近年では多くの企業がSEO対策に取り組んでいるが、SEO対策はすぐに効果が出るものではない。
問い合わせや売上などにつながるまでには、一定以上の期間が必要だ。
どれだけ良い記事を書いても、新規ドメインのメディアが月間検索数5万回を超えるビッグキーワードで上位表示されることは極めて難しい。
しかし、SEO対策に一定期間取り組めば、効果が出始めてからの爆発力は大きい。
だからこそ効果が目に見えない期間でも、質の高いSEO対策を継続することが重要だ。
本記事ではSEO対策の効果が出るまでの期間や、より早く効果を出すためのポイントについて、事例やGoogleの見解を踏まえて解説する。


1.SEO対策で効果が出るまでの期間
Google公式サイトによると、SEO対策を実施し、効果が出るまでの期間は4ヶ月~12ヶ月程度とされている。
出典:SEO 業者の利用を検討する Google検索フォーム
また、さまざまなSEO業者が、SEO対策の効果が出る目安は半年〜1年程度と述べているが、この目安は間違いではない。
一方で、この期間はあくまで「目安」だ。
「SEO対策に〇ヶ月取り組めば必ず効果が出る」というものではない。
「効果の出やすさ」は競合の状況、自社サイトが新規ドメインか既存ドメインかなどのさまざまな要因で変わる。
また「効果」をどのように捉えるかという視点もある。
「上位表示」だけではなく、オーガニック検索からの流入・問い合わせ・売上増加など、KPI(重要業績評価指標)をどのように定めるかによっても、見込むべき期間は異なる。検索からの流入数が増えれば、CV(問い合わせや資料請求)数もそのまま比例して増えるわけではないので注意しよう。

図のようにSEO対策で効果が出てくるまでの期間は自社の戦略やさまざまな要因によって変動するが、おおむね半年~1年程度の期間は必要だと考えておくとよいだろう。
SEO対策の効果が出るまでの期間を誤解して、短期的には効果が出ないからと、社内での評価や理解を得られず、施策の継続ができなくなってしまうケースも珍しくない。
1.1.新規ドメインと既存ドメインでの成果が出るまでの期間の違いについて
「自社サイトが新規ドメインなのか、既存ドメインなのか」は、SEO対策の効果が出るまでの期間に大きく影響する。

端的にいうと、既存ドメインが新規ドメインよりSEO対策の効果を早く得やすい。
なぜなら、既存ドメインはすでに検索エンジンから認識されており、既存のコンテンツや他社からの被リンクにより、ドメイン自体への評価が高い状態にあるためだ。
一方で、新規ドメインでは、検索エンジンが自社サイト(ドメイン)を1から認識したり評価したりする必要がある。
結果として、同じSEO対策をしても、新規ドメインでは上位表示につながりにくく、既存ドメインでは上位表示につながりやすい傾向がある。
「オウンドメディアを新規ドメインで立ち上げ、新たな流入元を作ろう」と考えるマーケティング担当者も少なくない。
だが、特別な事情がなければ自社で利用中の既存ドメインを活用した方が、SEO対策の効果は早く出やすいといえる。
1.2.自社サイトでの取り組み事例
SEO対策の効果出現までに「時間がかかる」ことはわかるものの、具体的なイメージがつかない方も多いだろう。
そこで、弊社の事例を紹介する。
弊社では、https://it-bell.com/というコーポレートサイトのドメイン内で、オウンドメディアを運営している。
SEO対策やマーケティングに関するコラムを継続的に更新し、自社サービスに関する検索を行ったユーザーの集客を狙っている。
運用当初の流入は長期間横ばいであったが、継続的に質の高いコラムを更新し続けた。
運用し始めてから8ヵ月程度でWEBサイトへの流入が増加、資料請求や問い合わせなどのコンバージョンにもつながるようになってきた。

「SEO対策」や「マーケティング」という領域でのSEO対策は競合企業も多く、いわゆる激戦ジャンルである。
それでも正しいSEO対策を実行し続けたので、運用8ヵ月で目に見える効果につながり、現在もSEO経由での継続的な集客が見込めている。
2.SEO対策の効果が出るまでに時間がかかる理由
では、なぜSEO対策は効果が出るまでに時間がかかるのだろうか。
主な理由は以下の3つだ。
- 検索エンジンの評価の仕組みが複雑であるため
- 「SEO対策」自体がレッドオーシャン化しているため
- 安定した質の高いリソースの確保が必要なため
SEO対策に時間がかかるのには、明確な理由がある。
裏を返せば、この理由の部分を理解・攻略できれば効果出現の早期化につながる。
SEO対策やマーケティングの担当者なら、理解しておきたい必須の内容だ。
詳しく見ていこう。

