ホワイトペーパーマーケティングとは、主にBtoB向けのマーケティング施策として取り入れられている手法だ。
各種広告やオウンドメディアなどと組み合わせたリードジェネレーション、メールマーケティングやマーケティングオートメーションを活用したリードナーチャリングなど、幅広いフェーズで活用できる。
手軽にはじめやすい手法だが、成功させるには一定のノウハウや経験が必要となる。
そこで本記事では、ホワイトペーパーマーケティングに取り組むべきか検討している人向けに、ホワイトペーパーマーケティングの基礎や主なチャネル、他のマーケティング施策との比較情報などを詳しくお伝えしていきたい。
1. ホワイトペーパーとは
ホワイトペーパーとは、見込み客にとって有益な情報を掲載した資料のことである。
BtoBの企業において、ホワイトペーパーは主要なマーケティング施策のひとつといえる。
Webサイトでは「お役立ち資料」といったカテゴリ名で掲載され、単なるサービスや商品の紹介ではなく、業界トレンドや他社事例など啓蒙的な内容を含むことが多いのが特徴だ。
ホワイトペーパーの基礎については、こちらの記事で詳しく解説しているため、あわせて読んでみてほしい。
2. ホワイトペーパーマーケティングの目的
ホワイトペーパーをマーケティングに用いる場合、主に2つの目的がある。
- リードジェネレーション
- リードナーチャリング
それぞれのメリット・デメリットをみていこう。
メリット | デメリット | |
リードジェネレーション | リードの数を増やしやすい | ターゲティングが出来ない |
リードナーチャリング | タッチポイントが増える
HOTリードが見分けられる |
制作の手間・コストがかかる |
2.1 リードジェネレーション
リードジェネレーションとは、自社商材を検討してくれそうな見込み客を獲得することを指す。
通常、見込み客の名前・メールアドレス・電話番号といった個人情報を入手することがゴールとなる。
しかし、ユーザー側も個人情報を簡単に提供することはなく、何らかのインセンティブが必要だ。
ユーザーにとって有益な情報が詰まったホワイトペーパーは、そのインセンティブのひとつといえるだろう。
リードジェネレーションにホワイトペーパーを活用するメリットは、ホワイトペーパーのダウンロードは、ユーザーにとって比較的ハードルの低いアクションであるため、リードの「数」を増やしやすいことだ。
特に、現状の自社サイトのコンバージョンポイントが「問い合わせ」や「資料請求」といった顕在層向けの経路に限られており、リード数が不足している場合は、間口を広げる対策としてホワイトペーパーは非常に有効である。
一方、ターゲティングができないことは、リードジェネレーションにホワイトペーパーを活用するデメリットといえるだろう。
自社サイトにホワイトペーパーを設置する場合、特定の業種や役職の人のリードだけを獲得したいと思っていても制限ができない。
タイトルに「●●向け」と書くなどの工夫が必要となるが、対象外の人もダウンロードできてしまうため、リードの質が落ちてしまうおそれがある。
もし厳格にターゲットを限定したい場合は、特定の属性のみのリード獲得を支援する広告プランを持つ外部メディアの活用を検討するとよいだろう(詳細は「外部メディア・広告」参照)。
リードジェネレーションについては、以下の記事を参考にしてほしい。
2.2 リードナーチャリング
リードナーチャリングとは、リードジェネレーション施策によって獲得したリードを、より具体的に自社商材を検討してくれるようになるまで「育成」することだ。
獲得したリードには、まだ自社の商材に対する関心が高まっていない潜在顧客も含まれる。
それらの潜在顧客を中長期的に商談化や受注につなげるために、定期的かつ意図的なタッチポイントを形成し、情報提供を行うのがリードナーチャリングである。
リードナーチャリングにホワイトペーパーを活用するメリットは、顧客とのコミュニケーション機会が増やせる点だ。
保有しているリードにいきなり「サービスの説明をさせてほしい」と持ちかけても、多くの反応は見込めないだろう。
ホワイトペーパーを用いて「貴社の役に立ちそうな情報を提供させてほしい」という語り口であれば、反応率が高まる可能性がある。
また、MAツールを利用している場合、メールなどで送付したホワイトペーパーを閲覧したかどうかを計測し、顕在層になりうるリード(=HOTリード)とそうでないリードの分類ができるメリットもある。
一方、リードナーチャリングにホワイトペーパーを活用するデメリットは、ある程度の種類のホワイトペーパーが必要となり、制作の手間やコストがかかることだ。
見込み客はさまざまなニーズを持っており、1種類のホワイトペーパーだけではHOTリードを増やすことはできない。
種類を増やすのに内製では多くの手間がかかるほか、制作を外注する場合でも1本につき20万~40万円程度の費用がかかる。そのため、必要な人員や予算を用意してから腰を据えて取り組まなければならない。
3. リードジェネレーションにおけるホワイトペーパーの活用方法
