BtoBマーケティングでは、リード獲得やナーチャリングを目的として、ホワイトペーパーを活用されています。
ホワイトペーパーはSNS広告やオウンドメディアと相性がよく、問い合わせよりもハードルが低いCTAとして設置されるケースが多いでしょう。
しかし、ホワイトペーパーは作れば成果につながるというものではなく、そもそもの「設計」がとても重要です。
そこでこの記事では、BtoBマーケティングに取り組む人に向けて、ホワイトペーパーの作り方をステップ別に解説します。
また、デザインにおけるポイントなどもあわせて解説します。
1.ホワイトペーパーの目的
まず、ホワイトペーパーの目的について簡単におさらいしておきましょう。
ホワイトペーパーは、ビジネスで発生する問題や課題の解決策、トレンド、事例などを解説し、知見を深く掘り下げて説明する資料です。
BtoBマーケティングでは、主に以下の目的で活用されます。
リード獲得(リードジェネレーション)
リードとは、商品やサービスへの関心を持つ可能性のある「見込み客」のことを指します。
リード獲得とは、これら見込み客を見つけ出し、増やすプロセスです。
具体的には「属性情報」や「連絡先」を収集するプロセスが含まれます。
同時に、自社の認知度向上を狙うことも多いでしょう。
リード獲得を目的としたホワイトペーパーでは、中立的な立場からレポートやトレンド情報を提供することで、見込み客の耳目を集めます。
また、ダウンロードページに連絡先情報の提供を依頼するフォームを設置することで、リード獲得につながる情報(企業名や部署名、メールアドレスなど)を収集します。
リードジェネレーションについては、こちらの記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
ナーチャリング
ナーチャリングとは、リードをさらに成熟させ、購買の意思決定に近づけるためのプロセスを指します。
直訳すると「育成」になるわけですが、BtoBの場合は「自社に対する信頼感を高める」「特徴や強みを知ってもらう」ことが重要です。
ナーチャリングを目的としたホワイトペーパーは、希少価値の高い情報やノウハウの提供、自社製品やサービスの紹介などが中心です。
プッシュ型の営業/マーケティングが忌避される傾向にある近年は、Webから恒常的にアピール可能なホワイトペーパーによるナーチャリングが重視されています。
リードナーチャリングについては、こちらの記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
商談化
商談化とは、見込み客を最終的な意思決定(案件化や受注)へと進めるためのプロセスです。
商談化を目的としたホワイトペーパーでは、課題解決のノウハウや事例を使いながら比較・検討を促す内容を提供します。
自社が持つ「解決する力」や「コストパフォーマンス」「実績」などを訴求ポイントとしながら、見込み客の信頼をさらに深め、商談へと進めることが狙いです。
目的によって製作すべきホワイトペーパーは異なる
ホワイトペーパーにはいくつかの種類があり、目的によって製作すべきホワイトペーパーは変わってきます。
以下は、一般的なホワイトペーパーの種類です。
・調査レポート型
・トレンド情報型
・事例紹介型
・課題解決型
・ノウハウ提供型
・セミナー、イベントレポート型
・その他資料(サービスカタログ、料金表、用語集など)
ホワイトペーパーの種類と具体的な内容については、こちらの記事で解説しています。あわせてご覧ください。
2.ホワイトペーパーの作り方
では実際にホワイトペーパーを制作する際のステップについて解説していきます。
ホワイトペーパー制作は、主に以下6つのステップで行います。
<ホワイトペーパーの6ステップ>
ステップ1:目的の設定
ステップ2:ターゲットとペルソナの設定
ステップ3:顧客課題の設定
ステップ4:テーマ設定
ステップ5:構成案(ストーリー)と訴求ポイントの設定
ステップ6:執筆及びデザイン
各ステップの具体的な内容は次のとおりです。
ステップ1:目的の設定
最初は、どの読者に対して、どんな行動を促したいのかを明確にします。
BtoBにおける購買フェーズには「認知」「興味・関心」「比較・検討」「商談」の4つのステップがあり、各ステップ合わせたアプローチが必要です。
一般的にホワイトペーパーは「商談」以外のステップで用いられるため、下記3つの目的のうちいずれかを設定します。
「認知拡大」によるリード獲得
リード獲得を目的とする場合は、「自社のことを知ってもらう」「自社と何らかの形でつながってもらう」こと意識します。
新製品の発売情報や業界の最新動向レポートを作成するなど、多くの企業担当者がリサーチの対象とするような、話題性のある情報を提供します。
ここで重要なのは、その情報の中で自社の存在を知らせ、リード獲得やナーチャリングの原資となるメールアドレスなどを収集することです。
この段階から商談に発展する確率は低いものの、質の高いリードを獲得することで後続のプロセスが実行しやすくなります。
「興味・関心」の喚起によるナーチャリング
獲得したリードをさらに購買に近づけたい場合には、興味・関心の喚起を狙います。
