「リード獲得にホワイトペーパーは有効だろうか?」
「他社はよくホワイトペーパーを使っているが、どのような効果があるのだろうか?」
ホワイトペーパーに関して、このような課題を抱えていないだろうか。
ホワイトペーパーは、IT業界をはじめ、さまざまな業界で活用されているマーケティングツールだ。
本記事では、ホワイトペーパーに関する基礎情報と、ホワイトペーパーマーケティングの具体的な活用方法を例に挙げながら、それぞれのメリット・デメリット、IT企業において実践的に活用できるチャネルやステップについて詳しくお伝えしていきたい。
1.ホワイトペーパーとは
ホワイトペーパーは本来、政府などが出す「白書」を指す言葉で、ある特定の分野において政策や課題、対策の共有のために発行されるものだ。
これがマーケティング施策でも用いられるようになったという。
具体的には、ビジネスにおいて企業が抱える課題に対して、サービスを提供する側の持つノウハウや技術力、ケーススタディ、事例などを資料化し、提供するものがホワイトペーパーである。
ホワイトペーパー自体についてはこちらの記事で詳しく解説しているため、参考にしてほしい。
ホワイトペーパーとは?IT企業の成果を高める活用法・5つの種類・構成例を解説
2.ホワイトペーパーマーケティングとは?
ホワイトペーパーマーケティングとは、コンテンツマーケティングの一種で、IT企業でも広く活用されているマーケティング手法だ。
主に「リードジェネレーション」と「ナーチャリング」のフェーズで活用されている。
リードジェネレーション
リードとは見込み顧客を指す。
ホワイトペーパーマーケティングにおけるリードジェネレーションは、新たな潜在顧客を獲得し、興味関心を惹き、顧客との関係を築くための重要なステップだ。
ホワイトペーパーは、リードの注意を引きつけ、高品質な情報を提供する代わりに顧客情報を収集するツールとして利用されている。
リードジェネレーションの詳しい情報は、こちらの記事をあわせて読んでみてほしい。
リードジェネレーションとは?手法別の優先度や難易度、課題と解決策・効果測定方法を解説
リードナーチャリング
ホワイトペーパーマーケティングにおけるリードナーチャリングとは、ホワイトペーパーの提供によって獲得したリードと長期的な関係を築き、購買・契約成立に至るまでのプロセスを効果的に管理するためのマーケティング施策だ。
リードに対し、質の高いコンテンツを提供することで、自社のサービスや商品への興味関心を高め、適切なタイミングで成約に向けてアプローチをしていく。
具体的には、ナーチャリングのフェーズでは、ケーススタディや導入事例、費用対効果といった、選定フェーズの手助けとなる情報が挙げられる。
また、ホワイトペーパーをダウンロードした人は、見込み度が高い顧客であるとも判断できるだろう。
リードナーチャリングの詳しい情報は、こちらの記事を参考にしてほしい。
リードナーチャリングとは?意味や施策、手順、メールの活用方法をまとめて解説
3. ホワイトペーパーを活用したリードジェネレーション施策とは
ここからは、具体的にどのようにホワイトペーパーをリードジェネレーションに活用していくのかをみていこう。
ホワイトペーパーを活用したマーケティング施策の大きなメリットは、顧客情報の収集が比較的容易な点だ。
提供するチャネルはさまざまだが、ホワイトペーパーをダウンロードするにあたってメールアドレスや電話番号の入力が必須となる仕組みになっている。
良質な情報やノウハウを提供するホワイトペーパーは、資料請求や問い合わせよりもハードルが低く、容易にアクションを促すことが可能だ。
よって、企業は顧客情報をよりスムーズに獲得できる。
そして、ホワイトペーパーの情報により、企業が提供する商品やサービスに対し興味関心を持ってもらうことで、リードを顧客へと育てられる点もホワイトペーパーのメリットといえるだろう。
4. リードジェネレーションの主なチャネル
ホワイトペーパーを活用するチャネルは多岐にわたる。
それぞれのメリット・デメリットを理解し、目的に応じたチャネルを活用することで、ホワイトペーパーマーケティングの利用効果を高めることが可能だ。
ここからは、ホワイトペーパーマーケティングで活用される主なチャネルを6つ紹介していきたい。
4.1 オウンドメディア
リードジェネレーションの代表的なチャネルがオウンドメディアだ。
課題解決のために情報収集している見込み客がインターネットで検索し、オウンドメディアにたどり着いたとしても、企業情報や商品・サービスの情報を訴求するだけのLPであった場合、ユーザーはアクションを起こすことなく離脱する可能性が高い。
