キーワードボリュームは特定のキーワードが月間でどれくらい検索されているかを表し、ニーズの強さやコンテンツの集客力に関連する。
特にBtoBでは、ターゲット市場が限定され、ニーズが専門的かつニッチな場合が多く、全体的にキーワードのボリュームが小さい傾向にある。
そのため多くの流入を稼ごうと、ボリュームの大きいキーワードを優先しがちだ。
しかし、次のような問題に直面していないだろうか。
「ボリューム順に対策しているが、効果がほとんど出ていない」
「キーワードボリュームを戦略的に考慮したコンテンツ作りができていない」
「ボリュームが小さく競合が少ないにも関わらず、検索上位に表示されない」
結論、コンテンツマーケティングでは、ボリュームの大小のみでキーワードを選ぶべきではない。
ここでは、キーワードボリュームの役割や種類、狙うべきキーワードボリューム、その他に考慮すべき項目など、実践的なノウハウを詳しく紹介する。
1.BtoBにおける「キーワードボリューム」の役割
一般的なキーワードボリュームの役割は、「検索ニーズの大きさを定量化すること」にある。
BtoBでもBtoCでも同様のことがいえるが、実は少しニュアンスが異なる。
BtoCでは「ボリュームが大きいキーワードが成果につながりやすい」が、BtoBでは必ずしもこのとおりにはならないからだ。
この点を踏まえたうえで、BtoBにおけるキーワードボリュームの扱い方を具体的に見ていこう。
1.1.キーワードボリュームからわかること
キーワードボリュームからわかることは、以下3つだ。
- 検索ニーズの大きさ
- 検索意図
- 市場の大きさと競走の激しさ
検索ニーズの大きさ
キーワードボリュームは、特定のキーワードに対する検索需要を示す重要な指標だ。
ボリュームを分析することで、「検索ニーズの大きさ」を把握できる。
一般的には、「ボリュームが大きい=検索ニーズが大きい」と考えられる。
ただし注意したいのは、検索意図の「濃さ」までは確認できないということだ。
「切実さ」「必要性」の強さまでは判断できない。
そこで、検索意図を具体的に分析していく必要があるのだ。
検索意図
キーワードボリュームからはユーザーの検索意図も「ある程度は」読み取れる。
特定のキーワードがどのような文脈で検索されているかを知ることで、ユーザーが求めている内容を理解できるからだ。
ただし、検索意図の把握はサジェストキーワードや関連キーワードの理解が必須であり、検索ボリュームのみでは困難だ。
市場の大きさと競争の激しさ
キーワードボリュームからは、市場の大きさや競争の激しさの目測もつく。
検索ボリュームが大きければ市場規模が大きく、関連する製品やサービスへの需要が高いことを示している。
また、検索ボリュームが大きいキーワードは、競合他社が多く、上位コンテンツの質も高い。
例えば、月間検索数が1万を超えるビッグキーワードの99%以上は、レッドオーシャン化しているため、上位表示することは非常に難しい。
一方でミドルキーワードやスモールキーワードの一部は、上位がそれほど強くないこともある。
市場こそ小さいが、競合が強くないので「ブルーポンド(青い池)」のような状態だ。
1.2.「ボリューム大=ねらい目」ではない
検索ボリュームの大きさは「競合の強さと多さ」に比例する。
これはBtoB・BtoC問わずだ。
また、BtoBビジネスでは、「あえてビッグキーワードを避ける」という戦術も有効である。
その理由は以下のとおりだ。
- ターゲットとなる顧客が限定的であり、専門性が高い業界が多い
- 購買プロセスや承認プロセスが複雑で、セールスサイクルが長い
専門性の高い業界に属するキーワードは、検索ボリュームが小さくなる傾向にある。
例えば「エンタープライズネットワークセキュリティ」といったキーワードは非常に具体的かつ専門的であるため、検索ボリュームは少ない。
一方で、しっかりコンテンツを送り込みさえすれば、ユーザーを引きつける可能性が高い。
また、BtoBの購買プロセスや承認プロセスは複雑であり、多くのステークホルダーが関与して長期的に検討と却下を繰り返す傾向にある。
これは「同じ人間が何度も同じキーワードで検索する」可能性を示唆している。
つまり、ボリュームは小さくても「ニーズが濃い」といえるのだ。
