BtoBのオウンドメディアは売上や受注への貢献が求められる。
売上や受注を増やすためには、まず「集客」が成立している必要がある。
一方で、BtoBの集客はBtoCよりも難易度が高く、効果が出にくい。
特に、リードを持っていない状態での集客は時間を要しがちだ。
「オウンドメディアを始めるので、集客方法を押さえておきたい」
「オウンドメディア運用を開始したが、集客がうまくいかない」
「記事の制作や公開以外に何をすれば良いか分からない」
本記事では、上記のような課題を持つ方々に対し、BtoBのオウンドメディアにおける集客方法や集客につながるコンテンツの内容、コンテンツを制作のポイント、マネタイズ例などを詳しく紹介していく。
目次
1.オウンドメディアの定義と目的
まず、オウンドメディアの定義と目的について簡単におさらいしておこう。
1-1.オウンドメディア=自社が保有するメディア
オウンドメディアとは、自社が所有し、自由に情報発信・編集・管理できるメディアの総称である。
公式サイトやブログ、専門情報サイト、キュレーションサイトなどが代表例にあたる。
オウンドメディアとは?役割、メリット、活用・運用の進め方
「ペイドメディア(広告)」「アーンドメディア(SNSや口コミ)」と並ぶ“トリプルメディア”の一角であり、3者を統合して展開する「POEM(ポウム)」モデルの中では、主にリード獲得やナーチャリングを担う存在として設計される。
とくにBtoBにおいては、検討期間が長く、意思決定に複数のステークホルダーが関与するため、オウンドメディアの役割はますます重要性を増している。
いまや、BtoB企業が「育てて売る」ための戦略基盤として、オウンドメディアを活用するのは定石といえる。

オウンドメディアがコンテンツマーケティング全体の中でどう位置づけられるのかを整理したい方は、以下の記事も参考にして頂きたい。
【IT企業向け】顧客に選ばれるための良質なコンテンツを徹底解説
1-2.オウンドメディアの目的は主に6つ
オウンドメディアは「コンテンツマーケティングの戦術のひとつ」だ。
オウンドメディアの目的としては、以下6つがある。

ブランディング:企業の思想や専門性を伝え、信頼・認知を獲得する
エンゲージメントの強化:読者との関係性を深め、ファン化・育成につなげる
集客:検索流入などを通じて、見込み客の接点を増やす
リード獲得:ダウンロードコンテンツなどを介し、属性情報を取得する
ナーチャリング:取得したリードに対して関心を高め、商談へとつなげる
売上への貢献:営業と連携し、最終的な成約を支援する導線をつくる
これらは単独でも機能するが、戦略的に組み合わせることで、より効果が出やすくなる。
この組み合わせの場として、オウンドメディアは非常に優秀な施策だ。
例えば、検索ユーザーの課題感を刺激し、解決策を提案、さらに自社製品への興味関心を高めるという一連の流れは、オウンドメディアだからこそできることだ。
1-3.「集客」はオウンドメディアの重要な機能
集客というと、「ダイレクトメール」や「テレマーケティング」など、能動的な施策を思い浮かべる。
オウンドメディアは、受動型の施策であるが、集客ツールとしても優秀だ。
近年はBtoB領域でも、Webでの情報収集が顧客行動の起点となっている。
オウンドメディアでの検索ニーズに応じた集客設計が、リード獲得や商談化に大きく影響する時代なのだ。
特にBtoBでは、検索経由でたどり着いた情報をもとに複数の企業を比較検討するケースが多い。
広告のような一過性の流入ではなく、検索からの安定した集客を実現することで、継続的に見込み顧客との接点を生み出すことができる。
2.オウンドメディアで集客するメリット
次に、オウンドメディアによる集客のメリットを整理していく。
マーケティング担当者の中には「何も手間をかけてオウンドメディアで集客する必要がない」と考える方もいるだろう。
確かに、特定の検索キーワードから集客したいのであれば、リスティング広告で良いはずだ。
しかしオウンドメディアの集客には、リスティング広告とは異なるメリットがある。
2-1.検索からの流入で、自然なかたちで認知される
BtoBの商材は、検討期間が長く、複数人の意思決定を経るのが一般的だ。
担当者レベルでは、まずWeb検索による情報収集を行う。
