CRMは、「Customer Relationship Management」の頭文字を取ったマーケティング用語で、日本語では「顧客関係管理」を表す。
端的にいうと、顧客の属性や行動のデータを一貫して管理し、パーソナライズドアプローチで顧客のエンゲージメントやLTVを向上させ、ビジネスの成長を狙う施策だ。
また、その概念だけでなく、CRMを実施するためのツールを指すこともある。
CRMの重要性を理解している方も多いが、一方で以下のようなお悩みも多い。
「戦略構築の方法や、何から取り組めばよいかがわからない」
「CRMツールは導入したが、十分に活用できている気がしない」
「CRMにおける費用やROIの最適化方法がわからない」
そこで本記事では、CRMを戦略・システムの両面から解説しつつ、その重要性や具体的な施策、代表的な製品などを含めて網羅的に解説する。
1.CRMとは
まず、CRMの定義を明確にしておこう。
CRM(Customer Relationship Management)は、日本語で「顧客関係管理」と表現される。
文字通り顧客との関係を管理し、強化するための戦略や技術(ツール)を指す。
CRMの目的は主に以下3つだ。
- 顧客のニーズや行動を理解し、顧客との結びつきを強化すること
- 顧客満足度を向上させること
- 既存顧客のLTVを増大させること
日本国内ではコールセンターやカスタマーサポートなどへの導入が目立つため、「守りのIT」に分類されがちである。
しかし、CRMの本質は「攻めのIT」だ。
その証拠として、近年は営業やマーケティングでの活用事例が増えており、売上やROIを最大化する施策として用いられている。
1.1.CRMの歴史
CRMの概念は、1980年代後半から90年代の前半に広まったとされている。
多様化する消費者ニーズへ対応するために、顧客とのやり取りや購入情報、属性などを細かく管理・把握するためのデータベースが必要とされた。
この顧客管理データベースがCRMの原型だ。
ちょうどこの頃に「One to Oneマーケティング」の考え方が広まったこともCRMの普及を後押ししている。
One to Oneマーケティングは、「双方向かつ個別最適化された販促」がテーマだ。
CRMはOne to Oneマーケティングを実現するツールとしても注目された。
「複数の顧客を管理しつつ、各顧客に最適なアプローチを行う」ための起点として期待されたのである。
ちなみに日本でも江戸時代にはすでに「顧客台帳」が存在しており、CRMに似た概念が存在していたと推測できる。
顧客情報の管理が、ビジネスの成功にとっていかに重要か理解できるだろう。
2.「CRM」が重要視される背景
CRMは企業向けITシステムの中でも、重要な位置を占めている。
特に2010年代以降は、BtoB ITの王者と呼ばれることが増えてきた。
なぜここまでCRMが重視されるのだろうか。
その背景には、次のような理由がある。
2.1.顧客の消費行動やタッチポイントの多様化
インターネットやスマートフォン、SNSの普及により、顧客は多様な手段で情報収集し、サービスに接触できるようになった。
よって、顧客自身が情報収集する中で、いかに自社のニーズやビジネスにマッチしていると感じさせられるかが肝となる。
このことから、顧客の属性や行動、ニーズをもとにパーソナライズドアプローチを行い、顧客と継続的なコミュニケーションを取る戦略が必須となるのだ。
このOne to Oneマーケティングは、近年、特にITやSaaS企業のマーケティングにおいて主流となっている。
2.2.新規顧客の開拓コストは既存顧客の維持コストより高い
新規顧客の開拓コストは既存顧客の維持コストの5倍に達するという説がある。
つまり、コストを抑えて売上を増大させるには、既存顧客の維持に注力することが合理的だ。
そして「既存顧客の維持」のためには、CRM戦略で顧客とのつながりを太くする必要がある。
特にBtoBビジネスでは新規顧客の獲得に多くのコストと時間を要するため、この傾向が強い。
2.3.顧客体験による競合との差別化が求められる
現代の顧客はサービスの機能や価格だけでなく、購買体験やベンダーに対する信頼など、複数の軸で価値を感じている。
