「セッション」とは「ユーザーが一定期間内に行った一連のアクション」のことだ。
セッション数は、その一連のアクションの数を示す。
1回の訪問でページA→ページB→ページCと遷移した場合、セッション数は1、PV数は3だ。
サイト分析の様々な指標があるなかで、セッション数はより「本質的」な集客力を計測しやすいといえる。
そこで本記事では、セッション数の基本的な定義から、他の分析指標との違い、セッション数の重要性、増やすための具体的な施策などを詳しく解説する。
サイト運用やSEOの担当者にとっては必須の知識となるため、ぜひ最後まで読み進めていただきたい。
1. セッション数とは
まずはセッション数の一般的な定義と、GA4(Googleアナリティクス4)における定義、およびUA(ユニバーサルアナリティクス)からの変更点を解説する。
1.1. セッション数の一般的な定義
上述のとおり、セッション数とは、ウェブサイト上でユーザーが一定の期間内に行った一連のアクション(ページ閲覧やイベント実行など)の集まりを指す。
一般的には、ユーザーがサイトを訪れ、何らかのアクションを経て離脱するまでが1セッションとカウントされる。
また、セッションは一般的に、一定時間(通常30分間)何もアクションがない場合に終了する。
たとえばユーザーがサイトを訪れ、5ページ閲覧した後に20分間放置し、その後再び操作を開始して3ページ閲覧した場合は、1セッションとカウントされる。
しかし、放置時間が30分を超えると、再開時に新たなセッションが開始され、2セッションとカウントされるというわけだ。
1.2. GA4におけるセッション数の定義、UAからの変更点
最もよく利用されるアクセス解析ツールの「Google Analytics」において、セッション数がどのように定義されているのかについても、把握しておこう。
ちなみに2023年7月以降、Google Analyticsは、従来のUA(ユニバーサルアナリティクス)からGA4(Google Analytics 4)に完全移行している。
その際にセッションの定義も変更となった。
従来のUAではセッションの開始は「サイトを訪問し、最初のページビューが発生した時点」だった(ページビューベースでの計測)。
GA4では、ユーザーがサイトを訪れると「session_start」イベントが発生し、これがセッションの開始を意味する形となった。
また、従来のUAではセッションごとの識別にCookieを用いていたが、GA4ではセッションごとに一意の「Session ID」が割り当てられる。
これによって、セッション数やセッション内の行動をより正確に追跡できるようになった。
たとえば、日付をまたいだり、参照元が変更されたとしても、30分間の離脱がなければ1セッションとして計測されるようになった。
詳しくは以下の表を参照してもらいたい。
項目 | UA(ユニバーサルアナリティクス) | GA4(Googleアナリティクス4) |
セッション開始のタイミング | ユーザーがサイトを訪問し、最初のページビューが発生した時 | ユーザーがサイトを訪問し、「session_start」イベントが発生した時 |
セッションの終了条件 | 30分間操作がない場合、または日付をまたいだ場合 | 30分間操作がない場合のみ(デフォルト設定) |
日付またぎの扱い | 日付が変わると新しいセッションとしてカウント | 日付をまたいでも同じセッションとして継続 |
参照元変更時の扱い | 異なる参照元(例:Google広告→直接訪問)に変更されると新しいセッションとしてカウント | 異なる参照元に変更されても同じセッションとして継続 |
セッションの識別方法 | クッキーを用いたセッションID | 「Session ID」による識別 |
GA4のセッション数については、以下Google公式でも詳しく解説しているので必要に応じて参照いただきたい。
参考:[GA4] アナリティクスのセッションについて|アナリティクスヘルプ
2. セッション数と他の指標の違い
セッション数の他に、サイト分析における主要な指標として、ユニークユーザー数(UU)とページビュー数(PV)がある。
それらの指標とセッション数の違いについて明確にしておこう。
2.1. ユニークユーザー数(UU)
ユニークユーザー数(UU)とは、一定期間内にサイトを訪れた固有のユーザー数を示す指標である。
GA4では「ユーザー数」として計測される。
<計測の開始条件と終了条件>
- 開始条件
