Googleの検索アルゴリズムの中で、近年特に重視されているのが「自然言語処理を担うAI」だ。
2018年には「BERT」が組み込まれ、2023年12月には「MUM」へとアップデートされた。
MUMは従来のBERTをさらに強化し、より高度な検索理解を可能にするAIモデルである。
本記事では、MUMの仕組み、BERTとの違い、検索結果への影響、そしてSEO対策の変化について詳しく解説する。
1. MUM(Multitask Unified Model)とは何か
MUM(Multitask Unified Model)は、Googleが発表した次世代AI検索モデルだ。
従来の「BERTモデル」と呼ばれる検索技術を超え、複雑な検索意図をより深く理解することを目的としている。
MUMが採用されることで、検索精度は飛躍的に向上した。
従来の検索アルゴリズムでは、キーワードの一致や文脈解析を通じて結果を提供していた。
しかし、MUMはテキストにとどまらず、画像や音声、動画などの複数の情報ソースを組み合わせて分析する「マルチモーダル処理」が可能だ。詳しくは後段で解説する。
参考:MUM: A new AI milestone for understanding information
1.1.MUMの主な特徴
MUMの特徴は以下の4点だ。
- 超高速処理
- 多言語理解と処理
- マルチモーダル対応
- 高度な検索意図の理解
詳しくみていこう。
特徴1.1000倍の処理能力
MUMは、従来の自然言語処理モデルであるBERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)と比較して、1000倍の処理能力を持つ。
圧倒的な処理能力により、大量のデータを迅速に分析し、ユーザーの検索意図を正確に理解することが可能になった。
特徴2.多言語理解
MUMは、75以上の言語を横断的に学習しており、異なる言語間でも正確な情報を検索できる。
従来の検索では、英語でしか存在しない情報を日本語で検索すると、適切な結果が表示されないことがある。
しかし、MUMは翻訳を介さずに多言語の情報を直接理解し、必要なデータを抽出できる。
特徴3.マルチモーダル対応
マルチモーダルとは「種類の異なる情報を組み合わせ、関連付けて処理する技術」だ。
MUMは、テキストに加え、画像・音声・動画などの異なるデータ形式を同時に処理できる。
よって、MUMが組み込まれた検索エンジンでは「画像をアップロードして質問する」「音声データを解析して関連情報を検索する」といった機能が使用できる。
特徴4.高度な検索意図の理解
MUMは、従来の検索エンジンでは処理しきれなかった複雑な質問にも対応する。
例えば「日本で紅葉が美しいハイキングコースを教えて。その際に持っていくべき装備も知りたい」といった具合に、複数のキーワード・クエリにまたがる質問にも的確に回答する。
従来の検索では、「紅葉スポット」と「ハイキング装備」の2つの検索を別々に行う必要があった。
MUMはこれらを統合し「ハイキングの目的に合った最適な情報」を提供する。
つまり、ユーザーが持つニーズを包括的に、一度に満たすことができるのだ。
ニーズ単位ではなく、ユーザー単位で検索意図を理解できるといえよう。
1.2.SGEやAI Overviewとの関係は?
近年、Google検索には「SGE」や「AI Overview」と呼ばれる生成AIを活用した回答機能が実装されている。
MUMへの理解度を深めるためにも、これらAI関連機能とMUMの関係を整理しておきたい。
結論から述べると「MUMはAIを使った検索システムの頭脳」だ。
これに対してSGEやAI Overviewは、頭脳から提供された情報をユーザーニーズに合わせて提供する「ナビゲーター」のような役割を担う。
SGEやAI Overviewについては、こちらの記事で具体的に解説しているため、参考にしていただきたい。
2. MUMとBERTの違い
このようにMUMはGoogleの検索システムにおいて、中核的な存在だ。
しかし「何がどのくらいすごいのか、いまひとつ理解できない」という方も多いだろう。
そこで、以前のAIモデルである「BERTモデル」と比較してみよう。
2.1.BERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)とは?
