SEO対策でのキーワード選定では「サジェストキーワード」の精査が欠かせない。
サジェストキーワードには細かな検索意図やロングテールキーワードのヒントなど、SEO対策における有益な情報が凝縮されているからだ。
一方で、
「サジェストキーワードの有効性がいまひとつ理解できていない」
「サジェストキーワードは検索ボリュームが小さく、対策を後回しにしてしまう」
「抽出方法はわかるが、活用の方法がわからない」
という声も多い。
そこで本記事では、サジェストキーワードの概要、SEO対策で取り入れるメリット、具体的な活用方法などを紹介する。
1.サジェストキーワードとは?
まず、サジェストキーワードの定義と仕組みについて解説する。
1.1.サジェストキーワードの定義
サジェストキーワードとは「検索エンジンから提案されるキーワード」のことだ。
語源である「suggest(サジェスト)」は、日本語で「提案する」「示唆する」と翻訳される。
これが転じて、検索キーワードから自動的に提案されるキーワードをサジェストキーワードと呼ぶようになった。
具体的には、以下のように、Googleの検索窓にキーワードを入力した時に下部に表示されるキーワードのことだ。
サジェストキーワードを活用するメリットは、以下のように多岐にわたる。
- ユーザーの検索行動をリアルタイムで把握できる
- 最新のトレンドや検索需要を把握しやすい
- 検索意図の網羅性向上
- キーワードマップやトピッククラスター構築の効率が上がる
メリットについては、後段の「2.BtoBでサジェストキーワードを活用するメリット」にて詳しく解説する。
1.2.サジェストキーワードと関連キーワードの違い
サジェストキーワードに似た言葉に「関連キーワード」がある。
ただし、両者には明確な違いがある。
関連キーワード | サジェストキーワード | |
表示箇所 | 検索結果ページの下部 | 検索窓のプルダウン |
内容 | 検索キーワードに関連性の高いキーワード | 検索キーワードから自動判別された入力候補 |
特徴 |
|
|
サジェストキーワードは、検索エンジンに特定のキーワードを入力した際に、自動的に表示されるキーワードだ。
例えば、「CRM」と入力すると、「CRM ツール」「CRM とは 簡単に」などの候補が表示される。
一方、関連キーワードとは、特定のキーワードに関連する他のキーワードのことだ。
検索エンジンが「関連性の高い他のキーワード」を提案するもので、入力したキーワードが含まれないこともある。
例えば、「CRM」というキーワードに対しては、「SFA」「CRMマーケティング」などが関連キーワードとして挙げられる。
また、サジェストキーワードとは異なり、検索結果の上下に表示される。
関連キーワードの利点は、ユーザーが関心を持つ「他のトピック」を提供することだ。
SEO評価向上に向けて対策すれば、サジェストキーワードと同じく検索意図の網羅性を上げる効果がある。
1.3.サジェストキーワードと共起語の違い
同じくSEO対策で活用する共起語とも、サジェストキーワードは明確な違いがある。
共起語 | サジェストキーワード | |
表示箇所 | SEO対策ツールで取得 | 検索窓のプルダウン |
内容 | 検索キーワードとともに使われることが多いキーワード | 検索キーワードから自動判別された入力候補 |
特徴 |
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共起語とは、特定のキーワードと一緒に使われやすい単語やフレーズのことである。
「連想語」と言い換えても良いだろう。
例えば、「CRM」に対する共起語には「顧客」「機能」「データ」などが含まれる。
共起語のメリットは、コンテンツの文脈を自然に強化し、検索エンジンに対して関連性の高い情報を提供する点にある。
また、一般的に共起語は「SEO対策ツール」を用いて取得する。
1.4.サジェストキーワードはどこから生成される?