ユーザーがウェブサイトを初めて訪問した時点でカウント開始(GA4ではClient IDやUser IDで識別)。 - 終了条件
指定された計測期間が終了するとリセットされる。
あるいはクッキーが削除されたり、異なるデバイス・ブラウザでアクセスすると、新しいユニークユーザーとしてカウントされる。
<セッション数との違い>
指標 | 測定対象 | 同じユーザーが複数回訪問した場合 |
ユニークユーザー数 | 個々のユーザー数 | 1ユーザーとしてカウント |
セッション数 | 訪問の回数 | 訪問するたびに増加 |
例えばあるユーザーが1日に3回サイトを訪問した場合、ユニークユーザー数は1、セッション数は3となる。
2.2. ページビュー数(PV)
ページビュー数(PV)とは、ウェブサイト内のページが表示された回数を示す指標である。
GA4では「表示回数」として計測される。
<計測の開始条件と終了条件>
- 開始条件
ユーザーがサイト内のページを開くと、そのページのPVが1カウントされる。 - 終了条件
ページが閉じられる、もしくは新しいページへ遷移した際にカウントが止まる。
同じページを再読み込み(リロード)すると、そのたびにPVが増える。
<セッション数との違い>
指標 | 測定対象 | 同じユーザーが複数回訪問した場合 |
ページビュー数 | ページの閲覧回数 | 閲覧ページごとにカウント |
セッション数 | 訪問の回数 | 1セッションとしてカウント |
例えばあるユーザーが1回の訪問で5ページを閲覧した場合、セッション数 は1、PV数は5となる。
参考:[UA→GA4] 指標の比較: Google アナリティクス 4 とユニバーサル アナリティクス|アナリティクスヘルプ
3. セッション数を追跡することの重要性
サイトに訪問してアクションする一連の流れをセッションとして計測することで、サイト内での回遊やエンゲージメントを計測できるようになる。
特にBtoBでは、単発の訪問やページビューだけではなく、複数回のセッションを通じてコンバージョンや成約に至ることがほとんどだ。
よって、セッションの「中身を濃くする」こと、そしてセッションの「数を増やすこと」がBtoBビジネスの成長に大きな意味があるといえるだろう。
SEO担当者やWebマーケティング担当者は、このようなセッション数だからこそわかることとその重要性を理解しておくべきだ。
少し掘り下げてみていこう。
重要性1. エンゲージメントの大きさを測定できる
セッション数が増加している場合、それはサイトの「エンゲージメントの向上」や「リピーターの増加」を示している可能性がある。
セッション数では「1人のユーザーが何度も訪れているか」や「短期間での再訪問が増えているか」の確認ができるためだ。
PV数はページ単位の閲覧回数のため、各ユーザーが「サイト自体」に何回訪問しているのかは分からない。
UU数は「新規or既存のユーザーが訪問したか」を測るが「そのユーザーが何回訪れたか」を測ることはできない。
特に、1ユーザーあたりのセッション数(=セッション数/ユーザー数)を計算すれば、1ユーザーがいかに自社のサイトのエンゲージメントを持っているか計測できる。
(分析例)
- 特定のユーザーセグメントやコンテンツ(ページ)でセッション数が増加しているか?
- 1ユーザーあたりのセッション数が、流入チャネルや企業規模で異なるか?
重要性2. 流入チャネルごとの訪問行動の比較ができる
セッション数を流入チャネルごとで分析すれば「どの流入元(検索、広告、SNSなど)から来たユーザーが、よりサイトへの訪問回数が多いか」を測定できる。
PV数では「どの流入チャネルのユーザーが長く滞在しているか」を正確に測るのは難しい。
またUU数だけでは、各チャネルからのユーザーが、どのような訪問行動を起こしているかはわからない。
セッション数を流入チャネルごとに比較することで「どの施策がリピーターを増やしているか・エンゲージメントの向上に貢献しているか」を把握できるということだ。
重要性3. 訪問頻度とリード獲得の関係性が分析できる
セッション数を分析することで「問い合わせや資料請求につながるまでに必要な訪問回数」の傾向が分かる。
上述のとおり、BtoBでは、単発ではなく何度か訪問した後にリード獲得につながるケースが多いため、この分析は有効だ。
PV数は1回の訪問でどれだけページが見られたかを示すが「何回訪れた後にコンバージョンするのか」までは分からない。
UU数では、1ユーザーが何度訪問しているかのデータは取れない。