BERTは、2019年にGoogleが導入した自然言語処理モデルだ。
BERTは、検索クエリの文脈をより深く理解することで、検索結果の精度を向上させた。
BERTの最大の特徴は「双方向(Bidirectional)」の文脈理解にある。
BERT以前のアルゴリズムは、単語を順番に処理するため、前後の文脈を完全には考慮できていなかった。
一方でBERTは、前後の単語の関係を踏まえて解析し、より自然な意味理解を可能にした。
特に長文のクエリや曖昧な表現の検索結果が大幅に改善された。
2.2.MUMとBERTの主な違い
MUMは、BERTを基盤としつつ、その能力を大幅に拡張したモデルである。
2者の違いは主に以下4つだ。
項目 | BERT | MUM |
処理能力 | 単一の文脈解析 | BERTの1000倍の処理能力 |
多言語対応 | 言語ごとにモデルを訓練 | 75以上の言語を横断的に処理 |
情報の統合力 | 単一のクエリに基づく検索 | 複数の情報ソースを統合して回答 |
マルチモーダル対応 | テキストのみ | 画像・音声・動画なども解析可能 |
MUMはBERTの約1000倍の処理能力を持つ
BERTと比較して、MUMは約1000倍の処理能力を持つ。
大量のデータを短時間で解析し、より複雑な検索意図にも対応できるようになった。
BERTは主にテキストデータを基にしたモデルで、文脈理解を強化することに重点を置いていた。
MUMも基本的には同じだが、単純に処理能力が上がっているため、より多くの情報を理解できる。
複数の検索クエリを同時に解析し、瞬時に理解する能力が向上しているのだ。
MUMは多言語による情報を横断的に処理できる
BERTは、言語ごとに処理が分けられていた。
つまり、日本語のBERTモデルは日本語のデータを学習し、英語のBERTモデルは英語のデータを学習するという方式であった。
しかし、MUMは75以上の言語を横断的に処理できる。
MUMならば「英語の論文を直接解析し、その内容を日本語の検索結果として提供する」という処理も問題なく可能だ。
「複数の言語の情報を横断的に処理し、任意の言語で活用できる」という点は、BERTとの大きな違いである。
MUMは複数の情報ソースを組み合わせて解答を提示できる
BERTは、単一の検索クエリに対して、最適な検索結果を返すことに特化していた。
よって、ユーザーが複数の情報を統合して知識を得たい場合は、何度も検索を繰り返す必要があった。
MUMは、異なる情報ソースを統合し、より包括的な回答を提示する能力を持つ。
一度の検索で得られる情報が向上しているので、検索の手間が大幅に削減されるというわけだ。
また、「文章ベースの問いかけ(検索)」でも、適切な回答が得られる。
MUMはテキスト以外の情報も解析、活用できる
BERTはテキストデータを主体としたモデルであり、検索対象は主にウェブページや文書などだった。
一方、MUMは上述のとおり、マルチモーダル対応を得意としている。
対象となる情報源は、画像・音声・動画など多岐にわたる。
動画や画像など視覚的な情報を活用した高度な検索が可能になったことで、検索の柔軟性が格段に向上した。
3. MUMを意識したSEO対策とは
ここまでの内容をまとめると、MUMは以下のような存在であることがわかる。
- 圧倒的な処理速度と検索意図の理解力が強み
- 長文の検索意図を包括的に理解し、回答できる
- 画像やテキスト、動画を含めた評価が可能
- 75以上の言語を横断的に処理する
では、MUMの特徴を踏まえた上で、「これからのSEO」で生き残るための対策を整理していこう。
対策1.キーワードSEOからニーズベースのSEOへ
これまでのSEOでは「狙いたいキーワード」を定め、キーワードに対してページの関連性を高めることが重要だった。
簡単に言うと、SEOの直接的な相手は、ユーザーやニーズではなく「キーワード」だった。
しかし、MUMが実装された現在では「キーワードの一致」よりも、「ニーズの一致」を満たすコンテンツを求められる。
2025年現在では、キーワードベースの評価も続いているようだが、「ニーズに直接向き合うコンテンツ」が徐々に強くなっていくと想定される。
検索ボリュームやキーワードの出現数ではなく、「ターゲットユーザーが本当に知りたい情報」を真正面から、具体的に解説するコンテンツが好まれるだろう。
SEO対策の相手は、もう「キーワード」ではないのかもしれない。
対策2.E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)の強化
MUMでは、文脈理解の能力が飛躍的に向上している。
「誰が」「何について」「どの程度の粒度で」コンテンツを作ったかを、これまで以上に評価できるようになった。
このことから、Googleが掲げる「E-E-A-T」の強さを検索エンジンはより具体的に、高い精度で評価できる。
よってより本質的なE-E-A-T対策が検索上位表示に影響を与えやすくなることが考えられる。
特にBtoBやIT領域は専門性や経験・ノウハウの具体性、信頼性が求られるため、対策は欠かせなくなるだろう。
