「サイトのPVは増えたものの、問い合わせがない」
「PVがメルマガ登録やホワイトペーパーダウンロードに結びつかない」
「メディアの検索順位は上がったが商談が増えない」
といったお悩みを抱えてはいませんか?
こうしたお悩みを解決するために役立つ考え方が「パーセプションチェンジ」です。
パーセプションチェンジは、「意識変化」を表す言葉であり、主にBtoCの分野で使われていました。
しかし近年は、BtoB向けのコンテンツマーケティングとも親和性が高いことが明らかになっています。
ここでは、パーセプションチェンジの概念やBtoB領域のコンテンツマーケティングへの組み込み方などを解説します。
1. パーセプションチェンジとは?
まず、パーセプションチェンジの定義を確認しておきましょう。
パーセプションチェンジとは、文字通りパーセプション(認知、認識)がチェンジ(変化)する様を表しています。
ビジネスの世界では、「顧客の意識変容」や「認知の変化」などと認識されることが多いです。
心理学から広告の世界へ
最初に「パーセプションチェンジ」が注目されたのは心理学の分野です。
人々が物事をどのように知覚し解釈するか、それが行動や態度にどのように影響するかを理解することは、心理学研究の基本的な部分でした。
20世紀中盤になると、心理学的知見が広告業界で利用され始めます。
消費者が製品やブランドをどのように認識するか、その認識をどのように変えるかといった情報が、広告戦略の立案に欠かせなくなってきたのです。
消費者の興味関心やブランドイメージを変化させる
パーセプションチェンジは本来、どの顧客もが行っているものであり、自然発生するものです。
しかし、マーケティング領域では意図的にコントロールし、成果につなげるための施策が存在します。
パーセプションチェンジをコントロールする目的は、「自社製品・サービスの購買につながるように、消費者の興味関心やブランドイメージを変化させること」です。
顧客が購買行動において「意思決定」を行うのは、新たな発見や認識の変化などが起こったタイミングであり、これを意図的に起こそうというのが狙いです。
業界業態を問わず、顧客は何らかのニーズを持っており、そのニーズを満たす製品・サービスを探しています。
しかし、自社製品・サービスが完全にそのニーズを満たすとは限りません。
一方、顧客側も情報収集を通じて、少しずつ認識を変化させています。
両者がうまく出会えば問題はありません。
しかし、情報が氾濫する現代においては、少しの認識の差がすれ違いを生んでしまいます。
そこで、顧客に対して新たな視点・視座・解決策などを意図的に発信することで、自社製品やサービスを「新たな選択肢」として認識してもらう施策が必要になってきます。
端的に言えば「顧客が行っている認識変化の旅の中に、自社への道筋を書き込む」のです。
2. BtoBマーケティングにおけるパーセプションチェンジの重要性
パーセプションチェンジは主にBtoCの分野で用いられてきました。
しかし2000年代以降はBtoB領域でも活用されています。
マーケティング領域では、BtoCで効果が確認されたものがBtoBで応用される例が良くあり、パーセプションチェンジもそのひとつです。
また、BtoBの傾向を踏まえると、むしろBtoCよりも重要な施策であると言えます。
2.1 専門的な商材を検索キーワードとマッチさせる
パーセプションチェンジがBtoB領域で有効とされる背景には、商材や検索キーワードの特殊さがあります。
BtoBで扱われる商材は、ニッチかつ専門的な内容のものが多く、ユーザー側から存在を認知されていないこともあります。
また、検索ボリュームが非常に小さい(もしくは持たない)ケースも珍しくありません。
したがって、BtoCのように「よく検索されるキーワード」から自社商材へと導線を引くことが難しいのです。
こうした問題は、パーセプションチェンジによって解決できることがあります。
具体的には、「商材とは直結しないテーマ」で検索キーワードを選定し、そこからパーセプションチェンジを絡めつつ、商材への導線を引くという施策です。
例えば自社商材として製造業向けに、遠隔監視やシミュレーション用の「VRサービス」を提供している場合を考えてみましょう。
「VRサービス」自体の検索ボリュームは非常に小さく、月間ベースで140程度しかありません。
そのため、VRサービスをキーワードにしてコンテンツを作成しても、多くの人の目には触れませんし、潜在顧客に届く可能性も低いでしょう。
しかし、コンテンツの中で「VRサービスはデジタルツインの構築に役立つ」という新しい視座を提供すれば、「デジタルツイン」を検索したユーザーの一部にパーセプションチェンジが起こり、自社商材であるVRサービスの認知拡大につながります。
