記事の冒頭にある「リード文」は、読者が記事を読み進めるかどうかを決める重要な要素だ。
近年では、SEOにおいてコンテンツ品質の高さが重要視されているが、どれだけ質の高いコンテンツを用意しても、リード文が魅力的でなければ最後まで読まれない。
一方で、リード文の重要性は理解しているものの、最適な書き方がわからず、ノウハウやテンプレートがあればと悩む方も多いだろう。
そこで本記事では、リード文の役割や具体的な書き方を詳しく解説する。
ターゲットに刺さるリード文の作り方を身につけて、より良質なコンテンツを制作していこう。
1.リード文を書くときのポイント
リード文とは、記事コンテンツのタイトル直下に位置する、記事の導入文だ。
本文全体の要約や方向性を読者に端的に伝える短い文章(200文字〜300文字程度)を指す。
リード文には、以下のような役割を持たせることを意識しておくとよいだろう。
- 読者の興味関心を惹きつける
- 検索意図(知りたいこと)と一致していることを示す
- 記事の要点(何が書いてある記事なのか)を伝える
- 記事を読むことで得られる価値(どうなれるか)を伝える
ポイント1.読者の興味関心を惹きつける
世の中にコンテンツが溢れているなかで自社の記事を読み進めてもらうには「きっかけ」が必要だ。
つまり、なんらかの興味関心を持ってもらう必要がある。
そのためには、読者の心理や検索意図を分析して「何が刺さるのか」「何に惹きつけられるのか」を推察し、引き出すことが重要となる。
また「この記事を読まなければ損しそうだ」という損失の部分への恐怖感を与えることも一つのテクニックだ。
ポイント2.検索意図(知りたいこと)と一致していることを示す
ユーザーは、なんらかの意図(知りたいこと、ニーズ)を持って検索しており、求める情報に素早くアクセスしたいはずだ。
よって、ユーザーが最初に目にするリード文では、記事内に「ユーザーが求めている有益な情報を掲載している」ことを伝える必要がある。
たとえば「CRM 導入 メリット」と検索したユーザーに対する記事で「CRMの基本的な機能や導入方法について解説します」というリード文は適切ではない。
「CRMを導入すると〇〇などのメリットがあります。本記事では実際の成功事例をもとに、CRMがもたらす具体的なメリットや活用例を解説します。」という方がベターだ。
あまり難しいことではないが、できていない企業は非常に多い。
ユーザーが「何を知りたいか」という軸を立て、それに対応する内容にすることを常に意識しよう。
ポイント3.記事の要点(何が書いてある記事なのか)を伝える
ポイント2と重複する部分もあるが、記事内で何について解説するのか、要点を伝えることも重要だ。
要点がはじめに示されていなければ、読者は「読み進めなければ何が書いてあるかわからない」状態になる。
記事では、できる限り読者が「迷わない」ようにすることで、読み進める障壁を取り除けるため、リード文でも工夫が必要だ。
たとえば「CRMとは」というキーワードに対する記事で、CRMのメリットや導入事例も記載する場合は、その旨をリード文でも伝えるとよいだろう。
ポイント4.記事を読むことで得られる価値(どうなれるか)を伝える
読者は「記事を読むことで解決したい課題」や「到達したいゴール、理想の状態」を持っているはずだ。
読者はなんらかのニーズをもって検索していると述べたが、そのニーズがなぜ存在するのかを掘り下げると、読者が望む「なりたい像」が見えてくる。
たとえば「CRM 導入 メリット」で検索しているユーザーには、なぜそのニーズがあるのか、深掘りしてみよう。
すると、以下のような「ニーズ」や「なりたい像」がみえてくる。
- ニーズ
- CRMを導入するか否か悩んでいる
- CRMを導入すると、費用に相当するメリットを得られるのか知りたい
- なりたい像(記事を読んでどうなりたいか)
- CRMを導入するかどうかを判断できる
- 自社にはどのようなCRMを選択肢に入れればよいかがわかる
- CRMの費用対効果が明確になる
リード文には、後者の「なりたい像」についても言及すると効果的だ。
読者が記事を読んでどうなれるかを想像でき、本文を読み進めるモチベーションにつながる。
2.リード文の構成要素・書き方
本章では、リード文の「構成要素」を解説しながら、BtoBコンテンツを読んでもらうための書き方を紹介する。
BtoBの読者は課題解決型のコンテンツを求めるため「この記事は自分・自社の役に立つ」と思ってもらうことを常に意識しよう。
2.1.企業が抱える課題や悩みの言語化と共感
まず、ターゲットとなる企業の担当者が抱える「課題や疑問、悩みは何か?」を特定し、解像度を高めよう。
課題や疑問について明確にしておくことで「この記事は自身の課題解決のために、今必要な記事だ」という気づきを生み、本文へと読み進める動機づけとなる。
言語化と共感のポイントとして、以下の3点をみてほしい。
ポイント1.ターゲットを絞り込む
BtoBの場合、読者が「自分ごと化」するためには、業種・業界、企業規模、役職、関心事など、ターゲットをできるだけ絞り込むことがポイントだ。
