アップした記事のパフォーマンスをさらに高める方法として、記事のリライトがある。
以下のような課題がある場合は、記事のリライトを実施すべきかもしれない。
- 「アップした当初はPVが上がっていたが、最近は減少傾向にある」
- 「記事コンテンツの数は揃ってきたが、CVRが思わしくない」
- 「トレンド記事やノウハウ記事の内容が古く、実情に合っていない」
記事のリライトはSEO対策として有効だ。
しかし最も重要なのは、興味関心や納得感を高めるコンテンツに仕上げてCVRなどのKPIを底上げすることだ。
ここでは記事をリライトするメリットや対象記事の選定方法、リライトのステップ、成果を高めるリライトのテクニックなどを網羅的に紹介する。
1.記事のリライトとは?
まず、記事のリライトの定義やメリットを確認しておこう。
1.1.記事のリライトの定義
リライトとは、「伝わりにくい箇所」や「情報量が少ない箇所」「解説がわかりにくい箇所」などに対し、追記・削除を行う行為をさす。
ざっくり言えば「編集」の一部なのだが、すべての記事コンテンツにリライトを施すわけではない。
コンテンツマーケティングにおける記事のリライトは、一定の条件で抽出した記事をブラッシュアップし、検索上位化とコンバージョン率の向上を目指す施策だ。
1.2.記事のリライトの意義、メリット
記事のリライトの意義・メリットとしては下記が挙げられる。
- 検索順位の上昇
- コンバージョン率(CVR)の上昇
- 新規記事の作成に比べるとコストパフォーマンスが高い
検索順位の上昇
最もわかりやすいメリットはSEO的な評価の上昇、つまり検索順位が上がることだ。
コンテンツマーケティングにおける記事コンテンツの役割は、大きく「集客」「コンバージョン」の2つに大別される。
このうち、集客は「検索順位の上昇によるPVやSSの増加」によってもたらされる。
検索意図を満たすような情報を追加しつつ、わかりやすさを重視することでSEO的な評価の向上が期待できる。
記事コンテンツの役割については、こちらの記事も参考にしてみてほしい。
コンバージョン率(CVR)の上昇
2つ目のメリットは「コンバージョン率(CVR)」の上昇だ。
CVRはコンバージョン数をPVやUU、SSなどを割ることで求められる。
CVRが低い記事は「閲覧されている割には訴求力がない記事」と考えられる。
CVRを高めるための方法は後述するが、一般的にはGoogleが公開している品質評価基準への準拠や、BtoB特有の意思決定プロセスを考慮することで上昇する。
また、キラーページ(ダウンロードや問い合わせなどが発生するページ)とのつながりも重視する必要があるだろう。
CVRの増加は、ファネルの中を移動する見込み客の増加にほかならず、売上や受注増にもつながる。
新規記事の作成に比べるとコストパフォーマンスが高い
新規に記事コンテンツを作成する場合に比べ、リライトはより小さな工数で効果を得られる。
例えば「情報セキュリティ」に関する記事コンテンツをリライトする場合、「情報セキュリティ 対策」や「セキュリティ ツール」といった複合語の情報を含めることで、複数のキーワードに対応する記事が出来上がる。
もちろん、複合語で独自の記事を作成してもよい。
しかし、新規の場合はクローラーが読み込んでインデックスされ、ユーザーに評価されるまでにどうしても時間がかかってしまう。
すでにインデックスされ、一定の評価を受けている記事にリライトをかけたほうが、時間やコストの節約につながる。
1.3.記事のリライトはオウンドメディア運営の必須タスク
オウンドメディアを運営するうえで記事のリライトは必須のタスクだ。
古い情報の廃棄と更新、記事ごとのパフォーマンス確認などを常に行わなければ、オウンドメディアのパフォーマンスは維持できない。
また、記事のリライトにはコンテンツ単位での弱点の洗い出しやユーザーが好む情報の傾向を把握するなど、オウンドメディア全体のCVRを高める施策も含まれる。
記事のリライトは、改まって取り組む施策ではなく、オウンドメディア運営において自然に発生するものと考えるべきだろう。
2.リライト対象記事の選定条件
次に、リライト対象記事の選定条件を確認しておこう。
冒頭でも触れたように、記事のリライトは無作為に行うものではない。
一定の条件で抽出した記事に対してリライトを行う。
具体的には次のような条件だ。
2.1.公開からの期間
一般的に記事のリライトは、公開から一定期間(3カ月~6か月)が経過している記事を対象とする。
これは、検索エンジンのクローラーが読み込み、登録(インデックス)が完了し、最初の評価が終わっている記事を対象とするためだ。
インデックスと評価は3か月がひとつの目安であり、検索順位の変動が落ち着くまでには6か月程度を要する場合もある。
