コンテンツマーケティングは、文字どおり「コンテンツ(情報の塊)」を用いたマーケティングだ。
2010年代に入って注目され始め、コモディティ化が進んだ今では業界業態を問わずマーケティングの主軸とされている。
コンテンツマーケティングは「広告」とは異なり、中長期にわたって効果が得られる点が魅力だ。このことから、近年は短期で効果を得にくいBtoB領域において必須の施策となっている。
一方で、
- 「メリットややるべきことが分かりにくい」
- 「上司に効果を説明しにくい」
- 「いまひとつ周囲の賛同を得られない」
という声もある。
そこで本記事では、コンテンツマーケティングとは?やメリットといった基礎的な内容から、コンテンツマーケティングの種類や戦略、実施する上で必要なツールなどについて総合的に解説する。
目次
Toggle1.コンテンツマーケティングとは
まず、コンテンツマーケティングとは何か?という問いに対する答えを示しておきたい。
答えは単純で「コンテンツを用いた売れる仕組みづくり」だ。
しかし、これだけでは周囲の理解や賛同を得るのは難しい。
そこで、コンテンツマーケティングの特徴として以下3点を理解しておこう。
特徴①:ロングテールで見込み客の大半へアプローチする
コンテンツマーケティングが持つ最大の特徴は「広く見込み客にアプローチし、中長期で顧客候補となってもらう」ことだ。
特に「広く見込み客にアプローチする」という点は、広告と一線を画す部分である。
一般的に、見込み客は市場の大半を占めるといわれる。この見込み客を意識レベル別に分類すると、
- いますぐ客(必要性、欲求ともに高い状態で購入に近い)
- おなやみ客(必要性の割には欲求が低い)
- そのうち客(魅力を感じていて欲求はあるが、必要性が低い)
- まだまだ客(必要性も欲求も著しく低い、もしくは気づいていない)
の4つが見えてくる。
広告をはじめとしたペイドメディアでは、「いますぐ客」や「おなやみ客」、「そのうち客」に強力なメッセージを発し、意思決定を促す。
特に「いますぐ客」に対しては非常に効果が高く、短期間で問い合わせや契約の増加が期待できる。
一方で、これら3つの見込み客はレッドオーシャン化しやすく、入れ替わりも激しい。
何よりも市場全体としてみると、圧倒的な少数派であり旨味はそれほど大きくない。
実際に最も購入(意思決定)に近い「今すぐ客」の比率は1%に満たないといわれている。
また、「そのうち客」「おなやみ客」の割合はそれぞれ10%弱だ。
従来のマーケティングでアプローチしていたのは、これら3つの見込み客であり、市場全体の20%程度に留まる。
つまり、ペイドメディアを用いた従来型のマーケティングでは、残りの80%の「まだまだ客」に対してはアプローチしていない可能性があるのだ。
もちろん、マスメディアを通じてアプローチすること自体は可能だが、巨額の予算が必要なうえに効率もよくない。
そもそもこの層は、意思決定から最も遠い存在で広告をさほど熱心に見ない。
また、欲求や必要性に気づいていないことも多く、意思決定に至るためには時間をかけて複数のステップを踏む必要がある。
この点を補強しうるのがコンテンツマーケティングである。
コンテンツマーケティングは、全体の80%を占める「まだまだ客(潜在見込客)」に対し、複数のコンテンツを用いて中長期的にアプローチする。
特に、息の長い検索ニーズを持つロングテールキーワードを意識したコンテンツは、まだまだ客へのアプローチに効果的だ。
時間をかけて高品質なコンテンツをコンスタントに提供することで信頼感を高めてもらい、自社製品・サービスの購入に近づけていく。
特徴②:時間をかけて態度変容を促す
2つ目の特徴は、「時間をかけて態度変容を促す」という点だ。
コンテンツマーケティングは、短期で効果を得られるものではない。
もし「コンテンツマーケ=いますぐ客を得るための手段」だと考えているようであれば、ぜひ認識を改めていただきたい。
特にBtoBの場合は態度変容までに年単位の時間を要することもある。
なぜならBtoBでは、DMU(購買決定組織)が取引先の候補を厳しくチェックし、時間をかけて評価するからだ。
したがって、コンテンツマーケティングに取り組む際は「年単位で見込み客の認識が変化していく」ことを意識し、長い目で戦略的にコンテンツを提供していく必要がある。
戦略についての具体的な内容は後述するが、大まかには以下の内容を煮詰めていく。