理由1.検索エンジンの評価の仕組みが複雑であるため
検索エンジンサイトやページを評価し、検索結果に反映するまでには複数の工程を経ている。
具体的には、次のような工程だ。
- ディスカバー(URLの発見)
- クロール(URLの解析)
- インデックス(URLの登録)
- ランキング(検索順位への反映)
つまり、記事やコンテンツを作成し、公開するだけでは検索結果に反映されるとはいえない。
検索エンジンが該当のURLを見つけ、クロールし、検索エンジンのデータベースに登録(インデックス)して初めて「順位付け」の土台が整うのだ。
URLの解析を行うクローラーは日々、インターネット上にあるページを巡回しているが、新しいメディアやコンテンツが少ないメディアでは、巡回の頻度は少ない。
よって「育っているメディア」よりも検索エンジンから評価される機会が必然的に少なくなり、順位も上がりにくいというわけだ。
ほかには「E-E-A-T」という評価基準があり、近年SEO対策における重要度を高めている。E-E-A-Tとは、Experience(経験)、Expertise(専門性)、Authoritativeness(権威性)、Trust(信頼性)の頭文字をとったもので、GoogleはE-E-A-Tを重視すると明言している。
理由2.「SEO対策」自体がレッドオーシャン化しているため
近年では、SEO対策に取り組んでいる企業が非常に多い。
いわばすでに「レッドオーシャン」だ。
内容の薄いコンテンツの作成や、対策キーワードをちりばめるなどの「表面的な」SEO対策を行うだけでは上位表示が難しい。
さらに最近では 、AIによる回答が検索結果上部に表示される「AI overview」の台頭もある。
「〇〇とは」のようないわゆる「Knowクエリ」に対する回答はAIが行うので、各ページに遷移せずともニーズが満たされる状況だ。
このような背景から「SEO対策で成果を出すこと」にはより高度な戦略が必要であり、難易度が増している。
現代に即した戦略を立て、質の高いコンテンツを発信し続けることが重要だ。
理由3.質の高い人材の安定した確保が難しい
SEO対策の難易度上昇にともない、SEO対策を行う人材の確保も難しくなっている。
AIも含めた現代のSEO対策について専門知識のある人材や、質の高いコンテンツ作成ができるライター・ディレクターがメンバーとして不可欠だろう。
自社でSEO対策を行う場合は、人材を確保し、社内体制を作り、PDCAを回していく必要がある。
しかし、SEO対策の経験が少ない社内メンバーはいきなりSEO対策の戦略を立案し、継続的にサイトの改善やコンテンツの作成などをすることは簡単ではない。
結果、集客や問い合わせにつながらない(効果のない)コンテンツを作成し、時間やリソースを無駄にしてしまう可能性も少なくない。
これにより、効果の出現がどんどん遅れてしまうかもしれない。
また、SEO対策を外部委託する場合も注意したい。
数あるSEO対策業者のなかで、自社の専門分野を理解しつつ、現代の競争性が高いSEO対策で結果を出せる外部企業を選定する必要がある。
業者の選定次第では、コストや時間が無駄になるおそれもある。
外部の企業に依頼すれば、短期間のSEO対策で成果が出るというわけではないので注意が必要だ。
3.SEO対策で効果が出るまでの期間を短縮するための考え方
SEO対策で効果が出るまでには、一定以上の期間が必要だと解説した。
ただし、できる限り効果が出るまでの期間を短くし、早い段階で認知拡大やコンバージョンにつなげたいというのが本音ではないだろうか。
そこで本章では、できる限り早く・大きくSEO対策の効果を出すための考え方を解説する。
ポイントは以下の4つだ。
すべての施策を並行して行うのではなく、現状を分析し、施策の優先度を決めた上で実行することが大切だ。