具体的には、「業界でよくある課題の解決方法」「業務効率化のノウハウ」「顧客事例の紹介」といった情報を提供します。
具体的な数字や成功のストーリーを織り交ぜながら、読者の興味をさらに引き寄せるような内容を心掛けましょう。
「比較・検討」による優位性のアピール
興味・関心を抱いた見込み客に対し、さらに購買の角度を上げたい場合は、比較・検討による優位性のアピールを行います。
他社との比較表や自社独自の特徴を強く打ち出した内容で、自社製品の優位性をアピールしていくことが重要です。
また、比較・検討の結果、「なぜ自社製品を選ぶべきなのか」を明確かつ自然に伝えていきましょう。
ステップ2:ターゲットとペルソナの設定
目的の設定が完了した後は、ターゲットとペルソナの設定を行います。
ここで重要なのは、ターゲットとペルソナを明確に区別し、具体的な「顧客像」を描くことです。
ターゲット=顧客”層”を明確にする
ターゲットとペルソナは、マーケティングにおいて頻繁に登場する単語です。
しかし、マーケティング施策をしっかり効かせるためには、両者の違いを理解しておく必要があります。
ターゲットとは、端的に言えば「層」や「群」です。
BtoCの場合は、「30代の女性」「40代~50代の働き盛り男性」といった属性情報で表現されます。
一方、BtoBの場合は、「業種」や「規模」「事業内容」などで絞った企業群をターゲットに設定します。
例えば、製造業向けの業務効率化クラウドサービスを展開する企業が、ホワイトペーパーのターゲットを設定する場合は、以下のようになります。
ターゲットの例
・製造業に属する中堅規模(売上100億以上)の企業
・社員数は100~500人程度
・社内の情報システム担当者
・30代以上で勤続5年以上の中堅クラス
ペルソナ=顧客”像”を設定する
次にペルソナを設定します。
ペルソナ設定では、意思決定者や製品を使用する人々の特徴を具体的に洗い出し、肉付けしていきます。
「層」や「群」ではなく具体的な人物像を描くイメージです。
ペルソナの例
・SEやPGとしての経験があり、一部のクラウドサービスがレガシーシステムやツールより優れていることを理解している
・社内のITリテラシーはそれほど高くなく、業務で利用するツールに関する問い合わせ対応やレクチャーに追われている
・どの部署もExcelによる手動入力の業務が多く、関数やマクロのメンテナンスが多い
・これまでの業務プロセスを変えずに、社内業務の効率化や自動化が進められるツールが欲しいと考えている
・社内情報システムのメンバーは5人程度
・決裁者が別に存在しており、ツールの導入には上長の許可が必要
・上長は新しい技術への興味はあるものの、コスト面へのチェックが厳しい
ステップ3:顧客課題の設定
ターゲットとペルソナの設定が完了した後は、ペルソナが抱えているであろう「課題」を設定します。
ペルソナがしっかり設定できていれば、課題は自然と見えてくるはずです。
以下は、前述の例に従って設定した顧客課題の例です。
顧客の課題の例
・業務利用するExcelに関する情報が一元化されておらず、ノウハウとして積みあがっていない
・Excelの関数やマクロに関する知識が共有されておらず、業務属人化が起こっている
・Excelに代わるクラウドツールを導入したいが、選定候補を絞り込むだけの時間的な余裕がない
ステップ4:テーマ設定
顧客課題を設定した後は、その課題に対する解決方法を「テーマ」として設定していきます。
前述の例に従うと、
「社内に散逸した業務ノウハウを一元化する方法」
「Excelによる業務属人化を防ぐ クラウドツールによる知識共有」
「脱Excelのためのクラウドツールを徹底比較」
といったテーマが浮かび上がってきます。
テーマ設定はホワイトペーパーを制作する目的によっても変化するため、「目的」「ターゲット」「ペルソナ」がしっかり出揃ったタイミングで考案するようにしましょう。
ステップ5:構成案(ストーリー)と訴求ポイントの設定
テーマ設定が完了した後は、構成案(ストーリー)と訴求ポイントの設定に入ります。
BtoB向けのホワイトペーパーでは、まずテーマ(タイトル)と目次があり、次にターゲットを想定した背景や目的の提示し、そこから徐々にブレイクダウンしながら訴求を挟むという流れが一般的です。
構成案の例
テーマ(タイトル):「Excelによる業務属人化を防ぐ 標準化と知識共有の方法とは」
1.製造業で今なお難しい「脱Excel」
2.Excelによる業務属人化が起こる理由
3.業務属人化の弊害と防止作
4.標準化と知識共有を促すクラウドツール
5.クラウドツールの選定基準
6.弊社クラウドツール「xxx」の強み
7.導入事例の紹介
8.まとめ
上の構成例では、まずExcelによる弊害を顧客課題としてピックアップし、その理由と一般的な防止策を提示しています。
次に、一般的な防止策がうまくいかない理由(コストやシステム的な制限など)を提示し、これを解決する方法としてクラウドツールを提示します。
さらに、クラウドツールの選び方を紹介したうえで、自社製品の紹介と実績を提示するという流れです。
