クリック率(CTR)は、リンク(広告)が表示された回数に対してどれくらいクリックされたかの割合を示す指標だ。
クリック率が低い場合は「広告に興味をもたれていない」「ユーザーのニーズにマッチしていない」可能性が高いため、改善する必要がある。
一方で、以下のような悩みを抱える方も多い。
「そもそも自社のクリック率が適正値なのかわからない」
「広告においてクリック率はどれくらい重視すればよいのか」
「クリック率を向上させるにはどうすればよいか知りたい」
そこで本記事では、業界別のクリック率の平均値や、クリック率向上のための具体的な施策を解説する。
最後までご覧いただけば、クリック率の向上や広告運用の最適化へのヒントを得られるはずだ。
1.クリック率(CTR)とは?
クリック率は、広告が表示された回数に対し、実際にユーザーが広告をクリックした回数の割合を示す。
クリック率(CTR)=クリック数/広告の表示回数×100
クリック率は、CTR(Click Through Rate)とも呼ばれる。
例えば、特定のページが1,000回表示されたうち、100回クリックされればクリック率は1%だ。
2.クリック率(CTR)が重要な理由
Webマーケティングにおいて、クリック率(CTR)は非常に重要な指標となる。
その理由について詳しく見ていこう。
理由1.ターゲットニーズとの関連性を図る指標となる
クリック率によって、広告文や画像などのアセットとターゲットニーズとの関連性が高く保てているかを把握できる。
つまり、自社のサービスやLPがターゲットとするユーザーが興味をもち「クリック」という行動を起こせるような広告かどうかは、クリック率に表れる。
また「広告のクリック」は、ユーザーと自社との関係性が始まる起点だ。
低いクリック率を放置すれば、機会損失につながりかねないため、必ず数値を追跡して改善を進めていってほしい。
理由2.広告品質の評価に影響を与える
クリック率の高い広告は「広告の品質」に好影響を与える。
特定のキーワードで検索するユーザーにとって、そのニーズを満たす魅力的な広告やサイトであれば自然とクリックが生まれ、クリック率が上昇することは想像に難くない。
Googleでは「品質スコア」という指標を用いて広告の品質を評価しており、その評価項目の一つに「推定クリック率」が含まれている。
ゆえにクリック率の高いサイトは推定クリック率が上昇し、品質スコアも向上する。
品質が良いと評価された広告は、狙ったキーワードに対して上位に表示されやすくなり、さらにクリック率が高まってコンバージョンにもつながるという好循環が生まれるのだ。
品質スコアについては、以下の記事でも詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてほしい。
3.クリック率の平均値
クリック率の良否を測る目安として、マーケティング専門会社が調査・公表する業界別の平均クリック率を紹介する。
ただし、クリック率の平均といっても、業界や広告の種類、利用端末別など、条件によって変動する点には注意が必要だ。
ここでは、マーケティング支援会社のCXLが公表する、業界別のクリック率の平均を見ていこう。
<業界別クリック率の平均値>
業界 | 平均クリック率
(自然検索) |
平均クリック率
(ディスプレイ広告) |
旅行 | 9.19% | 0.47% |
スポーツ・レクリエーション | 8.82% | 0.51% |
EC | 5.50% | 0.51% |
飲食 | 7.60% | 0.47% |
不動産 | 8.55% | 1.08% |
工業・商業 | 5.61% | 0.46% |
住宅・リフォーム関連 | 4.62% | 0.49% |
健康・フィットネス関連 | 6.15% | 0.59% |
金融・保険 | 5.70% | 0.52% |
教育関連 | 6.17% | 0.53% |
人材関連 | 5.93% | 0.59% |
企業向けサービス | 5.17% | 0.46% |
美容関連 | 5.92% | 0.72% |
自動車 | 5.65% | 0.60% |
弁護士・法律関連 | 4.24% | 0.59% |
芸術・エンターテイメント関連 | 11.43% | 0.51% |
出典:What Is a “Good” Click-Through Rate?|CXL
上記のうち、BtoBマーケティングにおいて参考になるのは「企業向けサービス」だ。
企業向けサービスの平均クリック数は、自然検索で5.17%、ディスプレイ広告で0.46%となっており、ほかと比較しても低い数字であることがわかる。
その理由の一つとして考えられるのは、BtoCと比較してBtoB向けの製品やサービスは専門的かつ複雑な機能が多く、また購買プロセスが長期にわたる点だ。
コンバージョンに至るハードルが相対的に高くなるため、クリック率の平均も低くなる傾向がある。
4.クリック率を改善させるためのベストプラクティス
上述のように「広告のクリック」は、BtoBマーケティングにおける顧客との「始めの接点」になりうる。
そこで本章では(主にリスティング広告における)クリック率を効果的に向上させるための具体的な手法を紹介する。
4.1.ペルソナ設定とニーズの把握
ペルソナの精緻化は、狙うべきターゲットが特定されるため、刺さるメッセージを届けやすくなる。
