BtoBのSEO対策でもキーワードのトレンド性は無視できない。
トレンドキーワードに配慮することで、検索ニーズの変動に素早く対応できるためだ。
一方で、BtoBではBtoCよりもトレンドが発生しにくく、対策が難しい側面がある。
例えば、以下のようなお悩みを抱えていないだろうか。
「オウンドメディアのPVは上がってきたが、もう少しPVがほしい」
「オウンドメディアの成長スピードが遅すぎる」
「ビジンストレンドや法改正にメディアのアップデートがついていけていない」
BtoBのコンテンツマーケティングでも、トレンドのキャッチアップは重要なタスクだ。
ここでは、トレンドキーワードの重要性やツールの活用方法、注意点などを解説する。
目次
Toggle1.キーワードに「トレンド」を加味すべき理由
トレンドを加味したキーワード選定は、SEO対策において欠かせない要素だ。
まず、その重要性を理解しておこう。
1.1.スパイク的な検索ニーズを取り込む
トレンドの発生直後は「スパイク的な検索ニーズ」が発生し、検索ボリュームが急増する。
スパイク的な検索ニーズを取り込むことできれば、コンテンツの露出量が急速に、大幅に増える可能性が高い。
例えば、新しい技術や業界ニュースが話題になった際、その関連キーワードの検索が一気に増えることがある。
このようなスパイク的な検索ニーズを取り込むことで、検索結果での上位表示が狙いやすくなるのだ。
結果としてオウンドメディアへの大幅な流入量増加にもつながる。
普段は、BtoBはBtoCに比べると検索ボリュームが小さく、大量の検索流入を呼び込める機会は少ない。
トレンドの発生は、オウンドメディアのPVを底上げするための、数少ないチャンスともいえるのだ。
1.2.検索意図の変化を読み取る
トレンドの発生は、ユーザーの検索意図の変化を引き起こす。
例えば、新しい法律が施行された場合、その法律に関連する情報を求める検索が急増する。
このような検索意図の変化を素早くキャッチし、コンテンツに反映させることで、ユーザーニーズに即応した情報を提供できる。
ニーズに対してリアルタイムに情報を提供できれば、信頼性や権威性が高まり、検索エンジンからの評価を得られやすい。
また、直帰率の低下や滞在時間の増加などにもつながる。
1.3.変動要因のあるキーワードをチェック
トレンドキーワードには、季節性や地域性が強く出やすい。
例えば、「サイバーセキュリティ セミナー 夏季」や「クラウドサービス 展示会 東京」など、特定の季節や地域に関連したキーワードは、特定の時期や場所で検索ボリュームが増加する。
これらの変動要因を頻繁にチェックし、適切なタイミングでコンテンツを更新することで、検索結果での競争力を維持できるだろう。
1.4.BtoBのコンテンツマーケティングでもトレンド把握は重要
BtoBのコンテンツマーケティングにおいても、トレンドの把握は極めて重要だ。
例えば、法改正や新しいビジネストレンドが発生すると、それに関連する検索需要が大きく変化する。
トレンドをコンテンツに取り込むことで、集客力やコンバージョン率の向上が期待できる。
常に最新のトレンドキーワードを取り込むことは、競合との差別化にもつながるだろう。
2.「Googleトレンド」でトレンドキーワードをチェックしよう
次に、メジャーなトレンド調査ツールである「Googleトレンド」の使い方を紹介する。
Googleトレンドは、世界中のユーザーから集積された検索クエリのデータを基に、検索ボリュームの変動を表示するツールだ。
ユーザーが関心を持つキーワードの人気度を0~100の相対的な指標で確認できる。
また、任意の時間軸でボリュームの増減をチェックできるため、トレンドの傾向把握には欠かせないツールだ。
2.1.Googleトレンドの基本機能
では実際にGoogleトレンドの基本機能を見ていこう。
「調べる」でできること
ホーム画面から「調べる」をクリックすると、任意の検索キーワードを入力する画面になる。
ここにトレンドを調査したいキーワードを入力すると、折れ線グラフで人気度の推移が表示される。
今回は例としてAmazonのクラウドプラットフォームである「AWS」を入力してみよう。
上部の緑枠の部分では調査対象の地域や期間、カテゴリ、検索の種類などを指定できる。
特に期間は、下図のように豊富な選択肢があるため、それぞれチェックしてみよう。
試しに期間を「過去12か月」から「過去5年」に変更してみると、これだけトレンドの傾向が変わる。
過去12か月では比較的コンスタントに人気度を維持しているように見えていた。
しかし対象範囲を「過去5年」に拡大すると、2019年8月18~24日かけてスパイク的な検索ニーズが発生し、その後は急減していることがわかる。