絞り込んだターゲットが直面する課題や問題をシンプルな言葉で提示し、読者の気持ちや状況に寄り添う姿勢を示す。
<ターゲットを絞り込み、共感を誘う書き方(例)>
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ポイント2.具体的な事例で課題を表現する
課題や悩みは、具体的な事例を用いて言語化するのが効果的だ。
漠然とした表現では自分ごと化しづらく、共感されにくい。
たとえば「経理部の業務効率化が必要ではありませんか?」よりも「経理部の月末月初の深夜残業に悩まされていませんか?」と具体的に表現するほうがイメージが沸くだろう。
読者は、自分と同じような境遇の人に「共感」を覚えやすい。
ポイント3.納得感を高める背景を示す
「なぜこの課題が発生しているのか?」という背景を、市場特性や統計データなどをもとに示せば、納得感が増し共感を得やすくなる。
データに裏付けられた根拠を提示されれば、読者の興味をより引き出しやすくなる。
具体例は以下を参考にしてほしい。
<課題の背景を表現する書き方(例)>
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2.2.記事内容の要約と解決策の示唆
つづいて、記事の要点を簡潔に伝えながら、記事を読むことで読者が得られる具体的なメリットや価値を提示する。
BtoB向けの読者が1記事を熟読・読了することは、ほぼ期待できないと考えておこう。
リード文を読む時点では「求める内容を素早く、わかりやすく知りたい」と考えていることがほとんどだ。
よって、「この記事では、〇〇の解決策を提供します」のように、本文で解説する内容を端的に伝えられれば、先を読む判断をしやすく、読者にストレスを与えない。
<記事の要約と解決策を提示する書き方(例)>
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2.3.課題解決につながる根拠の提示(信頼性の提示)
BtoB向けの読者は、専門的な知識や高度な情報を求めていることが多い。
ゆえに、高い専門性を有し、信頼できる情報源から情報を得たいと考えている。
書き手の信頼性を高めるためには、リード文で自社の実績や資格などをアピールしたり、業界の最新動向に触れたりするのが効果的だ。
たとえば、以下のような表現で実績をアピールすれば、読者からの信頼獲得に直結するだろう。
<信頼感を高める書き方例>
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2.4.課題解決を実現した将来像をイメージさせる(ベネフィット)
リード文の終盤では、読者がこの記事を読んで得られる具体的な成果やポジティブな変化を明示する。
読了後に待っている課題解決の将来像をイメージできれば、最後まで記事を読む意欲が高まるからだ。
ここでのポイントは、読者が将来像をイメージしやすいように、より具体化されたベネフィットを提示することだ。
以下の例では「人材採用強化の戦略が明確に定まるでしょう」が具体的なベネフィットに該当する。
ベネフィットを明確に示せば、読者は自身の成長や業務への応用をイメージしやすくなり、記事を最後まで読む動機が生まれるだろう。
<ベネフィットをイメージさせる書き方例>
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2.5.読者に続きを読ませ行動を起こすための誘導(行動喚起)
リード文の締めくくりには、読者が具体的な行動を起こしやすくなるようなメッセージを加えよう。
BtoB向けコンテンツの目的は、信頼性向上やブランディングだけではない。
最高の到達地点は、自社の売上拡大につながる見込み顧客の獲得だ。
そのためには、情報提供だけではなく、読者が次の行動を起こすための仕掛けが欠かせない。
以下の例のような、読者の背中を押し、具体的な行動を起こさせるメッセージを含めることが効果的といえる。
<行動喚起の書き方例>
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3.リード文とSEOの最適化
ここでは、リード文とSEOとの関連性にも触れておこう。
SEO対策においては、検索キーワード(対策キーワード)から流入してきたユーザーの視点を重視し、「検索意図」をつつく文章が必要だ。
3.1.検索キーワードを自然なかたちで取り入れ検索意図を満たす
リード文に記事の「メインキーワード」や「関連キーワード」を自然な流れで盛り込もう。
その理由は、リード文が読者の興味を惹くだけではなく、検索エンジンのクローラーにWebページの内容を適切に伝える役割も担っているからだ。
検索キーワードとリード文の関連性を高めれば、検索エンジンに記事のテーマを的確に伝え、狙ったキーワードで検索上位を獲得できる可能性が高まる。
ただし、キーワードの過剰な詰め込みには注意しよう。
不自然な文脈は読者に不信感を与え、離脱につながりやすく、検索エンジンに対してマイナスの影響を与えるおそれもある。