CRM戦略をでは、顧客の属性や行動、ニーズなどあらゆる観点からデータを把握し、分析した上でアプローチを行うため、顧客が求める「価値」を提供しやすくなる。
どの企業にも競合は存在するが、同様のサービスを提供していても、顧客起点の「価値」を提供できる企業の方が強くなるはずだ。
2.4.経営の攻守両面に使える汎用性の高さ
経営の攻守両面に活用できる汎用性の高さも、CRMが重用される理由の一つだ。
攻めの経営では、新規顧客の獲得やクロスセル、アップセルを促すツールとして機能する。
一方、守りの経営では、既存顧客の維持や顧客満足度の向上に寄与し、顧客ロイヤルティを高める。
このように、CRMは多岐にわたるビジネス課題に対応できるため、企業にとって不可欠なツールとなっている。
2.5.インサイドセールスやカスタマーサクセスへの対応
インサイドセールスやカスタマーサクセスの分野でも、CRMは重要だ。
ご存じのようにインサイドセールスは、オフィス内からリモートで営業活動を行う。
この中で、CRMは顧客とのやり取りを効率的に管理するためのツールとして活用される。
また、カスタマーサクセスは、顧客が製品やサービスを最大限に活用できるよう支援する活動だ。
CRMは顧客の利用状況や満足度をモニタリングし、適切なサポートを提供するために使用される。
2.6.クラウドの台頭と成熟
CRMが重視されるようになった時期は、クラウドの台頭と重なる。
特に2010年代後半以降は、クラウドベースのCRMが普及し、導入コストの低下とスケーラビリティの向上が市場の拡大を後押ししている。
クラウド化されたCRMは導入のハードルが低いうえに、近年は機能面でもオンプレミスをしのぐ製品が続出している。
かつてのERPのように「重厚長大で扱いにくい」イメージがないので、比較的容易に導入できる。
ランニングコストの面ではオンプレミスを上回ることもあるが、機能追加・向上やメンテナンスの労力などを考慮すると、圧倒的にクラウドが使いやすいはずだ。
3.CRM戦略とは
前述のように、CRMには「経営戦略」としての側面と、「システム・ツール」としての側面がある。
CRMを有効活用するためにはまず「戦略としてのCRM」を理解しておく必要がある。
本章では、CRMの戦略的な面をおさらいしておこう。
3.1.データ主導で顧客満足度を高め、企業の成長につなげる
CRM戦略は、「顧客データを蓄積・管理すること」と解されることがある。
間違いではないが、戦略としての意図は「顧客満足度の向上」や「LTVの向上」にある。
もう少し具体的にいうと、「顧客の分析、施策の実行・検証・改善を繰り返しながら、顧客満足度を高め、企業の収益の拡大やビジネスの成長につなげる戦略」だ。
具体的な取り組みとしては下記が挙げられる。
CRMシステムによる顧客データの収集と分析
CRMシステムは、顧客の連絡先情報、購入履歴、問い合わせ履歴、Webサイトの行動データなど、さまざまな顧客データを一元的に収集・管理する。
こうしたデータを活用することで、顧客の行動や嗜好を詳細に把握できる。
さらに、収集したデータを分析することで、顧客のニーズや購買パターンを予測し、マーケティングや営業戦略の策定に役立てられる。
パーソナライズされたコミュニケーションとアプローチ
パーソナライズとは、いわば「顧客への個別最適」だ。
例えば、顧客データの分析を基に、個々の顧客に最適化されたパーソナライズドメッセージを作成する。
また、顧客の過去の購買履歴・興味を反映した製品・コンテンツの推奨、誕生日や記念日に特別オファーなどを実施することもある。
こうした施策の結果、顧客は自分が特別に扱われていると感じ、企業に対する好感度を高める。
顧客体験の向上
CRM戦略では、すべての顧客接点において、顧客の状況やニーズに応じた高品質な対応を推進する。
具体的には「迅速かつ丁寧なカスタマーサポート」「分かりやすいWebサイトのナビゲーション」「スムーズな購入プロセス」などだ。
これにより、顧客満足度が向上し、リピート購入の可能性が高まる。
新規顧客獲得よりも少ない労力で売上を高められ、企業の成長やROIの向上にもつながるだろう。