- 目標(ゴール)の設定
- 現状分析
- ターゲットとペルソナの把握
- 自社価値の把握
- カスタマージャーニーとコンテンツマップの制作
特徴③:複数種類のコンテンツを用いて成果につなげる
コンテンツマーケティングでは5~6種類のコンテンツを制作し、必要に応じて使い分けていく。例えば、以下のようなパターンだ。
リード獲得が目的の場合
- SEOを意識した記事コンテンツで検索エンジンからの流入を狙う
- →流入した読者を内部リンクなどで別なコンテンツへ誘導
- →課題や気づきを促すコンテンツからホワイトペーパーダウンロードへと誘導
- →会社名やメールアドレスなどの情報を獲得
ナーチャリングが目的の場合
- MAツールからメールで記事コンテンツを配信
- 複数回配信したあとにホワイトペーパーを配信
- 事例紹介系のホワイトペーパーから製品紹介のホワイトペーパーなどを複数回配信
- 問い合わせフォーム付きのメールを配信
このように記事コンテンツやホワイトペーパー、事例集などを組み合わせることでさまざまな効果を狙うことができる。
2.コンテンツマーケティングのメリットとデメリット
次に、コンテンツマーケティングのメリットとデメリットを整理しておこう。
2.1.メリット
メリット1:コストパフォーマンスの良さ
コンテンツマーケティングは、他のマーケティング手法に比べて高いコストパフォーマンスを持つ。
インターネット広告などと異なり、低い初期投資で開始でき、長期間にわたって効果が持続する。
これは、「継続的な検索流入効果」「ナーチャリングの効果」「顧客とのタッチポイントの増加」などによるものである。
特に、SEOと質の高いコンテンツを組み合わせることで、長期的な顧客関係の構築が可能である。
さらに、コンテンツの再利用性も高く、ブログ、ウェビナー資料、ホワイトペーパーとして異なる形で活用できるため、さまざまなチャネルからのリード獲得が期待できる。
メリット2:コンテンツが資産になる
蓄積されるコンテンツは、時間の経過とともに自社のデジタル資産となり、価値を高める。
これは、検索上位表示による露出量の増加だけでなく、「専門領域での信頼獲得」「権威性の向上」などの効果も含まれる。
特にBtoB分野では、専門領域での権威を築くことが重要であり、コンテンツマーケティングはその有効な手段となる。
メリット3:幅広い層にアピール可能
コンテンツマーケティングは、顧客の異なるステージに応じたアプローチが可能である。
認知段階の顧客には話題性のある情報を提供し、購入を検討している段階の顧客には数値や機能に基づく情報でアピールすることができる。
これにより、多様な顧客ニーズに対応し、幅広い層にリーチすることが可能である。
2.2.デメリット
デメリット1:即効性の低さ
コンテンツマーケティングは即効性が低く、効果が現れるまでに数か月以上かかることが
多い。
特にBtoB分野では、顧客企業の態度変容に時間がかかり、問い合わせや商談に至るまで数か月から1年程度を要する場合がある。
このため、短期間での成果を期待する場合には不向きである。
デメリット2:ノウハウが必要
コンテンツマーケティングの成功には、専門性の高い内容を理解し、適切に表現するためのノウハウが必要である。
特にBtoB分野では、専門性の高いニッチなロングテールキーワードを狙い、専門性や権威性、信頼感を高めることが求められる。
これを実現するためには、業界知識、製品知識、基礎技術に関する知識が不可欠であり、またライターや編集チームの確保といった体制面の整備も重要である。
近年は企業内でのコンテンツ制作・編集チームの設置が進んでいるが、ノウハウや人材獲得にはコストがかかることも事実である。
デメリット3:質による効率の変動
コンテンツの質によって、その効果に大きな差が生じる。
低品質なコンテンツは信頼性を損ない、将来のパートナー企業との関係構築を妨げる可能性がある。
逆に、高品質なコンテンツは、広告に比べて少ないコストで良質なパートナーを引き寄せる効果がある。
ただし、コンテンツマーケティングは安定した効果が見込めると思われがちだが、実際にはコンテンツの質によってその効果に大きな差が生じることを理解する必要がある。
メリット | デメリット |
コストパフォーマンスの良さ
・月々数万円程度の少額から継続可能 ・ROI(投資利益率)の面でいえばインターネット広告よりも優れることも ・コンテンツの「再利用性」にも優れる |