ちなみに、この期間に検索ニーズが急増した理由は、「AWS東京リージョンに大規模な障害が発生したこと」だと考えられる。
また、クラウドの需要が伸びているせいか、2023年以降は人気度が上昇傾向にある。
このようにGoogleトレンドでは、現在のトレンドのみならず「過去の急増」「急増の理由」を精査できる。
トレンドの出方やその理由、増減の傾向など、さまざまな分析に使えるわけだ。
トレンドの画面を下にスクロールすると現れる「地域別のインタレスト」もチェックしておきたい。
地域別のインタレストは、いわゆる「地域特性」を知るための機能だ。
地域ごとのキーワードに対する人気度を色と数値で表現している。
色が濃い地域ほど人気が高い。
また、地域(県)にカーソルを合わせると人気度が数値で表示される。
さらに、右上のプルダウンボックスを「地方」から「都市」に切り替えると、都市単位での検索ニーズを円の大きさで表示する。
都市を選択し、さらに「検索ボリュームが少ない地域を含める」のチェックボックスをオンにすることで、日本全国の地方都市単位でも検索ニーズが視覚化される。
地域特性をよく具体的に確認したい場合に役立つ機能だ。
「急上昇」でできること
ホーム画面に戻り、「調べる」の隣にある「急上昇」をクリックすると、以下の画面が表示される。
この画面では、毎日の検索トレンドやリアルタイムな検索トレンドが確認できる。
日単位での検索トレンドや検索ボリュームの目安が表示されるので、リアルタイムなトレンド確認に役立つ。
ちなみに2024年6月29日には「Microsoft」がトレンド1位を獲得しているが、これは同社が主催するスタートアップ支援プログラムに関するニュースだ。
このプログラムで採択された企業の製品名「SwipeVideo」でも検索ニーズが急増していることが分かる。
このように、急上昇キーワードの関連キーワードを検知できることもGoogleトレンドの強みだ。
3.BtoB×SaaSでのGoogleトレンド活用方法
Googleトレンドの活用は、BtoBのSaaSビジネスにおいても重要な意味を持つ。
そこで具体的な活用方法も理解しておこう。
3.1.ロングテール化を検知する
トレンドキーワードの一部は、スパイク的な検索ニーズが落ち着いたあとにロングテール化することがよくある。
これは年単位の検索ボリュームをチェックするとよくわかる。
例えば「Apple Vision Pro」というキーワードは、2024年2月初旬の発売とともに一気に検索ニーズが高まった。
その後はかなり人気が落ち着き、数か月にわたってロングテールキーワードの様相を呈している。
つまり、検索ボリュームこそ小さくなるものの、息長く検索されるキーワードとなっていくのだ。
ロングテールキーワードは発見が難しい。
2024年時点では、ロングテールキーワードを直接的に検知できるツールは存在しない。
したがって、Googleトレンドのようなツールでトレンドをチェックし、その動きを長期で追うという方法が現実的だ。
ロングテールキーワードへの対策はBtoBにおいて重要なタスクのひとつだ。
オウンドメディアの着実な成長や、コンバージョン率の向上など、さまざまなメリットをもたらす。
ロングテールキーワードについては他の記事でも解説しているため、参考にしてほしい。
3.2.未来のトレンドを予測してコンテンツを事前に配置する
Googleトレンドを活用することで、未来のトレンドを予測し、必要なコンテンツを事前に配置することが可能だ。
検索エンジンのアルゴリズムの傾向として、古いコンテンツほど先に評価されやすい。
したがって、トレンドを見越して早めにコンテンツを準備すると上位化しやすくなる。
具体的には、
- 法改正や海外のビジネストレンドの和訳を参考にして、将来の需要を予測する
- 過去に類似のトレンドが発生している場合、データを参考にしながらコンテンツの量を決める
などの対策が有効だ。
トレンドを先取りすることで、競合他社よりも早く高品質なコンテンツを用意し、優位性を築ける。
一般的な記事コンテンツだけでなく、ホワイトペーパーの制作やウェビナーの開催などにも活用できるだろう。
ホワイトペーパーやウェビナーは、コストとリソースが必要な施策であり、実施判断には明確な根拠が必要だ。
この根拠のひとつとして、Googleトレンドのデータを活用するわけだ。
3.3.BtoB×SaaSビジネスでは季節性も重視
BtoB SaaSビジネスにおいては、季節性も重要な要素だ。
例えば、決算期や年度末といった「ビジネス上の区切りのタイミング」には、特定のSaaSの需要が増える場合がある。
請求・決済処理の自動化サービスや、人事・給与系のサービスによって社内業務の合理化を進める動きが強まるからだ。
こういった需要の増加を予測し、トレンドが到来する前に関連コンテンツを増やすことで、効率的な集客が可能になる。