サジェストキーワードは、検索エンジンのサジェスト機能によって生成される。
では、サジェスト機能は何をもとにキーワードを生成するのだろうか。
サジェスト機能のベースになっているのは、下記のようなデータだ。
検索履歴
検索エンジンはユーザーの過去の検索履歴を保持しており、このデータを分析したうえでサジェストを提示する。
これにより、各ユーザーに対してよりパーソナライズされた検索候補を提供できる。
全体の検索データ
個々の検索履歴だけでなく、大量のユーザーデータを集積し、頻繁に検索されるキーワードやフレーズを基にサジェストキーワードを生成する。
本人が入力していないデータであっても、ユーザーが関心を持つと判断されれば表示されるようだ。
トレンド
サジェストキーワードは、最新のトレンドや急上昇している検索ワードもリアルタイムで反映する。
時事的な話題や季節ごとの人気キーワードがサジェストとして表示される。
ちなみにSEO対策では、トレンドのキーワードを考慮することも有効である。
以下の記事で詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてほしい。
地理的情報
ユーザーの位置情報に基づいて、地域に特化したサジェストキーワードを提供する。
地域ごとの人気検索ワードやローカルな関心事が反映され、よりユーザーの生活や仕事に根差した提案が可能となる。
言語設定
英語や日本語といったユーザーの言語設定に応じて、適切な言語でのサジェストキーワードを表示する。
1.5.サジェストキーワードの用途
サジェストキーワードは、主にSEO評価の向上を目的として、以下の用途で活用される。
- 検索意図の流れやバリエーションの理解
- キーワード選定の網羅性向上
- キーワードマップの作成
- トピッククラスターの作成
用途①:検索意図の流れやバリエーションを知る
サジェストキーワードからは、ユーザーの検索意図やバリエーションを知ることができる。
例えば、「クラウドコンピューティング」と入力すると、「クラウドコンピューティング わかりやすく」「クラウドコンピューティング 例」などのサジェストキーワードが表示される。
これは、ユーザーが求めている情報(特定のキーワードに関して何を知りたいのか)を理解する手助けとなる。
用途②:キーワード選定の網羅性をあげる
サジェストキーワードを活用することで、仮説だけではカバーできない検索意図も把握し、キーワード選定の網羅性を高められる。
例えば、「SaaS ソリューション」と検索すると「SaaSとは」「SaaS サブスクリプション 違い」などのサジェストキーワードが表示される。
SaaSを活用したサービスのみならず、SaaS自体の意味やサブスクリプションとの違いも検索意図に含められることがわかる。
用途③:キーワードマップの作成
サジェストキーワードを元にキーワードマップを作成することで、サイトのコンテンツ戦略を体系的に整理できる。
例えば、「ネットワークセキュリティ」を中心に、「ネットワークセキュリティ 対策」「ネットワークセキュリティ ツール」「ネットワークセキュリティ 課題」などのサジェストキーワードをマッピングしてみよう。
関連コンテンツを一目で把握できる構造になるので、検索意図を網羅したコンテンツ戦略につながる。
用途④:トピッククラスターの作成
サジェストキーワードは、トピッククラスターの作成にも役立つ。
中心となるテーマ(ピラーページ)に対して、関連するサブトピック(クラスターページ)をサジェストキーワードから抽出することで、効率よくトピッククラスターを形成できる。
例えば、「デジタルトランスフォーメーション」をピラーページとし、
「デジタルトランスフォーメーション 戦略」
「デジタルトランスフォーメーション 事例」
「デジタルトランスフォーメーション ツール」
などのサジェストキーワードをクラスターページとして構成する、といった具合だ。
トピッククラスターについては、以下の記事でも詳しく解説しているため、参考にしてほしい。
2.BtoBでサジェストキーワードを活用する5つのメリット
次にサジェストキーワードをBtoB(特にSaaSやIT分野)で扱うことのメリットを解説する。
サジェストキーワードをBtoBに活用することのメリットは以下のとおりだ。
- BtoB分野における検索意図の網羅
- トピッククラスターの構成
- ロングテールキーワードの発見
- 記事リライトの効果向上
- サジェスト汚染の早期察知
順に詳しくみていこう。
メリット①:検索意図の網羅性向上
サジェストキーワードを活用することで、SEOの基本となる「網羅性の向上」につながる。
特に検索意図が複雑になりがちなBtoBの分野では、サジェストキーワードの把握は欠かせない。