即効性が低い
・効果が現れるまでには数か月以上の時間を要する ・BtoBの場合は顧客企業の「態度変容」に時間がかかる |
コンテンツが自社の資産になる
・自社の価値を拡散する「デジタル資産」となる ・専門領域で権威性が増すことで優良顧客との出会いにつながる |
コンテンツ制作、配信にノウハウが必要である
・ロングテールを狙う場合、業界知識・製品知識・基礎技術に関する知識などさまざまなノウハウが必要 ・ライターや編集ユニットの確保など、体制面の整備も必須 |
潜在層から明確層まで幅広くアピールできる
・認知段階から意思決定段階に至るまで、顧客が滞在する「層」にかかわらず訴求できる ・同じテーマでもコンテンツの内容を書き分けていくことで、さまざまな層に対応できる |
コンテンツの質次第で効率が大きく上下する
・質が低いコンテンツは未来の顧客を遠ざける ・質によって成果の出方が大きく変わる |
コンテンツマーケティングのメリットとデメリットについては、こちらの記事も参照してほしい。
3.コンテンツマーケティングの種類
すでに述べたように、コンテンツマーケティングは複数種類のコンテンツを組み合わせて目的を達成する。
特に以下5種類のコンテンツは、リード獲得からナーチャリング、問合せへの誘導までさまざまなパターンを網羅できるため、ぜひ制作しておこう。
3.1.記事コンテンツ
記事コンテンツは、テキストを中心としたコンテンツの総称だ。
BtoBでは、トレンド解説記事、ノウハウ紹介記事、導入事例記事、ホワイトペーパーなどが該当する。
記事コンテンツはコンテンツSEOの主軸でもあり、比較的低予算で効果を狙える集客ツールだ。
また、他のコンテンツへの周回を促すハブとしての役割も持っている。
ただし、近年は質が重視される傾向が強まっており、制作の難易度が増していることに注意しておきたい。
記事コンテンツの効果は、「認知拡大」「興味関心の喚起」「リード獲得」「ナーチャリング」と多岐にわたる。
しかしBtoBの場合は、意思決定プロセスが複雑なことから、記事だけで成果を得ることは難しい。
ホワイトペーパーやダウンロード資料のようなキラーコンテンツを作成し、それらへの導線として活用することが望ましい。
記事コンテンツは、潜在層から明確層まで幅広い顧客に対して訴求力を持たせることができる。
課題を把握していない潜在顧客に対してはノウハウや事例紹介を、競合他社との比較をしたい顕在層にはホワイトペーパーを用いるなど、層に応じた使い方を心掛けたいところだ。
3.2.ホワイトペーパー
ホワイトペーパーは、ダウンロード形式の資料型コンテンツだ。
テキストとインフォグラフィックを用いて訴求力を高める点が特徴だ。
また、ほかの記事コンテンツよりも高い情報の質が要求される。
ホワイトペーパーがもたらす効果は、リード獲得やナーチャリングが中心だ。
特にダウンロードの条件としてメールアドレスなどの入力を課すことで、リード獲得が進む。また、定期的に配信することで情報源としての信頼性が増し、意思決定を後押しする効果も期待できる。
コンテンツマーケティングにおいては、PVの多いWeb記事の末尾やLPのCTA部分、メルマガなどにダウンロードリンクを配置するといった使われ方が一般的である。
ホワイトペーパーを使ったマーケティング施策は以下の記事で詳しく解説している。
3.3.事例・インタビュー
導入事例やインタビュー記事は、自社独自の解決方法を具体的に提示することで、納得感を高める点が特徴だ。
実務担当者の視点で「課題→施策→効果」というストーリーを提示できるため、認知拡大やリード獲得にも効果がある。
ただし、総じて検索キーワードとの関連性が薄い(もしくは検索ボリュームがない)ことが難点だ。
そのため、検索流入以外の効果を狙うこともある。
例えば、MAからメールで配信し、ホワイトペーパーや製品紹介資料のダウンロードにつなげるといった使い方であれば、検索キーワードとのミスマッチを気にする必要はない。
ターゲットを絞りつつピンポイントな配信を意識することで、より効果が高まる。
3.4.動画コンテンツ
動画コンテンツは、ウェビナーや製品紹介を動画形式で提供するコンテンツだ。
視覚的な訴求効果が強いうえに、Youtubeなどの無料動画プラットフォームの普及により、汎用性も高まっている。
動画コンテンツの主な効果はナーチャリングであり、準顕在層や顕在層に対する訴求を目的として使用される。