セッション数を分析することで、「訪問回数とコンバージョンの関係」が明らかになる。
(分析例)
- 問い合わせフォームへの到達ユーザーの平均セッション数を分析(例:3回以上訪問したユーザーが問い合わせしやすい)
- コンバージョンに至ったユーザーの「最初の訪問からの経過日数」と「訪問回数」を比較し、最適なナーチャリング施策を検討
重要性4. 影響力のある施策やコンテンツを分析できる
セッション数の推移を分析することで「訪問が増えるきっかけ」や「どのコンテンツが再訪問を促しているのか」が分かる。
PV数では単にページの閲覧回数しか分からず「いつ、どのようにサイトが再訪問されているか」は分からない。
またUU数だけでは「特定の期間に訪問が増えた理由」や「どのページがきっかけでリピート訪問につながったのか」が分析できない。
セッション数を時系列で分析することで、訪問頻度や行動パターンの変化を可視化できる。
(分析例)
- メルマガ配信やキャンペーン後のセッション数の変化を分析し、どの施策がリピート訪問を促しているかを判断
- 特定のブログ記事やホワイトペーパーに再訪問するユーザーが多い場合→そのコンテンツをナーチャリング施策に活用
重要性5. 他の指標と組み合わせることで幅広い分析ができる
セッション数単体だけはなく、ほかの指標と組み合わせてより深い分析が行えるようになる。
これにより、コンバージョンの増加やリード獲得に繋げるヒントを得られるのだ。
以下に具体的な指標について、計算式と活用目的をまとめたので参考にしてほしい。
指標 | 計算式 | 活用目的 |
直帰率 | 直帰数 ÷ セッション数 × 100 | 1ページだけ見て離脱した割合を分析し、直帰率が高いページは改善が必要。 |
セッションあたりのPV数 | 総PV数 ÷ セッション数 | 訪問1回あたりに閲覧されたページ数を分析し、回遊性やコンテンツの魅力度を評価。 |
ユーザーあたりのセッション数 | 総セッション数 ÷ ユーザー数 | ユーザー1人が平均何回訪問しているかを分析し、リピート訪問を評価。 |
エンゲージメント率 | エンゲージメントセッション数 ÷ 総セッション数 × 100 | アクティブな訪問(10秒以上滞在・複数ページ閲覧・コンバージョンなど)割合を把握し、ユーザーの関与度を測定。 |
コンバージョン率 | コンバージョン数 ÷ セッション数 × 100 | 訪問が成果(問い合わせ・購入・資料請求)につながっているかを測定し、集客施策の効果を判断。 |
4. セッション数を増やすための施策
このように、BtoBマーケティングで重要な意味をなす「セッション数」を増やすには、どのような施策が有効だろうか。
以下で詳しく解説していく。
- SEO対策による検索流入の増加
- SNS・メルマガ・広告による流入の強化
- 回遊性の向上(サイト内の導線設計を改善)
- リピーターを増やすためのコンテンツ戦略
施策1.SEO対策による検索流入の増加
検索エンジンからの流入を増やし、新規訪問者を獲得することでセッション数の増加を狙う。
また、ターゲットとする企業やリードが課題とするキーワードで対策ができていれば、既存ユーザーのセッション数増加も狙え、かつリードナーチャリングとしても機能する。
施策の例
- ユーザーニーズに合ったコンテンツを作成(ロングテールキーワードを活用)
- 検索意図に沿った記事構成にする
- タイトルやメタディスクリプションを最適化し、CTR(クリック率)を上げる
SEOにおける本質的かつ具体的な施策については、以下の記事でも詳しく解説している。ぜひ参考にしていただきたい。
施策2.SNS・メルマガ・広告による流入の強化
SNS・メルマガ・広告といった各種マーケティング施策を活用し、認知を高めてセッション数の増加を狙う。
また、獲得したリードに対してメルマガを継続的に配信することで、リピート訪問を促す。
施策の例
- SNSで定期的に記事を発信し、フォロワーの再訪問を促す
- メルマガで新着コンテンツやお役立ち情報を定期的に配信する
- リターゲティング広告で過去に訪問したユーザーに再訪問を促す
施策3.回遊性の向上(サイト内の導線設計を改善)
1回の訪問におけるページ間の回遊を促し、ユーザーへ与えられる情報量や自社への信頼を構築することで、再訪問の可能性を上げる。
施策の例
- 関連記事のリンクを適切に配置し、他ページへの誘導を強化
- コンテンツの最下部やサイドバーに「次に読むべき記事」を表示
- カスタマージャーニーを考慮し、検討段階に応じて連続的に自社のコンテンツを利用してもらえるようにする。