これらの理由から、検索ボリュームの大小だけでなく、そのキーワードがコンバージョンにつながるかどうかを重視し、キーワードを検討する必要がある。
1.3.レッドオーシャンに埋もれるリスクを察知する
繰り返しになるが、キーワードボリュームが大きいキーワードは、レッドオーシャン化している。
ビッグキーワードで上位にランクインするためには、メディアが正当な評価を積み上げており、なおかつ高品質なコンテンツであることが必須だ。
長期間にわたって運営されているサイトや権威性の高いサイトが上位を占めているため、単一コンテンツの力だけでは上位化しづらい。
「検索結果の海に埋もれるリスクが大きい」のだ。
つまり、ビッグキーワードでの上位表示には多大な努力とリソースが必要であるが、メディアが育ちきっていない状況で過剰にリソースを投入すると、投資が無駄になるリスクがある。
よって、あえてボリュームが大きすぎず、ニーズが濃いキーワードを優先して対策することで、無駄な投資のリスクを回避できるだろう。
2.キーワードのボリュームと種類
BtoBでは、ボリュームごとの特性を踏まえたうえで、投資対象を選定すべきである。
ここでは、ボリュームによるキーワードの呼称と数値、特性をそれぞれ解説する。
2.1.ボリュームの大きさによるキーワード分類
まずキーワードのボリュームによる分類を見ていこう。
ビッグキーワード
ビッグキーワードは、月間の検索ボリュームが1万以上のものを指す。
一語のキーワードが大半を占め、競争が非常に激しい。
例えば、「CRM」(月間検索ボリューム:約40,500)や「クラウドコンピューティング」(月間検索ボリューム:約33,100)などがビッグキーワードだ。
ミドルキーワード
ミドルキーワードは、月間検索ボリュームが1,000~1万程度のキーワードだ。
「クラウドストレージ 比較」(月間検索ボリューム:約2,900)や「マーケティングオートメーションツール」(月間検索ボリューム:約2,400)などが該当する。
ビッグキーワードよりも具体的な検索ニーズを持つユーザーによって使われ、競争も落ち着いている。
ただし、BtoCと比較してBtoBではミドルキーワードでの上位表示も、集客に大きく影響する傾向にある。
全体的に検索キーワードのボリュームが小さく、専門分野やターゲット市場において濃いニーズを持つキーワードが多いためだ。
また、検索ボリューム1,000~2,000程度と5,000以上の間には、大きな難易度の差があるため、一括りに考えるのではなく、1つ1つの検索意図やトピッククラスターを考慮して対策しよう。
スモールキーワード
スモールキーワードは、検索ボリュームが1000未満のキーワードを指す。
例としては、「BtoBマーケティング戦略」(月間検索ボリューム:約590)や「SaaSプロジェクト管理ツール」(月間検索ボリューム:約390)などが挙げられる。
ニッチなテーマや具体的かつ専門的なニーズを反映していることが多い。
上位表示は比較的容易であるが、一部のキーワードは難易度が高く、コンテンツの質や高い専門性が求められる。
2.2.キーワードの性質による分類
キーワードの性質による分類では、以下2つがある。
ロングテールキーワード
ロングテールキーワードは、検索ボリュームが小さめで、長期間にわたってニーズが発生しているキーワードだ。
個々の検索ボリュームは小さいが、長く濃いニーズの発生を示唆している。
複数のロングテールキーワードを組み合わせることで、全体として大きな流入を生むことも可能だ。
「中小企業向けCRMソフト」(月間検索ボリューム:約170)や「クラウドERP導入事例」(月間検索ボリューム:約140)のように具体的な問題解決を求めるユーザー向けであることが多い。
トレンドキーワード
トレンドキーワードは、特定の期間において急速に検索ボリュームが増加するキーワードである。
大半がビッグキーワードかミドルキーワード(5,000以上)であり、季節的なイベントやニュース、社会現象などに発生することが多い。
トレンドキーワードを迅速にキャッチし、関連コンテンツを提供することで、一時的な露出の増加が狙える。
3.BtoB向け 「狙うべきキーワード」とボリュームとは?