そこで、LPにユーザーの興味を引く有益な情報を提供するホワイトペーパーを設置することで、リード獲得につなげられる。
LP内にコンテンツ記事を掲載し、関連性の高いホワイトペーパーを設置したり、閲覧途中にポップアップでホワイトペーパーを表示させたりする方法も効果的だろう。
メリット
・アナリティクスを使用することで、ユーザーがどのようなページを閲覧してからダウンロードしたのかなどのトラフィックやコンバージョンの分析が可能
・導線設計の自由度が高い
デメリット
・オウンドメディアにトラフィックを集める必要性がある(SEO対策)
4.2 SNS
近年のSNSの利用率増加に伴い、IT企業を含めSNS上で企業アカウントを作成し、情報を発信する事例が増えている。
魅力的なコンテンツを発信できれば急速に認知度が高まり、ファン化につながりやすいのがSNSの特徴だ。
一方で、Googleなどの検索エンジンでは、検索順位で上位を獲得できれば、一定期間継続して流入を獲得できるが、SNSの場合は日々新しい投稿にリーチが集まり、過去の投稿は埋もれてしまうため、継続的に発信する必要がある。
メリット
・ユーザーがシェアしやすく、自然な拡散によって露出を増やせる
・ユーザーと直接コミュニケーションを取れるため、フィードバックや情報収集が可能
デメリット
・情報過多で競争が激しいため、目立つのが難しい
・継続して発信する必要があり運用工数がかかる
4.3 インターネット広告
インターネット広告には、GoogleやYahoo!の検索エンジンを利用したリスティング広告、ディスプレイ広告、またSNSのプラットフォーム上に配信するSNS広告などがある。
広告からLPに遷移させ、LPに設置したホワイトペーパーのダウンロードを促す。
ターゲットによって使用媒体を選出し、ターゲットに合わせた広告配信設定をできる点がインターネット広告の大きな特徴だ。
メリット
・広告配信設定によりターゲティングやセグメンテーションが可能
・コンバージョン分析が可能
デメリット
・広告費が必要
4.4 業界関連のウェブサイト
最も代表的なチャネルとしてオウンドメディアを紹介したが、同じインターネット上でも自社サイトではなく、業界関連の情報サイトにホワイトペーパーを掲載する方法もある。
オウンドメディアではアクセスが少ない場合に活用することで、露出の拡大が見込めるだろう。
また、関連するウェブサイトやブログは、特定の業界やトピックに関心を持つ読者からのトラフィックが期待できる点が特徴だ。
一方で、オウンドメディアと比べると自由度が低いことは念頭に置いておく必要がある。
メリット
・露出を高め、認知拡大が見込める
・興味関心が高く確度の高いリード獲得につながる
デメリット
・掲載費用が必要
・同一プラットフォーム内で他社と競合する可能性が高い
4.4 ウェビナーとオンラインセミナー
著名人を講師として招いたセミナーや、業界内のトッププレイヤーの対談など、ユーザーにとって魅力的なイベントを開催し、そのレポートをホワイトペーパーとして提供する方法である。
スケジュールの制約により参加できなかった場合でも「都合がつかなくて参加できなかったが、どのような内容だったのか気になる」と思っている人は少なくない。
レポート形式でホワイトペーパーにすれば、より多くのダウンロードを促すことができる。
メリット
・専門的な知識や洞察を共有し、リードの信頼を築ける
デメリット
・ウェビナーやセミナーの運営には時間とリソースが必要
4.5 業界イベントとカンファレンス
展示会などの業界イベントに出店した際に、ホワイトペーパー配布をする方法だ。
ホワイトペーパーの配布をきっかけに名刺交換することで、リード獲得につなげられる。
メリット
・ 業界関係者とのネットワーキング機会を活用し、ビジネス関係を構築できる
・直接ホワイトペーパーの内容について説明が可能
デメリット:
・参加費用や展示ブースの費用が必要
・競合他社が同じイベントに参加するため、差別化を図り注目を集めることが難しい
5. リードジェネレーションはどのチャネルから取り組むべきか
ホワイトペーパーマーケティングを行うにあたり、チャネルの選定は重要な要素である。
まずは、競合他社やターゲットがよく利用しているサービスやメディアを調べてみよう。
そして、予算、時間、工数を考慮し、活用するチャネルの優先順位をつけることが重要だ。
ここでは、各チャネルの費用・スピード・難易度を相対的に示し、優先度の高い順に解説していきたい。
5.1 SNS
費用: 低
スピード: 高
難易度: 低
