リンクジュースはページの「SEO的な評価」を他のページに伝える考え方だ。
SEOの黎明期に重要視され、実際にリンクジュースを意識した対策で効果が得られた。
しかし現在は、リンクジュースを意識すべき機会は減少している。
一方で「E-E-A-T」や「トピッククラスター」という新しい概念の中で、リンクジュースが見直される動きもある。
果たして、リンクジュースは今でも有効なのだろうか。
本記事では、リンクジュースの基礎知識やPageRankとの関係、最新のSEOにおけるリンクジュースの使われ方などを解説する。
「リンクジュースとはそもそも何を指しているのか」
「現在でもリンクジュースは意識すべきなのか」
といった疑問を持つ方であれば、本記事の内容が参考になるはずだ。
1.「SEO的な価値を流し込む」リンクジュースの概念
1.1.リンクジュースとは何か?
リンクジュースとは、あるページから別のページへの「SEO的な価値」を流し込む様子を表したものだ。
ページの持つ価値が「ジュース」のように流れ込むことからこう呼ばれている。
ちなみにリンクジュースという言葉は俗語であり、Googleが公式に認めた概念ではない。
しかし2010年代の中頃まで、サイトやコンテンツの力を「意図的に」高める手法として持てはやされ、SEO業界では「王道」のひとつだった。
その背景にはSEO黎明期の重要指標「PageRanK」の存在がある。
詳しくは後述するが、PageRankとは「ページ(サイト)の力を定量的に表した指標」だ。
PageRankが高いと「権威性や価値のあるページ」とみなされ、検索結果の上位に表示されやすくなる。
PageRankは、リンクジュースを使うことで高まる効果がみられていたため、リンクジュースはPageRankの攻略法とみなされており、SEOの王道ともいえる手法だった。
1.2.リンクジュースは外部サイトに「価値」を伝える
リンクジュースでは、ページの価値をリンクの向こう側に伝える。
特に「外部のサイト」に対して有効だ。
また、ページが持つ価値の総量は決まっており、他のページにリンクジュースを渡すことで、価値の増減が起こると考えられていた。
たとえば、Aというサイトの価値が100だとしよう。
この状態で、Bというサイトのページにリンクジュースを送ると、その価値の一部が伝わる。
Aの価値は残り70となり、Bには30の価値が伝わる、というイメージだ。
2.黎明期SEOの主軸であった「PageRnak」と「リンクジュース」
ここで、PageRankとリンクジュースについてもう少し詳しく掘り下げてみよう。
この2つは現在のSEOにも通ずる考え方であり、有用性が高いからだ。
2.1. PageRankとは?
PageRankとは、ウェブページの重要度を評価する指標だ。(現在は非公開)
もう少し具体的にいうと「ウェブページ間のリンク構造を解析し、ページの重要度を数値化する仕組み」である。
0から10の11段階で数値化され、数字が大きいほど「重要度が高い」とされる。
PageRankの基本的な考え方は「多くのサイトからリンクを受けているページは、信頼性が高く価値がある」というものだ。
特に、権威性の高いサイトからのリンクは効果が高いとされた。
この点は現在のE-E-A-Tにおける「権威性」の考え方に近い。
PageRankは黎明期のSEOで非常に重要な指標だった。
なぜなら「PageRankが高い=検索上位に上がりやすい」という事実があったからだ。
ただし、現在は相対的な重要度が低下している。
2.2. PageRankをリンクジュースで育てるという考え方
本記事のテーマであるリンクジュースは、PageRankを育てるための攻略法とされていた。
前述のようにリンクジュースは、ウェブページ間のリンクを通じて「価値」を伝える。
要は「リンクジュースで特定のページに価値を送り込み、PageRankを上げる」という方法が使われたのだ。
- PageRankが高いサイトからリンクを受けると、受けたページのPageRankが上昇する。
- さらにそのページから他のページにリンクを張ることで、PageRankの価値を分配する。
- 上記を繰り返し、サイト全体の価値を上げていく(=検索上位に露出しやすくする)。
PageRankは「対策さえすれば効果がでやすい」ため、2010年代前半までのSEO対策で非常に重宝された。
2.3. 「PageRankが最重要な時代」=ブラックハットSEOの時代
Googleのアルゴリズムが未成熟な時代は、アルゴリズムの隙をつくようなSEO対策が主流だった。
いわゆる「ブラックハットSEO」という手法が横行したのだ。