BtoBではボリュームだけを基準にしてキーワードを狙うべきではない。
キーワードの性質とボリュームの組み合わせを理解し、役割を決めたうえで選定していこう。
キーワードの種類 | キーワードの性質 |
---|---|
法改正、ビジネストレンド、
フレームワーク系 |
・ボリューム大
・競争激しい ・オウンドメディア運営中期以降に本腰 |
事業、製品、サービス系 | ・ボリューム中
・興味関心を刺激 ・オウンドメディア運営初期から狙う |
問題解決、課題把握系 | ・ボリューム小~中
・コンバージョンを狙う ・ロングテールキーワードでPVを積み上げる ・運営初期から優先的に狙う |
3.1. 法改正、ビジネストレンド、フレームワーク系(ボリューム大)
法改正やビジネストレンド、フレームワークに関連するキーワードは、BtoB IT分野において最もボリュームが大きく、集客力もある。
「デジタルトランスフォーメーション」(月間検索ボリューム:約22,200)や「ファネル(月間検索ボリューム:約6,600)」などがその好例だ。
多くの企業が関心を持っているため、非常に競争が激しい。
オウンドメディアが成長し、権威性が高まった段階で本腰を入れるべきである。
もし上位表示を狙うのであれば、まずはロングテールキーワードやトピッククラスターでメディアの評価を高める戦略が求められる。
3.2. 事業、製品、サービスとの関連性が強いキーワード(ボリューム小~大)
事業や製品、サービスと直接関連するキーワードは、オウンドメディア運営初期から中期にかけての主要な目標になる。
ボリュームとしては「300~2,000」程度が多いが、ビッグキーワードよりもコンバージョン率が高い。
「ERPシステム」(月間検索ボリューム:約3,000)や「CRM クラウド」(月間検索ボリューム:約200)などが該当する。
特定のソリューションやサービスを探しているユーザーに対して訴求力があり、リード獲得につながりやすい。
また、ビッグキーワードほど競争が激しくないため、コンテンツの質を高めることで攻略可能だ。
3.3. 問題解決、課題把握に繋がるキーワード(ボリューム小~中)
問題解決や課題把握に繋がるキーワードは、運営初期から積極的に狙うべきだ。
ボリュームは「100~2,000」程度だが、コンテンツの質が高ければ上位表示を狙える。
また、検索ニーズが明確で濃いため、コンバージョンを促す効果が高い。
例としては「SaaS セキュリティ対策」(月間検索ボリューム:約100)や「ナーチャリング 施策」(月間検索ボリューム:約200)などが挙げられる。
このタイプのキーワードは、営業担当やサポート担当も含めたブレインストーミングによって発見できることもある。
3.4.ターゲットとすべきボリュームは?
これまで「キーワードはボリュームのみで決定すべきではない」とお伝えしてきた。
しかし、ボリュームはキーワード選定の「目安」になることは事実だ。
正確には、オウンドメディアの成長度によって狙うべきボリュームを変えていくのがおすすめである。
オウンドメディアの運営初期から2年目前後までは、スモール~ミドルキーワードを狙いつつロングテールキーワードに対してコンテンツを積み重ねる。
特に、ボリュームが100〜1,000のキーワードは上位化しやすい傾向にある。
また、自社事業との関連性が高いキーワードで、上位コンテンツが見落としているニーズの穴を埋めることを意識しよう。
3.5.キーワードを「群」でとらえる
キーワードは、関連キーワードも含めてボリュームを調査しよう。
BtoBでは「トピッククラスター」を考慮した関連テーマとの結びつけが上位表示のカギを握るからだ。
トピッククラスターは複数のコンテンツをリンクでつなぎ、オウンドメディアの評価向上を目指す手法だ。
単体では上位化しづらいキーワードであっても、複数のクラスターページの力を集結させ、群としてコンテンツの力を高めていけば、攻略できる可能性があがる。
トピッククラスターの構築方法については、下記の記事で詳しく解説しているため、参考にしてほしい。
4.キーワードボリューム調査ツール紹介
最後に、キーワードボリュームの調査に活用できるツールを紹介しておく。
ツールは一つに絞ってもよいが、必要に応じて複数を使い分けることで、より正確なデータが得られる。
Googleキーワードプランナー
特定のキーワードの月間検索ボリューム、競合度、および関連キーワードを「レンジ(幅)」で確認できる。(例:1~10万)
(広告キャンペーンの実施により、詳細なデータの取得が可能)
パスカル(有料)
包括的なSEOツールとしてキーワード調査機能を提供している。
Googleサーチコンソールとの連携により、実際に流入したキーワードデータを基にした詳細な分析が可能だ。
Ahrefs(有料)
グローバルに収集したデータをベースとしたSEO対策ツールだ。
キーワードエクスプローラーを使用すると、特定のキーワードの検索ボリュームやその推移を詳細に把握できる。
5.まとめ
ここでは、キーワードボリュームを把握することの重要性や、BtoBにおけるボリュームのとらえ方などを解説してきた。
中堅規模までのBtoB企業であれば、キーワード選定は「ボリューム」よりもキーワードの質やニーズの濃さを考慮すべきだろう。
ただしロングテールキーワードはボリュームのわりに難易度が高い。
また抽出や選定にもノウハウが必要である。
企業として、コンテンツマーケティングやSEO対策に本格的に取り組みたい場合は、外部の支援も視野にいれながら取り組んでみてはいかがだろうか。