SNSは低コストで活用できるチャネルだ。
投稿や宣伝キャンペーンのスピードも速いため、リード獲得に効果的な方法といえるだろう。
IT業界では、X(旧Twitter)が広く活用されている。
5.2 ウェビナー/オンラインセミナー
費用: 中程度
スピード: 中程度
難易度: 中程度
リード獲得を目的としたウェビナーやオンラインセミナーの開催は、広告などを用いた集客費用がかかる。
また、計画や実施には、それなりの時間と労力が必要だ。
一方で、専門知識を共有する場として活用でき、確度の高いリード獲得が見込めるため、優先的に活用したいチャネルの一つといえる。
5.3 インターネット広告
費用: 高
スピード: 中
難易度: 低
インターネット広告のうち、ディスプレイ広告はリード獲得に幅広く活用されている。
ディスプレイ広告は、掲載するメディアを選ぶことで、ある程度質の高いリードを獲得できる点がメリットだ。
一方で、最低出稿単価は数十万円以上かかるケースが多く、よく精査する必要があるだろう。
また、リードの質を高められる分、リード獲得単価も安くて1万円以上の単価となる。
5.4 業界イベントとカンファレンス
費用: 高
スピード: 低
難易度: 高
参加費用やブースの設営などのコストが高いため、潤沢な予算が必要だ。
また、イベントの計画や参加も時間がかかり、多くのリソースが必要となる。
一方で、出展内容にもよるが、短期間で数百以上などのまとまったリードを獲得できるメリットがある。
5.5 オウンドメディア・LP
費用: 高
スピード: 低
難易度: 高
オウンドメディアの開発・維持には高い費用がかかり、コンテンツを公開するまでのスピードも低い。
また、SEO対策が十分でない場合は効果を得るのが難しく、ゼロから行うには多くの労力が必要となる。
一方で、SEOが育ってしまえば、オウンドメディアほどリード獲得単価が低いチャネルはないだろう。
費用と時間、ノウハウは必要となるが、早期から取り組みたいチャネルである。
紹介した順位は相対的なものだ。
実際に活用する際は、自社のターゲットや目的に応じてこれらのチャネルを組み合わせ、戦略を立ててほしい。
6. リードジェネレーションチャネルを選ぶ際の注意点
ここでは、チャネルを選ぶ際の注意点を解説していこう。
押さえておくべき注意点として、ほとんどのチャネルでは詳細なターゲティングができないことが挙げられる。
インターネット広告であれば、ある程度のターゲティングは可能だ。
しかし、業界業種・企業規模・所属部門・役職など特定のリード属性を正確に把握することはできない。
したがって、ターゲティング戦略を考える際は、リードジェネレーションサービスを活用する必要がある。
なかでも代表的なのがITmedia社(アイティメディア)のサービスだ。
同社のサービスは、100万人を超える会員データベースにアプローチでき、獲得リードの業種や従業員数、勤務地、役職などターゲットを細かく絞って見込み客の創出が可能だ。
また、コンテンツ閲覧前アンケートの実施により業務課題や要望など、リードの優先順位付けやフォローコールの参考となる情報を取得できる点も大きなメリットといえる。
同社以外にもリードジェネレーションサービスは多く存在するが、ITに特化したサービスとしてはITmedia社のものが最大といえるだろう。
7. ホワイトペーパーを掲載できるサービス
ここでは、ホワイトペーパーを掲載できる6つのサービスを紹介する。
費用はかかるものの、トラフィックがあるため短期間でリードを獲得できるだろう。
7.1 ホワイトペーパーダウンロードセンター
企業内の情報システムを担当するターゲットへアプローチしたい企業向けのサイト。
7.2 ITトレンド
法人向けのIT製品を比較検討できるサイト。認知度・利用率ともに高いのが特徴。
7.3 メディアレーダー
マーケティング資料のポータルサイト。無料プランと通常プランがある。
7.4 LISKUL ダウンロード
Webマーケティング情報を中心とした中小・ベンチャー企業向けのサイト。AIなどITツールの資料も掲載されている。
7.5 日経クロステック Active
IT・製造業・建設業向けの製品やサービスについての情報支援を行うメディア。
7.6 マーケメディア
マーケティングや広告・営業を担当する人々の仕事をサポートする資料のダウンロードサイト。
8.ホワイトペーパーを活用したリードナーチャリング施策とは
リードナーチャリングとは、獲得したリードと長期的な関係を築き、購買・契約成立に至るまでのプロセスを効果的に管理するマーケティング施策だ。