例えば、「クラウドセキュリティ」を検索すると、「クラウドセキュリティ ガイドライン」「クラウドセキュリティ 比較」などのサジェストが表示される。
クラウドセキュリティの概念を知りたいというニーズと、製品比較のニーズが同時に成立しているわけだ。
サジェストキーワードを活用することで、多様な検索意図からの流入を促進し、リードを増やすことにつながる。
SaaSビジネスのように差別化が難しいビジネスモデルにおいても、成長のきっかけを掴めるだろう。
メリット②:トピッククラスターの効率的な構築
サジェストキーワードは、トピッククラスターの構成要素として活用できる。
トピッククラスターとは、中心となるテーマ(ピラーページ)とそれに関連するサブトピック(クラスターページ)を内部リンクで結びつけた構造だ。
例えば、「ERP」をピラーページに、「ERP SaaS」「ERP ソリューション」などのサジェストをクラスターページとすることで、クラスターページのキーワードを効率よく見つけられる。
トピッククラスターの活用により、コンテンツが「群」として評価され、メディア全体の力が高まるだろう。
メリット③:ロングテールキーワードの発見を促進
サジェストキーワードは、ロングテールキーワードの発見を促進する。
サジェストキーワードとロングテールキーワードは必ずしもイコールではないが、サジェストキーワードの一部がロングテール化することがよくみられるのだ。
ロングテールキーワードは、検索ボリュームこそ小さいが継続的にニーズが発生するキーワードであり、SEO評価の向上にも大きく貢献する。
一方で、ロングテールキーワードを直接調べるツールはないことから、サジェストキーワードは需要なヒントになり得るのだ。
メリット④:記事リライトの効果を底上げ
サジェストキーワードを利用すれば、既存記事のリライト効果を底上げすることができる。
サジェストキーワードは、ユーザーの入力結果をベースにしつつ、リアルタイムな検索意図の変化を表現するからだ。
思うように上位化が進まない場合は、サジェストキーワードを再度チェックし、カバーできていないトピックがないかをチェックしよう。
また、検索意図の変動による検索順位の低下を回避するためにも、サジェストは定期的にチェックしよう。
メリット⑤:サジェスト汚染を素早く察知
サジェストキーワードを定期的にチェックすることで、サジェスト汚染を素早く察知できる。
サジェスト汚染とは、不適切なキーワードやネガティブなフレーズがサジェストに表示される現象を指す。
例えば企業名を入力した際に「詐欺」「苦情」などのネガティブなキーワードがサジェストされる場合がある。
これはサジェスト汚染の結果であり、自社の評判やブランドイメージを低下させかねない。
不適切なサジェストは、検索エンジンへの報告や法的措置によって消すことができる。
3.サジェストキーワードの調べ方と選定ステップ
サジェストキーワードを調べる方法は、以下2つだ。
- 検索エンジンで直接キーワードを入力する
- SEO対策ツールで調べる
それぞれみていこう。
3.1.検索エンジンで直接キーワードを入力する
検索エンジンで調べる場合は、検索ボックスにキーワードを入力するだけでサジェストが表示される。
ただしこの場合は、前述のように「自身の検索行動」や「他のユーザーの検索行動」で変動する可能性が高い。
完璧を期すのであれば、抜けや漏れが発生しないように何度もチェックする必要がある。
3.2.ツールで調べる場合
2つ目の方法は、SEO対策ツールのサジェスト取得機能を活用することだ。
この方法では、手動入力よりも広い範囲でサジェストキーワードの調査を行える。
今回は例として「ラッコツキーワード」のサジェスト機能を紹介しよう。
上の図のように、ラッコキーワードでは「メインキーワードのサジェスト」と「サジェストキーワードのサジェスト」が一覧で表示される。
つまり「親キーワード→サジェスト(子キーワード)」「子キーワード→サジェスト(孫キーワード)」という具合に、ブレイクダウンした結果が素早く表示されるのだ。
手動よりも圧倒的に速く、かつ詳細にサジェストキーワードを網羅できる。
さらに「サジェストプラス」と呼ばれる深堀機能(有料)を活用することで、サジェストキーワードの検索ボリュームやトレンド、CPCなども確認できる。
サジェストキーワードをスムーズに他の施策(ロングテールキーワードやトピッククラスター)に結び付けることが可能だ。
3.3.検索意図単位で重複がないかチェック
サジェストキーワードはそのまま使用してもよいが、検索意図単位で重複を削除しておくと、より使いやすくなる。
サジェストキーワードを検索エンジンに打ち込んで表示結果を比較し、結果が重複していないかをチェックしよう。