2.2.一定の評価を獲得している記事
2つ目の条件は、「検索順位が20~30位以内にランクインしている記事」だ。
記事のリライトは「一定の評価を獲得している記事を、さらに上位化する」ことに向いている。
20~30位以内にランクインしている記事は、大枠としては良く出来ている場合が多い。
一方で、情報の質や新規性、独自性について今一歩の点があるために検索上位の獲得を果たせない。
数百文字から3000文字程度の加筆で上位を狙える可能性が高いため、優先的に対応しよう。
ちなみに、順位変動が大きいキーワードの場合は40~50位程度までを対象としても良い。
2.3.クリック率が低い
クリック率が低い記事は、そもそも興味を引くようなタイトルやディスクリプションが設定されていないことが多い。
もし内容に問題がないのであれば、タイトルやディスクリプションを変更するだけで上位化できる可能性が高い。
労力に対して効果が大きいため、優先的に対応すべきだ。
2.4.コンバージョンが発生している
コンバージョン(問い合わせやフォーム入力など)が発生した記事は、訴求力の点で及第点と判断できる。
リライトによって集客力を上げれば、おのずとコンバージョン数は上昇する。
もし検索順位やクリック率での選定が難しい場合は、コンバージョンの有無でも判断してみよう。
コンバージョンについてはこちらの記事でも詳しく解説している。
2.5.自社事業との関連性が高く、強みを訴求しやすい
最後の条件は、「自社事業との関連性」だ。
オウンドメディアの記事コンテンツは、そのすべてが自社と強い関連性を持つわけではない。
例えばトレンド解説記事は、法改正やビジネストレンドなど、一時的に検索ボリュームが増えているキーワードも狙う。
長期的には、こうした記事よりも「事業との関連性が強いテーマ」をリライトしたほうが売上につながりやすい。
事業との関連性が強いテーマは、営業やカスタマーサポート、開発部門などからノウハウを得られる。
こうしたノウハウを記事のリライトに活かすことで、「より自然に」強みを訴求できるようになる。
3.リライトのステップ
では、実際に記事のリライトを行う場合のステップについて見ていこう。
記事のリライトは以下6つのステップで行う。
- 対象選定
- リライト対象記事の分析
- ユーザーニーズの把握
- 競合調査
- リライト
- 効果検証
順に詳しく見ていこう。
ステップ1:対象選定
まず前述の条件で対象選定を行う。この点はすでに解説済みのため、割愛する。
ステップ2:リライト対象記事について、以下の分析結果を取得
対象選定が終わった後は、記事ごとに分析を行う。
この分析では、PV、UU、フォーム遷移率、検索順位、直帰率などを指標として数値化する。
分析とは言っても、一般的なWebサイト分析と共通した作業であるため、それほど難しくない。
分析についてはこちらの記事でも紹介している。
ステップ3:ユーザーニーズの把握(再度)
分析である程度の数値化を行ったら、再度ユーザーニーズを確認しておこう。
新規で作成する際にユーザーニーズは把握しているはずだが、もう一度ズレがないかを確認する。
具体的には、キーワードに隠された「検索意図(検索インテント)」が記事の内容とずれていないかをチェックしよう。
例えば、「リードジェネレーション」というキーワードに関する記事を作成したとする。
このキーワードの検索意図は、
- 主なリードジェネレーション手法を知りたい
- どの手法から採用すべきか決めるための情報を得たい
などが考えられる。
よって、検索意図に応える具体的な内容やアドバイスが提供されているかチェックしよう。
また、細かな検索意図は、複合語でカバーされていることも多い。
サジェストなどを細かくチェックし、それに応じた内容を追記しよう。
ステップ4:競合調査
競合とは、簡単に言えば「リライト対象の記事とキーワードや検索意図が共通している上位記事」だ。
競合よりも劣っている点、不足している点はリライトで必ず埋めておきたい。
競合調査の方法はいくつかあるが、おすすめはツールを使う方法だ。
SEO対策用のツールの中には、上位記事との比較で課題を抽出してくれる機能を持つものがある。
例えば「pascal」というツールでは、リライト対象の記事と上位記事を比較し、改善点を提示してくれる。
グラフィカルに弱点を表示してくれるので、改善ポイントの洗い出しがスムーズに進むはずだ。
ステップ5:リライトの実施
ここまでの作業が完了したら、実際にリライトを実施していく。
リライトは「更新」「補強」「独自性の強化」の3つを常に意識しながら行おう。
また、「読みやすい文体か」「既存の内容との重複がないか」も同時にチェックする。
さらに、Googleが定めるコンテンツの品質評価基準も意識したい。
