メディアミックスとは、複数のメディアを組み合わせて広告やプロモーションを展開する施策だ。
それぞれのメディアの特性を活かして、ターゲットオーディエンスへ効果的にメッセージを届けられる。
単一のメディアでは、認知やリード獲得につなげることは難しく、メディアミックスはBtoBでも重要となる。
一方で、
「どのメディアでどの程度投資すればよいのか」
「メディアミックスの効果を最大化するにはどうすればよいか」
「具体的な施策例を知りたい」
という声も多い。
そこで本記事では、メディアミックスの基本的な概念とメリット、具体的な施策例、成果を出すためのポイントについて詳しく解説する。
多様なメディアを活用することで、ブランド認知度の向上やリードジェネレーション、コンバージョン率の改善が期待できるため、ぜひ参考にしてほしい。
1.メディアミックスとは
メディアミックスとは、複数のメディアを組み合わせて広告やプロモーションを行う手法だ。
活用するメディアとしては、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、ウェブサイト、ソーシャルメディア、イベントなどがあげられる。
各メディアのデメリットを補完し合うことで広告・プロモーションの効果を高め、幅広い層の認知獲得を目指していく。
インターネットが普及する以前は、日本企業の広告費の構成は「テレビ・ラジオ・新聞・雑誌」の4マスメディアがほとんどを占めていた。
しかし現代では、オンラインも含めてメディアの選択肢が多様に広がっている。
なお、エンターテイメント業界においても「メディアミックス」という言葉があるが、これは特定のコンテンツ(映画、アニメ、漫画、ゲーム、音楽など)を複数のメディアで展開することだ。
本記事では、広告のメディアミックスについて解説する。
2.メディアミックスのメリット
メディアミックスに取り組むことで、以下のメリットを得られる。
- リーチを広げられる
- 広告やブランドの認知度が高まる
- 各メディアの特性を活かしたシナジー効果を得られる
- リスクを分散させられる
それぞれ見ていこう。
メリット①:リーチを広げられる
異なるメディアを利用すると、異なる層のオーディエンスにリーチできる。
例えば、テレビCMは幅広い年齢層にアプローチできるメディアとして長く活用されてきた。
しかし昨今では、スマートフォンの台頭により、若年層を中心にまったくテレビを見ない人が増えている。
そこで、SNS広告を同時に展開すれば、若年層へのリーチを補える。
よって、広範なリーチを狙うには、メディアミックスが有効だ。
メリット②:広告やブランドの認知度が高まる
同じメッセージを異なるメディアで繰り返し伝えることで、1人の人に対する広告接触回数が増え、記憶に残りやすくなる。
広告接触回数は「3回から7回」が効果的だ。
例えば、テレビCMだけで同じ人に3回以上の広告接触を狙うには、放送時間帯や費用の面で難しいだろう。
しかし、交通広告やWeb広告をうまく組み合わせれば、接触回数を増やせる可能性が高まる。
さらに、同じ人でも1日の生活動線上で、さまざまなメディアに触れている。
朝テレビを見て、通勤途中にSNSを見て、オフィスに到着したら日課として新聞を見る、という具合だ。
メディアミックスでこの生活動線をカバーできれば、「朝テレビで見た広告だ」「SNSでも見た広告だ」と印象に残りやすくなる。
メリット③:各メディアの特性を活かしたシナジー効果を得られる
各メディアには、それぞれ異なる強みがある。
メディアミックスを実践することで、互いのメディアが補完し合い、シナジー効果が生まれる。
例えば、テレビCMは認知度向上やブランドリフトに強みを持つ一方で、15秒や30秒といった限られた時間でしか情報を伝えられないため、製品やサービスの詳細な情報を届けるのが難しい。
そこで、同時にWeb広告で製品・サービスのWebサイトへ誘導し、具体的な特徴や使用例を紹介すると、1つの広告戦略のなかに購買意向を高める役割も担保できる。
各メディアの詳細な特徴は、次項「各メディアの特徴」で解説しているので参考にしてほしい。
メリット④:リスクを分散させられる
各メディアには強みもあればもちろん弱点もある。
そのため、メディアミックスにより複数のメディアを活用すれば、リスク分散につながるといえる。
例えば、一つのメディアが想定どおりに効果を発揮しない場合でも、ほかのメディアで効果を得られたためキャンペーン全体としては目指していたKPIに到達した、ということが起こり得るだろう。
また、効果が出ていないメディアを途中で停止して、最も効果が高いほかのメディアへ予算を分配し直す、といった施策を展開できる点もメディアミックスの大きなメリットだ。