ちなみにデジタルツインの検索ボリュームは月間ベースで18000強です。
このようにニッチで専門的な商材をより大きな検索キーワードにマッチさせつつ、ユーザーの認識を変化させて誘導することができます。
2.2 カスタマージャーニーやサーチジャーニーの核となる
コンテンツマーケティングやコンテンツSEOでは、ユーザーの認識の変化を「ジャーニー(旅)」のように表現し、施策立案の指針にします。
これらは「カスタマージャーニー」や「サーチジャーニー」とも呼ばれます。
こうしたジャーニーを作成するうえで、パーセプションチェンジは極めて重要な役割を果たします。
カスタマージャーニーとは、顧客が初めて製品やサービスに気づく瞬間から、それを購入して使用し、ロイヤルカスタマーになるまでの間に起こる意識変化を表したものです。
これに対してサーチジャーニーは、顧客が検索エンジンを使用して情報を求める過程を指します。
疑問に対する答えを探すとき、一回の検索で全てを把握することは困難です。
大抵は、複数の検索語を用いてより深い理解へと到達していきます。
また、疑問を深堀りする段階で新たな知見や興味、別の疑問が浮かぶこともあるでしょう。当然のことながらこれらに対しても検索行動を行うことから、検索キーワードは時間の経過とともに変化していくのが通常です。
近年のコンテンツマーケティングでは、SEOの要素を取り入れつつ、さまざまな検索キーワードからユーザーニーズを読み取る必要があります。
この時、カスタマー/サーチジャーニーが確立されているか否かで、成果の出方が変わってきます。
なぜなら、ジャーニーを把握し、それに基づいて導線を設計し、適切なキーワードやコンテンツを配置することで、訪問者を成果(問い合わせ、資料のダウンロードなど)に結びつけることが可能になるからです。
少し長くなりましたが、こうしたジャーニーはパーセプションチェンジの連続によって作られています。
したがって、パーセプションチェンジをコントロールすることはジャーニーをコントロールすることにほかなりません。
3. パーセプションチェンジが起こるタイミング
パーセプションチェンジをコントロールするための第一歩は、「パーセプションチェンジが起こるタイミング」を把握することです。
ここでは、一般的なパーセプションチェンジのタイミングと、BtoB領域で起こるタイミングを紹介します。
3.1 一般的にパーセプションチェンジ起こるタイミング
まず、一般的にパーセプションチェンジが起こりやすいタイミングから見ていきましょう。
・新しい知識/情報に触れ、理解と納得があった
・ある分野についてより深い理解と納得があった
・同一の情報について別の視点や視座の獲得があった
・新たな興味や関心を持った、もしくは失った
・粒度や解像度の高い情報に触れた
・価値観や経験が強く肯定/否定された
このように「納得と理解」「新しい視点・視座の獲得」「価値観や経験の確認・更新」などは、パーセプションチェンジが起こるタイミングとされます。
例えば一昔前に話題となったネット広告のキャッチコピーで「うわっ…私の年収、低すぎ…?」というものがありました。
このフレーズは「自身の年収について、より粒度や解像度の高い情報に触れ、価値観や経験が強く否定された結果」と考えることができます。
つまり、パーセプションチェンジが起こっている人を表現しているのです。
認知が変化している様子をあえて広告に載せることで、「自分にも同じことが起こる(年収が適正ではないと気付く)のではないか」という興味関心を抱かせているのでしょう。
また、この気づき自体も一種のパーセプションチェンジであり、非常に優秀な広告であったと言えます。
3.2 BtoBでパーセプションチェンジが起こるタイミングの例
これら一般的な傾向を踏まえ、BtoB領域でパーセプションチェンジが起こるタイミングを考えてみましょう。
同じ課題やニーズに対する別ルートでの解決方法
自社が抱えている課題に対し、全く新しい技術やアプローチで解決した事例は、「新たな視点・視座の獲得」「理解と納得」を促す効果があり、パーセプションチェンジにつながると考えられます。
専門性が高く、オンラインに出回りにくい情報に出会った
専門性の高い業務分野のノウハウやテンプレートなどには、オンラインに出回りにくい希少性があります。また、その中に独自性の強い方法が詰め込まれていると、パーセプションチェンジを促しやすいと考えられます。
他業界、異分野の解決事例から学んだ
「偶然目にした異分野の情報から解決策を思いつく」といったパターンもパーセプションチェンジの好例です。