例えば「IT業界向け導入シェアNo.1」「従業員30人未満の企業に最適」など、ターゲット顧客向けに自分ごと化できる訴求が可能となる。
BtoBにおいては、単に推測でペルソナを設定するのではなく、顧客データやアクセス解析結果、インタビュー調査など、信頼性のあるデータをもとに年齢、地域、性別、ニーズなどの詳細を特定することが重要だ。
また、BtoBの場合「企業」そのもののペルソナ設定が鍵となる。
業種、企業規模、収益目標、抱える課題といった視点を加味して、ターゲット企業の特性を明確にすることが求められる。
4.2.キーワードの最適化
リスティング広告において最も重要なプロセスがキーワード選定だ。
ターゲットが自社のサービスにつながるニーズをもっているときに「どのようなKWで検索するのか」を深掘りしよう。
自社が提供するサービスに直結するキーワードだけではなく、その裏にある企業/担当者の状況、課題、悩みなどをリサーチする必要がある。
例えば、BtoB向けの「CRMシステム」を訴求する広告を出稿している場合「CRMシステム」「CRM」を含むキーワードだけが成果につながるとは限らない。
「なぜCRMシステムを必要としているのか?」「CRMはどのような課題の解決に必要か?」という部分を深掘りしてみよう。
「顧客データが散らばっている」という悩みや「顧客のデータをもとにしたマーケティング施策を行いたい」というニーズがあるかもしれない。
そうすると「顧客データ 統合」や「マーケティング 効率化」などがキーワード候補として上がってくる。
前段で解説した「ペルソナ」と自社サービスの提供価値を照らし合わせて、キーワードを最適化していこう。
なお、競合他社がどのようなキーワードで検索上位を獲得しているかを調査することも有効だ。
ターゲットのニーズの深掘りについては、以下の記事を参考にしてほしい。
4.3.魅力的な広告文の作成
クリック率を向上させるためには、ユーザーが思わずクリックしたくなるような広告文が必要となる。
ポイントは「顧客が得られる価値(ベネフィット)」にフォーカスすることだ。
サービス提供側が使用する表現と、顧客側が使用する表現は異なるため、その差をなくさなければならない。
加えてBtoBでは、実績や他社からの評価などを提示して「信頼性」を感じてもらわなければ、行動や意思決定へ発展しにくい。
これらを踏まえて、ピンポイントなニーズや不安解消を突いた文言、定量情報を付加した導入効果、信頼を抱かせる実績などを盛り込むことが有効だ。
例えば「低価格が魅力」「導入企業多数」「多くの企業から高評価」「事務負担軽減可能」という広告文があるとしよう。
これらに対して「初期費用0円」「導入実績500社超」「顧客満足度98%」「紙の管理がゼロに」といった定量情報を追加すれば、より具体性が高まり興味を引くはずだ。
4.4.検索(出稿)キーワードと広告文の関連性を高める
4.2.では、検索ニーズと検索(出稿)キーワードの関連性を高めることの重要性について述べた。
さらに、検索キーワードと広告文の関連性を高める重要性も押さえておこう。
クリック率に影響を与える広告文と検索キーワードの関連性について、Googleは以下のように表明している。
クリック率に基づいて、各広告、リスティング、キーワードが成果を上げているか、改善が必要かを判断できます。キーワード、広告、リスティングの互いへの関連度とビジネスへの関連度が高いほど、キーワードを検索したユーザーが広告やリスティングをクリックする可能性は高くなります。
特に、Google広告における「推定クリック率」(品質スコアを決める1要素)の評価ステータスが「平均より下」である場合は、広告文と検索キーワードの関連性に問題があることを示唆している。
この場合、検索キーワードとの関連性を高めるように広告文を修正するのがおすすめだ。
4.5.アセット(旧称:広告表示オプション)の活用
アセット(旧称:広告表示オプション)とは、Google広告が提供する、広告文とは別に価格やカスタマーレビュー、電話番号などの補足情報を追加掲載できる機能を指す。
広告文に入りきらない情報を盛り込めるうえ、広告表示エリアの占有率が拡大するため、ユーザーに対する視覚的訴求効果も期待できる。
以下でアセットの例を見ていこう。
<アセット設定メニューの確認方法>
- Google広告の管理画面の「キャンペーン」アイコンをクリックする
- 「アセット」のプルダウンメニューから「アセット」をクリックする
- 「+」ボタンをクリックすると、設定可能な広告アセットが一覧表示される
住所アセット
住所などの店舗情報や営業時間、ビジネス情報ページへのリンクを用いて来店を促進する。ビジネス情報ページには、写真や地図なども掲載可能。
電話番号アセット
検索結果に表示される広告文に電話番号を表示すれば、ユーザーの電話問い合わせを効率的に促進できる。
サイトリンクアセット
サイト内の特定ページ(機能紹介ページ、料金ページなど)へのリンクを広告に追加表示でき、直接誘導が可能となる。
コールアウトアセット
「無料配送」や「24時間カスタマーサポート」などの情報を広告に追加し、訴求力を高められる。
構造化スニペットアセット
事前設定されたヘッダーから適切なカテゴリーを選択し、値を指定して重要情報を表示できる。
価格アセット
