コンテンツマーケティングは、さまざまな種類のコンテンツを駆使しながら、受注や問い合わせにつなげる仕組みを作り上げていく施策だ。
マーケティング施策のなかではポピュラーな存在になっているものの「コンテンツを一通り制作してみたが成果がでない」といった課題がよく聞かれる。
コンテンツが一通りそろっているにも関わらず成果が出ない場合は「コンテンツの種類と活用方法」がマッチしていない可能性が高いだろう。
ここでは、コンテンツマーケティングで使われるコンテンツの種類や活用方法、配信の例などについて詳しく解説していきたい。
目次
Toggle1.コンテンツの種類の前に、コンテンツマーケティングの定義を再確認
コンテンツの種類を解説する前に、コンテンツマーケティングの定義を再認識しておこう。
コンテンツマーケティングで成果が出ていないのであれば、定義の認識から間違っている可能性がある。
正しく理解すると、目的に対しての適切な手段がそもそもコンテンツマーケティングではないこともよくあるため、しっかりと確認しておいてほしい。
マーケティング領域でのコンテンツとは、主にオウンドメディアに掲載されるコラムやホワイトペーパー、ユースケース集や事例集、動画などを指す。
こうしたコンテンツを活用して行うマーケティングが「コンテンツマーケティング」だ。
さらに、コンテンツマーケティングはデジタルマーケティングの一種でもあり、SEO対策と共に進められるケースが増えている。
このことから「コンテンツマーケティング=SEO」「デジタルマーケティング=コンテンツマーケティング」という誤った認識をもつ人も少なくない。
厳密にいえばこれらはまったく別の施策であり、その関係性は下記のように整理できる。
まず、マーケティングの一種としてデジタルマーケティングがあり、さらにデジタルマーケティングのひとつとしてコンテンツマーケティングやSEOがある、というのが実態に近い考え方だ。
また、ウェビナーやプレスリリース、SNS運用をコンテンツマーケティングの一環とする見方もある。
たしかに間違いではないが、これらは営業や広報の側面が強く、狭義のコンテンツマーケティングからは除いて考えたほうが理解しやすいだろう。
2. コンテンツマーケティングにおける5種類のコンテンツ
コンテンツマーケティングで活用される代表的なコンテンツとして、以下の5種類が挙げられる。
種類 | 特徴 |
---|---|
記事コンテンツ | コンテンツSEOの主軸でもあり、比較的低予算で集客効果が見込める。 |
ホワイトペーパー | テキストとインフォグラフィックを織り交ぜながら訴求力を高める。 情報の質、量ともに高い水準が求められる。 |
事例・インタビュー | 「自社独自の解決方法」を具体的に提示できるため、納得感を高めやすい。 「課題→施策→効果」というストーリーを提示できるため訴求力も高い。 |
動画コンテンツ | ウェビナー、セミナーの編集動画や製品紹介動画など。 認知負荷が低く、視覚的な訴求効果も強い。 |
LP | 製品・サービスの魅力を「一枚絵」のように見せる。 記事コンテンツよりも意思決定を促す効果が高い。 |
2.1.記事コンテンツ
記事コンテンツは、端的にいえば「テキスト主体のコンテンツ」の総称。
BtoBでよく使われるのは「トレンド解説記事」「ノウハウ紹介記事」「導入事例」などで、内容によって役割が異なる。
記事コンテンツについてはこちらの記事も参考にしてほしい。
記事コンテンツは、コンテンツSEOの主軸でもあり、比較的低予算で集客効果が見込めるツールだ。
ただし「SEOキーワードが散りばめられた長い記事を公開すればPVが上がる」という時代は終わり、近年では質が重視されている。
したがって、以前に比べると制作難易度が上がっており、検索順位の維持も難化傾向にある。
記事コンテンツの効果
記事コンテンツの効果は多岐にわたり
- 認知拡大
- 興味関心の喚起
- リード獲得
- ナーチャリング
などが期待できる。
ただし、BtoBでは意思決定プロセスが複雑であることから、Web上にアップした記事のみで成果につなげることは難しいのが実情だ。
意思決定を促すコンテンツ(ホワイトペーパーやダウンロード資料)を別途制作し、これらへの導線として活用するよいだろう。
記事コンテンツの使いどころ
潜在層、準顕在層、顕在層、明確層の顧客すべてに対して訴求力を持たせることが可能だ。
「課題を把握していない潜在顧客」に対してはノウハウや事例紹介で気づきを促し、「競合他社との比較をしたい顕在層」に対してはホワイトペーパーで訴求する、などといった使い方が想定される。
2.2.ホワイトペーパー
ホワイトペーパーは、ダウンロード形式の資料型コンテンツであり、テキストとインフォグラフィックや図形、図表を織り交ぜながら視覚的にもわかりやすく情報を提供して訴求力を高めるのが特徴。
Web上に公開される記事コンテンツに比べると情報の質、量ともに高い水準が求められる。
ホワイトペーパーの効果
ホワイトペーパーの主な効果はリード獲得とナーチャリングだ。