顧客エンゲージメントの促進
顧客との双方向のコミュニケーションを通じて、エンゲージメントを促進する。
例えばSNSやメール、ウェビナー、カスタマーサポートなどのチャネルを活用し、顧客へ有益な情報を提供し続ければ、顧客との関係を継続しつつ自社ブランドについての認知や関心を高められる。
さらに、購入後の意見やフィードバックを収集するVOC活動もエンゲージメント強化の大切な手段だ。
実際に購入に至った顧客の貴重な意見をマーケティング施策へ反映することで、施策の成功率は高まりやすいだろう。
顧客ロイヤルティの構築と向上(リピート・クロスセル・アップセルの実現)
CRM戦略はLTV(顧客生涯価値)の増大にも貢献する。
特にリピート・クロスセル・アップセルの機会を探るには最適な戦略だ。
顧客の行動や興味をもとにした特典や割引の提供や、購入履歴や製品の活用状況をもとにしたクロスセル(関連商品を提案する)やアップセル(上位商品を提案する)にもつなげられる。
3.2.ERPやSFAとの違い
CRMと同様に、経営戦略に組み込まれる概念としてERPやSFAがある。
これらはシステムとして同居することも多い。
しかし、概念としては全く別のものである。
ERP=企業内のリソースを一元管理し意思決定の一助とする
ERP(Enterprise Resources Planning)は、「企業資源計画」と表現される。
企業内にデータを蓄積する点はCRMと似ているが、その対象が異なる。
ERPが対象とするのは「ヒト・モノ・カネ・情報」といった「経営資源」であり、これらの動きを精密に把握しようという考え方だ。
CRMが対象とする「顧客データ」も企業の資源には違いないが、一般的には明確に区別される。
SFA=顧客データを営業の側面から捉える
SFA(Sales Force Automation)とは、営業を自動化する概念およびシステムを指す。
主に「見込み客」が「顧客」へと変容するフェーズを管理する。
SFAでは、営業活動の内容や進捗状況を可視化するが、同時に顧客の情報も蓄積する。
CRMと同じように顧客データも管理の対象だが、営業の業務や売上に関するデータの比率が高い。
なお、近年はCRMとSFAが一体化したシステムがトレンドになりつつある。
特に海外のベンダーでこの傾向が強くみられる。
一方で、国内ではSFA機能を持たないシンプルなCRMもまだまだ多い。
企業規模や業態にもよるが、国内外で微妙にトレンドが異なることも把握しておこう。
4.CRMツールとは
続いて、「ツールとしてのCRM」についても整理しておこう。
4.1.CRMツールの役割
CRMツールの役割は「顧客データを蓄積・分析し、顧客満足度や収益の増大につなげること」である。
この点は戦略としてのCRMと大きな差は無い。
ただし、実務の視点では以下のように具体的な役割がある。
カスタマーサポートの品質向上を支える
国内企業でCRMを活用している部署は、大半が「カスタマーサポート」だ。
カスタマーサポートでは、「対応履歴の蓄積と可視化」「対応品質の平準化」「対応工数の削減」に注力するケースが多い。
こうした課題には、CRMシステムによる情報の一元化と可視化が適している。
業務の精度向上
CRMに蓄積されたデータは、営業や開発、マーケティングにとっても有用だ。
営業部門では、顧客の要望やクレームを次の提案へ活かせたり、開発部門ではニーズが高い機能の実装に役立ったりする。
また、マーケティングでは「CRMマーケティング」の柱となる。
CRMマーケティングについては後ほど詳しく解説する。
4.2.CRMツールの主な機能
一般的なCRMに搭載される機能は以下のとおりだ。
機能 | 詳細 |
顧客管理 | 顧客の氏名や連絡先、所属企業など属性情報を管理 |
案件管理 | 案件の内容や担当者情報、カテゴリー、ステータスなどを管理 |
コンタクト管理 | 受電や架電、メール送受信、SNSや訪問などタッチポイントでの動きを管理 |
エスカレーション管理 | 対応者の変更管理やワークフロー、コミュニケーションボードを管理 |
メール配信機能 | キャンペーンやメルマガなど一斉送信のメールを管理する機能 |