Googleでは、これまでコンテンツの評価に対するヒントを提示している。
以下は、そのヒントを要約したものだ。
- 独自性のある結果(調査結果、レポート)を提示しているか
- 包括的で完全であるか
- 洞察が含まれる分析であるか
- 単なるコピーや書き換えではなく「付加価値」が提示されているか
- 見出しやタイトルが内容を説明しているか
- 誇張、ショック、不安を与えるものではないか
参考:Google検索セントラル
当たり前のことを書いているようだが、これらすべてを満たすコンテンツはそれほど多くない。
裏を返せば、品質評価の基準をしっかり満たすことで、上位化の可能性が上がるというわけだ。
ステップ6:効果検証
リライトが完了した後は記事を再度アップし、同じように3か月~の期間をおいてパフォーマンスをチェックしよう。
チェック対象は、3.2で述べた項目で問題ないだろう。
古い記事との差分をチェックし、もし効果がでていないようであれば再度リライトを計画する。
4.BtoB領域でCVRの向上に繋がるリライトのコツ
これまでは記事のリライトに関する一般論を紹介してきた。
最後に、一般論を踏まえつつ「BtoBのSaaSビジネス」でCVR向上につながるリライトのノウハウを紹介しておく。
4.1.ビジュアライズとサマライズを徹底する
そもそもBtoBに関するテーマは、BtoCよりも複雑になりがちだ。
一方で「理解しやすい内容」はすでに読者も知っており、情報としては陳腐化している。
したがって、記事の価値をあげるためには「複雑な内容を理解する負荷を下げる工夫」が必要だ。
最も効果的なのは「ビジュアライズ(視覚化)」と「サマライズ(要約)」を徹底することだ。
図やグラフを適宜表示することで、「言語で理解しにくかった情報」を補完できる。
また、「端的に言うと」「つまり」「言い換えると」といった言い回しで要約を挟むことで、読者の理解を助けることができる。
これらは論理展開の中で「踊り場」的な要素となり、読者の負荷を下げる。
6000字以上のロングコンテンツの場合、1500~2000文字に程度で図や要約を挟むとよいだろう。
4.2.情報の正確性と話題性(トレンド)を担保する
BtoBのSaaSビジネスは、法改正や時事ネタなどを背景にした需要が多い。
したがって情報の正確性や話題性は非常に需要だ。
例えば「2025年の崖問題」がベンダーのサポート期間延長によって「2027年の崖問題」に変更された事例などは記憶に新しい。
BtoBのSaaSビジネスは法改正や時事ネタの影響を受けることが多く、情報が不正確であると記事の直帰率が上がってしまう。
ちなみにトレンドについては、ツールによってある程度は追跡が可能だ。
4.3.ユーザーニーズを「オンライン」「オフライン」双方から把握する
さらにBtoBでは、「オフラインからもニーズを吸い上げる」ことも忘れないようにしたい。
端的に言えば「営業やカスタマーサポートから生の情報を収集する」ことだ。
「既存顧客が最近気にしていること」「時事ネタやトレンドと関連して発生した課題」などを収集し、コンテンツに反映させていこう。
他部門から得た生の情報は、記事の現実味や信頼性を向上させ、コンバージョンを促す効果がある。
4.5.ユーザビリティを徹底的に強化する
記事のリライトの範疇からは少し外れるが、入力フォームの改善などを並行して進めるとCVRが改善しやすい。
例えばEFOのような施策を並行すると、ダウンロードや問い合わせの数が上向くかもしれない。
EFOについてはこちらでも解説している。
4.6.「ユーザーニーズの穴」をふさぐ
コンバージョンが低い場合、記事の内容だけではなく「ユーザーニーズの穴」がないかをチェックする。
手順はこうだ。
まず「ターゲット」と「ペルソナ」を定義し、キーワードごとの検索意図を明確にする。
カスタマージャーニーマップやサーチジャーニーマップを作成して比較してもよいだろう。
次に検索意図と記事の内容に乖離がないかをチェックする。
もし乖離が見つかり、さらに上位記事でもカバーされてないようであれば、そこが「ユーザーニーズを満たせていない穴」である。
ユーザーニーズの穴は、「数値化が不足している」「具体性がない」「例が稚拙」などが大半だ。
こうしたポイントを補強することで記事ごとの滞在率があがり、コンバージョンの機会が増える。
5.まとめ
ここでは、記事のリライトの一般的な方法と、BtoB SaaSビジネスに特化した内容を紹介してきた。
記事のリライトは、適切に行いさえすれば非常にコストパフォーマンスが高い施策だ。
ただし、CVR向上に特化する場合は、SEO(つまり検索エンジンからの評価)よりも「人の評価」を重視する必要がある。
マーケティングと現場業務の両面からVOC(顧客の声)を吸い上げつつ、記事に反映させていこう。