ここからは、ホワイトペーパーをリードジェネレーションに活用する場合、具体的にはどのような方法を取ればよいのかを解説していきたい。
3.1 リードジェネレーションの活用チャネル
リードジェネレーションを目的とした場合の活用チャネルは主に3種類がある。
- Webサイト・LP
- SNS
- 外部メディア
それぞれのメリット・デメリットは以下のとおり。
メリット | デメリット | |
Webサイト・LP | アクセス解析ができPDCAを回しやすい | リーチの幅が増える
ターゲティングができる |
SNS | リーチの幅が増える
ターゲティングができる(精度は中程度) |
広告費用がかかる(数万円〜) |
外部メディア | リーチの幅が増える
ターゲティングができる(精度は高い) |
広告費用がかかる(数十万円〜) |
Webサイト・LP
最も一般的なチャネルが自社のWebサイトやLP(ランディングページ)だ。
BtoB企業にとって、WebサイトやLPはマーケティングのハブといっても過言ではない。
一度自社サイトにアクセスしたユーザーを、機会損失なくリード獲得につなげるために、ホワイトペーパーの重要性が高まっている。
Webサイト上では「お役立ち資料」「資料ダウンロード」といったわかりやすい名前で、ページ最上部にあるグローバルナビなどの見つけやすい場所に設置するケースが多いだろう。
自社のWebサイトやLPにホワイトペーパーを置くメリットは、Google Analyticsなどのツールでアクセス解析ができることだ。
以下のような分析ができるため、PDCAを回しやすい。
- コンバージョン率の悪いホワイトペーパーはどれか
- 特定のホワイトペーパーと相性の良い(遷移率が高い)ページはどれか
一方、最初のサイト構築に手間とコストがかかることはデメリットといえる。
ホワイトペーパーの設置場所としてWebサイト上に新しいディレクトリを作ったり、ダウンロードフォームを構築したりと、大きな改修が必要となる。
SNS
SNSでホワイトペーパーを宣伝する方法も有効だ。BtoB企業の場合、FacebookやX(旧Twitter)との相性が良いだろう。
SNSでホワイトペーパーを告知するメリットは、自社サイトではリーチしきれない層にリーチできることである。
広告はユーザーのアカウント登録情報やフォロー、投稿の情報などを用いたターゲティングも可能だ。
ただし、ターゲットを業界や職種といったところまで絞りこむのは、精度や配信ボリュームの点で難しい場合がある。
オーガニックの投稿だけでリード獲得につなげるには、最低でも数万人のフォロワーがないとあまり意味がない。
フォロワーが少なければ、広告を活用してみてほしい。
投稿のポイントは、できるだけ簡潔に「誰に向けた」「何の役に立つ」ホワイトペーパーなのかを明記し、ダウンロードフォームへのリンクを貼ること。
ホワイトペーパーの一部を画像にして見せることでよりキャッチーになるだろう。
ただし、広告で出す場合は費用がかかる点に注意が必要だ。
とはいえ、SNS広告は少額から配信可能なため、試しに数万円配信してみるといったトライアルがしやすい特徴もある。
外部メディア
自社サイトやSNSだけでは思うようにリードを獲れない場合、外部メディアに掲載する方法も有効だ。
例えば、IT企業であればITmediaのオンラインプロモーションなどが挙げられる。
外部メディアを活用するメリットは、SNS同様リーチの幅が広がる点に加え、メディアによってはターゲティングができる点である。
業界・役職・職種・会社所在地といった会員情報で絞ってメール配信をする「ターゲティングメール」の方法があり、確実にターゲットへ情報を届けられる。
逆にデメリットは、掲載費用や広告費用がかかることだ。
SNSと違って数万円ではなく、最低でも数十万円はかかってくる。
配信量に対して課金される場合もあれば「リード1件につき何円」と成果報酬型になっている場合もある。
具体的な検討にあたっては、各メディアが配布している「媒体資料」を参照してほしい。
3.2 ホワイトペーパーと他のリードジェネレーション施策の比較
ホワイトペーパーはユーザーにとって有益なコンテンツを用いてマーケティングを推進する、いわゆる「コンテンツマーケティング」の一種だ。
リードジェネレーションに活かせるコンテンツは、ホワイトペーパー以外にも以下のようなものがある。
- セミナー・イベント
- 記事コンテンツ(SEO)
- 動画コンテンツ
これらの施策について、ホワイトペーパーと比較しながら解説していきたい。
セミナー・イベント
会場を用意して対面で行うセミナーに加え、近年ではZoomなどのツールを用いて行うオンラインセミナー(ウェビナー)も主流となっている。
セミナー・イベントはホワイトペーパーに比べると、一度に伝えられる情報量が多い点がメリットだ。
特に、専門知識など複雑な情報を扱う場合、文字だけでは理解が進まないことが多く、プレゼンテーションを用いながら口頭で補足できるセミナーのほうが適しているケースがある。
一方、ホワイトペーパーはいつでも手軽に閲覧できるのがメリットといえる。
