセル・クロスセルへの導線も構築しておけば、顧客との長期的かつ強固な関係構築につながるだろう。

 

ポイント2.カスタマージャーニーを通じて一貫した顧客体験を設計する

 

顧客は何らかのタイミングで自社のブランドを知り、関心をもち、具体的に調べてみようと思い、ついには購入を検討するようになる。

そうした顧客のなかでブランドの存在感が強くなっていく過程には、一度限りの接点ではなく、さまざまなタッチポイントがあったはずだ。

そして、どのタッチポイントにおいてもブランドアイデンティティがブレることなく、一貫したコミュニケーションが取れているからこそ、顧客は自社のファンになるのだ。

一貫した顧客体験を設計するには、自社が描いたターゲット・ペルソナがどのようなカスタマージャーニーを経るのかを想像する必要がある。

想像できるすべてのタッチポイントにおいて、大元のブランディング戦略からブレないコミュニケーション設計を行ってほしい。

カスタマージャーニーについては以下の記事で詳しく解説しているので是非参考にしてほしい。

【事例付き】カスタマージャーニーとは?作り方やすぐに使える作成例を紹介

カスタマージャーニーマップ

 

ポイント3.インナーコミュニケーションを同時に行う

 

ブランディングというと、Webサイトや広告といった顧客向けのアウターコミュニケーションを想定しやすいが、インナーコミュニケーション、つまり社員へブランドを浸透させる活動も同じくらい重要だ。

ブランドを「伝える」役割を担う者がブランドを理解し、好きでいなければその良さは伝わりにくくなるためだ。

BtoBでは、一連のカスタマージャーニーにおいて、複数の部署や担当者が顧客との接点をもつ。

例えば、マーケティング担当が広告を、インサイドセールスやセールスが顧客折衝を、カスタマーサポートが顧客維持を担当するといった具合だ。

そうしたなか、経営トップ層からすでに決められたブランディング戦略の簡単な共有だけを受けても、各部門はそもそもの重要性を理解できない。

それどころか、異なる解釈をするおそれもあるだろう。

結果として、顧客に一貫したブランド価値を提供できず、信頼性やロイヤルティの低下を招くのだ。

経営トップ層にしても、ブランディング戦略の設計にかけた時間や費用が無駄になるのは残念極まりない。

こうした事態を防ぐためには、早い段階から社員を巻き込み、自分事として捉えてもらう必要がある。

インナーコミュニケーションの最も手っ取り早い方法は「戦略を社員と一緒に設計すること」だ。

トップダウンで決められた戦略よりも、自分たちが決定プロセスに携わった戦略のほうが、圧倒的に納得度は高い。

できるだけ社員を巻き込んで、ブランドミッション、ターゲット、カスタマージャーニーなどを設計していこう。

特に、顧客接点のある社員は、ブランディングをリードするマーケティングや広報の担当者よりも、顧客を深く理解しているケースが多い。

全社員を巻き込むことで、考え方や行動の一貫性が保たれ、より強固なブランド形成につながるだろう。

 

5.まとめ

 

ブランディング戦略の重要性や具体的なステップ、成功のポイントなどを解説した。

この記事を読んで、ブランディングは思ったよりも大がかりな取り組みだと感じた方もいるかもしれない。

しかし、多くの市場がレッドオーシャン化している状況においては、ブランディングが生き残りの鍵を握っている。

ブランディング戦略をしっかりと設計し、コミュニケーションに反映させることができれば、かけた労力以上の成果を得られるだろう。

通常業務があるなかでリソースを割けない場合は、専門知識をもつ外部企業の支援も視野に入れながら、ブランディングに取り組んでいってほしい。

 

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