MAツールはデジタルマーケティングの自動化や効率化に使われるツールだ。
近年、マーケティングにもROIが重視されるようになり、MAツールのもたらす恩恵に注目が集まっている。
MAツールの活用では、リードジェネレーションやナーチャリングの促進、エンゲージメントの向上などさまざまなメリットが想定される。
また、属人性の排除による業務標準化や、他システムとの連携によるリアルタイムで精緻なマーケティング施策の立案などにも使われる。
さらに、コンテンツマーケティングやSEO対策との親和性も高い。
一方で、
「MAツールの運用経験がなく、機能を理解できていない」
「デジタルマーケティングにおけるメリットが明確ではない」
「自社に合ったツールがわからず、投資がペンディングとなっている」
といった理由から、未導入の企業も少なくない。
ここでは、MAツールの導入を検討している企業に向け、基本的な機能やメリット、「必須とされる理由」などを解説する。
1.マーケの自動化・効率化を担う「MAツール」とは?
MA(Marketing Automation)ツールは、マーケティング活動を効率化し、自動化するためのツールだ。
もともと「MA」はツールの名称ではなく「マーケティングの自動化」「効率化」を表す概念である。
この概念を具体化したツールが、MAツールとよばれている。
MAツールの主な活用領域は、以下3つに分類される。
- リードジェネレーション
新しい見込み顧客(リード)の獲得 - リードナーチャリング
リードに対して適切なタイミングで情報提供を行い、顧客への転換を目指して購買意欲を高める - マーケティング活動における分析
マーケティング施策の効果をデータで可視化し、各施策の改善につなげる
具体的には、メルマガやニュースレターの配信、顧客リストの管理、ウェブサイト訪問者の追跡、コンテンツ提供の自動化など、日々のマーケティング業務を一元管理し自動化する。
MAツールが持つ機能については後述するが、定義としては「マーケティングの自動化や効率化を目的として作られたツール」と理解しておこう。
2.MAツールのメリット
MAツールのメリットは以下3つだ。
- マーケティング活動の見える化と効率化
- ホットリード化の促進
- 販売プロセスへの貢献(リードを営業に引き渡すタイミングの最適化)
それぞれみていこう。
メリット1.マーケティング活動の見える化と効率化
MAツールは、マーケティング活動の「見える化」と「効率化」に貢献する。
「見える化」とは、リード(見込み顧客)の行動や属性をデータとして蓄積し、ウェブサイト訪問履歴、資料ダウンロード、メール開封状況などを一元的に可視化することだ。
「効率化」とは、メール配信やリードナーチャリング、リードスコアリングなどをより小さな手間で実行することを指す。
「手を動かすタスク」の多くを自動化できることにより、マーケティング施策の立案など「思考」が必要なタスクのリソースを増やせるようになる。
メリット2.ホットリード化の促進
ホットリード化とは「購買意欲が高いリード」を育成することである。
MAツールは、見込み顧客に対して段階的に適切な情報提供を行い、購買意欲を高める仕組みを提供する。
このプロセス、取り組みをリードナーチャリングと呼び、リードタイムの長いBtoBマーケティングでは欠かすことができない。
メリット3.販売プロセスへの貢献(リードを営業に引き渡すタイミングの最適化)
MAツールは「リードを営業部門に引き渡すタイミング」の判断にも貢献する。
MAツールでは、ツール上にあるデータをもとにリードの評価(リードスコアリング)を行う機能があるためだ。
具体的には、マーケティングが獲得・育成したリード(MQL)から、営業が担当するリード(SQL)の評価と引継ぎが該当する。
MQLからSQLへの移行がスムーズに進められれば、営業チームが「購買意欲が低いリード」に無駄な時間を割くという状況を回避できる。
3.MAツールが普及した背景とは?