「請求書 電子化 比較」や「在庫管理システム メリット」といった検索ワードに、自社のコンテンツがヒットすれば、広告費をかけずとも見込み客との接点が生まれる。
検索ニーズに合わせた情報を届けられるのは、オウンドメディアならではの強みと言える。
しかも、広告のように「売り込み感」がないため、自然に信頼を得やすいのも大きなポイントだ。
2-2.一度作った記事が、あとから何度も効いてくる
オウンドメディアで作ったコンテンツは、メディアを閉鎖しない限りWeb上に残り続ける。
検索でヒットし続ける限り、数ヶ月後、あるいは数年後に再び読まれることも珍しくない。
こうした「積み上げ型」の仕組みは、「継続的な集客力」につながる。
広告は広告費の投下をやめれば流入も止まるが、オウンドメディアは一定のレベルに達すればお金をかけずに集客が進む。
定期的なメンテナンスは必要だが、検索順位の維持さえできていれば、少ない労力で大きな効果を生む“資産”として機能する。
2-3.潜在層にも、じわりと届く
マーケティング施策の多くは、「今すぐ欲しい人」に向けたものが多い。
つまり顕在層や明確層向けだ。
一方、オウンドメディアでは、「まだ課題が明確になっていない企業」や「情報を集めている最中の企業」にも情報を届けられる。
これらは潜在層と呼ばれ、市場の大半を占める存在だ。
たとえば、「業務効率化 エクセル限界」など、製品名を含まない検索キーワードでも、読者が共感しやすいような記事を作れば、十分に接点を持つことができる。
こうした接点がきっかけとなり、徐々に興味を持ってもらえれば、その後の資料請求や商談にもつながりやすい。
大量に存在する潜在層に「覚えてもらう」ためには、オウンドメディアの集客が欠かせない。

2-4.集客に「自分たちの言葉」を乗せやすい
広告はスペースが限られているため、伝えられる情報に限りがある。
一方、オウンドメディアでは、ページの構成・文体・情報量などを、すべて自社で決めることができる。
製品の紹介だけでなく、開発に至った背景や、導入後に得られる成果、活用事例などを含めた「ストーリー」を伝えることができる。
集客の際に「製品スペック」や「価格」以外の要素を含められるため、見込み客の信頼を得やすい。
また、接点の段階からある程度の納得や共感を得ておくことで、その後の営業活動もスムーズに進めやすくなる。
2-5.広告や展示会よりも中長期の成果がでやすい
BtoBでの集客は「持続性」がものを言う。
オウンドメディアは、短期目線では広告や展示会よりも集客力が弱い。
また、立ち上げ時に手間と時間がかかる。
しかし、検索流入さえ得られれば、広告や展示会のような費用はかからない。
数年単位の中長期で見れば、広告や展示会よりも優秀な成果を上げることも珍しくない。
時間とともに効率が上がっていく「育てる集客チャネル」という位置づけで捉えると、非常に理にかなっている。
オウンドメディアの【実際の】メリットとは?デメリットやおすすめの運用方法も解説
3.オウンドメディアの集客に役立つ施策
まず、一般的な「オウンドメディアの集客方法」を整理してみよう。
まずは一覧で確認し、以降で1つずつ紐解いていこう。
| 検索流入 | SNS | Web広告 | 動画プラットフォーム | メルマガ | |
|---|---|---|---|---|---|
| 内容 | ペルソナとジャーニーに沿ったコンテンツ制作 潜在ニーズを捉えたコンテンツSEOで長期で効果が見込める |
SNSアカウントからの流入 BtoBでは「バズ」の効果が限定的 |
信頼性の高いメディアへの出稿ならば活用すべき | BtoB関連動画の再生数が小さく流入が見込みづらい オウンドメディアへの流入とは経路が異なる |
ナーチャリング向き ゼロベースでの集客は効率が悪い |
| 効果 (短期/長期) |
△/◎ | ×/△ | ◎/△ | △/△ | △/○ |
| コスト | 中 | 低~中 | 高 | 高 | 中 |
集客方法1.検索流入
検索流入による集客は、いたってシンプルだ。
質の高いコンテンツを制作し、継続的にオウンドメディアへアップし、検索上位を目指す。
検索流入は、BtoBのオウンドメディアにおける集客の大本命だ。
