オウンドメディアのメリットを最大化させるためには定量的な指標=KPIを設け、定期的にパフォーマンスをチェックすることが重要だ。
しかし、オウンドメディアのKPIに関して「PV」以外の指標を持たないケースが意外に多い。
- PVとUU以外の指標が知りたい
- オウンドメディアを評価したいがどのようなKPIを設定すべきか分からない
- 運営開始当初から同じKPIを使っているが、適切に評価できているか不安だ
といった課題を抱えている人も多いだろう。
しかも、オウンドメディアのKPIを調べると山のような種類が出てくるため、非常に混乱しやすい。
そこでこの記事では、オウンドメディアの一般的なKPIを解説したうえで、目的別やフェーズ別に設定すべきKPIについて解説していく。
1.オウンドメディアの一般的なKPI
まず、オウンドメディアの一般的なKPIを解説する。
オウンドメディアは、「PV」や「検索順位」などが重視されがちだが、実はその他にもさまざまなKPIが活用できる。
PV(ページビュー)数
PV数は、訪問者がオウンドメディア内のページを閲覧した合計回数を指す。
この数値が高いほど、より多くのコンテンツが閲覧されていることを意味する。
ただし、同一ユーザーによる複数のページビューも含まれるため、実際の訪問者数よりも大きくことに注意したい。
記事数
記事数は、オウンドメディア上で公開されているコンテンツの総数を指す。記事数=メディアの評価ではないものの、長期的にみると記事数に比例してPVや売上が増えていく。
UU(ユニークユーザー)数
UU数は、特定の期間内にオウンドメディアを訪問した「異なる個人の総数」をす。オウンドメディアを訪問した「実人数」を把握できるため、認知拡大の程度を知ることが可能だ。
一般にアナリティクスツールが各訪問者の識別情報を使用してカウントする。
SS(セッション)数
SS数は、ユーザーがオウンドメディアに訪れてから離脱するまでを一つのセッションとしてカウントしたものだ。
一人のユーザーが複数回サイトを訪問すると、それぞれ異なるセッションとして記録される。
オーガニック検索での流入数
オーガニック検索での流入数は、検索エンジン経由でオウンドメディアに訪れたユーザーの数を指す。
PVやUUと並んで、SEO(検索エンジン最適化)の効果を測定する重要な指標となる。
CV(コンバージョン)数/CVR
CV数は、オウンドメディア訪問者が「フォーム入力」「問い合わせ」「メール登録」など、特定の目標を達成した回数を指す。
また、CVRは、訪問回数の中でどれだけをコンバージョンが発生したかを割合で示したものだ。
具体的には以下の計算式で算出できる。
CVR=CV数÷SS数×100
どちらも、オウンドメディアが目標に対してどの程度効果を出せているかを知るための指標だ。
平均検索順位
平均検索順位は、オウンドメディアのコンテンツの検索順位を平均化したものだ。
当然、上位に表示されるほど集客力があり、PVやUUも上昇しやすくなる。
特定ページへの到達数
特定ページへの到達数は、入力フォームやホワイトペーパーダウンロードページなど、成果につながるページに到達したユーザーの数を表す。
目標とするページへの訪問者数を知ることで「導線設計に不備はないか」「ページ自体の訴求力」「キャンペーンの効果」などを知ることができる。
読了率
読了率は、訪問者がコンテンツを最初から最後まで読んだ割合を指す。
高い読了率は、コンテンツの質が高く、ユーザーの関心を引きつけていることの証拠だ。
読了率は以下の式で算出できる。
読了率= 完全に読まれたページの数÷ページビュー数×100
回遊率
回遊率は、ユーザーがあるページから別のページへと移動する割合を示している。
高い回遊率は、オウンドメディア内のコンテンツやナビゲーションが適切である証拠だ。
回遊率の計算方法は以下のとおり。
回遊率= 複数のページを訪れたセッション数÷総セッション数×100
再来訪率
再来訪率は、過去にサイトを訪問したことのあるユーザーが再び訪問する割合だ。
この数値が高いと、ユーザーがオウンドメディアのコンテンツに対して、継続的な関心を持っていると推測される。
直帰率
直帰率は、オウンドメディアに訪れた後、他のページを閲覧せずに離脱するユーザーの割合を指す。
直帰率が高い場合は、ニーズを捉えておらず、ユーザーが求める情報を提供できていないと考えられる。
また、デザインやUIに難点がある可能性も高い。直帰率は以下の式で計算できる。
直帰率=1ページのみを訪問してサイトを離れたセッション数÷総セッション数×100
2.オウンドメディアのKPIは「目的」によって異なる
このようにオウンドメディアで考慮すべきKPIは多岐にわたる。
しかし、全てのKPIを常にチェックするわけではない。
オウンドメディアでチェックすべきKPIは目的によって変わるからだ。
オウンドメディア 目的のリンクを設置(作成中の記事)
ここでは、オウンドメディアの目的に応じたKPIの例を紹介する。
2.1.ブランディング