MAツールが日本国内で普及し始めたのは、2010年代中盤からだ。
2020年代に入り、MAツールは本格的な普及の兆しを見せている。
ではなぜ、今MAツールが普及し始めているのだろうか。
主な背景として、以下の2つが挙げられる。
- BtoBマーケティングのデジタル化の加速
- 人的リソース不足の解消ニーズ
それぞれみていこう。
背景1.BtoBマーケティングのデジタル化が加速している
2010年代に入り、従来の紙媒体や展示会を中心としたマーケティング活動から、オウンドメディアやメール、SNSを活用したデジタルマーケティングへの移行が進んだ。
インターネットが発達した現代では、顧客がオンライン上で情報収集を行い、購買プロセスの大部分を完結させることが主流となっている。
そのため、見込み客のオンライン行動を把握し、効率的に育成する機能を持つMAツールへのニーズが高まったのだ。
さらに外資企業のMAツールが日本市場に参入し、BtoB企業にアプローチし始めたことも要因のひとつだろう。
背景2.人的リソース不足を解消したいというニーズが高まった
一部の大手企業を除き、日本企業の大半は十分なマーケティングリソースを持たない。
一方で、デジタルマーケティングのタスクは増加しており、リソース不足が顕著になった。
この「ニーズとリソースの乖離」を埋める存在としてMAツールは注目された。
MAツールを活用すれば、数人規模のマーケティングチームであっても、数十~数百規模の顧客行動を把握できる。
人員を増やさずとも、大量のリードを効率的に管理・育成できるようになるという、現代のニーズにマッチした非常に画期的なツールである。
4.MAツールはどんな企業に必要か?
MAツールを適切に運用できれば、企業規模や業態にかかわらずマーケティングプロセスを効率化できる。
一方で「自社の規模でもMAは必要なのか?」「使いこなせず無駄な投資になるのが懸念である」などのお悩みもあるだろう。
そこで本章では「MAツールはどんな企業に必要か?」について明確にしていこう。
- オフライン・オンラインからのリード獲得を管理しきれていない
- ナーチャリングの成果が確認できない
- オウンドメディアを運用しているが、ホットリード化ができていない
それぞれみていこう。
オフライン・オンラインからのリード獲得を管理しきれていない
オフライン、オンラインの双方からリードを獲得できるようになると、リードの数は増加していく。
一方で、スコアリングやナーチャリングといった「リード獲得に続く施策」がうまく進まないケースもある。
この主な原因が「リードの増加ペースにマーケティングチームが付いていけないこと」だ。
MAツールの持つ自動化・効率化機能によって、スコアリングやナーチャリングが効率よく進む。
つまり、獲得したリードを管理しきれない原因を、MAツールによって潰すことができるのだ。
リードナーチャリングの成果が確認できない
MAツールは、ナーチャリング施策を実施しているもののその効果を確認できていない場合にもおすすめだ。
ナーチャリングの成果がでない原因には、主に「アプローチの対象が少ない」「対象の行動に応じたアプローチができていない」の2つが挙げられる。
そこでMAツールを活用すれば、多数のリードデータをもれなく記録・管理し、メール配信など、ナーチャリング業務の一部を自動化できる。
また、メールの開封率やクリック率、コンテンツの閲覧履歴を追跡し、「興味関心の強さ」や「次に取りやすい行動」を予測し「ユーザーの行動に合わせたアプローチ」が可能だ。
つまり、MAツールによって、アプローチの数も質も効率的に確保でき、リードナーチャリングの成果が出やすくなるということだ。
オウンドメディアを運用しているが、ホットリード化ができていない
「オウンドメディアの運用」や「資料・ホワイトペーパーの掲載」に取り組んでいるが、ホットリードが作れていないという場合にも、MAツールがおすすめだ。
ホットリード化を狙うには「提供するコンテンツの質」「提供するタイミング」が重要である。
MAツールを活用すれば、適切なタイミングで適切な情報を提供し、購買意欲を高めることができる。
5. MAツールの主要な機能
次に、MAツールの主な機能を見ていこう。
ここでは一般的なMAツールで採用されている機能の概要を紹介する。
また、より詳細な機能については、こちらの記事で解説しているため、参考にしていただきたい。
機能1.リード管理機能
リード管理機能は、見込み客情報を収集して一元管理する機能である。
オウンドメディアの訪問履歴や資料のダウンロード状況、メールの開封率などを記録し、リードの行動データを統合する。