営業管理 | 見込み客や既存顧客との商談履歴を管理(SFAと一体化している場合) |
分析とレポート機能 | 問い合わせ履歴や購買履歴から顧客行動を分析する機能 |
また、一部の製品では外部連携機能として「CTI連携」を持つこともある。
CTI連携は主にコールセンター向けのCRMに含まれる。
4.3.MAツールとの違い
CRMと似た使い方をするツールに「MA(Marketing Automation)」がある。
MAはマーケティング活動の自動化、効率化を目指すためのツールだ。
CRMと併せて使われることが多いが、両者は全く異なる仕組みだ。
具体的な違いは、以下の表のとおりである。
ツール | CRM (顧客関係管理) |
MA (マーケティングオートメーション) |
主な目的 |
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主な機能 |
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利用部門 | 主に営業部門・CS(カスタマーサクセス)部門が利用 | 主にマーケティングチームが利用 |
目標 |
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ベネフィット |
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MAは「リード化~ナーチャリング」をターゲットにしているのに対し、CRMは「顧客化」した後を対象としている。
また、CRMが顧客との関係強化や営業プロセスの支援を目的とする一方で、MAはマーケティングプロセスの自動化が主軸だ。
5.CRMシステムの具体的な活用方法と効果
続いて、CRMシステムの活用方法と活用による効果を見ていこう。
CRMは汎用性の高いシステムであり、複数の部門・部署を横断した使い方が可能だ。
しかし、実際には限定された領域(主にカスタマーサポート)でのみ使われていることが多い。
CRMシステムの効能を最大化するためにも、効果のある活用方法を把握しておこう。
5.1.顧客台帳の代替として活用
CRMシステムは、顧客情報をデジタルデータとして一元管理できる。
いわば超高機能な顧客台帳だ。
一般的な顧客台帳に記載される属性情報に加え、取引履歴や問い合わせ内容も管理できる。
また、自動的に情報の重複入力や誤入力を検知する機能もあるため、データの正確性が向上する。
対応履歴の統合と可視化によって顧客応対の質が向上
CRMシステムは、過去の対応履歴を可視化する。
得意先との商談履歴やメール履歴、技術サポートの内容をCRMに記録しておくことで、新たな担当者でもすぐに「文脈」が把握できる。
その結果、ベテラン担当者の対応と遜色のない対応が可能となり、応対品質が平準化される。
5.2.問い合わせ内容を資産に
CRMシステムを活用することで、顧客からの問い合わせ内容を詳細にデータベース化できる。
取引先からの技術的な問い合わせや製品に関するフィードバックを収集し、分析する土台が出来上がるのだ。
検索ニーズとは別の角度で顧客のニーズを収集できる
問い合わせ内容のデータベース化は、顧客の検索行動とは異なる視点からのニーズ収集を可能にする。
例えば、製品のトラブルシューティングに関する問い合わせを分析することで、顧客が直面している具体的な問題点を把握できる。
このプロセスで生まれたキーワードは、コンテンツSEOにおける「ロングテールキーワード」になる可能性を秘めている。
SEO対策で見つけ出したキーワードよりも、「現実的」で「濃いニーズ」が含まれるため、コンテンツSEOの材料として最適である。
製品開発やサービス改善に役立つ
問い合わせ内容の分析により、製品開発やサービス改善のヒントを得ることも可能だ。
複数の顧客から同じ機能に関する改良要求を受けた場合、その機能を強化することで市場競争力の向上につながるだろう。
また、新たな市場ニーズに対応した製品開発のヒントも得られる。
5.3.マーケティングツールとして活用
CRMシステムは、MAと連携することで、ナーチャリングプロセスを効率化する。