特に、SNSや動画プラットフォームからの流入があまり望めないBtoBでは、検索流入を地道に育てることが、数年後の大きな成果につながる。
ただし、ただ検索上位を目指すのではなく「具体的な顧客増」を想定してコンテンツを制作していこう。
どういうことかというと、読み手の属性を細かく定義し、そこから導き出されるキーワードに沿ってコンテンツを制作するのだ。
端的に言えば「ペルソナ」と「カスタマージャーニー(サーチジャーニー)」に沿ったコンテンツ制作が重要になってくる。
ペルソナとジャーニーによって導き出されたキーワードは、見込み客の状況を把握する重要なヒントだ。製品を「いますぐ欲しい」のか、「欲しいと思っているが、必要性は低いのか」など、「欲求」と「必要性」の間に揺れる顧客の姿が見えてくる。
見込み客に正しく届くコンテンツを積み重ねることで、徐々にではあるが確実に検索流入が増大していく。
集客方法2.SNS
SNSからの流入は、近年特に力を入れる企業が増えた印象だ。
しかし、BtoBにおいてはそれほど効果が見込めない。
BtoBにおいても、メジャーなSNSから得られる流入は無視できない規模になっている。
特に重要になるのが、「ファン化」の視点だ。
SNSは即時性・親密性の高いメディアだ。
定期的に価値ある情報を発信し続けることで、企業やブランドへの“信頼と共感”を少しずつ蓄積していくことができる。
このファン化の積み重ねが、長期的な集客力の強化につながる。
SNSでの接点をオウンドメディアへの訪問につなげ、さらに「習慣化」させるには、コンテンツと連動した戦略的なアカウント運用が欠かせない。
SNSからの流入をオウンドメディアに定着させるために、マーケティングの知見を生かしたアカウント運用を心掛けたい。
集客方法3.Web広告
Web広告は、使い方によっては絶大な効果をもたらす。
しかし、それはターゲットの設定やチューニング、投下予算などのバランスが良好な場合だ。
短期間での集客という点では優れているが、中長期でコストパフォーマンスを計算すると成功とは言えないケースも多い。
弊社としては、オウンドメディアの集客と広告の集客は別の軸で考えるべきであると考えている。(もちろん時には併用も検討する。)
ただし、被リンクを獲得するために、信頼性の高い媒体に広告を出し、オウンドメディアへの動線を作るという方法は効果がある。
これは誘導先のオウンドメディアの信頼性が高い(質の高いコンテンツが蓄積されている)場合には、特に有効だ。
出稿先のメディアのイメージが自社に合致しているかなどの「見極め」が必要となるが、心当たりがあるならば積極的に活用していこう。
集客方法4.動画プラットフォーム
近年では、Youtubeをはじめとした動画プラットフォームも集客ツールとして欠かせない存在になった。
BtoB関連の動画は再生数が非常に少ないが、その分だけ「濃いアクセス」が期待できる。
強い課題感を持つユーザーが熱心に視聴するため、意外と「潜在的な見込み客」が多いという印象だ。
BtoCに比べると、10~100分の1の再生回数が相場だが、オウンドメディアに着地させることで優秀な集客ツールになる。
集客方法5.メルマガ(MAから配信)
メルマガについても、ゼロベースで集客するという意味では、あまり効果がない。
メルマガに設置したURLのクリック率は数%台だといわれている。
そこからオウンドメディアへの流入、リード獲得となればさらに数は少なくなる。
また、スパムとして振り分けられてしまうと、逆にアプローチ不可能な状態になってしまうため、リスクも伴う。
こちらも、既存顧客や獲得済みリードに対するナーチャリングという文脈で考えたほうが期待値は高いだろう。
ナーチャリングメールを成功に導く作り方と活用ポイント
4.オウンドメディア集客の成功ポイント
オウンドメディアの集客は、「他のチャネルとの連携」と「コンテンツの質」という2つの柱が揃うと成功しやすい。
それぞれ具体的に見ていこう。
4.1.他のチャネルとの連携
オウンドメディアの弱点は「立ち上がりが遅いこと」だ。
集客が軌道に乗るまでは、どうしても半年~2年程度の時間が必要だ。
この弱点を補うために、広告、SNS、メールマーケティングなど他チャネルとの連携を前提に設計しよう。
たとえば、新しく公開した記事をSNSで拡散したり、メルマガで案内したりすることで、検索に頼らず読者を呼び込むことができる。