キーワードが異なっていても検索意図が同じ場合は、同じ検索結果に自社の記事が複数表示されることとなり、トラフィックやCV、SEO評価が分散してしまう。
また、類似コンテンツとしてそれぞれの記事の評価も下がるおそれがある。
コストとリソースの無駄を省くためにも、検索意図の重複チェックは必ず行おう。
4.BtoBでサジェストキーワードを扱う際の3つの注意点
BtoBでサジェストキーワードを扱う場合は、以下の点に注意しよう。
- キーワードカニバリゼーションに注意する
- 自社事業やターゲット、ペルソナへの一致度が高いもののみ扱う
- ツールを活用して効率を上げる
注意点①:キーワードカニバリゼーションに注意する
サジェストキーワードを使用する際には、上述の通りキーワードカニバリゼーションを起こさないように注意したい。
キーワードカニバリゼーションとは、検索意図が似ているコンテンツを作った結果、キーワードに対する評価が分散(食い合い)している状況を指す。
キーワードカニバリゼーションは「キーワードの文字そのもの」に対してではなく、「検索意図(ニーズ)」に対して起こる。
例えば、「CRMの比較コンテンツ」と「CRMの製品一覧コンテンツ」では検索意図が重複している。
この場合「CRM 比較」というキーワードに対して2つのコンテンツが発生しており、カニバリが起こりやすくなる。
もし、サジェストキーワードをコンテンツのテーマに据える場合は、「検索意図の重複がないか」をチェックしよう。
キーワード選定の時点で「1キーワード、1ニーズ」を徹底しておけば、カニバリを防止できる。
注意点②:自社事業やターゲット、ペルソナへの一致度が高いもののみ扱う
サジェストキーワードを選定する際には、自社の事業内容やターゲット、ペルソナへの一致度が高いものを対象としよう。
サジェストキーワードは、元のキーワードの検索ボリュームが大きいほど、多種多様になる。
ただし、幅広く対策すれば良いというわけではない。
むしろ、自社に関係の薄いキーワードに関するコンテンツにもリソースを割いてしまうと、CVにつながらないうえに、関連性が薄いコンテンツとして検索エンジンからの評価が低下するおそれもある。
全てのサジェストキーワードが自社のビジネスに適しているとは限らないため、例えばSaaS企業であれば、「SaaSとは わかりやすく」「SaaSの特徴」などサービス自体の訴求につながるようなキーワードを選ぶことがポイントだ。
注意点③:ツールを活用して効率を上げる
大量のサジェストキーワードが発生する場合は、ツールによる一括取得・選定がおすすめだ。
SEO対策ツールの中には、検索ボリューム以外にも「難易度」や「CPC」「トレンド」を表示するものがある。
これらツールから得られる情報をもとにして、効率よくサジェストの選定を進めたい。
5.サジェストキーワードを選ぶために役立つツール
最後に、サジェストキーワード選定に役立つツールを2つ紹介する。
ツール①:ラッコキーワード
ラッコキーワードは、キーワード選定に強みをもつSEO対策ツールだ。
サジェストキーワードを複数世代にわたって一括取得する機能や、各キーワードの具体的な情報を表示する機能を有している。
一括取得したサジェストキーワードはCSVファイルでのダウンロードが可能だ。
また、サジェストプラス(有料)では、月間検索数・CPC・競合性も取得できる。
手動よりも圧倒的に早く、かつ広範にサジェストキーワードの情報を集めることが可能だ。
ツール②:パスカル
パスカルはSEO対策に必要な機能を統合したツールだ。
記事コンテンツの制作画面からサジェストキーワードを自動取得できるほか、Googleサーチコンソールとの連携で「流入キーワードとのマッチング」も行ってくれる。
出典:Pascal 記事作成の使い方
ある程度の運営実績があるオウンドメディアであれば、単にサジェストを取得するよりも有益な結果が得られるだろう。
「検索ユーザーと流入ユーザーの間で共通している検索意図」が浮かび上がり、「対策すべきコンテンツ」が特定しやすくなるからだ。
パスカルでは、キーワードマップの作成やな記事制作の方向性、対策難易度なども表示でき、SEO対策の強化を促進してくれるだろう。
6.まとめ
ここでは、サジェストキーワードの定義や活用方法、メリット、選定ステップなどを紹介してきた。
サジェストキーワードの把握は、キーワード選定やトピッククラスター構築の一部である。
サジェストのみでキーワード選定を終えるのではなく、関連キーワードや共起語なども考慮したうえで選定すると、SEOで重要な検索意図の網羅性が高まるだろう。
キーワード選定や、トピッククラスターの構築は、ツールを使うだけでなく、SEOのノウハウや経験が必要となってくる。
リソースが不足する場合は外部の支援も視野に入れながら、強いオウンドメディアを効率よく構築する方法を模索していこう。