スライドやスピーチ用テキストの制作が必要だが、社内資料の転用でコストを抑えることも可能だ。
3.5.LP
LP(ランディングページ)は、製品・サービスの魅力を直接的にアピールする目的で使用される。
特にBtoBにおいては、「問い合わせ」をゴールとした内容が一般的である。
Web広告の着地点やトレンドキーワードからの流入、特設サイトのトップページなど、使用方法は多岐にわたる。
種類 | 記事コンテンツ | ホワイトぺーパー | 事例・インタビュー | 動画コンテンツ | LP |
特徴 | コンテンツSEOの主軸でもあり、比較的低予算で集客効果が見込める。 | テキストとインフォグラフィックを織り交ぜながら訴求力を高める。
情報の質、量ともに高い水準が求められる。 |
「自社独自の解決方法」を具体的に提示できるため、納得感を高めやすい。
「課題→施策→効果」というストーリーを提示できるため訴求力も高い。 |
ウェビナー、セミナーの編集動画や製品紹介動画など。
認知負荷が低く、視覚的な訴求効果も強い。 |
製品・サービスの魅力を「一枚絵」のように見せる。
記事コンテンツよりも意思決定を促す効果が高い。 |
なお、コンテンツの種類に応じた活用パターンについては、こちらの記事で詳しく解説している。
4.コンテンツマーケティングとSEOの違い
コンテンツマーケティングは、SEOと混同されやすい。
これはSEOの一種である「コンテンツSEO」が台頭してから顕著になっている現象だ。
しかし、コンテンツマーケティングとSEOは明確に異なることを理解しておこう。
4.1.コンテンツマーケティングとSEOの最大の違いは「目的」
コンテンツマーケティングは「コンテンツ(=内容を伴う情報の塊)を駆使することで行うマーケティング」である。
その目的は「売れる仕組み作り」であり、集客・リード獲得・ナーチャリング・コンバージョンなどが含まれる。
具体的には、冒頭で述べたように「見込み客」のすべてをターゲットにし、ペルソナとジャーニーを設計してコンテンツを制作する。
また、適切なコンテンツを適切な場所に配信することで見込み客を教育し、最終的には優良顧客になってもらうことをゴールとする。
これに対してSEOとは、簡単に言えば「検索流入量(露出量)の向上」を狙う施策だ。
自社メディアやWebサイト、コンテンツなどを検索エンジンに最適化させることで、検索流入量の向上を狙う。
SEOの目的は検索上位の獲得であり、露出量のアップなのだ。
コンテンツマーケティング | SEO | |
概要 | コンテンツによるマーケティング | 検索エンジンへの最適化 |
目的 | 受注、売上につながる仕組みづくり | 検索上位の獲得による露出量アップ |
施策内容 | ・オウンドメディア運営
・記事・動画コンテンツ、ホワイトペーパー、LPなど各種コンテンツの制作と配置 |
・サイト内外の技術的な施策
・戦略的キーワード選定 ・SEOを考慮したコンテンツ制作など |
流入経路 | 自然検索、オウンドメディア、SNS、メルマガなど | 自然検索(Google、yahoo) |
ターゲット | 潜在層、準顕在層、顕在層、明確層 | 主に潜在層、準顕在層 |
4.2.コンテンツSEOの存在が境界を曖昧にしている
このようにコンテンツマーケティングとSEOは明確に異なる施策だが、「コンテンツSEO」の存在が両者の境界を曖昧にしている。
SEOは「テクニカルSEO」と「コンテンツSEO」に分類される。
テクニカルSEOは、タグの配置やコーディングによる表示速度の改善など、技術的な内容が含まれる。
これに対して、コンテンツSEOは、コンテンツ自体をSEOのツールとする。
キーワード選定や共起語の配置、読者の納得感や信頼感を高めやすい記事内容など、記事の質を高めることが主体だ。
コンテンツSEOはコンテンツマーケティングと内容が共通していて、企業によっては同一視することもある。
コンテンツマーケティングとSEOの違いや、コンテンツSEOの要諦についてはこちらの記事で詳しく解説している。
5.コンテンツマーケティングとオウンドメディアの関係性
コンテンツマーケティングを語るうえで避けては通れない存在が「オウンドメディア」だ。
コンテンツマーケティングを「戦略」とするならば、オウンドメディアは「戦術」と言える。
詳しく解説する。
5.1.オウンドメディアとは
オウンドメディアは、「企業が独自に所有・運営するメディア」の総称である。