ダウンロードの条件としてメールアドレスや所属企業の情報などを求めることでリード獲得が進むほか、定期的に配信することで情報源としての信頼性も増していくだろう。
課題解決と製品紹介をメインにしたホワイトペーパーであれば、意思決定を後押しする効果もある。
ホワイトペーパーの使いどころ
主に準顕在層や顕在層、明確層へのアピールのために使われる。
ダウンロードという手間をかけてでも情報が欲しい層は「すでに自社の課題やニーズを把握しており、より詳しい検討材料が欲しい層」であると推測できるからだ。
ただし、単に掲載しているだけではダウンロードされにくいため、より読者の懐に入り込んだ部分でダウンロードを促す工夫が必要となる。
コンテンツマーケティングの現場では、PVが多いWeb記事の末尾にダウンロードリンクを配置する、LPのCTA部分に配置する、メルマガにダウンロードリンクを配置するといった施策が一般的である。
ホワイトペーパーの種類についてはこちらの記事で解説しているため、あわせて読んでみてほしい。
2.3.事例、インタビュー
導入事例やインタビュー記事は記事コンテンツの一種である。
ただし、ほかの記事コンテンツのように一般論を中心とした内容ではなく「自社独自の解決方法」を具体的に提示できるため、納得感を高めやすいことが特徴。
また、現場の目線で、かつ人物や時系列がはっきりした状態で「課題→施策→効果」というストーリーを提示できることも強みといえる。
事例、インタビューの効果
事例やインタビューは、認知拡大、興味関心の喚起、リード獲得、ナーチャリングなどさまざまな効果が期待できる。
コンテンツの作り方にもよるが、ホワイトペーパーへの導線として配置するとより効果的だ。
事例、インタビューの使いどころ
特定の課題を認識しており、解決方法やツールを探している「顕在層」や「明確層」を意識して制作する。
具体的な活用方法としては「ホワイトペーパーへの導線」「製品特設サイトへの誘導」「問い合わせ画面への誘導」などが主流だ。
近年では、あえてWeb上に公開せず、MA(マーケティングオートメーション)ツールから既存顧客向けに直接配信して問い合わせにつなげる使い方も増えている。
事例やインタビューの内容は、必ずしも検索キーワードと一致しない。
そのため、検索エンジンで無理に上位表示を狙うよりも、ターゲットやペルソナを絞りつつ、ピンポイントで配信したほうが効果を得やすいだろう。
2.4.動画コンテンツ
コロナ禍を経て一気に一般化した「ウェビナー」や、通常のオフラインセミナー、製品紹介などを動画として編集したコンテンツだ。
記事コンテンツよりも認知負荷が低く、視覚的な訴求効果も強いことが特徴だ。
近年では、Youtubeをはじめとした無料動画プラットフォームの普及によって、非常に汎用性の高いコンテンツとなった。
また、公開形式をクローズドにして、希少性の高い情報源としてアピールすることもできる。
動画コンテンツの効果
動画コンテンツの主な効果はナーチャリングだ。
一定以上の時間拘束が発生するというコンテンツの性質上「もともと興味をもっている層」が対象となる。
動画コンテンツの使いどころ
準顕在層、顕在層に対する訴求(明確層へのステップアップ)を狙った使い方が主流だ。
具体的には、SNSや記事コンテンツからの流入をより深く、強くするために使用される(動画が埋め込まれる)ことが多いだろう。
「スライド」と「スピーチ用テキスト」という2つのコンテンツを制作するため手間はかかるものの、社内資料の転用や応用で制作できるケースも多く、パターン化することで制作コストの圧縮が可能となる。
2.5.LP(ランディングページ)
LPは広告の一種だが、コンテンツマーケティングでも用いられる。
キャッチコピーやイラスト、写真、インフォグラフィックを駆使することで、製品・サービスの魅力を「一枚絵」のように見せられるのが特徴だ。
また、適切に制作されたLPは、1枚の中で導入から訴求まで誘導できるため、記事コンテンツよりも意思決定を促す効果が高くなる。
ちなみにBtoBでは、読み物や統計としての性質を併せ持つ「記事LP(テキストの割合が多いLP)」が用いられることもある。
LPの効果
問い合わせ数のアップなど、自社に対して何らかのアクションを起こしてもらう効果が期待できる。
BtoBは、BtoCのように「閲覧者=意思決定者」ではない。
そのため、LPの内容も「購入・契約」ではなく「問い合わせ」をゴールにしたものが一般的だ。
LPの使いどころ
準顕在層や顕在層、明確層に向けて製品・サービスの魅力を直接的にアピールする際に使用される。
Web広告の着地点として使用されるほか、トレンドキーワードからの流入を狙ってオウンドメディアに配置する、特設サイトのトップページに配置するなど、使い方はさまざまだ。
3.コンテンツマーケティングにおけるコンテンツ活用の勘所
コンテンツマーケティングでは、これらさまざまな種類のコンテンツを組み合わせながら施策を設計していく。
ただし、いくらコンテンツが優秀であっても、活用方法に合理性がなければ成果は生まれない。