PageRankも、ブラックハットSEOによって意図的に操作できた。
具体的には、あるサイトAのPageRankを上げるために、あらかじめ用意しておいたサイトBからリンクを送る。
サイトAはサイトBの価値を引き継ぐので、PageRankがあがる。
さらにサイトBと同様のサテライトサイトを量産してリンクを送り続け、サイトAのPageRankを意図的に上昇させることができた。
要は「自作自演のリンクネットワークからリンクを送り続ける」ことで、比較的簡単にPageRankの操作ができたといえる。
他にも「リンクファームやディレクトリ登録によるリンク獲得」「相互リンクの乱用」でPageRankを強引に引き上げる手法が存在した。
そして、GoogleはこうしたSEO対策を不正行為とみなし、排除し始めた。
また2010年以降は、次々にアルゴリズムの改良を重ねていく。
特に2012年の「ペンギンアップデート」以降、不自然なリンク操作に対する取り締まりが強化された。
2010年代中ごろからは、PageRankを意図的に操作する手法はほとんど通用しなくなったのだ。
3.現在は「PageRank」と「リンクジュース」を特別視する必要がない
リンクジュースの考え方も変化し、現在は「質の高いコンテンツを作成し、自然なリンクを獲得すること」がSEOの主軸となっている。
つまりPageRankやリンクジュースを意識する必要がない。
PageRankはすでに公開されなくなっているからだ。
3.1.PageRankの公開終了とその背景
Googleのアルゴリズムが変化したことを受けて、PageRankは徐々にその重要度を下げていく。
2013年には、それまでGoogleツールバーによって確認できていたPageRankの更新が停止された。
さらに2016年4月、GoogleはPageRank自体の公開を終了した。
以降、ユーザーが直接PageRankを確認することはできなくなった。
この決定の背景には、PageRankに依存したSEO対策への引き締めがあったとされる。
SEO対策自体は悪ではないが「意図的でユーザーのためにならない対策は悪」とみなされる。
「ユーザーニーズの充足とは別の基準で検索順位が変わってしまう」ことは、検索ユーザー全体に対するデメリットだからだ。
Googleは検索結果の品質とユーザーニーズの充足を第一に考えている。
この文脈において、PageRankはその役割を終えたと言えるだろう。
3.2.Googleの公式見解:リンクジュースの重要性の低下
PageRankと同様に、リンクジュースも重要度が低下した。
特に、Googleのジョン・ミューラー氏の発言「リンクジュースについて知ったことはすべて忘れるべきだ。それは既に廃れた概念であり、誤解を招くものである」は、リンクジュースの時代が終わったことを明確にした。
リンクジュースをはじめとした古いSEOではなく「コンテンツの質」がますます重視される時代になったのだ。
3.3.内部指標としてのPageRankの現状
PageRankは公開こそ終了したものの、Googleのアルゴリズムの一部として使用されている可能性が高い。
実際にGoogleは、2006年にオリジナルのPageRankを代替アルゴリズムに置き換えている。
したがって、表向きは更新を停止していても、内部では別の代替アルゴリズムとして生きている可能性がある。
ただし、検索アルゴリズムが高度化・多様化する中で、PageRankの相対的な重要度は低下しているはずだ。
現在のSEOでは、コンテンツの質、ユーザーエクスペリエンス、モバイル対応、ページの読み込み速度など、多くの評価軸がある。
PageRankやリンクジュースを特別視する必要性は薄れ、総合的なサイトの品質向上が求められている。
4.各所に残るリンクジュースの概念
このようにPageRankとリンクジュースは、SEO対策の主流ではなくなった。
しかし「ページの価値を伝える」というリンクジュースの考え方は、現在でも根強く存在している。
具体的には「価値の伝達」という考え方がさまざまな手法や評価基準に取り入れられている。
4.1.E-E-A-Tの「権威性」
Googleが重視する評価基準の一つに「E-E-A-T」がある。
- Experience:経験
- Expertise:専門性
- Authoritativeness:権威性
- Trustworthiness:信頼性
このうち「Authoritativeness:権威性」は、被リンクやサイテーションの獲得と深く関係している。
信頼性の高い外部サイトからの被リンクや、SNSやネット上での言及(サイテーション)は、サイトの権威性を高めるからだ。