3.メディアミックスで活用する各メディアの特徴
前述のように、各メディアにはそれぞれメリット・デメリットがある。
メディアミックスといっても、自由にメディアを選択して組み合わせればよいわけではない。
重要なのは、それぞれのメディアの特徴を把握したうえで、自社の戦略に合ったメディアを選択することだ。
以下に各メディアのメリットとデメリットをまとめたので、参考にしてほしい。
カテゴリ | メディア | メリット | デメリット |
オフライン | テレビ |
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新聞 |
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ラジオ |
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雑誌 |
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屋外・交通 |
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展示会・イベント |
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DM |
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オンライン | 自社Webサイト |
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ニュースサイト |
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SNS |
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メール |
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4.メディアミックスとクロスメディアの違い
メディアミックスと似ているマーケティング戦略に「クロスメディア」がある。
クロスメディアとは、製品・サービスをプロモーションする際にさまざまなメディアを連携させ、効果を高めるためのマーケティング戦略だ。
以下の表に両者の違いをまとめたので、参考にしてほしい。
比較項目 | メディアミックス | クロスメディア |
ターゲット | 各メディアの特性を活かした異なるターゲット層へのアプローチ | 各メディアで一貫した特定のターゲットへのアプローチ |
クリエイティブ | 各メディアで一貫したクリエイティブ | 各メディアにおけるクリエイティブの連動を意識する(クリエイティブは異なる) |
メディア間の接続 | メディア間の直接的な連携は少なく、独立したメッセージ伝達 | メディア間の情報の連携が強く、一貫したメッセージやストーリーが展開される |
メディアごとの役割 | 各メディアが独自の役割を果たし、全体としての広告効果を高める | 各メディアが相互に補完し合い、統一されたストーリーや体験を提供する |
施策例 |
-自社Webサイトの記事コンテンツ -業界専門誌 -展示会 -YouTube広告 |
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両者の違いを端的にまとめると、メディアミックスが幅広い層へ認知を広げる“面”のマーケティングであるのに対し、クロスメディアはメディア間でストーリーをつなげていく“鎖”のようなマーケティングだといえる。
クロスメディアマーケティングについては、以下の記事で詳しく解説している。
両者は目的が異なるため、一概にどちらが良いとはいえない。
例えば、これまでバリエーションの少ないメディアでプロモーションを行っており、ターゲット層へのリーチに課題を感じている場合は、まずメディアミックスを実践してみてほしい。
一方で、リーチは一定数取れているものの、Webサイト流入数やコンバージョン数などにつながらないという課題がある場合は、クロスメディア戦略を強化していくとよいだろう。
5.BtoBにおけるメディアミックスの施策例
BtoB企業がプロモーションを行う際、具体的にはどのようにメディアミックスを実践していけばよいのだろうか。
ここではIT業界を例にとり、オンラインとオフラインに分けていくつかの施策を紹介する。
5.1.オンライン施策
Facebook広告