- CTA(Call to Action)の最適化(問い合わせ・資料請求・無料トライアルなど)
施策4.リピーターを増やすためのコンテンツ戦略
ユーザーが定期的にサイトを訪れたくなるような工夫を凝らすことで、セッション数の増加を狙う。
施策例
- シリーズ記事(連載コンテンツ)を作成し、「次回も見たくなる仕掛け」を作る
- 毎月の最新トレンド記事など、定期的な情報更新を行う
- コメント欄やSNSでの意見交換を促し、ユーザーとの接点を増やす
5.【発展編】他の指標との組み合わせによる分析と対策
ウェブサイトの性質によって最適なUU・PVとセッション数のバランスは異なるが、同じウェブサイトにおいて顕著にそのバランスが崩れたときは、原因を探りたいところである。
3つのケース別に考えられる原因と対処法を紹介しよう。
ケース1.ユーザー(UU)数は増えたのにセッション数が増えない(セッション数/ユーザー数の低下)
原因
- 一度訪問したユーザーが再訪問していない
- 新規ユーザーの離脱率が高く、リピート訪問につながっていない
対策
- リピーター向けの施策を強化する
- メルマガ登録やSNSフォローを促し、再訪問のきっかけを作る
- ユーザーが再訪問したくなる魅力的で良質なコンテンツの制作に取り組む
- 直帰率を下げ、エンゲージメントを高める
- ファーストビュー(最初に見える画面)の設計を改善し、滞在時間を伸ばす
- 関連コンテンツのリンクを目立たせ、他の記事も見てもらう
ケース2.PV数は増えたのにセッション数が増えない(セッションあたりのPV数の増加)
原因
- 1回の訪問で多くのページが閲覧されているが、再訪問にはつながっていない
- 検索エンジンや広告から流入しているが、一度見たら満足して再訪問しない
対策
- 「定期的に訪れたくなるサイト」を作る
- 業界ニュースやトレンド記事など、更新頻度の高いコンテンツを用意
- 「このページをブックマークしておくと便利」と思わせる情報を提供
- サイトのブランディングを強化する
- 他サイトとの差別化を図り、「また来たい」と思わせる要素を増やす
- コミュニティ機能やフォーラムを活用し、ユーザーとの接点を増やす
ケース3.PV数は増えないのにセッション数が増えた(セッションあたりのPV数の低下)
原因
- ユーザーが何度も訪問しているが、サイト内での回遊が少ない
- 再訪問のたびにすぐ離脱している
対策
- コンテンツの充実とサイト回遊の促進
- 新しい記事の追加や、既存記事のアップデートを頻繁に行う
- サイト内検索機能を改善し、ユーザーが求める情報にすぐアクセスできるようにする
- 再訪問時に「次に見るべき情報」を明確にする
- トップページや記事ページの最上部に「前回の閲覧履歴」や「おすすめ記事」を表示
- 「前回の続き」として、訪問履歴に応じたコンテンツを提案
6. セッション数の増加は目標達成のためのマーケティング施策の一環
BtoB企業において、セッション数の増加は単なる訪問回数の増加にとどまらず、リード獲得や商談の成立に向けた接点を増やすための重要な指標だ。
例えば、ウェブセミナーやホワイトペーパーのダウンロードを促進する施策を強化してセッション数を増やし、エンゲージメントやコンバージョン率を高めることにつながる。
特にBtoBビジネスでは、ユーザーが情報収集を繰り返しながら意思決定を行うため、セッション数の増加=企業との接点を増やし、購買検討を深める機会の増加と捉えるべきである。
そのためには、単に広告やSEO施策を実施するのではなく、戦略的な集客設計→施策の実行→ 効果測定のPDCAサイクルを回すことが重要だ。
集客の効果測定の重要性や実際の測定方法、集客効果を高めるためのポイントは以下の記事で詳しく紹介しているのでぜひ参考にしてほしい。
7. まとめ
セッション数の基本的な定義から、UUやPVとの違い、セッション数の重要性、増やすための具体的な施策などを解説した。
セッション数はよく聞く言葉であるが、GAで具体的にどのように計測されているかを把握できれば、よりWebサイト分析への理解も進むだろう。
BtoBのビジネスモデルとも相性が良い指標である(もちろん他の指標と組み合わせた分析が必要だが)ため、ぜひ本記事を元に詳細な分析に取り組んでいただきたい。
また、当社ではBtoBのIT企業向けに、Webサイトへの集客やSEO対策に関する支援を提供している。
セッション数改善だけでなく、Webサイトやオウンドメディア運営に悩むことがあれば、ぜひお気軽にご相談いただきたい。