このロジックは、リンクジュースの考え方に近い。
もちろん、PageRankのように数値化された情報を操作できるわけではない。
しかし「信頼性の高い外部サイトからのリンク」がサイトやページの価値を高めるという点は、リンクジュースとほぼ同じだ。
現在でも「自然な形の被リンク、サイテーション」にはリンクジュースが働くのかもしれない。
4.2.トピッククラスター
トピッククラスターとは、特定のトピックに関連する複数のコンテンツを内部リンクで結びつけ、サイト全体の評価を高める手法だ。
中心となるピラーページと、関連するクラスターページを内部リンクでつなぐことで、検索エンジンに対して専門性や網羅性を示すことができる。
黎明期のSEOでは、内部リンクはリンクジュースの対象外とされる見方が強かった。
しかし、トピッククラスターのロジックを紐解くと、内部リンク構造によってサイト内に「価値の伝播」が発生しているように受け取れる。
リンクジュースの概念が内部リンク戦略として応用されている可能性は高い。
5.リンクジュースはあくまでも「補助的」な概念
リンクジュースは、Googleの公式発言で「忘れて良い」とされた概念である。
しかし「投票による信頼性の蓄積」や「サイトの評価を伝える」という考え方自体は現在も存在する。
一方で、リンクジュースに頼りすぎるSEO対策は現実的ではない。
現在の検索アルゴリズムは、総合的な評価基準に基づいており、リンクジュース単体でのSEO効果は限定的だからだ。
あくまでも補助的な概念であることを理解しておこう。
また、以下の点に注意しながら、リンクの構築を進めたい。
5.1.伝播するのは「正の価値」のみではない
リンクジュースは、必ずしもプラスの影響をもたらすとは限らない。
これまでの述べたように「信頼性の高い良質なサイトからのリンク」はサイトの評価を向上させる。
逆もまた然りで、質の悪いページやスパムサイトからのリンクは「低評価」につながるリスクがある。
低品質なサイトからのリンクはSEOリスクになる
Googleは、低品質なサイトからの不自然な被リンクを「スパムリンク」として判定し、ペナルティを課すことがある。
たとえば、リンクファーム(意図的にリンクを張り合うサイト群)や、自動生成された無意味なリンクがこれに該当する。
不自然で無意味なリンクが増えると、Googleの評価が低下し、検索順位の低下を招きかねない。
ちなみにペナルティが課されると、1ページ目から一気に10ページ以下に下落することもある。
また、そもそも検索結果から除外されることもある。
ブラックハットSEO時代の常套手段であったスパムリンクも、現在では禁忌のひとつなのだ。
無意味なリンクの乱用は逆効果
無関係なジャンルのサイトや、内容の乏しいページと相互リンクを張ることも避けよう。
Googleは、リンクの関連性を重視している。
具体的には「サイトの内容や運営元の事業内容」と「リンク先の内容」の関連性だ。
たとえば、健康関連のサイトが自動車販売サイトと大量の相互リンクを持っている場合、Googleにとっては「不自然なつながり」に見えるかもしれない。
「自社の事業」や「コンテンツの内容」と関連性が高いサイトとのリンクのみを作成するように心がけたい。
5.2.「内部リンク」で「SEO的な価値」は引き継がれない
内部リンクはSEOにおいて重要な役割を持つ。
ただし、リンクジュースの文脈では、外部リンクとは全く異なる性質を持つ。
「内部リンクによってSEO的な価値(リンクジュース)が流れる」という考え方は誤解だ。
Googleは、外部リンクと内部リンクを別の指標で評価しており、内部リンクが直接SEOスコアを引き上げるわけではない。
内部リンクの本来の目的は、以下のような点にある。
- サイト構造を整理し、ユーザーが目的の情報にたどり着きやすくする
- 関連性の高いページ同士をつなげ、コンテンツの網羅性を強化する
- 検索エンジンにサイトの階層構造やコンテンツの関連性を正しく伝える
前述のトピッククラスターもこのメリットを応用している。
内部リンク≠リンクジュース
内部リンクの最適化は、サイトの情報構造を整理し、ユーザーや検索エンジンがページの関係性・関連性を理解しやすくするためのものだ。
これはリンクジュースの概念とは異なる。
リンクジュースは「リンク元の評価を受け継ぐ」という考え方に基づく。
一方で内部リンクは「サイト全体の情報を整理し、評価の基盤を作る」ことが目的だ。
「内部リンクを増やせばリンクジュースが増えてSEOが強化される」という考えは捨てよう。
PageRankが重視されていた時代のように「ページAからページBに価値を移す」というようなことはできない。