コンテンツマーケティングは、さまざまなコンテンツを活用するが、その大半がオウンドメディアに属するものだ。
オウンドメディアは、企業がコンテンツ制作・配信を担うため精緻な情報コントロールが可能だ。
また、オウンドメディアによる集客は、ペイドメディアよりも長期的な効果が期待できる。
ペイドメディアの代表格である「Web広告」は、即効性が高い一方で、チューニングを誤るとまったく効果が得られない。
これに対してオウンドメディアは、コンテンツの蓄積が集客につながるため、効果がゼロという事態は回避できる。
5.2.コンテンツマーケティングにおけるオウンドメディアの役割
コンテンツマーケティングにおけるオウンドメディアの役割は以下3つだ。
① 集客
オウンドメディアでは主に「トレンド解説記事」や「用語解説記事」「事例紹介記事」などを用いて集客を狙う。
これらは検索キーワードに紐づけて制作しやすく、検索流入の増加が期待できるからだ。
② リードジェネレーション
リードジェネレーションでは、ホワイトペーパーなどを用いて「見込み客の氏名」「メールアドレス」「電話番号」といった情報を入手する。
記事コンテンツからホワイトペーパーへと誘導し、ダウンロードフォームを通過させることで情報を得ていく。
リードジェネレーションについては以下の記事も読んで欲しい。
③ ナーチャリング
ナーチャリングとは、端的にいえば「見込み客の育成」である。
メディアに着地した見込み客に対して、有益な情報を連続的に投下し、信頼感や納得感を高めてもらう。
BtoBでは、ホワイトペーパーや動画コンテンツを用いて、専門性が高く精密な情報を提供し続けることが大切だ。
ナーチャリングについては、こちらの記事を読むと理解が深まるだろう。
5.3.オウンドメディア運用のポイント
また、上記3つの役割を果たすためには、「資産化」と「シナジー」という2つのポイントを意識する必要がある。
ポイント1:資産化
オウンドメディアは「ストック型コンテンツ」の集合体だ。
広告のようなフロー型コンテンツとは異なり、蓄積量に比例して資産価値が上昇する。
ただし、ただ蓄積するのではなく「内容(質)」を重視した制作を心掛けたい。
具体的には、
- ペルソナとジャーニーの設計
- 潜在ニーズの把握と可視化
- 検索エンジンに対するアピールと人に評価される部分を両立させる
などを徹底することで、コンテンツの質を上げていく。
ポイント2:シナジー
オウンドメディア運用は、ウェビナーやプレスリリース、Web広告などと並行して行うことがほとんどだ。
こうしたメディアとの連動も意識し、検索流入以外のルートも強化していくことでも、オウンドメディア運用の効果を高められる。
例えば、SNS広告との連携を意識したホワイトペーパーを制作することで、SNSからの流入アップが期待できる。
また、プレスリリースに合わせてオウンドメディアのコンテンツを補強できれば、直接流入のアップも可能だ。
このようにシナジーを意識することで、メディアへの流入量が底上げされ、オウンドメディアの評価が高まる。
結果的に、リード獲得やナーチャリングにも良い影響を与えるわけだ。
また、近年はMAツールとの連携も欠かせない。
この点についての詳しい情報はこちらの記事でも紹介している。
6.コンテンツマーケティングで使用するツール
コンテンツマーケティングのタスクは、ツールによる効率化が可能だ。
特に以下3つはツールの活用によって作業時間の短縮と精度向上が期待できる。
- 数値の把握、分析・解析などSEOの要素を含む部分
- リサーチや競合分析などコンテンツ制作にかかわる部分
- 配信、顧客行動の把握
代表的なツールとしては下記がある。
キーワード分析ツール
キーワード分析ツールは、検索ボリュームや変化率、上位表示の難易度を明らかにする。キーワード選定の基準が明確になる点がメリットだ。
アクセス分析ツール
アクセス分析ツールは、サイト訪問者の行動パターンや流入経路を追跡・分析する。
匿名ユーザーが可視化され、ターゲットやペルソナ策定に役立てられる。
順位把握ツール
順位把握ツールは、検索エンジンにおける表示順位を監視する。検索順位は頻繁に変動するため、定期的な確認が必須だ。
ツールを活用すれば、検索順位の確認作業が効率化される。
文章校正ツール
文章校正ツールは、文法ミスや誤字脱字を自動的に検出し、修正する。
可読性の高いコンテンツを短時間で制作することができる。