さらに、リードスコアリング機能により、各リードの購買意欲を数値化し、顧客化する見込みの高さを評価することが可能だ。
機能2.メールマーケティング機能
メールマーケティング機能では、リードごとに最適化されたメールを自動配信する。
このパーソナライズ機能により、リードの属性や行動履歴に基づいたアプローチが可能になる。
また、特定の条件に応じたトリガーメールの自動化も行えるため、適切なタイミングでの情報提供が進む。
MAツールによる自動化・効率化は、このメールマーケティング機能によるところが非常に大きい。
機能3.ランディングページ作成機能
ランディングページ作成機能は、HTMLやCSSなどのコーディング知識がなくとも、ランディングページ(LP)を作成できる機能だ。
ツールによっては、豊富なテンプレートが用意されている。
この機能により、技術的な専門知識を持たない担当者でも、短期間で成果を出せるページを作成できる。
突発的なキャンペーンやプロモーションに対し、迅速にページを用意しなくてはならない場合に重宝する。
機能4.分析・レポート機能
分析・レポート機能は、各施策の成果をデータで可視化する機能だ。
具体的には、メールの開封率、クリック率、コンバージョン率など、マーケティング施策のKPIをレポート形式で確認できる。
さらに、ROI(投資対効果)分析も可能であり、マーケティング活動がビジネスにどれほど貢献しているかを定量的に測定できる。
施策の成功要因や改善ポイントを明確にし、次の戦略に活かすことができるため、マーケティング活動の精度が高まっていく。
機能5.BtoBマーケティングに特化した機能
外資企業が提供するMAツールの中には「ABM(アカウントベースドマーケティング)」に対応した機能を持つ製品もある。
ABMは、特定の企業(アカウント)に対してカスタマイズされたマーケティングを行う手法だ。
ターゲット企業の関心や購買意欲を可視化し、ピンポイントで効果的なアプローチを可能にする。
比較的規模が大きい企業をターゲットとし、高単価な商材を提供するケースで取り組まれることが多い手法だ。
ABMについてはこちらの記事でも紹介しているため、該当する場合は参考にしていただきたい。
機能6.購買プロセスのデータ共有機能
BtoBの購買プロセスでは、1つの取引に複数の担当者が関わることが多い。
MAツールは担当者間のデータを統合し、購買プロセス全体を把握できるようにする。
たとえば、営業部門やマーケティング部門がリアルタイムでリードの状況を共有することで、連携がスムーズになり、成約率の向上につながる。
6. CRM、SFA、BIとの違い
MAツールと同じくマーケティング業務に活用されるツールに「CRM」「SFA」「BI」がある。
近年は、これら複数のツールの特徴を併せ持つ製品も登場しているが、本質的には全く異なる。
ここでは、MAツールとCRM、SFA、BIの違いを整理しておこう。
6.1.CRM(顧客管理システム)との違い
CRM(顧客管理システム)は、既存顧客との関係を強化し、顧客対応や製品開発に活かすための仕組みだ。
具体的には、顧客の基本情報・購入履歴・対応履歴を一元管理し、顧客満足度やリピート率の向上を目指す。
MAとCRMの比較
簡単にいうと、MAは「顧客化の前」が対象で、CRMは「顧客化した後」が対象だ。
MAはリードの育成やスコアリングを行い、育成されたリードをCRMに引き渡す。
また、CRMに蓄積された既存顧客データをMAに投入し、分析やセグメント化を行うことで効果的な施策を展開する。
さらにMAで得られた行動データやナーチャリングの結果をCRMに戻し、営業やカスタマーサポートに活用するケースも多い。
MAとCRMの役割は全く違うが、相互補完的な関係にある。
6.2.SFA(営業支援システム)との違い
SFA(営業支援システム)は、営業活動を効率化するためのツールだ。
具体的には、商談の進捗状況や案件の管理、訪問履歴の記録などを通じて、営業プロセスの可視化と効率化を支援する。
営業担当者が「いつ」「誰に」「どのようなアプローチをすべきか」を明確にするためのツールであり、営業チーム全体の生産性向上を目指す。
MAとSFAの比較
MAは営業支援の前段階を担当し、見込み客(リード)の創出と育成を主な目的とする。
一方で、SFAは商談や契約といった「営業プロセス」を支援するため、明確に担当フェーズが異なる。
しかし、MAが育成したリード(MQL)をSFAで管理する営業に引き渡し、SQLへ育てるプロセスは、両者の連携がカギを握る。