一般的なホワイトペーパーでは訴求ポイントを最後に持ってくることが多いでしょう。
ただし、興味・関心の喚起が目的である場合は、訴求を2~3か所に分散させる形で「しつこくならない程度に印象付ける」といった方法も有効です。
また、単純な認知拡大(リード獲得)が目的の場合は、あえて自社製品の訴求ポイントを設けない場合もあります。
訴求を行わないことで、中立性や公平性を印象付け、情報源としての信頼性を高めてもらうためです。
このように、訴求ポイントの有無や数はホワイトペーパーを制作する目的によって変化していきます。
ステップ6:執筆およびデザイン
構成案を作り終わったとは、執筆およびデザインを行います。
執筆時のポイント
ホワイトペーパーは一般的なコラム記事とは異なり、「1ページに1つのメッセージ」を設置するつもりで執筆します。
ページごとに設置されたメッセージがつながり、できるだけ自然な形で訴求につながっていくことをイメージしていきましょう。
ただし、ホワイトペーパーのタイプによって執筆方法が異なる点に注意してください。
例えば、認知拡大を目的としたレポート型のホワイトペーパーでは、読み物や資料としての正確さ、中身の濃さなどが重視されます。
また、文体は論文調に近くなり、客観的かつ定量的なリサーチの結果に基づいた論理的な文章が好まれます。
一方、事例紹介型や課題解決型のホワイトペーパーでは、具体的な課題を分かりやすく提示するために図版やイラストを用いながら説明を行います。
また、訴求につなげやすくするために「課題・施策・効果」をセットにして伝えることも大切です。
1ページあたりの文字量
1ページあたりの文字量としては、「300~400字程度」がひとつの目安です。
図版やインフォグラフィックに注力して読者の認知負荷を下げたい場合は、1ページあたり200~300字程度におさえることもあります。
ただし、レポート型の場合はテキストが主体になるため、この限りではありません。
ボリュームについて
1ページあたり300~400字程度のホワイトペーパーであれば、「10~16P程度」が可読性の面からもおすすめです。
ただし、事例を複数扱う場合や、課題の数によっては20P以上のボリュームになることもあります。
デザインについて
近年のホワイトペーパーは、「レポート型は縦型」「その他は横型」がトレンドです。
また、デザインで重視すべきポイントとしては下記があります。
表紙
タイトルは短く簡潔にする。補足で伝えたいことはサブタイトルにし、タイトルより小さなフォントサイズで添える。
イラストや写真などの画像もある方が望ましい。
目次を設ける
「どこに何があるかがすぐに分かる」ことが大切。
凝ったデザインではなくシンプルなものが望ましい。
内容
文字量は必要最低限に留め、画像やグラフを目立たせる。
重要な部分は色を変える・ハイライトを入れる・太字にする。
読者が短時間で情報を理解できることを念頭に置く。
オファーページ
セールスポイントや強みが直感的に理解しやすいデザインにする。
費用の比較表や製品画像、機能説明などを駆使して視覚的に訴える。
デザインに関する具体的なテクニックは、こちらの記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。
3.ホワイトペーパー制作で注意すべきポイント
最後に、ホワイトペーパーを制作する際に注意しておきたいポイントを解説します。
ホワイトペーパーは、広告やSEO対策記事よりも中立性や公平性が重視される傾向にあります。
また、製品紹介や事例紹介など既存の資料・記事としっかり差別化することも大切です。
BtoBでは「売る」ことを意識しすぎない
BtoBに属する企業の多くは、過度な訴求は控える傾向にあります。
ホワイトペーパーには、受注や売上よりも「リード獲得とナーチャリング」の効果を期待しているからです。
BtoCとは異なり、BtoBにおけるホワイトペーパーは「検討材料」であり、即決購入を促すものではありません。
BtoBでは、読者と意思決定権者が同一ではなく、複数人で検討したのちに決定することが前提だからです。
したがって、内容の大半は中立的視点で述べつつ自然に訴求につなげる、といった流れがベストでしょう。
「製品紹介」「事例紹介」との差別化を意識する
ホワイトペーパーは、「製品紹介」や「事例紹介」と混同されることがよくあります。
たしかにこうした資料を一部流用して制作することも少なくありません。
しかし、ホワイトペーパーの制作では「事例や製品の紹介によって、どのような価値を生み出すか(目的を達成するか)」が最も重要です。
したがって、単なる紹介に終始しないように注意しましょう。
4.まとめ
ここでは、ホワイトペーパーの作り方について、具体的なステップや例を交えながら解説してきました。
ホワイトペーパーはコラム記事やWeb上の資料とは異なり、顧客の手元に残り続けるものです。一定以上の品質を担保できれば、恒常的にリード獲得やナーチャリングなどの効果が見込めます。
ただし、制作には一定のリソースとノウハウが必要です。
もし社内にリソースがない場合は、外部サービスの活用も検討しながら制作を進めていきましょう。