E-E-A-Tの概要については、こちらでも解説している。
また、対策が難しい「権威性」については、下記の記事で具体的に述べているため参考にしてみて欲しい。
対策3.Googleが掲げる4本の柱への対応
Googleはコンテンツの品質評価について、さまざまな基準を設けている。
前述のE-E-A-Tもそのひとつだ。
加えて、今後は以下4つの要素も評価されると言及されている。
- Effort(労力)
- Originality(独自性)
- Talent or Skill(才能や技術)
- Accuracy(正確性)
この4つの指標は、2025年2月18日に開催された「Search Central LIve」で公表された。
ちなみに、4つの要素は最新版の「品質評価ガイドライン」にも明記されている。
出展:品質評価ガイドライン(General Guidelines)
※以下、日本語での要約
3.2 メインコンテンツの品質
メインコンテンツ(MC)の品質は、ページ品質(PQ)評価の中でも最も重要な要素の1つである。
MCは、そのページが目的をどの程度達成し、満足のいくユーザー体験を提供できるかを決定する主要な要因となる。
MCの品質は、労力(effort)、独自性(originality)、才能や技術(talent or skill) の度合いによって判断できる。
また、情報系のページやYMYL(Your Money or Your Life)関連のページでは、正確性(accuracy) と、確立された専門家の合意との一貫性が重要である。
労力(Effort)
人間がどれほど積極的に関与し、満足のいくコンテンツを作成したかを評価する。
また、ページの設計やウェブサイトのシステム構築も労力の一部だ。
例えば、機械翻訳を提供するページを作成することは労力に該当する。
しかし既存の無料コンテンツを翻訳ソフトにかけて自動的に何千ものページを作成する場合は、労力がかかったとはみなされない。
独自性(Originality)
コンテンツがどれほどユニークであり、他のウェブサイトには存在しない独自の情報を提供しているかを評価する。
他のウェブサイトと似たコンテンツがある場合、そのページが元の情報源であるかどうかを考慮する。
才能や技術(Talent or Skill)
コンテンツがどれほどの才能や技術を持って作成されているかを評価する。
閲覧者にとって満足度の高い体験を提供できるレベルの専門性や技術が求められる。
正確性(Accuracy)
情報系のページでは、コンテンツがどれほど事実に基づいて正確であるかを評価する。
YMYL(Your Money or Your Life)関連のページでは、コンテンツが正確であり、確立された専門家の合意と一致しているかが特に重要となる。
これら4つの要素は、以前からその重要性がうたわれていた。
ここへきて改めて強調された背景には、MUMによる高度な文脈理解の実装があるとも捉えられる。
対策4.マルチモーダル対応のコンテンツ作成
画像・動画・音声コンテンツを組み合わせ、より多様な検索クエリに対応できるコンテンツを作成することも重要だ。
特にBtoB ITでは複雑で専門性の高いテーマが多いことから、適度にインフォグラフィックを挟みながら、ユーザーの理解を容易にするコンテンツ作りが必須になる。
記事に関連するYouTube動画を埋め込むなどの対策も有効だろう。
対策5.その他の重要な対策
ユーザー単位で包括的なニーズを満たす点でいうと、質問型コンテンツやFAQの活用が有効となる可能性もある。
また、検索エンジンに対して、コンテンツの内容や長所をより深く具体的に伝えるためにも「構造化データ」の活用は必須となるだろう。
ニーズを捉えたユーザー視点のコンテンツ制作が重視される一方で、テクニカルな視点でもユーザー体験を向上させる必要がある。
例えば、Googleが推奨する「Core Web Vitals」を満たすことで、ユーザー体験を定量的に高めれば、検索エンジンからの評価向上につながるだろう。
さらに、専門性の高いテーマでは、単一のページで評価を獲得することが難しい場合もある。
「検索ニーズを包括的に満たす複数のページを検索エンジンに理解させる」という視点を持ち、「トピッククラスター」の活用も視野に入れたい。
4.まとめ
本記事では、Googleの新しい検索AIである「MUM」について解説した。
MUMは、処理速度の向上や多言語対応、マルチモーダル検索の強化により、検索結果をユーザーニーズに近づけるためのものだ。
MUM時代に高評価を獲得するためには、従来の「キーワードSEO」から脱し、E-E-A-Tや4つの要素を意識した質の高いコンテンツ作成が求められる。
これまでのコンテンツ制作から、大きく何かが変わるわけではない。
しかし、これまでの施策を「より厳密に」「的確に」掘り下げる労力は要求されるだろう。
このように、AIや高度な検索エンジンが「ユーザーニーズを満たす、質を重視したコンテンツ制作」について検討中であれば、ぜひお問い合わせいただきたい。