MQLからSQLへの移行、つまりマーケティングから営業への引き渡しがスムーズになることで、顧客獲得のコスト・スピードを最適化できるからだ。
6.3.BIツールとの違い
BI(Business Intelligence)ツールは、複数のデータソースから必要なデータを抽出し、さまざまな角度から分析を行うためのツールだ。
主に経営判断や業務改善のために使用される。
MAとBIの比較
MAツールとBIツールには「分析・可視化機能」を持つという共通点がある。
ただし、MAツールはマーケティング業務に特化しており、BIツールのように汎用的な分析には不向きだ。
BIツールはマーケティングだけでなく、財務、在庫管理、顧客満足度など、あらゆる業務領域のデータを統合し、意思決定を支援するために使われる。
マーケティング領域に限ればMAツールのほうが優秀だが、汎用性ではBIツールが勝る。
7. MAツールの選び方(BtoB向け)
MAツールは、CRMやSFAに比べると知名度が低い。
日本企業では導入事例が限られているため、選定基準に関する情報も乏しい。
そこで、本章において、実際にMAツールを選ぶ際のポイントを整理しておこう。
選び方1.自社のマーケティング課題に対応できるか
自社が抱える具体的な課題(例:ナーチャリング、スコアリングなど)に対応できる機能を持つかを確認しよう。
同じMAツールであっても、行動把握が強い製品、分析機能が充実した製品などの違いがある。
一般的に大手外資系ベンダーのツールは高機能で高価だ。
しかし「単純にメールナーチャリングだけを自動化したい」という場合などは、そこまで高機能な製品は必要ない。
自社の課題をはっきりさせ、ダイレクトに解決できる製品を選ぼう。
選び方2.BtoB向けであるか
MAツールには、BtoB・BtoC向けがあり、BtoB向けの場合は対象とするリードの数が少なめに設定されている。
ただし、行動把握や自動化機能に強みを持つ製品が多く、「狭く深く」付き合うBtoBビジネスに適している。
「BtoB、BtoC両対応」を謡っている製品でも、機能面の精査を怠らないようにしたい。
導入実績を確認し、自社と同様の企業が含まれているかどうかも参考になるだろう。
選び方3.ノンテクニカルなユーザーでも直感的に使えるUI
初めてMAツールを導入する場合は「使い勝手」を重視したい。
MAツールに限ったことではないが、高機能であっても複雑なUIを持つ製品は現場に根付かない。
技術的なバックボーンを持たない人間であっても、直感的に何をすべきかがわかりやすい製品を選ぼう。
また、「導入後のサポート体制」についても確認しておこう。
MAツールに不慣れな場合は、日本語に対応したサポート窓口を持つ製品が良い。
選び方4.他システムとの連携性
MAツールは、CRM、SFA、広告ツールとの連携によってその真価を発揮する。
特にCRMとSFAとの連携では「リード獲得→ホットリード化→営業へ引き渡し→成約後の顧客関係管理」といった具合に、顧客行動のほぼすべてを網羅できる。
導入時点では予定がない場合でも、将来を見越して連携機能は確保しておくべきだろう。
API連携に対応しているMAツールであれば、さまざまな外部システムとの連携が可能になるので、必ずチェックしていこう。
選び方5.費用対効果のバランスが良い製品
MAツールの費用感は機能の数や規模感によってさまざまだ。
自社が想定する用途やビジネスの規模感に応じて、最適なものを選びたい。
下記の表は、2024年時点で、国内外の主要なMAツールの費用相場(※)をまとめたものだ。
ツール名 | 提供会社 | 初期費用 | 月額費用 |
Eloqua | Oracle | 要問い合わせ
例:200万円〜 |
要問い合わせ
例:20万円〜 |
Account Engagement(旧:Pardot) | Salesforce | 無料 | 15万円(税抜)~ |
★BowNow | クラウドサーカス株式会社 | 10万円(税抜)(フリープランあり) | 36,000円(税抜)~(フリープランあり) |
★List Finder | 株式会社イノベーション | 10万円(税抜)(フリープランあり) | 45,000円(税抜)~(フリープランあり) |
★SATORI | SATORI株式会社 | 30万円(税抜) | 148,000円(税抜) |
「★」マークが付いている製品は国内企業の製品だ。
国内製のほうが外資企業の製品に比べて安価であることがわかる。
ただし、一見安価であっても、「PVや顧客数に応じた従量課金」などの料金が上乗せされることもある。
正確な費用感を知りたい場合は、必ず見積もりを実施しよう。
※参考