また、リスティング広告やディスプレイ広告を使ってコンテンツに直接誘導すれば、ターゲット層への認知拡大にもつながる。
さらに、集客したユーザーの行動データをもとに、ホワイトペーパーへの導線を強化したり、MAツールでナーチャリングに活用したりと、他の施策と接続して“次のアクション”につなげる導線設計も不可欠だ。
これからオウンドメディアの立ち上げ段階にある方は、以下の記事で紹介している戦略設計や構築手順も参考にして頂きたい。
オウンドメディアの作り方とは?戦略設計からサイト構築、運用までのノウハウを解説
4.2.コンテンツの質に徹底的にこだわる
検索流入を狙うにしても、広告で誘導するにしても、最終的に読まれるのは「コンテンツ」だ。
どれだけ流入を増やしても、ユーザーの期待に応えられない内容であれば、離脱されてしまう。
特にBtoBの場合、読者は業務課題の解決策を探しており、「知っていることをなぞるだけの内容」では満足しない。
実務に根ざした視点、専門性のある切り口、事例やデータに裏付けられた情報など、“読む理由”のあるコンテンツが求められる。
また、コンテンツの「テーマ選定」も重要だ。
誰に、何を届けたいのかを明確にしないまま記事を書いても、結果的に誰にも刺さらないものになってしまう。
検索ボリュームだけでなく、購買行動のどの段階にいる人に向けた内容かを意識することが、成果を左右する。
質の高いコンテンツは、読了率や滞在時間の向上、検索順位の安定化などにもつながり、中長期的な集客力を支える“資産”となっていく。
4.3.コンテンツの質とは何か
コンテンツの質を高めるに、「コンテンツの質」について定義しておこう。
弊社では以下のような特徴を持つものを「質の高いコンテンツ」としている。
- 納得感のある情報を提供し、信頼を得られるコンテンツ
- 新たな視点や視座を提供するコンテンツ
- オンラインには出回りにくい希少性の高いコンテンツ
- 実務者の目線で作られた、具体的で正確な情報を含むコンテンツ
- 潜在ニーズを刺激するコンテンツ
特に最後の「潜在ニーズ」には十分に配慮したい。
ご存じのとおり潜在ニーズは「本人も気が付いていない本質的な痛み(必要性)」である。
「必要なのに気が付いていないのか?」と疑問に思うかもしれない。
ここで言いたいのは「今感じている必要性が、本質をついたものかどうか」だ。
「とりあえず今すぐに必要なもの」をニーズだと勘違いしがちだが、その奥に潜む根本的な必要性にまで到達できていないことが多い。
だからこそ「潜在」と表現しているのだ。

潜在ニーズを刺激するコンテンツは、キーワードと自社製品・サービスをつなげる導線になりうる。
キーワードから直接連想しにくい製品であっても、潜在ニーズに絡めることで興味・関心の対象になるからだ。
潜在ニーズについては以下の記事で詳しく解説している。
潜在ニーズと顕在ニーズの違いとは?ニーズ分析からBtoBマーケを飛躍させるコツを解説
4.4.逆に、質の低いコンテンツとは?
潜在ニーズに配慮した高品質なコンテンツを、ゼロから作るのはノウハウや労力面からハードルが高くなるというのが現実だ。
ただしその逆、つまり「質の低いコンテンツ」を回避することは可能だ。
質の低いコンテンツとは、端的に言えば「離脱率が低く、コンテンツスパムと誤解されかねない」コンテンツだ。
具体的には、以下が挙げられる。
- 顕在ニーズ(表面的な○○したい)だけにフォーカスした内容で、読者が本当に解決したいことの手助けにならないコンテンツ
- 上位記事の見出し構成や内容を模倣しまとめただけのコンテンツ
- 独自の視点や見解、具体的なノウハウ、例、数値などを一切含まないコンテンツ
こうしたコンテンツの量産は、一時的な集客にはつながるかもしれない。
ただし中長期的に考えると、オウンドメディアだけでなく自社の評価・信頼性が低下するおそれがある。
自然と投資対効果も低くなり、売上や受注へ貢献しない「お荷物」になりかねないため注意しよう。
IT業界のコンテンツに特化した「質の高さ」の具体的な内容については、以下の記事でも詳しく解説している。
【IT企業向け】顧客に選ばれるための良質なコンテンツを徹底解説
5.オウンドメディアSEOの作成ポイント