ステップ1.自社サイトの状況を分析する
すでに自社サイトにある程度検索流入がある場合は「流入を稼げているページ」を改善すると、コンバージョン(問い合わせや資料請求)が増えるケースもある。
まずは自社サイトについて、GoogleサーチコンソールやGoogleアナリティクス4を活用し、以下を分析したい。
- コンテンツ(記事)ごとのユーザー数
- 流入につながっている検索キーワード
そのうえで、以下のようなコンテンツがあれば、優先的に改善を進めよう。
- 検索からの流入が多いコンテンツ
- コンバージョン率が高いコンテンツ
問い合わせや資料請求(CTA)への導線の見直し、CTAボタンの可視性向上、より詳しい解説を行うホワイトペーパーの設置などを行うと、記事の効果が高まりやすい。
現状ではまだサイトへの流入が少ない場合は、まずは流入数を増やすことが必要だ。
次に紹介するような基本的なSEO対策の実施から始めていこう。
ステップ2.基本的なSEO対策を実施する
SEO対策では残念ながら「この対策を行えば必ず成果が出る」という方法はない。
Googleの公式文書を踏まえて、丁寧に1つ1つのSEO対策を行うことが一番の近道だ。
SEO対策は一般的にコンテンツSEO(コンテンツ自体の品質を高める)とテクニカルSEO(技術的要件を整える)に分けられる。
テクニカルSEO
テクニカルSEOはいわば、検索エンジンから評価を得るための土台づくりだ。
サイト構造やコンテンツ内の情報を、検索エンジン(ロボット)にもわかるようにタグなどで記述し、適切な評価を得られる状態にする。
具体的な施策内容は以下の記事で解説しているため、参考にしていただきたい。
SEO対策で重要なタグの設定や内部リンク・外部リンクの最適化については、個別の記事でも解説している。合わせて参考にしてほしい。
コンテンツSEO
コンテンツSEOは、それぞれのコンテンツをSEO評価が高まるように最適化する施策だ。
特定のキーワードでの検索結果上位に表示されるよう、ユーザーのニーズに回答し、質の高いコンテンツ(記事)を作成していく。
注意したいのは、キーワードをちりばめる、競合よりも文字数を多くするなどの「表面的な対策」に終始しないことだ。
コンテンツSEOでは、以下のポイントを押さえて行いたい。
- ユーザーの検索意図を分析し、顕在ニーズと潜在ニーズに回答する
- ユーザーが欲しい情報から回答する(構成が重要)
- 文章だけでなく、画像や図解を使用して理解を促進する
- 独自性を出す(競合記事の寄せ集めはAIでもできる)
ステップ3にも通じるが、上記がコンテンツSEOの主なポイントだ。
詳しくは以下の記事から確認していただきたい。
ステップ3.良質なコンテンツを継続的に作成する
基本的なSEO対策を実践しつつ、1つ1つのコンテンツの質を高め、継続的に発信していこう。
Googleの公式も検索順位に関わる要素として、ユーザーファーストの良質なコンテンツ作成を重要視している。
品質評価ガイドラインでは、良質なコンテンツとして以下が挙げられている。
- Needs Met Ratingで高評価を得るコンテンツ
- 独自性と正確性を両立するコンテンツ
- E-E-A-Tを充足するコンテンツ
上記について、以下の記事で詳しく解説している。
コンテンツの品質を最大限に高めたい方は、是非参考にしていただきたい。
また、社内にコンテンツ作成のリソースがあまりない場合は、AIの活用も効果的である。ただし、AIを活用して大量にコンテンツを生成すればよいというわけではないので注意が必要だ。
ステップ4.作成したコンテンツはメルマガやSNSなどでも活用する
高品質なコンテンツを作成したあとは、SEO以外にも流入経路を増やせば、より短期的に成果につながりやすくなる。
たとえばメルマガやSNS、ホワイトペーパーが挙げられる。
ユーザーが実際に検索しているキーワードをもとに作成したコンテンツは、自社の顧客となるユーザーが実際に悩んでいたり、興味を持っていたりするテーマである可能性が高い。
作成したコンテンツがSEOで上位表示されるまでにはどうしても時間がかかってしまうが、メルマガやSNSであれば時間をかけずにすぐにコンテンツを見てもらえる。(もちろん、一定数の顧客リストやSNSのフォロワーは必要な点に留意したい。)
また、SEO対策に取り組む際に一番辛いのが「自身の作ったコンテンツが誰にも見られていない」という状況だ。
社内でコンテンツ作成へのモチベーションを上げるためにも、コンテンツの拡散にメルマガやSNSはぜひ活用したい。
4.複数チャネルの併用が基本
BtoB企業のリード獲得においては、早く効果を出したいのであれば「SEOだけ」では厳しい部分が大きい。
費用はかかるが、比較的即効性のあるリスティング広告や、展示会への出展、セミナーの開催、他社メディアの力などを活用して成果を出しつつ、中長期的にSEOを育てる必要がある。
BtoBマーケティングにこれから取り組む企業の担当者は、まずは小さな成功実績を作り、社内で理解を得て、予算やリソースを少しずつ増やすことが重要だ。
そのため、SEO対策という1つの手法にこだわりすぎず、現状の営業課題やマーケティング課題を整理して、短期的に改善ができる施策の優先度を高くすることも意識しておきたい。
BtoB企業のリード獲得手法についてはこちらの記事で具体的に解説しているので、合わせて参考にしてほしい。
5.まとめ
今回の記事では、SEO対策で効果が出るまでの期間について、具体的な事例や期間を短縮する方法も交えながら解説してきた。
SEO対策で効果が出るまでには、どうしても時間がかかる傾向がある。
できるだけ早く成果を出したいというマーケティング担当者は、今回の記事を参考に4つのステップで取り組みを進めていくとよいだろう。
また、弊社ではBtoBのIT企業に特化し、SEO対策のコンサルティングやコンテンツ作成支援を行っている。
自社のSEO対策で悩んでいる方は、ぜひお気軽にお問い合わせいただきたい。