Oracle Eloqua(オラクルエロクア)とは?MAツールの特徴・価格を解説|BOXIL
Marketing Cloudソフトウェアの価格|セールス・フォース・ジャパン
8. MAツール導入時の注意点とポイント
最後に、MAツール導入の注意点とポイントを見ていこう。
8.1.目的を可能な限りに具体的に
MAツールを導入する前に「導入する目的」を明確にしよう。
一般的なMAツール導入の目的としては、以下が挙げられる。
- リードを効率的に育成したい
- ナーチャリングプロセスを可能な限り自動化したい
- リードのスコアリングを自動化したい
- トリガーメールの送信を効率化したい
- 顧客行動の把握を精密に行いたい
目的が具体的であればあるほど製品選定が楽になり、成果も出しやすくなる。
また、目的は表面的に決めるのではなく、現状の把握と課題の抽出をもとに設定することが重要だ。
可能であればKPI(重要指標)の設定も
導入後の成果を測定するためには、KPI(重要指標)の設定が欠かせない。
たとえば、「リード数を何%増加させる」「メールの開封率をどれくらい向上させる」など、具体的で測定可能な指標を設定することで、現状把握と改善の精度が上がる。
8.2.マーケティングチームと営業チームの連携
MAツールの運用を成功させるためには、営業部門との連携が欠かせない。
両部門がツールをどのように活用するかを明確にし、運用方針を統一することが重要である。
さらに、リードの引き渡し基準についても改めて確認しておこう。
「スコアが一定値を超えたら引き渡す」「特定の資料をダウンロードしたリードをSQLとして引き渡す」など明確なルールを設定することで、部門間の連携がスムーズになる。
8.3.導入時に発生しやすい課題と対策
MAツールの導入時に発生しやすい課題として「データ移行」がある。
データの形式や内容を事前に整理し、MAツールの仕様に合わせた移行計画を立てよう。
また、MAツールを導入したものの「社内に定着しない」こともありがちな課題のひとつだ。
特に外資企業の製品の場合、日本企業では馴染みが薄い機能や業務名が使われていることがある。
MAツールに限ったことではないが、業務担当者が理解しにくい機能は定着しない。
国内製品であれば日本語のトレーニングやサポートが受けられるのでそれほど心配はいらないが、外資企業のMAツールの場合は準備が必要だ。
「ベンダーと共同で自社独自の操作マニュアルを整備する」「導入後の社内トレーニング計画を作成する」などの準備を進めよう。
8.4.費用対効果を最大化するためのポイント
MAツールは、対象とする業務の範囲によってコストパフォーマンスが変わる。
「最もコストパフォーマンスが良い使い方」を把握するために、以下の点に着目してみよう。
ポイント1.スモールかつシンプルな運用で開始する
MAツールの費用対効果を最大化するためには「小さく産んで大きく育てる」方法がおすすめだ。
たとえば「トリガーメールの配信だけを自動化する」という具合に、単一の業務を対象としたシンプルな運用から開始する。
この場合は、最も安価なプランで事足りるケースが多いだろう。
ツールに慣れてきたら、「行動履歴の把握」や「スコアリング」「CRMとの連携」といった具合に、徐々に対象業務を拡大していこう。
プランの変更も同時に行うためコストは上がるが、無駄は発生しない。
また、無料トライアルを活用し、自社のどの業務がMAツールに適しているのかを確定することで、低コストな導入につながる。
このようなスケーラビリティが確保できるかどうかも、選定時に確認しておくことがおすすめだ。
ポイント2.定期的に成果を可視化する
MAツールのコストパフォーマンスを最大化するには、定期的に成果を可視化する必要がある。
たとえば「資料ダウンロードからの問い合わせがどの程度増えたか」「MQLからSQLへ転換する日数がどの程度短縮できたか」などのデータを追跡し、改善することでツールの価値が明確になる。
ツールの価値が明確になれば、社内での活用意欲が高まり、より自動化や効率化が進む。
このように、成果を可視化することは、事業の成長につながる「正のサイクル」を生み出すための起点となるのだ。
9. まとめ
本記事では、MAツールの基礎知識や機能、選定ポイント、導入時の注意点などを解説した。
MAツールはBtoBマーケティングを効率化し、リード育成と営業支援を強化する強力なツールだ。
また、CRMやSFAとの連携により最大限の効果を発揮する。
ただし、費用や機能の幅が非常に大きいため、選定前の情報収集には力を入れたい。
本記事を参考にしながら最適なMAツールの選定につなげよう。