セミナーやイベントであれば30分~1時間集中して話を聞く必要があるが、ホワイトペーパーは平均10~15ページの長さのため、すべてを読んでもそこまで時間はかからないだろう。
また、必要な情報が明確に決まっている場合、関係のないページを飛ばして読むことも容易にできる。
動画コンテンツ
動画というフォーマットは人の記憶に残りやすいため、サービス・商品の紹介動画、How To動画、顧客への導入事例インタビュー動画などさまざまな切り口で活用する企業が増えている。
動画コンテンツはセミナーのメリットである「情報の伝達力」と、ホワイトペーパーのメリットである「いつでも見れる手軽さ」が組み合わさった魅力的な手法といえるだろう。
ただし、いつでも見れる手軽な動画にするためには、数分~長くても15分程度が動画の尺としては望ましい。
限られた尺に伝えたい情報をすべて収めるためには、企画・構成をしっかりと練る必要があり、結果的に制作の手間やコストはホワイトペーパーよりもかかる傾向がある。
自社のリソースとの兼ね合いをよく検討して取り組むことが大切だ。
記事コンテンツ(SEO)
コンテンツSEOとは、自社サイト内にコラムやブログといったカテゴリーを設け、周辺知識に関する記事コンテンツを増やしていくことで検索(オーガニック)流入を増やす取り組みである。
記事コンテンツとホワイトペーパーは、どちらか一方に取り組むのではなく、組み合わせることで相乗効果が期待できる。
ホワイトペーパーのみに取り組んでSEO対策を行っていなければ、せっかく良いホワイトペーパーを自社サイトに置いていてもサイトの流入自体が少ないため、ほとんどダウンロードされないという結果になりかねない。
そこで、SEOで検索流入を増やしながら、ホワイトペーパーも種類を増やしていくのが理想だ。
さらに、記事の内容をうまくホワイトペーパーに接続できているとコンバージョン率が高まる。
例えば「マーケティングフレームワークとは?」という内容の記事のなかで「記入して使えるマーケティングフレームワーク10選」のようなホワイトペーパーへリンクを貼るといった形がよいだろう。
4. リードナーチャリングにおけるホワイトペーパーの活用方法
最後に、ホワイトペーパーをリードナーチャリングに活用する場合、どのような方法を取ればよいのか具体的にみていこう。
リードナーチャリングの活用チャネル
リードジェネレーションを目的とした場合の活用チャネルは主に2種類ある。
- メールマガジン
- 直接配布
メリット | デメリット | |
メールマガジン | クリック計測によりリードの優先順位付けに活用できる | 制作・配信の手間がかかる
|
直接配布 | クリック計測によりリードの優先順位付けに活用できる | 効果検証が難しい |
メールマガジン
リードナーチャリングにホワイトペーパーを活用する場合に代表的なチャネルがメールマガジンだ。
一度獲得したリードはMAツールなどのデータベースに蓄積し、蓄積されたリードに対して定期的な頻度でメールマガジンを配信していくことで、自社を思い出してもらうきっかけとなる。
メールマガジンのコンテンツとして、ホワイトペーパーを有効活用してみてほしい。
メールマガジンを活用するメリットは、MAツールでURLをクリックしたかどうかを計測することで、リードの優先順位付け(リードクオリフィケーション)のための情報を得られる点だ。
メールを開封したユーザーのうち、ホワイトペーパーを閲覧したユーザーは、閲覧していないユーザーよりも自社への関心度が高いと考えられる。
一方、メールマガジンは週1回~最低でも月1回は配信するのが望ましいため、原稿や配信リストの作成、配信の作業に手間がかかるデメリットがある。担当者をつけて、計画的に取り組むことが必要となるだろう。
直接配布
ホワイトペーパーはオンラインで活用されるケースが多いものの、リードナーチャリングの点では印刷・製本して直接配布することも有効な手段だ。具体的には以下のようなケースが想定される。
- 顧客との商談場面に持ち込む
- 郵送する
- オフラインのセミナー・展示会などで配布する
直接配布は、一対一のコミュニケーションとなるため「〇〇様にとってお役に立つ情報だと思ったので」と一言添えて渡すだけでも信頼感を高められる。
また、ホワイトペーパーの中身を見せながら会話を進めていくと、思わぬところに顧客が食いつき、これまで見えていなかった顧客のインサイトが見えてくる可能性がある。
デメリットは、オンラインの施策と比べて効果検証が難しい点だ。
やらないよりやったほうが良いことは確かだが、戦略の本筋に据えるようなものではないだろう。
まとめ
この記事では、ホワイトペーパーをマーケティングで活用する場合の目的や活用チャネルについて解説してきた。
ひとつのホワイトペーパーを作れば、リードジェネレーションとリードナーチャリングの2つの目的に活用できるため、予算や工数が限られる企業にとっては非常に大きなメリットといえるだろう。
ぜひ、この記事を参考にしながら自社にとって最適なチャネルを選び、ホワイトペーパーの制作に取り組んでみてほしい。