DX(デジタルトランスフォーメーション)のように、定義がさまざまで、なおかつ多種多様な施策が絡む話題で起こりやすいと考えられます。
4. BtoBコンテンツマーケティングにおけるパーセプションチェンジの実践方法
最後に、実際にパーセプションチェンジをコントロールする際の実践方法を紹介します。
4.1 ペルソナを作り、パーセプションを想定する
パーセプションチェンジをコントロールするためには、まず可能な限り精緻な「ペルソナ」を描くことが大切です。
ペルソナは「仮面」と翻訳されますが、BtoBでは「顧客”像”」だと考えてください。
ペルソナ設定では、意思決定者や製品を使用する人々の特徴を具体的に洗い出し、肉付けしていきます。
「層」や「群」ではなく具体的な人物像を描くことがポイントです。
ペルソナについては、こちらでも紹介していますのであわせてご確認ください。
ペルソナを作成したあとは、「そのペルソナが持ち得るであろうパーセプション(認知、認識)」を推測します。
そこからさらに変容(チェンジ)のパターンを作成していきましょう。
ここでは例として「物流業務の担当者に対して、配車業務効率化のためのクラウドツールをアピールしたい」場合を想定し、ペルソナとパーセプションチェンジのパターン、サーチジャーニーなどを作成します。
ペルソナ
事業会社の物流部門社員。配置転換によって配車業務を含むロジスティクス全体を管轄する部署に異動して3年程度、ITシステム開発職の経験はない。
部署内では委託先の運送業者やドライバーの配車業務を管理する立場にある。既存システムが世間一般に比べてやや古く、業務プロセスもアナログであることを徐々に理解し始めている。
2024年問題の到来を目前に控え、人手不足対策の立案を任されている。
パーセプションの想定
人手不足とはいえ人手は簡単に増やせないのでどこかで人材補充が必要
配車業務は慣れが必要なので新人には任せづらい
人材を補充しても教育が大変
そもそも2024年問題の人手不足とはどの程度の重大さなのだろうか
パーセプションチェンジの想定
上記のペルソナとパーセプションをもとにパーセプションチェンジを想定すると以下のようになります。
ペルソナからパーセプションを想定し、さらにそこからパーセプションチェンジを想定することで、「カスタマー/サーチジャーニー」が見えてきます。
4.2 ジャーニーを起点としてコンテンツ方向性や内容、配置を決める
次に、ジャーニーに沿ってパーセプションチェンジを促すコンテンツを置き、そのあとに自社商材につながる流れを構築していきましょう。
上の例を見ると、「2024年問題 人手不足」という検索ボリュームの大きいキーワードからの流入を取り込める可能性があります。
特にコンテンツSEOでは、サーチジャーニーこそがパーセプションチェンジの集合体と考え、検索キーワードとパーセプションを対応させながらコンテンツを作成します。
4.3 自社メディア内を周回、意思決定を促す
さらにパーセプションチェンジによるジャーニーの変遷を予測し、コンテンツを配置していきましょう。例えば、
・2024年問題の深刻さを定量的に伝えるコラム記事を配置して露出させる
・配車業務の効率化に関する記事にリンクを張って誘導する
・さらに自社クラウドツールに関するホワイトペーパーを作成し、ダウンロードを促す
といった施策が考えられます。
また、製品紹介資料やプロモーション動画などへの誘導も有効です。
このように多様なコンテンツを配置しつつ自社メディア内で周回させ、より深い納得と理解を重ねてもらうことが意思決定につながります。
4.4 オンラインからオフラインへと誘導する
また別の施策としては、「オンラインからオフラインへの誘導」も挙げられます。
パーセプションチェンジを重ねた顧客は、「さらに詳しい情報を担当者から直接聴きたい・質問したい」というニーズに至ることがよくあります。
このニーズを満たす導線としてオフラインセミナーや展示会を用意し、商談化につなげていきましょう。
5. まとめ
ここでは、現代のコンテンツマーケティングに欠かせない要素である「パーセプチョンチェンジ」について解説してきました。
パーセプションチェンジは、検索キーワードと自社商材のマッチングが難しいBtoB領域において、非常に有用なテクニックです。
また、コンテンツの中にパーセプションチェンジの要素を組み込むことで、ナーチャリングにも効果があります。
コンテンツマーケティングの柱である「ジャーニー」の設計にも不可欠ですから、しっかりと理解しておきたいところです。
もし社内にリソースやノウハウがない場合は、カスタマー/サーチジャーニーの設計を外部に委託することも検討してみましょう。