CMS (コンテンツ管理システム)
CMSは、コンテンツの作成・管理・公開を一括して行うためのツールだ。
非技術者でも容易にコンテンツの更新・管理を行うことができ、メディア運用の工数削減につながる。
MA (マーケティングオートメーション)
MAは、マーケティング活動の自動化と効率化に役立つ。
コンテンツマーケティングでは、顧客行動の可視化やコンテンツ配信の自動化に活用されている。
この他にもリサーチツールや記事プランニングツールなど、さまざまなツールが存在する。
ツールについては、こちらの記事も参照してみてほしい。
7.コンテンツマーケティング戦略の立て方
最後に、コンテンツマーケティング戦略の立案方法を紹介する。
オウンドメディアや各種コンテンツは、戦略を実現するための手段であり「戦術」に該当する。
これらを効果的に運用するためには、目標や方向性といった「戦略」が欠かせない。
以下は、弊社が推奨しているコンテンツマーケティング戦略の立案ステップだ。
7.1.コンテンツマーケティング戦略の立案ステップ
ステップ1:目標(ゴール)の設定
一般的なコンテンツマーケティングの目標としては、「認知拡大」「リード獲得」「顧客エンゲージメントの強化」「売上の増加」などがある。
目標は「売上を○倍にする」など、誰もがはっきりと認識できるものがよい。
ステップ2:現状分析
戦略立案の最初のステップは「現状分析」だ。
現状分析では、既存顧客の状態や競合他社の状況、市場トレンドの概況などをリサーチする。
ステップ3:ターゲットとペルソナの把握
ターゲットとペルソナの設定は、「誰に」向けて「どのような」コンテンツを提供するかを決めるための基礎となる。
ターゲットは「層」であり、製品やサービスが最もフィットする顧客層だ。
一方でペルソナは、ターゲットの中に存在する具体的な「顧客像」を指す。
ステップ4:自社価値の把握
戦略設計において意外と見落としがちなのが「自社価値の把握」だ。
自社価値は、コンテンツに組み込むべき内容の基礎となる。
自社の強みや独自性をコンテンツに組み込むことで、訴求力の強いコンテンツ制作が可能になる。
ステップ5:カスタマージャーニーとコンテンツマップの制作
カスタマージャーニーは、顧客が製品やサービスに到達するまでの一連の過程を示したものだ。
また、コンテンツマップはコンテンツの種類や配信方法を計画としてまとめたマップを指す。こ
の2つを駆使することで、ターゲットやペルソナにフィットしたコンテンツを、適切なタイミングで配信できるようになる。
7.2.戦略立案時の注意点
コンテンツマーケティング戦略の立案では、以下3つの点に配慮したい。
注意点1:戦術ありきにならない
コンテンツマーケティングを戦略とするならば、コンテンツは「戦術」である。
戦略と戦術は主従関係にある。仮に、戦術ありきで戦略を立ててしまうと、的はずれで柔軟性の低い戦略ができてしまう。
注意点2:他部署との連携を意識する
実際にコンテンツマーケティングに取り組むと、開発部やカスタマーサポートなど、他部署からの情報が重要であることに気づくはずだ。
戦略設計についても同様のことが言える。実効性の高い戦略を設計するためにも、他部署との連携は意識すべきだろう。
注意点3:投資対効果の設計を入念に行う
意外と見逃されがちなのが「投資対効果の設計」だ。
コンテンツマーケティングは「売れる仕組みづくり」である。仕組みであるからには、その有効性を具体的な数値で説明する必要がある。
特に上司を説得する際には、定量的に投資対効果を示す必要があるだろう。
投資対効果の設計では、
- 売上目標の算出
- 費用算出
- 利益算出
- 投資対効果(ROI)の推計
などを具体的な数値ベースで示していく。
投資対効果の設計については、こちらの記事で詳しく解説しているため、ぜひ参照してみてほしい。
8.まとめ
ここでは、コンテンツマーケティングの全体像について解説してきた。
コンテンツマーケティングは中長期で戦略的に取り組むべき施策である。
低予算から開始でき、成功すれば圧倒的なコストパフォーマンスを誇ることも特徴のひとつだ。
一方で、質を重視したコンテンツ制作には労力と時間を要する。
市場に存在する「まだまだ客(潜在見込客)」を将来の顧客とするためにも、早急に着手すべきだろう。
もし社内にリソースがない場合は、ノウハウを持つ外部企業の支援も視野に入れつつ、取り組んでみてはいかがだろうか。