とはいえ、質の低いコンテンツの量産にも一定の効果はある。
短期間とはいえ検索上位に露出すれば、集客効果があるからだ。
そこで弊社では、SEOにも配慮した質の高いコンテンツの制作をおすすめしている。
具体的には次のようなポイントを押さえつつ制作に臨みたい。
ポイント1.ペルソナを煮詰める
優れたコンテンツは、想定読者に価値を届けるものである。
これを実現するためには、ペルソナを具体化し、顧客の詳細な「像」を把握することが重要である。
ペルソナ設計は、属人的なイメージだけで行うと精度がぶれやすい。
以下のような「ペルソナ作成テンプレート」を使うと、誰もが同じ基準でペルソナ像を共有(シェア)できる状態をつくることができる。

さらに、ペルソナを「購買フェーズ」で区切ることで、各段階に応じた適切な情報提供が可能となる。

「認知」「興味・関心」「比較・検討」といった購買フェーズに対応づけて、ペルソナをより具体化することが重要だ。
「企業属性(業種・規模)」「担当者(役職・部門)」「フェーズ(検討段階)」の3軸を掛け合わせることで「誰に・どのタイミングで・何を提示すべきか」が明確となる。
BtoBマーケで必須のペルソナ設定|BtoCとの違い、設定・活用方法を徹底解説
ポイント2.顕在ニーズと潜在ニーズを整理する
ペルソナ設定においては、顕在ニーズと潜在ニーズを整理することが肝要だ。
特に潜在ニーズの把握は、ペルソナに新たな気づきを与える機会を提供する。
以下の図では先ほどのペルソナ設計シート例に「課題顕在化前」を加えた5フェーズ構成で顧客フェーズごとのニーズとコンテンツを整理しており、より細やかでさまざまな課題設定とテーマ設計に役立つ。

マーケティング施策がバラバラで終わらないために:売上につながる全体設計・構造化の考え方
ポイント3.ジャーニーを設計する
カスタマージャーニーやサーチジャーニーの設計は、ユーザーの認識の変化をまとめ、意識変遷を先回りしたコンテンツを提供するために不可欠である。
添付の画像は、ユーザーが「認知」から「比較・検討」を経て「購入・契約」に至るまでの流れを整理したものである。

記事ごとに企画段階から「誰に訴求するのか」「どの体制で制作するのか」を明確にし、社内リソースと外部コンサルティングをどう繋げるかを判断することが重要だ。
ターゲットユーザーの求める情報や検討プロセスは種類も違いも大きいため、それぞれに適したコンテンツと多様なCTA設計が必要となる。
例えば、料金プランの比較記事、成功実績の紹介、導入までにかかりコストや体制構築に至るまでのステップをわかりやすく説明することは、読者が「どこで決めるか」を判断する上で非常に役立ち、社内決定プロセスにも繋がる。
最新のトレンドなども踏まえてジャーニーを整理することで、単なる集客記事に留まらず、ユーザーの抱える課題を解決へと導き、最終的にビジネスの成果に直結する流れを作り出せるのである。
ポイント4.「ヌケ・モレ」を特定する
競合コンテンツの分析を行い、視点や情報の漏れを発見し、それを埋める。
ポイント5.キーワード出現数や共起語を重視しすぎない
現代のコンテンツSEOでは、キーワードの出現数や共起語の数はそれほど重視されない。
これらはタイトルや見出し程度に意識するに留めるべきである。
ポイント6.SEOで露出させ、質で読ませる
従来型のSEOを完全に無視することはできないが、Googleなどの検索エンジンに読ませる部分と人間に読ませる部分のバランスをとることが必要である。
ポイント7.エバーグリーンコンテンツを狙う
エバーグリーンコンテンツ、つまりトレンドに左右されない永続的な話題のコンテンツは、質が高く、中長期的に検索上位表示を獲得する傾向にある。
質の高いコンテンツについては、下記の記事も参照してみてほしい。
コンテンツマーケティングとSEOの違いとは?活用法まで徹底解説
6.オウンドメディアの集客に要する時間とは
次に、オウンドメディアでの集客に要する時間についても紹介しておこう。
6.1.成果を出すには1〜3年の取り組みが必要
BtoBのオウンドメディアで、ゼロから集客を行う場合は、効果が表れるまでに半年~1年以上の時間を要する。
また、最低でも月に5~8記事のコンテンツをアップするなど、定期的な更新と記事の蓄積が求められる。