ブランディングが目的の場合には、以下5つのKPIに着目する。
- PV
- UU(ユニークユーザー数)
- SS(セッション数)
- 直帰率
- 平均滞在時間
ブランディングが成功しているかどうかは、認知拡大や興味関心の度合いで判断できる。
認知拡大が成功していれば「PV」や「UU」「SS」が全体的に右肩上がりになっているはずだ。
特に初期段階では、PVとUUの増え方に注目したい。
さらに、直帰率が低く、平均滞在時間が長くなっていれば、興味関心が強まっていると判断できる。
2.2.エンゲージメントの強化
エンゲージメントの強化が目的の場合、ユーザーが「一歩踏み込んだ行動」をとっているかをチェックする。
つまり、以下のようなKPIを見るべきだ。
- 読了率
- 回遊率
- 再来訪
- メルマガ登録数
- 資料請求数
エンゲージメントが強くなるとコンテンツを熱心に読み込み、複数のコンテンツに触れようとする。
さらに、定期的に情報を得ようとメルマガ登録や資料請求にも踏み込む。
エンゲージメントの強化が成功すると、まず読了率や回遊率が高いユーザーが出てくる。
その中の一定数が何度もオウンドメディアを訪れ、やがてメルマガ登録や資料請求に進んでいく。
2.3.集客
集客が目的の場合は、次の3つのKPIをチェックしよう。
- PV
- UU(ユニークユーザー数)
- オーガニック検索流入数
初期段階で最も重要なKPIは「オーガニック検索での流入数」だ。
オーガニック検索での流入数が伸びなければ、PVもUUも成長しない。
検索流入はコンテンツSEOに取り組むことで、ゆっくりではあるが確実に伸びていく。
ただし、SEOだけに軸足を置いた対策にならないように気を付けたい。
内容が伴わないコンテンツによって直帰率が高くなり、PVやUUの伸びが止まってしまうからだ。
後述するリード獲得やナーチャリングにつなげるための「呼び水」というイメージを持ち、コンテンツの質を高めながら記事数を増やしていこう。
2.4.リード獲得
目的がリード獲得である場合は、CVRとフォーム通過率を重点的にチェックしよう。
- CVR
- フォーム通過率
BtoBのオウンドメディアの場合、コンバージョンは「問い合わせ」「資料ダウンロード」「ホワイトペーパーダウンロード」といった行為が該当する。
また、こうした行為は特定のページやフォームで行われるため、「フォーム通過率」も併せてチェックしたい。
ダウンロードページや入力フォームへの到達率が良くても、実際にユーザーが情報を入力するとは限らない。
フォームの入力項目が多すぎる、UIが煩雑、といった理由でユーザーは入力をやめてしまうからだ。
この場合は、EFO(Entry Form Optimization=エントリーフォーム最適化)を施すことで改善が見込める。
EFOについてはこちらの記事でも解説している。
2.5.ナーチャリング
ナーチャリングが目的の場合は、以下のKPIをチェックする。
- 読了率
- 回遊率
- 再来訪
- メール開封率
ナーチャリングを成功させるには、獲得したリードに知識・ノウハウを提供し「意識変容」を起こしてもらう必要がある。
ナーチャリングが進むと、ユーザーはさまざまなコンテンツに「長く」「熱意をもって」「頻繁に」触れるようになる。
つまり読了率や回遊率が上がるのだ。
また、コンテンツに触れる頻度も増えることから、再来訪も上昇する。
したがって、初期段階ではコンテンツの読了率や回遊率、再来訪をチェックしよう。
その中の一定数が、メルマガを読み始め、自ら進んでコンテンツ内を回遊するようになる。
BtoBの場合は、オウンドメディアとMA(マーケティングオートメーション)ツールを併用し、「MAからメール配信→オウンドメディアへ誘導」というパターンが多い。
そのため、メール開封率も重要な指標だ。
売上への貢献
オウンドメディアの目的の中で、近年特に重視されるのが「売上への貢献」である。
売り上げへの貢献でチェックすべきKPIはさまざまだが、代表的なものは以下4つだ。
オウンドメディア経由の問い合わせ数、有効商談数、新規契約数、売上
BtoBのオウンドメディアは何かを売るわけではない。
したがって、「売上への貢献」という観点からのベンチマークは意外に難しい。
この場合は、ROI(投資対効果)という視点で計測するとわかりやすくなる。
ROIの算出については、以下の記事を参考にして欲しい。
3.「目的×フェーズ」別!オウンドメディアのKPI設定例
最後に、オウンドメディアの目的とフェーズ別に、チェックすべきKPIを紹介する。
目的やフェーズによってKPI変えていくと、オウンドメディアの成長度や将来性、課題が見えやすくなるからだ。
前述したように目的によってチェックすべきKPIは異なるが、ここに「フェーズ」を加味することで、より具体的なKPI設計が可能になる。
なお、開始から1年未満を初期、2~3年を中期、3年以上を後期としている。
3.1.ブランディング
初期フェーズKPI
- PV(ページビュー)数