ターゲティング精度が高いとされるFacebookでターゲティング広告を展開し、特定の職業や業界で働くユーザーにリーチする。
クリエイティブの訴求内容には、ウェビナーの告知やホワイトペーパーのダウンロード促進がよく用いられる。
リスティング広告(検索連動型広告)
自社製品に深く関連するキーワードでGoogle、Yahoo!などの検索広告を出稿し、興味を持ったユーザーを製品やサービスのランディングページに誘導する。
ウェビナー
業界の最新トレンドや課題解決のノウハウなどを解説するウェビナーを開催し、潜在顧客のリードを獲得する。
ターゲティングメール
IT業界の専門Webメディアが保有するハウスリストに、役職や職種などを指定してメール広告を配信してリード獲得につなげる。Facebook広告と同様、ウェビナーやホワイトペーパーといったコンテンツをフックに展開する。
コンテンツマーケティング
Webサイトのブログで技術的な解説記事や業界のベストプラクティスを発信し、SEO対策を強化する。これにより、ターゲットの検索エンジン経由のオーガニックトラフィックを増加させる。
コンテンツマーケティングについては以下の記事で詳しく解説しているので、あわせて参照してほしい。
5.2.オフライン施策
業界展示会への出展
IT業界の展示会に出展し、顧客に対して直接的な製品デモンストレーションの機会を提供する。顧客の興味関心を醸成させ、リード獲得につなげることができる。
業界専門誌への広告掲載
CIOやITマネージャーなどのターゲット層が購読している業界専門誌にタイアップ広告を掲載し、新製品やサービスの認知度を高める。
DM
ターゲットとする企業のCIOやITマネージャーのリストを、専門業者あるいはABMツールを通じて取得し、冊子化したホワイトペーパーや資料を送付する。
Webサイトの問い合わせページへのQRコードや電話番号を掲載しておくことで、問い合わせ獲得にもつなげられる。
交通広告
ターゲットとする業界の企業のオフィスが特に多く存在する主要駅および路線に広告を展開し、通勤中や移動中のビジネスパーソンに認知を拡大する。
6.メディアミックスで成果を出すためのポイント
メディアミックスは露出の幅を広め、認知度を高めていくための効果的な戦略だが、やみくもにあらゆるメディアを使用すると、投資が無駄になってしまうおそれがある。
適切な投資対効果を得るために、以下のポイントを押さえて取り組んでいこう。
- ゴールを明確にする
- ターゲット・ペルソナを明確にする
- バーチェスファネルを意識してメディアを選定する
- 異なるメディア同士の導線を意識する
- 効果測定する環境を整える
- 一貫して同じ指標をモニタリングする
- 仮説を立て、一つずつ検証する
ポイント①:ゴールを明確にする
まず、メディアミックスを活用したプロモーションによって何を達成したいのかを定めよう。
達成したいゴールによって、選定するメディアや効果測定の基準が異なるためだ。
例えば、ブランド認知の向上が目的であれば、交通広告やSNS広告の比重を大きくする戦略が有効となるだろう。
一方で、リードを増やすことが目的の場合は、検索広告やメール広告でしっかりとターゲットを絞ってアプローチしていく戦略になる。
ポイント②:ターゲット・ペルソナを明確にする
メディア選定を行う際は、どのような人物に情報を届けたいのか、ターゲットやペルソナの設定が欠かせない。
メディアによって得意とするターゲット層は大きく異なるためだ。
外部メディアの場合は「媒体資料」を取り寄せることでユーザープロフィールがわかるため、自社のターゲットに適切なメディアを選ぶ際の参考にしてほしい。
ターゲットやペルソナを設定する最短の方法は、既存顧客のボリュームゾーンから導き出すことだ。
BtoB企業の場合、どのような業界・企業規模・職種・役職の人が既存の顧客に多いかといったデータは、最低限収集しておこう。
ポイント③:バーチェスファネルを意識してメディアを選定する
パーチェスファネルとは、見込み客が自社を認知してから購入に至るまでのプロセスを図示したものだ。
ファネルのステージにおいて最適なメディアは変化するため、このプロセスを意識してメディア選定を行う必要がある。
先に述べたゴール設定とも通ずる話だが、自社のマーケティング課題がバーチェスファネルのどのステージにあるかを考えることが、最適なメディアの選定につながる。
※上図に示したメディアの使い分けはあくまで一般的な傾向であり、明確な線引きはされていない点に注意してほしい。
ポイント④:異なるメディア同士の導線を意識する
ファネルを考慮する必要性を述べたが、あわせて注意したいのが、ファネルの各ステージを切り離して考えるのではなく、次のステージへの接続を意識することだ。