そこで、実際にコンテンツを活用する際の勘所を紹介していきたい。
3.1.ジャーニーの設計でコンテンツ活用の流れをつかむ
コンテンツマーケティングでもっとも重要なのが「ジャーニー」の設計だ。
ジャーニーとは「ユーザーの認識の変化」を連続的にとらえたもの。
コンテンツマーケティングでは主に以下2つのジャーニーを意識していこう。
①カスタマージャーニー
カスタマージャーニーとは、認知から意思決定までのユーザー体験をまとめたものだ。
マーケティングでは想定する顧客を「ペルソナ」として設定するが、カスタマージャーニーでは、このペルソナが辿るであろう認識や体験を旅のように表現する。
カスタマージャーニーを設計することで「その時点でペルソナが考えていること、欲していること」に合わせたコンテンツの配置が可能となり、成果につなげやすくなる。
②サーチジャーニー
サーチジャーニーとは、検索キーワードベースで認識変化を捉えたものだ。
SEOを意識したコンテツマーケティング(コンテンツSEO)では、ペルソナの検索意図を把握し、意図に即したコンテンツ配信を続けることで成果に結びつきやすくなる。
3.2.コンテンツ単体の品質を高めつつ「バランス」も考慮する
コンテンツマーケティングは、単体で成果を目指すものではなく、複数のコンテンツを組み合わせながら行う必要がある。
また、組み合わせでは「情報の粒度や濃度」と「コンテンツの種類」の考慮が欠かせない。
例えば、Web上にアップした記事コンテンツでは一般論を述べつつ、個別の具体的な解決法についてはホワイトペーパーに落とすなど、同一のテーマを異なる粒度・濃度で見せることを意識しよう。
読者のなかで情報が体系化され、信頼感や納得感を高めることが可能であるからだ。
こうした組み合わせによるアピールでは、コンテンツ単体の品質はもとより「どのコンテンツで、何について、どのくらい述べるか」といったバランス感覚も求められる。
3.3.配信されるコンテンツの役割を理解する
上記のバランスに関連して、コンテンツの役割を理解することも大切だ。
ノウハウ解説記事では「認知拡大と興味関心の喚起」、導入事例では「リード獲得」など明確に役割を設定し、ジャーニーに沿って配信することでナーチャリング効果が高まる。
特に、露出以外の効果を狙う場合には、コンテンツの役割と配信タイミングの把握が必須となるだろう。
3.4.探って固める「バタフライサーキット」を意識する
バタフライサーキットとは、検索ユーザーの検索行動を蝶の動きになぞらえた考え方だ。
検索ユーザーの多くは「情報を集める(さぐる)」「確かめる(固める)」という行動を連続的に往復しており、これを繰り返すことで意思決定を行う。
効果的なコンテンツ活用のためには「メディア内のコンテンツをいかに周回させるか」という視点で、内部リンクの貼り方やサイト構造の見直しを行っていこう。
4.コンテンツ配信の例
最後に、コンテンツ配信の例を紹介していきたい。
「2024年問題」というテーマ対するペルソナとカスタマージャーニーを設定し、自社製品(クラウドサービス)への問い合わせにつなげるための例をみていこう。
ペルソナ
まず、以下のようにペルソナを設定していく。
- 事業会社の物流部門社員。30代中盤以降の男性。
- ロジスティクス全体を管轄する部署に異動して4年程度
- ITシステム開発職の経験はない
- 部署内では委託先の運送業者やドライバーの配車業務を管理する立場にある
- 2024年問題の到来による人手不足対策の立案を任されている
カスタマージャーニーの例
次にカスタマージャーニーを設計していこう。
カスタマージャーニーは、カスタマージャーニーマップとして表形式にまとめると、ペルソナの意識変化が明確になる。
また、コンテンツマーケティングではSEOも考慮し、検索キーワードの変遷も同時にまとめておくと配信計画が立てやすくなるだろう。
以下に例を挙げる。
ジャーニーに従ったコンテンツ配信の例
さらに、ジャーニーに沿ってコンテンツの配信計画を作成していく。
上の図では、記事コンテンツをすべてのフェーズで使用し、フェーズの境目の部分にホワイトペーパーやLPを織り交ぜることで問い合わせ数の増加も狙っている。
SEOによる露出効果や競合の知名度などによってコンテンツの活用方法は変わるため、いくつかのパターンを作成してテストを重ね、効果を比較してみる方法もおすすめだ。
5.まとめ
この記事では、コンテンツマーケティングの種類と、コンテンツの活用方法などについて解説してきた。
コンテンツマーケティングで使用されるコンテンツは主に5種類であり、それぞれに明確な役割がある。
これらの役割とジャーニーを照らし合わせ、適切に配信してくことで、コンテンツマーケティングの成功につながるだろう。
まずはペルソナとジャーニー、テーマ選定をしっかりと行い、コンテンツマーケティングの方向性を定めていこう。
ただし、ジャーニーの設計とコンテンツ制作にはノウハウとリソースが必要だ。
もし社内にリソースがない場合は、外部企業への委託も検討してみてほしい。