- 記事数
- UU(ユニークユーザー)数
- SS(セッション)数
- オーガニック検索での流入数
中期フェーズKPI
- 自社製品に関する検索ボリューム
- 直帰率
- 関連キーワードでの平均検索順位
後期フェーズKPI
- 平均滞在時間
- セッションあたりのページビュー数
- 再来訪率
ブランディングでは、まず初期段階で「露出」がうまくいっているかをチェックする。
同時に、記事数に応じてPVやUU、SS、検索流入が増えているかも見ていこう。
中期フェーズでは、認知拡大の進み具合を見るために、自社製品の名称や関連キーワードで検索し、評判や口コミを見ていく。
さらに検索ボリュームもチェックしよう。
認知拡大が進んだ後期は、「ファン層」がどれくらい存在するかを知るために、平均滞在時間やPV数、再来訪率もチェックしていきたい。
3.2.エンゲージメントの強化
初期フェーズKPI
- UU(ユニークユーザー)数
- SS(セッション)数
- オーガニック検索での流入数
- 読了率
中期フェーズKPI
- SS(セッション)数
- 平均滞在時間
- 読了率
- 回遊率
後期フェーズKPI
- 読了率
- 回遊率
- 再来訪
- メルマガ登録、資料請求の数など
ブランディングと同じように初期は「露出できているか」をチェックする。
中期ではSS数や平均滞在時間、読了率、回遊率に着目し、ユーザーがメディアにどの程度定着したかを計測する。
後期フェーズは、メルマガ登録や資料請求など「オウンドメディア以外の情報ソース」に触れているかも見ていこう。
3.3.集客
初期フェーズKPI
- 記事数
- UU(ユニークユーザー)数
- SS(セッション)数
- オーガニック検索での流入数
- PV数
中期および後期フェーズKPI
- 初期+リファラー別トラフィック
集客のKPIは比較的わかりやすい。
初期は検索流入と露出の状況を、中期は検索流入以外の経路も加味する。
3.4.リード獲得
初期フェーズKPI
- 記事数
- UU(ユニークユーザー)数
- SS(セッション)数
- PV数
- リード獲得数
- 特定ページ(入力フォームなど)への到達数
- 入力フォーム通過率(実際の送信数÷到達数)
中期フェーズKPI
- リード獲得率(訪問者からリードへの転換率)
- リードの質(セグメンテーション、リードスコア)
後期フェーズKPI
- リードから顧客への転換率(MAなどと連動)
- CPA(Cost Per Acquisition; 獲得コスト)
オウンドメディアの目的の中で、最もKPIが多いのがリード獲得だ。
初期は露出とフォーム通過率、中期はリードへの転換率と質、後期は転換率とコストをチェックする。
後期になると売上が発生しているはずなので、CPAは必ずチェックしたい。
広告を併用している場合は、初期フェーズからCPAをチェックしても良いだろう。
3.5.ナーチャリング
初期フェーズKPI
- UU(ユニークユーザー)数
- SS(セッション)数
- メール開封率
中期フェーズKPI
- メール開封率
- URLクリック数(率)
後期フェーズKPI
- CV(コンバージョン)数
ここでのナーチャリングは「オウンドメディア→MAメール配信」というパターンを想定している。
MAからメール配信は、獲得済みのリードに対して行うため、PVはそれほど重視する必要がない。
初期フェーズでは、メール開封率と誘導先のオウンドメディアにおけるUUやSSを重視する。
中期では引き続きメール開封率をチェックしながら、URLクリックの状況も見ていこう。
ナーチャリングが進むとレコメンドが効きやすくなり、URLのクリック率があがるからだ。
後期フェーズでは、CV数やCVRが上昇しているかを重点的に監視したい。
3.6.売上への貢献
初期フェーズKPI
- 記事数
- PV数
- 問い合わせ数
- 有効商談数
- 新規契約数
- 売上
中期フェーズKPI
- 問い合わせ数
- 有効商談数
- 新規契約数
- 売上
後期フェーズKPI
- 問い合わせ数
- 有効商談数
- 新規契約数
- 売上
- 顧客生涯価値(LTV; Lifetime Value)
売上への貢献が目的の場合は少し特殊で、全フェーズで「問い合わせ数」「有効商談数」「新規契約数」「売上」をチェックする。
これに加えて、初期段階では記事数に比例してPVが増えているかをチェックし、後期フェーズではLTV(顧客生涯価値)をベンチマークする。
また、全フェーズでROIを意識しながら、最終的には「取引開始から終了までの利益が多い顧客」のパターンを掴むわけだ。
4.まとめ
ここでは、オウンドメディアにおいて注視すべきKPIを目的やフェーズごとに紹介した。
オウンドメディアのKPIにはさまざまなものがあるが、目的とフェーズに合致していなければ意味をなさない。
まずはPVやUU(ユニークユーザー数)、SS(セッション数)といった普遍的なKPIを設定し、徐々に目的×フェーズに応じて適切なKPIを設定する方法がおすすめだ。