例えば、マスメディア広告で自社を認知した見込み客が、次に接点を持つのはどのメディアかを予想しておく必要がある。
Webサイトに流入したユーザーにはリターゲティング広告が有効となり、さらにホワイトペーパーをダウンロードしたユーザーにはメールマーケティングを仕掛けていくことになるだろう。
この場合、マス広告を出稿し始める前に、それらの施策の準備も必要だという判断ができる。
特にBtoBの場合、一つのメディア接点のみで購買を促せるケースは稀であるため、導線を意識することが成果につながるだろう。
ポイント⑤:効果測定する環境を整える
メディアミックスで施策を打つ場合も、それぞれのメディアの効果測定ができるように環境を整えておく必要がある。
以下のようなツールの導入を検討しよう。
Webサイト解析ツール | Google AnalyticsやAdobe Analyticsなどの解析ツールを使用して、訪問者数、ページビュー、滞在時間、コンバージョン率をトラッキングする。 |
広告プラットフォームの解析ツール | Google広告、Facebook広告、X広告、LinkedIn広告などの広告プラットフォームで、インプレッション、クリック率、コンバージョンをモニタリングする。 |
CRMツール | SalesforceやHubSpotなどのCRMシステムを使用して、リード獲得の状況、顧客のナーチャリングの状況、営業のコンタクト状況、顧客の検討状況を管理・分析する。 |
メールマーケティングツール | MailchimpやMarketoなどのツールで、開封率、クリック率、解読率をモニタリングする。 |
上記はすべてオンラインでの解析方法になるため、オフライン広告については解析が難しいと感じるかもしれない。
重要なのは、オフライン広告であっても上記のようなツールで成果を確認できるように工夫することだ。
例えば、交通広告のクリエイティブにおいて検索キーワードをあらかじめ指定し、出稿期間にそのキーワードでの流入がどの程度増えたかを確認すれば、ある程度広告の成果として把握できる。
雑誌広告を出す際は、パラメータ付きURLにリンクするQRコードを貼っておくことで、広告経由のWebサイト訪問数を把握できるだろう。
ポイント⑥:一貫して同じ指標をモニタリングする
KPIとする指標は、プロモーションの期間を通して同じにすることが重要だ。
同じ指標をモニタリングすることで、PDCAサイクルを回した際に成果が適切に改善しているかどうかを評価できる。
例えば、以下のような指標があげられる。
- チャネル別のリード獲得数
- Webサイト全体への流入数
- 狙ったキーワードの自然検索での流入数
- LPのコンバージョン率(CVR)
- コンバージョン単価(CPA)
また、メディアミックスで施策を展開する際のKPI設定で注意したいのが、モニタリングするKPIの種類が多くなりやすい点だ。
KPIが多すぎると、どれを最適化すべきかがわからなくなるため、重要な指標に絞ることを推奨する。
特に、KGI(最終的な目標)への貢献度が高いと考えられる指標を選んでほしい。
ポイント⑦:仮説を立て、一つずつ検証する
メディアミックスで施策を展開していると、総合的な成果に影響する要素は自ずと多くなる。
例えば、メディアの選択、ターゲット設定、クリエイティブ(コピーやデザイン)があげられる。
総合的な成果が設定した目標に達していないからといって、これら一つひとつのA/Bテストを行わず、いきなり全体の戦略を変えるのはおすすめできない。
各要素に対して仮説を設定し、考えられる問題点をつぶしていくことで、真の原因を特定でき、メディアミックス戦略の最適化が実現するだろう。
7.まとめ
企業同士の競争が激化するなかで、広告・プロモーションの費用対効果はシビアに見ていかなければならない。
広告やプロモーションに費用をかけても成果を得られなければ、企業としては大きな痛手だ。
「これまで限られたメディアで単調な施策を打っており、その成果が伸び悩んでいる」
「広告予算をどう配分すべきかわからない」
そういった場合には、まさにメディアの選択肢を広げるメディアミックスを実践するべきタイミングといえるだろう。
メディアミックスに取り組めば、多くのデータを得られるようになり、改善に向けた道筋を立てやすくなる。
その結果、最適な投資先の選定ができ、マーケティング戦略全体のROIも向上していくはずだ。
ただし、広告運用やプロモーション施策の策定には、知識やスキルが必要となる。
リソースがない場合は、外部委託も視野に入れながら取り組んでいってほしい。