特定の業界に関心を示すリードに対しては、業界向けの事例紹介やホワイトペーパーを送信することで関心を維持し、購買意欲を高められる。
また、リードのスコアリングを行えば、最も購買意欲の高いリードを営業チームに引き渡すことも可能だ。
顧客とのタッチポイントを統合
CRMツールでは、電話・メール・ウェビナーへの参加履歴など、異なるタッチポイントから得られた情報が統合されるため、顧客行動の全体像を正確に把握できる。
また、一元管理することでデータの整合性を確保し、アプローチやサポート対応のバッティングなども防げるだろう。
オフライン、オンラインの情報を統合
CRMシステムは、オフライン(展示会、営業訪問など)とオンライン(オウンドメディア、SNSなど)の両方のタッチポイントから得られる情報を統合できる。
例えば、BtoB企業が展示会で収集した名刺情報をCRMに入力しておき、オンラインでの資料ダウンロード履歴やメールの開封履歴と結びつける。
BtoBの顧客はまだまだオフラインの行動が強く、購買行動をオンラインで完結させにくい。
オフラインとオンラインをまたいだ顧客行動の把握は、コンバージョン率を向上につながる重要なタスクだ。
SFAと連携することでリードごとの確度の情報が精密になる
SFAと連携することで、リードごとの確度や商談の進み具合を精密に管理できる。
SFAに蓄積された商談履歴とCRMの購買履歴を合わせれば、カスタマージャーニーを通して一貫したリードの分析やスコアリングが可能だ。
また、営業チームは最適なタイミングでアプローチを行え、営業効率や成果が向上する。
6.CRMをマーケに活かす「CRMマーケティング」とは
CRMはこれまで、顧客の情報や問い合わせ内容を蓄積する場所として、カスタマーサポートを中心に導入が進められてきた。
しかし今後は、CRMのデータをマーケティングの視点で活用する「CRMマーケティング」が拡大するとみられている。
CRMマーケティングは、CRM戦略に近い考え方だ。
ただし、CRM戦略は経営戦略の一環である一方で、CRMマーケティングはマーケティング領域におけるより具体的な施策だ。
この違いはしっかりと把握しておこう。
6.1.CRMマーケティングとは?
CRMマーケティングは、ツールを使って顧客データを管理・分析し、顧客のニーズや行動に応じたアプローチを行うマーケティング手法である。
この手法では、顧客との良好な関係を維持し、顧客満足度やロイヤルティを向上させることで、長期的な収益の向上やビジネスの成長が期待できる。
CRMマーケティングで活用する主なツールは、「CRM」と「MA」の2つだ。
CRMは、社内の顧客情報を一元管理・分析するツールである。
これに対してMAは、見込み客の獲得や育成を目的とし、データを活用して自動的にマーケティングアプローチを行うツールだ。
CRMマーケティングでは、これらのツールを連携し、CRMにある「顧客データ」をもとに、マーケティング施策を「自動化」できる。
よって、マーケティング施策の質と効率、どちらの向上も見込めるということだ。
6.2. CRMマーケティングが重要視される背景
では、なぜCRMマーケティングが重要視されるのか、その背景を見ていこう。
データドリブンな訴求が求められる時代への対応
消費者自らインターネットで簡単に情報収集できる現代では、インターネット上の行動から、顧客の興味関心の移動とニーズの変化を読み取る必要がある。
そこで、CRMのデータをもとにパーソナライズされたアプローチを行う「CRMマーケティング」が有効だ。
CRMマーケティングでは、ツールを用いて顧客のニーズや行動を正確に把握し、MAも活用しつつ顧客に応じたアプローチを行う。
この状態が続くことで、顧客の満足度や信頼が高まり、意思決定(問い合わせや購入)につながるのだ。
インサイドセールスを活用した営業スタイルへの変化
プル型営業の台頭や新型コロナ対策の影響から、インサイドセールスを活用した営業スタイルが一般化している。
非対面で営業活動を行うインサイドセールスには、営業活動の効率化や顧客に合った提案の実現など、多数のメリットがある。