あくまでも「サイト内の関連性・網羅性を検索エンジンに伝える」ための施策だと考えよう。
重要なのは、ユーザーと検索エンジンにとってわかりやすいサイト構造を作ることである。
6.リンクジュースを機能させるための施策
リンクジュースは現在のSEOでもある程度は機能していると考えられる。
そこで、その恩恵を最大化するためのポイントも覚えておこう。
6.1.「nofollow」はあまり意味がない
黎明期のSEOでは、リンクに「nofollow」属性を付与することで、評価の伝達を制御できた。
たとえば2000年代の中盤までは「PageRankスカルプティング」という手法のためにnofollow属性が使われた。
PageRankスカルプティングとは、あるサイトから複数のサイトへPageRankを渡す際に、リンクジュースの動きを意図的に抑制することだ。
100の価値を持つサイトAから4個のサイトにPageRankを渡す際、素直にリンクを張ると1サイトあたり25の価値が伝わる。
しかし、1つのリンクにnofollowを付与すると、付与されたリンクにはリンクジュースが働かず、残り3つのリンクに33ずつ価値が伝わる。
この方法は後に見直され、nofollowを付与されたリンクの価値は破棄されるようになった。
また2019年9月、Googleは「nofollow」属性の扱いを変更した。
具体的には、nofollowを単なる「ヒント」として扱うようになった。
これにより「nofollow」を用いたリンクジュースのコントロールは全く意味のないものになっている。
6.2.関連性を重視する「リーズナブルサーファーモデル」に沿う
Googleのリンク評価モデルは、従来のランダムサーファーモデルから、リーズナブルサーファーモデルへと進化している。
ユーザー行動を考慮したリーズナブルサーファーモデルへ
ランダムサーファーモデルは、初期のPageRankアルゴリズムで採用されていた考え方だ。
このモデルでは、ウェブ上のユーザー(サーファー)はランダムにリンクをたどりながらページを移動すると仮定される。
つまり、ページ内のリンクは全て均等にクリックされる可能性があるとみなされ、リンクジュースも均等に分配される。
シンプルであるがゆえに分かりやすいが、現実のユーザー行動を十分に反映できていない。
なぜなら、実際のページではリンクによってクリック率が全く異なるからだ。
この点を反映したモデルが「リーズナブルサーファーモデル」だ。
リーズナブルサーファーモデルは「ページ内のリンクがすべて同じ重要度を持つわけではない」という立場を採る。
たとえば、記事の本文内にあるリンクはユーザーの注目を集めやすいが、フッターやサイドバーのリンクはあまりクリックされない。
そのため、リーズナブルサーファーモデルでは、コンテンツ内の位置や文脈に応じてリンクジュースの流れが変わるようになっている。
文脈に沿った適切なリンク配置が肝
この違いによって、SEOの考え方も変化した。
ランダムサーファーモデルでは、単純にリンクの「量」が重視された。
しかしリーズナブルサーファーモデルの導入により、文脈に沿った適切なリンク配置が求められるようになった。
現在は、リンクをページ内のどこに置くか、どのようなアンカーテキストを使うかが、SEO対策において重要な要素となっている。
6.3.「良質なコンテンツ」を揃え、全てのリンクに意味がある状態にする
リンクジュースを機能させるには「全てのリンクに意味がある状態」でなくてはならない。
つまり「良質なコンテンツ」を揃え、適切にリンクでつなぐことが求められる。
弊社が考える良質なコンテンツの条件は、下記3つだ。
- ニーズを真正面から付き「+アルファ」を提示している(付加価値の提供)
- 難解さを回避し認知負荷を低減できている(可読性が高い)
- 思考の軌跡が見える(単なる事実の羅列ではない独自性)
E-E-A-Tを考慮しつつ、上記3つの条件をクリアすることで「価値」をもつコンテンツとなる。
7.まとめ
本記事では、リンクジュースの概要やPageRankの知識、これらが使用されなくなった背景、現在のSEOにおけるリンクジュースの扱い方などを解説した。
リンクジュースはPageRank全盛時代の攻略法で、現在はそれほど意識する必要がない。
ただし最新の評価指標である「E-E-A-T」や、トピッククラスターといったSEO対策には、リンクジュースの概念が垣間見える。
2025年時点では、コンテンツの質によって「権威性」「信頼性」を獲得することを最優先に考えよう。
リンクジュースはこれを補助する考え方としての位置づけで問題ない。
高品質なコンテンツ制作と適切なリンク配置によって、サイトの価値を高めていこう。