3.4.集客力へのカンフル剤として活用
BtoBの分野で取り扱うキーワードでは、検索ボリュームが比較的小さい。
ロングテールキーワードやスモール/ミドルキーワードだけでは、メディアの成長に時間を要してしまう。
そこでトレンドの発生を日単位や週単位で検知し、その情報に基づいてコンテンツを発信していこう。
「トレンドに乗り続ける」ことで、PVやSSが増え、それとともにリード獲得が加速される。
SEO対策の一環として見ると、トレンドに基づくコンテンツ発信はコストパフォーマンスが高い。
広告よりも成功率は低いが、広告費がかからず、失敗したときのリスクがほぼないためである。
3.5.記事リライトの検討材料として活用
Googleトレンドは、既存の記事をリライトする際の検討材料としても活用できる。
トレンドによって新たなニーズが発生している場合、その情報を基に記事を更新することで、最新のユーザーニーズに応えられるからだ。
記事リライトは、既存の記事の価値を高め、検索エンジンでの評価を向上させる効果がある。
4.Googleトレンド活用時の注意点とコツ
最後に、Googleトレンドを活用する場合の注意点やコツをまとめて紹介する。
Googleトレンドは、無料で気軽に使えるツールだが、「定量化」は得意ではない。
その点を踏まえたうえで、下記のようなポイントに配慮していこう。
4.1.注意点
①データは「絶対値」ではない(相対値である)
Googleトレンドのデータは、「絶対数」で記載されていない。
例えば人気度のグラフは0~100の相対値だ。
特定のキーワードの人気度は、過去の検索データと比較した相対的な値で表示される。
また、急上昇で示される検索ボリュームも「10万+」のようにざっくりとしたレンジを示している。
理解せずにデータを解釈すると、実際の検索ボリュームを誤解する可能性がある。
例えば、あるキーワードが「100」と表示されていても、それは他のキーワードと比較した相対的な人気度を示しているに過ぎない。
検索ボリュームの絶対値を知りたい場合は、他のSEO対策ツールを併用するようにしよう。
②短期間の変動に振り回されない
Googleトレンドはリアルタイムでデータを提供するため、短期間の検索ボリュームの変動を捉えることができる。
しかし、これに振り回されすぎると、長期的なSEO戦略にブレが生じやすい。
トレンドキーワードは、うまくキャッチできると非常に大きな集客効果を生む。
しかし集客効果は永続的ではない。
また、流入した検索ユーザーを納得させ、受注や問い合わせにつながるキラーコンテンツがなければ、集客は無駄になってしまう。
短期間のトレンドに過度に依存せず、コンテンツマーケティングの「戦術」としてうまく使いこなすことをおすすめする。
4.2.Googleトレンドを使いこなすためのコツ
以上の注意点を踏まえつつ、Googleトレンドを使いこなすためのコツをまとめていこう。
①キーワードのトレンドは「参考指標の一つ」として扱う
Googleトレンドのデータは、あくまでも「参考指標の一つ」に留めるべきだ。
例えば、あるキーワードの検索ボリュームが急増していることがわかった場合、
- トレンドキーワードが自社の事業に関連しているか
- 既存のコンテンツとシナジーを生みそうか(リード獲得やナーチャリングにつながるか)
- 長期的にPVを生み出すか
といった視点も加えてコンテンツの制作判断を下そう。
②Googleトレンド以外のツールや、顧客の生の声も収集してトレンド把握をする
Googleトレンドよりも詳細なデータを出力するツールはいくつもある。
Googleトレンドの強みは、あくまでも「無料で、Web上の検索データを俯瞰できる」という点だ。
他のツールのデータはもちろんのこと、顧客の生の声も収集してトレンドを把握していこう。
例えば、SEO対策ツールでオウンドメディアの流入キーワードを取得したり、顧客のフィードバックや問い合わせ内容からキーワードを抽出したり、といった活動が挙げられる。
これらを組み合わせて「オウンドメディアに貢献するトレンド」の把握につなげたい。
③定期的なチェックを欠かさない
トレンドは時間と共に変化するため、定期的にデータをチェックして最新の動向を把握しよう。
週に一度、月に一度といった頻度でトレンドデータを確認し、必要に応じてコンテンツやSEO戦略を見直していく。
こうした行動の積み重ねが、オウンドメディアの成長力につながる。
5.まとめ
ここでは、キーワードのトレンド把握に使われるGoogleトレンドの機能や活用方法について解説した。
キーワードのトレンド分析は、BtoBのコンテンツマーケティングにおいてもさまざまなメリットを生む。
集客力の向上だけではなく、新しい施策に取り組むきっかけになるので、日常的に活用していこう。