製品やサービスのカテゴリーを価格付きで紹介し、広告から直接サービスページに誘導できる。
アプリアセット
テキスト広告にモバイルアプリやタブレットアプリへのリンクを表示できる。ユーザーは広告をクリックしてサイトまたはアプリにアクセス可能。
リードフォームアセット
リードフォームを活用すれば、広告から直接情報を送信可能となり、見込み顧客を効率的に獲得できる。
4.6.A/Bテストの実施
定期的にA/Bテストを行い、どのキーワード・広告文・アセットがクリック率に最も良い影響を与えるか、データの裏付けをもって把握し、改善したい。
広告運用の競争は激しく、一度高い評価を得られたとしても継続して成果を得られる保証はない。
よって、定期的な分析とメンテナンスを必ず実施しよう。
5.クリック率だけではなく、CVにつながるランディングページが重要
ここまでクリック率の重要性を述べてきたが、クリックされただけでは最終的な目的である「コンバージョン」には届かない。
広告リンクの先に、コンバージョンにつながる「ランディングページ」を設置しておく必要がある。
最後に、ランディングページを設置する際のポイントを確認しておこう。
5.1.クリック率とコンバージョンの関係性
クリック率は、Webサイトへ来訪したユーザーが、最終的にコンバージョンに至ったかどうかまでは測れない。
たとえ広告がクリックされたとしても、遷移後のコンテンツがユーザーのニーズを満たさない場合、コンバージョンには至らずページを離脱してしまうだろう。
すなわち、クリック率がいくら高くても、コンバージョン率が低ければ、マーケティング施策として成功したとは言い難い。
そこで重要なのが、広告をクリックした先に遷移する「ランディングページ」だ。
5.2.コンバージョンを引き出すランディングページの最適化
広告を最適化するという文脈において、クリック率の改善とともに「ランディングページの最適化」は避けて通れない。
「ランディングページ最適化(LPO)」は、コンバージョンを最大限に生み出せる効果的なランディングページへ改善するための手法だ。
LPOについてより深く知りたい方は以下の記事を参考にしていただきたい。
広告の訴求内容とコンテンツの一貫性確保
検索キーワードと広告文との関連性が重要だと述べたが、その着地先となるランディングページのコンテンツ内容とも関連性をもたせる必要がある。
つまり「検索キーワードー広告文(アセット)ーLP」の関連性の確保が重要である。
広告文とコンテンツ内容に一貫性がない場合、広告文をきっかけに興味関心をもって来訪したユーザーの期待は叶えられないからだ。
この場合、いくら広告のクリック率が向上しても、LP内のコンバージョンは停滞するだろう。
そもそも、広告の品質はLPの内容も含めて評価されるため、それぞれを関連付けることは必須だ。
ファーストビューの重要性
LPに到達したユーザーのほとんどはファーストビューで離脱する。
よって、いかにファーストビューで興味関心を引けるかが重要だ。
メインとなるコピーや訴求が掲載されるLPのファーストビューでは、ユーザーのニーズ理解して、ユーザー目線でのベネフィットを伝える必要がある。
つまり、ここでも「ターゲットやペルソナの精緻化」「ユーザーニーズの深掘り」が功を奏することとなる。
CTAの明確化
CTAは、ユーザーを次のアクションへ導く重要な要素であり、効果的なランディングページには必ず目立つ位置にCTAボタンが配置されている。
BtoBであれば「今すぐ申し込む」「デモを依頼する」「資料請求する」など、具体的な行動を促すコピーを用いることがポイントだ。
また、CTAは視覚的にも目立たせることが重要で、色や形状を工夫して、ユーザーが迷わず行動できるように設計する必要がある。
信頼性の証明
コンバージョンに至る数や確率を向上させたい場合、特にBtoBでは「信頼性」が重要な判断ポイントとなる。
なぜなら、判断は「企業として」下され、その決断には多くのステークホルダーが関与するためだ。
無駄なコストや問題が発生するリスクは、最大限に排除したい。
信頼性を感じてもらうためには、顧客の声や事例、導入実績、受賞歴、メディア掲載情報などの提示が効果的だ。
ページの読み込み速度向上
ページの読み込み速度が遅ければ、ユーザーは高確率で離脱してしまう。
たとえ魅力的な広告文の掲載や最適なキーワード選定を行えていても、到達したLPの読み込みが遅く離脱されては大変もったいない。
画像やコードの容量を圧縮したり、遅延ロードを実装したりする対策法があるため、必ず取り組んでいただきたい。
6.まとめ
本記事では、クリック率の重要性と目安となる平均値、コンバージョンとの関係性について解説してきた。
Webサイトのパフォーマンスを測るうえで目安となるのが、クリック率の平均値だ。もし自社サイトのクリック率が平均値を下回っているのであれば、早期に対策を打つ必要がある。
さらに、クリック率の改善だけではなく、コンバージョン率を上げて顧客獲得へつなげることも、売上の最大化には不可欠だ。
特に近年では、モバイルフレンドリーの重要性が増している。
コンバージョン率に直結する大きな要因となるため、BtoBにおいても今後注力していくべきだろう。
本記事で紹介した対策を継続し、クリック率が平均値を上回るパフォーマンスの高いWebサイトを目指していただきたい。