月2本のようなペースで制作する会社も多いが、これは成果につながりにくい。
まずは100記事を貯めることを目標に、1年~3年のスパンで集客に取り組んでほしい。
6.2.Web広告の活用も視野に
もし、「今すぐリードが欲しい!」ということであれば、「Web広告」で一気に流入を増やしたうえで、「ホワイトペーパー」や「セミナー」に着地させるといった施策がおすすめだ。
広告は「蛇口を一気に緩める」行為と似ており、内容はともかくとして流入量は確実に増える。
短期間での流入は必ずロスが出るが、ホワイトペーパーやセミナーでしっかり受け止められれば、一定の「客」が生まれる。
7.オウンドメディアの集客成功事例
最後に、オウンドメディアによる集客の成功事例を紹介する。
事例1:更新頻度を高めてリードを集めることに成功|業務支ツール提供企業
バックオフィス業務を効率化するSaaSを開発・提供するA社では、もともと自社webサイトで製品紹介のみを行っていた。
しかし、自然検索での上位表示が得られないことからオーガニックの流入が少なく、「そもそも認知度自体が低く、知ってもらえていない」という課題を感じていた。
そこで、見込み顧客が検索しそうなキーワードを調査し、月に5本のペースで課題解決型のコラム記事を継続的に投稿。
「〇〇業務のデメリットと改善方法」や「△△システム業務でSaaSを選ぶときのポイント」など、実際の悩みに沿ったテーマを発信した。
その結果、半年ほどで月間PVが2,500前後まで成長し、月3~4件ほどの問い合わせ(コンバージョン)が発生。
また、オウンドメディア経由で資料ダウンロードを行ったリードは、商談化率が比較的高いことが分かった。
事例2:SEO最適化とCTA改善で無料トライアル申込が増加|SaaS型業務アプリ提供企業
中堅規模のSaaS企業では、リスティング広告に頼らない新規獲得チャネルとして、1年以上前からオウンドメディアの運営を開始。
しかし、記事数が増えるにつれて検索順位が伸び悩み、アクセス数はあるもののCV(無料トライアルや購入申込)にはつながりにくい状況が続いていた。
そこで、過去記事を見直し、SEOアルゴリズムの視点を意識したタイトルや構成、キーワードを最適化するリライトを実施。
また、CTA(行動喚起)の導線も「お問い合わせ」一択から、無料資料・チェックリスト・イベント告知・メルマガ登録といった施策から→比較検討記事→トライアル申込と段階的に分ける構成に変更。
インフルエンサーとのインタビュー記事やSNS(twitter・instagram・facebook・tiktok)と連動した投稿も強化。
すると、検索経由での無料トライアル申込数が前年比で約1.4倍に増加。
集客チャネルを幅広い形で活用できたことで、マーケティング施策の相乗効果を得ることに成功した。
オウンドメディア改善のための全施策~売れるメディアへの道を具体化しよう
8.まとめ
ここでは、オウンドメディアの集客方法について解説してきた。
BtoBのオウンドメディアは、SEO対策だけでなく、プレスリリース、SNS投稿、インフルエンサー活用、オフラインイベントなど、幅広いプロモーション手法と組み合わせ、検索流入をしっかり育てることが効果的である。
そのため、記事のライティングやデザインを工夫し、フォロワーとのコミュニケーションを深めることで、リーチや認知度を高める可能性が広がる。
ただし、PV数や人気記事といった指標のみを追うのではなく、KPIや費用対効果を重視し、購買やコンバージョンにつながる施策を意図的に選択することが必須だ。
オウンドメディアでの集客は短期的に結果が出にくく、始めのうちは低リターンに見える。
年単位で取り組むべき施策であるため、スタートからしばらくは投資の期間が続く。
しかし、更新を継続することでビジネス全体のゴール達成に寄与し、長期的な売上や購買行動につながり、集客の質が良ければ結果(売上、受注)はついてくる。
苦しいスタートの時期を乗り越えるためにも、外部企業によるサービスの利用を検討してみてはいかがだろうか。
弊社では、ITやテクノロジー分野の専門家知識やスキルを持つスタッフにより、IT企業のマーケティング支援やオウンドメディアの構築支援、記事制作支援などを提供している。
お困りの際はぜひお気軽にお問い合わせいただきたい。