ナーチャリング施策におけるホワイトペーパーの活用方法を具体的に見ていこう。
8.1 ナーチャリング施策とそのメリット
メール配信は、効果的なナーチャリング施策の一つである。
受信者にとって価値があるコンテンツを提供していくことで、リードの信頼性を高め、長期的な関係構築につながる効果が期待できる。
また、継続的なコンテンツ提供により、リードの商品やサービスに対する興味を育てられる点もメリットだ。
8.2 リードナーチャリングで配信すべきホワイトペーパーの種類
ナーチャリング施策では、リードの心理状態に応じた適切なテーマのホワイトペーパーを使い分けることも効果的だ。
ホワイトペーパーを活用し、パーセプションチェンジ(意識変容)を促すことで、リードを成約率の高い見込み顧客へと育成できる。
リードの心理状態・興味段階レベル別に、配信したいホワイトペーパーの種類を見ていこう。
①非認知層
課題が具体化される前であり、商品やサービスに対し興味関心が低い段階のリード。
配信するホワイトペーパーには、自社とリードのタッチポイントを形成する内容が効果的だ。
ホワイトペーパーによる情報から課題形成をさせることが目的となる。
具体例
・啓蒙系
・用語集
・フレームワーク
など
②潜在層
課題意識を持ち、解決するための方法を模索=情報収集をしている段階のリード。
情報収集から実行までの一連の流れを、ホワイトペーパーを活用して配信したり、課題解決方法として自社商品につなげられたりする場合は、オファーページとして自社商品への導線を設けるのも有効である。
具体例
・調査レポート
・ウェビナーやセミナーのレポート
・チェックリスト型
③比較検討段階
比較検討段階の層には、商品・サービスの導入により、どのようなメリットを得られるのかを訴求することで、購買・成約のチャンスを高められる。
導入後のイメージを想像できるコンテンツの提供や、意思決定のための背中を押すコンテンツの配信が効果的だ。ナーチャリングのアプローチのなかでも最終段階となる。
具体例
・事例系
・製品/サービス比較型
・製品/サービス紹介
9. ナーチャリングにおけるホワイトペーパーの配信方法
ナーチャリング時のホワイトペーパーの配信方法として、MAツールを活用するメリットやデメリットを解説していきたい。
メールマーケティングを行う際は、MAツール(マーケティングオートメーションツール)を活用することで、より効率的かつ効果的なメール配信につながる。
MAツールを使用すれば、リードの管理、セグメンテーション、開封率などの効果測定が可能だ。
また、ラベリングされたリードに対し、それぞれに合わせた適切なメールの配信を行える点も大きなメリットといえる。
使用するMAツールによっては何ページ目、あるいはどのくらいの時間読んだかを測定することも可能だ。
離脱ポイントを特定することでメールの文面を改善したり、興味関心の高いコンテンツを特定したりするのに役立つだろう。
MAツールを活用するメリットとデメリットは以下のとおり。
メリット
・効率化と自動化によりより多くのリードにアプローチできる
・セグメンテーションとパーソナライゼーションにより効果を高められる
・トラッキングと分析が可能
・ABテストの実施が可能
デメリット
・スパムメールとして扱われるリスクがある
・運用コストがかかる
10. ナーチャリングにおけるポイント
最後に、ナーチャリングにおいて重要なポイントを紹介していこう。
ナーチャリングにおいては、リードに対して適切なタイミングで、適切なアプローチを行うことが重要だ。
メールの配信を行う際は、それぞれのリードの興味関心レベルに合わせ、順を追ってコンテンツを配信していこう。
ステップメールなどでセグメントされた成約に最も近いリードに対してホワイトペーパーを配信し、興味関心のレベルが十分に高まったタイミングで、インサイドセールス担当者や営業担当者からクロージングのアプローチを行う。
リードナーチャリングは、MAツールを使用してインサイドセールスとフィールドセールスのリレーションを仕組み化することで、より効率的な営業支援につながり、成約レベルが格段にアップする。
11.まとめ
ホワイトペーパーを活用したマーケティング施策は、あらかじめターゲットや目的を明確にすることが重要だ。
また、ターゲットや目的に応じた適切なコンテンツを、適切なタイミングで提供することが成功の鍵となる。
大前提として、ホワイトペーパーの品質が高いことも忘れないようにしたい。
本記事で紹介したホワイトペーパー活用のノウハウを活かし、リード獲得に効果的なホワイトペーパーの作成、マーケティング施策の運用を行ってみてほしい。