一方で、「対面で得られる情報」を補う技術も必要だ。
この点において、CRMマーケティングは有効な手段となる。
CRMに蓄積された行動データから、顧客の状況を正確に把握し、アプローチのタイミングを見極めるのだ。
人材不足への対応
人材不足の深刻化も、CRMマーケティングが必要とされる理由の一つである。
帝国データバンクの調べによると、国内における正社員の人手不足は52.6%となっている(※)。
デジタルマーケティング人材はさらに人手不足感が強く、どの企業でも採用が難しいとされる。
CRMマーケティングを導入することで、省力化や省人化が進み、人手不足解消のきっかけになるかもしれない。
また、CRMとMAによる自動化が進めば、マーケティング施策の立案や実行といった「コア業務」に避けるリソースが増える。
人の採用が難しいならば、「既存の人材が使える時間を増やす」努力をすべきである。
そのひとつがCRMマーケティングというわけだ。
※出典:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2024年1月)」
7.主なCRMシステム4選
最後に、国内外の代表的なCRMシステムを紹介する。
7.1.Salesforce
Salesforceは、クラウドベースのCRMソリューションであり、カスタマイズ性が非常に高い。
SFAと一体化しており、顧客管理やマーケティングオートメーションのみならず、営業支援やカスタマーサポートなどもカバーする。
また、AppExchangeというマーケットプレイスを通じて、多数のサードパーティアプリケーションを統合できる点も魅力である。
中小企業から大企業まで幅広く対応可能であるが、複雑なビジネスプロセスを持つ大企業や、カスタマイズ性を重視する企業には特に適している。
7.2.Microsoft Dynamics 365
Microsoft Dynamics 365は、CRMとERPを統合したソリューションだ。
Office365やLinkedInなど、他のMicrosoft製品との連携が強力であり、AIや機械学習を活用したデータ分析機能も充実している。
中堅企業から大企業までを想定しており、Microsoft製品を既に利用している企業であればスムーズに導入が進むはずだ。
7.3. Zoho CRM
Zoho CRMは、コストパフォーマンスに優れたクラウドベースのCRMだ。
多機能でありながら使いやすいインターフェースを提供しており、メール、電話、SNSなど、複数のチャネルでの顧客管理が可能である。
中小企業から中堅企業に適しており、予算が限られている企業や、多機能で使いやすいソリューションを求める企業に向いている。
また、高度な分析機能を求める企業や、大規模な顧客データを管理する必要がある企業に適している。
7.4.kintone
Kitoneは国産CRMであり、拡張性の高さを強みとしている製品だ。
自社の業務内容にあわせ、CRMシステムの構成を自由に変更できる。
また、チーム専用のスペースで顧客の情報を共有できたり、名刺管理やwebアンケートを実施できたりと、多機能さも魅力だ。
中堅企業から大企業まで幅広く対応でき、SFA機能も内包するため、国産CRMの中では競争優位性が高い。
8.まとめ
ここでは、CRMについての包括的な情報を紹介してきた。
一般的にCRMは、カスタマーサポートやカスタマーサクセスなど「購買後」のフェーズで活用されるイメージが強い。
しかし、実際にはリードの段階から属性やWeb上の行動データを分析したり、既存顧客からのフィードバックを蓄積したりと、マーケティングプロセスの強化にも役立つ。
顧客自ら情報収集ができ、サービスが飽和する現代では、各顧客の興味やニーズにピンポイントで訴えかけるCRMへの取り組みが欠かせないのだ。
弊社では、CRMマーケティングのサポートをはじめ、IT企業のマーケティング支援について、スタッフの専門性や高品質なサービスを強みとしてサービスを提供している。
CRMはもちろん、オウンドメディア構築やホワイトペーパーを使用したリード獲得など、あらゆる観点からサポートが可能なため、是非お気軽にお問合せいただきたい。