あくまで「使える部分」では、積極的にキーワードを盛り込むことを意識しよう。
3.2.直帰率の低下や滞在時間の延長を意識
リード文で読者を惹きつけられれば、直帰率の低下につながる。
これは、読了率の向上やサイト滞在時間の延長という好循環をもたらす。
直帰率が低いことや滞在時間が長いことが、SEO対策に直接関連するとは明言されていない。
ただし、良質なコンテンツは読者にとって有益なため、そうでないコンテンツよりも「繰り返し読みたい」「最後まで読みたい」と思わせることができる。
結果的に、読者の滞在時間が長くなるはずだ。
よって弊社は、滞在時間の長いページは間接的にSEO評価も高まると考えている。
つまり、リード文でコンテンツの価値や記事の要点をしっかりと伝えて離脱を防ぎ、通読を促すことが、回り回ってSEO評価の向上につながるのだ。
参考:有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成|Google 検索セントラル
4.リード文を書くときの注意点
ここでは、BtoB向けのリード文で、効果的な情報伝達を可能とするための注意点を解説する。
実際にリード文を執筆する際は参考にしてほしい。
注意点1.ターゲットとなる読者像を具体化する
BtoBの読者は、自身の業務課題に直結する情報を求めている。
そのため、リード文を作成する際には、経営層、マーケティング責任者、営業部門リーダーなど、明確なターゲットを特定しよう。
ターゲットを広げすぎると、誰に向けた記事なのかがぼやけてしまい、誰の心にも「刺さらない」リード文となりかねない。
注意点2.潜在ニーズをつつく
潜在ニーズをつつくリード文は、読者の共感や危機意識が深まり、記事への興味をより高められる。
たとえば「経費精算 クラウド」というキーワードの顕在ニーズは「クラウドで提供されている経費精算システムを知りたい」となる。
さらに、潜在ニーズまで深掘りすれば「紙の領収書をなくして申請を電子化したい」「経理の手間を少なくして残業を減らしたい」といった背景まで推察できる。
読者がまだ気づいていない潜在的なニーズを掘り起こせば「確かにそういう問題も考えられる」「そうなったら危険だ、回避したい」「その未来は最高だ」という新たな気づきを与えられ、より深く読み進めてもらいやすくなる。
潜在ニーズの分析方法は、以下の記事でも解説しているため、参考にしてほしい。
注意点3.本文を執筆した後にリード文を書く
リード文の内容に深みをもたせるには、本文を執筆したあとにリード文を作成するのがおすすめだ。
本文を先に書けば、読者ニーズやテーマに関する理解がより深まった状態となり、記事全体の論点や伝えるべき重要なメッセージが明確になる。
また、本文を要約しやすくなる、記事のポイントを整理できるなどの効果も得られ、適切な言葉選びが可能となるだろう。
その結果、記事全体と一貫性のある魅力的なリード文を作成できる。
注意点4.ビジネス課題にフォーカスする
BtoBの読者は、売上アップや業務効率化、ROI最大化など、具体的なビジネス課題の解決策を求めている。
たとえば「会社の月次決算を3日間に短縮する方法」「深夜残業をゼロにした経理部門の成功事例」など、より実践的でイメージしやすいビジネステーマを、リード文で前面に出すことが読者の心に刺さりやすいリード文作成のコツだ。
注意点5.論理的に構成する
BtoBのコンテンツでは、あおり表現を使うのは避けよう。
たとえば「99%の人が知らない売上爆増の裏技!」「たった3日で結果が出る!」といった信ぴょう性の低い表現は、怪しさを増長するため逆効果となる。
ビジネス向けには客観的なトーンで、論理的な解決策を提示することが、信頼性の向上につながる。
注意点6.シンプルで明瞭な文章にする
ユーザーの検索意図によっては、リード文の長さ(文章量)も読者の心理に影響を与える。
検索キーワードに対し、とにかく早く情報を知りたいユーザーであれば、短くシンプルで結論ファーストの文章が好まれる。
冗長な表現や専門用語の多用は避け、誰にでも理解しやすい言葉で簡潔にまとめることを徹底しよう。
注意点7.定期的に改善する
リード文の品質に問題がないか、定期的な分析を行うことも忘れてはならない。
以下のような指標を参考にすると、効果を検証できるだろう。
- Googleアナリティクスの直帰率
- Googleアナリティクスの滞在時間
- 記事内のクリック率やコンバージョン率
- ヒートマップツールによる分析
ただし、リード文だけに問題があると断定するのではなく、記事全体を分析しながら全体最適を目指すことが大切だ。
5.まとめ
BtoBにおけるリード文は、単なる前置きではなく、読者の興味を惹き、記事の価値を伝える重要な役割を担う。
効果的なリード文にするには、記事全体の要点をシンプルにまとめ、読者の悩みや疑問、課題を解決できることを示唆し、読者の期待を膨らませなければならない。
リード文が本来の役割を果たせば、間接的にSEO評価にもプラスの影響を与え、見込み顧客獲得の原動力となるはずだ。
リード文の重要性を正しく理解せずに「何となく」書いていないか、今一度見直してみよう。